魔法科高校の救世主   作:ノット

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待っている人はいないかもしれませんが、お待たせしました‼︎

もう一つの小説がメインなのでこっちは投稿が不定期になります。




落涙

 僕は記憶喪失だった。

 現在の年齢が十二歳で、一年前に山の中で目が覚めた。

 辺りには誰もおらず、自分の名前がシュウということ以外は何も分からない。そんな状況を怖いと思わなかった事に恐怖したのを今でも覚えている。

 とりあえず何をするでもなくボケっとしながら目覚めた日は過ぎていった。だが、人間誰しも食べなければ生きてはいけない。

 周りに生えている草やキノコを食べて生活して、寝るという生活が始まった。

 ここではない場所に行こうかと迷ったのだが、この場所にいた理由が記憶を失う前の自分にはあったのかもしれないと思い、この山に住み着く事に決めた。

 

 こんな、サバイバル生活を繰り返していたある日、夢を見た。

 

 自分が魔法を使い、化け物を倒しているという夢だ。

 どこか現実的ではないが、夢とは思えない。そんな夢だった。

 夢を見た日から二日に一回は夢を見るようになった。

 

 目がキレイなおっさんに特訓してもらったり、九つの首をもっている怪物を倒そうと思ったら九つなんてのは真っ赤な嘘でもっと首がある化け物と戦ったり、本当に様々な夢を見た。

 そしたら、いつの間にか現実でも魔法を使えるようになっていた。夢で見たものと同じものだ。何故できるようになったのかは僕にも分からない。記憶にはないが体は覚えていた。そんな不思議な感覚だったが、使える事でサバイバル生活がうんと楽になったので些細な事だと思い気にしなくなっていった。

 そして、半年程経ったにも関わらず誰も山には現れなかった。

 山と自分には何の関わりもない事が分かったので、山を出て外の世界へと旅を始める事に決めた。

 

 何をするでも無い旅だった。やっている事は山か外かの違いはあれどあてもなく彷徨うことしか出来なかったし、そもそも情報がないので何処に行けば良いのかすら分からなかった。

 

 それからまた半年ほど経った時に真夜が拐われているところに遭遇した。

 

 ◇

 

 という、僕の身の上話をしたら真夜は驚愕していた。記憶喪失の事を打ち明けたので無理もないと思う。

 

「怖いんだ」

 身の上話をしたせいなのか、今までずっと思っていた事が口からふと出てしまった。

「何が?」

「……元々の僕がどんな人間だったのか知らない事が。何をして来て何であそこにいたのか分からないことが。そしてなによりも」

 

 ーー平然と人を殺せた事が。

 非人道的な行いをしていたから殺した。間違ってはいないかも知れないが正しくもない。

 しかし、あの時はそうする事しか頭にはなかった。

 後悔はしていない。あんな場所はあってはいけないと思っているし壊して回っているのも正しい事だと理解している。だが、人を殺すということに忌避感を感じなさすぎている。

 殺人というのはあってはいけないことだ。頭では理解できているのに体が動いてしまったという事は元々の人間がそういう人間だったのかもしれないという事かもしれない。それが、怖い。

 真夜に思っていた事をいつのまにか全て話してしまっていた。自分でも分からないうちに心にダメージを負っていたのかもしれない。

 

「シュウは優しい人よ。見ず知らずの私を助けてくれた。こんな事が出来る人が悪い人な訳ないわ」

 幼子をあやすように優しい声で一番欲しいと思っていた言葉を真夜は言ってくれた。

「……でも」

「でもじゃない!」

 真夜は僕の肩に手を置いて目をじっと見てきた。

「貴方はそんな人じゃない。こうしてずっと一緒にいたから分かる。私を信じて」

 真夜が嘘を言ってないのは目を見れば分かる。心からそう思ってくれていることも。

 ーー嬉しかった。

 心の中で重荷になっていたものが、軽くなった気がした。未だに謎はある。けど、真夜が信じてくれるならそれを信じたいとそう思えた。

 

 僕が真夜を救ったように、真夜は僕を救ってくれた。

 

 

 ◇

 

 真夜を助け出してから、いくつもの研究所を潰し、大漢にある大きな研究所を破壊した後に彼らは来た。

 

 真夜の父親達ーー四葉家だ。

 

 

「真夜、遅くなってすまない」

 四葉 元造は真夜にそう本当にすまなそうにしながら謝るが真夜は僕の側から離れようとしない。

 

「真夜、お父さんが来てくれたよ」

 

「今更、来てどうしようっていうの」

 真夜は自らが危機だったにも関わらず、一週間以上してからやってきた父親に対して怒っているらしい。

 

 自分の貞操がもう少しで大変なことになっていた真夜のことを考えると怒るのも無理はないかなとも思う。

「僕もちょっと遅いかなとは思うけど君のことを本当に大事に思っているからこうして助けに来てくれたんだ」

 

「だからなんだっていうの」

 

「だから……」

 そういいながら真夜の背中を軽く押した。

 

「もう無理しなくてもいいよ」

 真夜は元造の下までゆっくりとだが歩き、俯きながらポツポツと話し始めた。

 

「私、本当に怖かった。身動きが取れない状態で何をされるかも分かって、それで、それでね……」

 

 真夜は泣きながら元造に自分の想いを伝えた。

 

 怖かった。

 

 もうダメかと思った。

 

 なんでもっとはやく来れなかったの。

 

 でも、来てくれてありがとう。

 

 

 最後に元造に抱きついて真夜は眠ってしまった。

 

 

 

 

「シュウと言ったかな。本当に真夜を助けてくれてありがとう。この恩は絶対に忘れない」

 

「いえ、僕は自分が助けたいと思ったからやっただけですよ」

 真夜を見て、笑いながらそう答えた。

 

 

 

 

 その時に突然、僕の体から光が立ちのぼる。

 

「シュウ君‼︎ 一体どうしたんだ」

 突然目の前で意味の分からない現象に、元造は驚愕する。

 

「分からないです。でも、身体に力が入らなくて……」

 僕は強烈な眠気に襲われてゆっくりと意識が沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、シュウは光が消えると同時に忽然といなくなってしまった。

 

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