なんか、よく分からなかったので七日目にモノリス・コードの予選を全て行うということにしています。(たぶん原作通りのはず)
九校戦七日目。
いよいよ、モノリス・コードの予選が始まる。一回戦の相手は七高。対戦相手の七高は海の七高という異名のとおり、水上で役に立つ魔法技能を教えられているらしい。
だが今回の戦闘する場所は森林フィールドなので、そこを考慮する必要はないだろう。
森林フィールドという名前から分かっていたが、思ってた以上に木々が生い茂っている。モノリスの周りだけは少しひらけているが、そこ以外はほとんど森の中と変わらない。
この森の中で魔法なしで人を探すのはなかなか面倒な気がすると思い、その事を森崎に教えようと思いモノリスの近くに立っている森崎に振り返る。そこには如何にも緊張してますといった顔つきの森崎と五十嵐がいた。
「顔がガチガチだよ、二人とも」
「だ、大丈夫だ」
「問題ない」
こんなに緊張していたら勝てるものも勝てなくなりそうだ。
俺は二人にというか森崎に近づいていき、頰の肉を横に引っ張った。
「意外と柔らかいな」
森崎の顔をグニグニ引っ張ってみると、思ったよりも楽しくてやめられなくなってきた。
「な、何をするんだ‼︎」
だが、森崎に手を払われてしまい森崎タイムは終了してしまった。
「五十嵐もやる?」
「俺はいいや」
こちらを少し引いたような顔を見る五十嵐。
「二人とも緊張しすぎだ。もっと肩の力をぬこう」
「そうは言ってもな……」
「負けたら死ぬ、戦場とかなら緊張しても仕方がないけど此処はそういうわけじゃない。それに俺たちが全敗しても深雪達が優勝してくれたら一高の総合優勝はほぼ確実だ」
一高は女子新人戦はほとんどの競技が一位から三位を独占しているという恐るべき結果になっているのに加え、男子も俺と森崎が優勝と準優勝しているので当初予想していたポイントを上回る結果となっている。
本戦のモノリス・コードに十文字先輩。ミラージ・バットには渡辺先輩が残っているので、新人戦はあと一つ優勝出来れば一高の総合優勝は確実なものになるだろう。というか、新人戦の残り競技全て最下位だとしても一高は総合優勝を狙える。
まぁ深雪が新人戦程度で負けるとは思えないので、一高の優勝はほぼ決定しているのだが二人には伝える必要はないだろう。
「だが……」
「だけど、俺達が新人戦モノリス・コード優勝したら一高のスターになれる‼︎」
渾身のドヤ顔で二人に宣言した。二人は顔を見合わせて、やれやれといったような顔をした。
「勝とう!」
「ああ!」
「当たり前だ!」
俺たちは拳を握りしめて三人でぶつけ合った。
◇
緊張をほぐすつもりがなんだかんだ緊張させるような事を言ってしまったような気がしたが、二人はやる気に満ち溢れた顔をしているので結果オーライということにしておく。
お腹に響くような重低音の開始の合図が鳴り響き、試合が始まった。
「五十嵐、モノリスは任せた」
「任せろ!」
俺と森崎は森の中を走りながら相手のモノリスに最短距離で詰め寄る。相手のモノリスの場所はこの木々のせいで全く見えないが、聴覚を通力で強化して、人がいる方向はだいたい把握できた。
木々に身を隠して一旦、立ち止まった。
「もう少し行ったところにモノリスを守っているのが一人、右手側にゆっくり歩きながら索敵しているのが一人って感じかな」
「なんで、分かるんだお前は」
「んー、勘」
少しはぐらかしながらも情報の共有をする。
「こっちに気づいてないから、奇襲は可能かな」
「よし、じゃあ作戦通り索敵の方から一緒に倒していくか」
「いや、思ったより相手の選手同士の距離が近いからどちらかに攻撃したら音で俺達の場所がバレる。せっかく相手が見つけられてないのにそれは美味しくないな」
「じゃあ、どうする?」
「二人同時に攻撃……いや、俺がモノリスに近い方の敵を割と派手な魔法で倒すから、それに気を捉えている内にもう一人を森崎が倒すってのはどう」
「分かった。それでいこう」
「……いいのか? 作戦通りじゃないけど」
「構わない。なんたって灰村がそう言ってるんだからな」
頰をかきながらそんな事を言ってきた。
「ありがとう。じゃあ行ってくる」
近くの索敵の方には気づかれないように静かに動き、相手のモノリスの方に近づいていく。
モノリスの近くにいる敵が目で見える位置にきたが、どうやらまだ気づいてはいないらしい。
緊張しているから、視野が狭まっているのだろうか?
こちらにとっては幸運なので、近くに落ちていた小石を右斜め前の木に当てた。
急に聞こえた石が当たる音に敵の選手はビックリしたようで、そちらの方を見た。
(今っ!)
木々に隠れていた俺は視線がこちらに向けられていない内に魔法を発動する。
使う魔法はかなり一般的な魔法。
極簡単な魔法だったので、魔法構築の時間はほとんど一瞬だった。相手選手は意識外の攻撃になすすべもなく、意識を飛ばす。
大きな音を出したつもりだったのだが、これで敵を釣れただろうか、と不安に思っていたのだが木々の間から無傷の森崎が現れたので一安心する。
「大丈夫だった?」
「作戦通りだ」
少し嬉しそうな森崎の顔から察するに、上手くハマってくれたらしい。
「じゃあ、モノリスを……」
モノリスに向かってCADをむけようと思っていたら、試合終了のブザーが鳴った。
「五十嵐が敵を倒したみたいだな」
「何はともあれ、まずは一勝!」
森崎に向かって手を挙げた。森崎はなんだか少し困ったような顔をしていたが、渋々手を同じように挙げて音を鳴らした。
◇
「快勝っていってもいいくらい綺麗に勝ったな!」
五十嵐は試合前の緊張感はどこにいったのかというくらい、興奮気味に話しかけてきた。
「まぁ、たしかに出来過ぎなくらいだったな」
相手も緊張していたとはいえ、こちらの被害はなしに加えて手の内を明かすこともなく勝てた。理想的といっていい。
一高本部に少しの休憩をするために戻った俺たちは一高の生徒達に凄い、凄いと言われながら次の試合に備えていた。
「次の相手は四高だったっけ?」
「あぁ、それに市街地フィールドの予定だ」
「市街地か……」
「どうしたんだ、灰村」
「少し戦いづらそうだなって思って」
ビルの中ということはそれなりに狭い中で戦わなければいけなくなる。出会い頭の遭遇戦などが起こる可能性が高くなるから、少し面倒なステージといえるだろう。
「運営が決めたことなんだから、それは仕方ないだろ」
「そうだな。俺たちは何処のステージでも勝つだけだ」
盛り上がっている二人に水を差すのも悪かったので、続いて曖昧に返事をしたが何か、嫌な予感が頭から離れてくれなかった。
◇
二回戦。
俺たちは廃ビルの中で始まるのを待っていた。
「作戦は一回戦と同じでいいよな?」
二人とも無言で頷いているので、異論はないのだろう。
「五十嵐はモノリスの前で待ってるんじゃなくてモノリスが見えるところに隠れていた方がいいかも」
「……あぁ、たしかにな」
「相手がモノリスを開こうとしているところを背後から奇襲出来る可能性があるからだな」
「森崎、今回は当初の作戦通りに動いた方がいいと思うけど、どう思う?」
「僕もそれでいいと思う」
「OK。今回も勝とう」
「おう」
「ああ」
そして試合が始まった。
と、同時に天井が崩れた。
「は?」
誰の声だったかは分からないが、天井が落ちてきているというのにその声だけはよく聞こえた。
あと一秒もしないうちに押しつぶされる。が、一秒あれば二人を抱えて脱出できる。危機によって高速で思考した頭はその事を把握して行動に移そうとしたが、体が動かなかった。
意味が分からなすぎて、思考が止まりかける。
しかし瞬間的に足元を見ると何らかの魔法が自分にかけられている事に気づく。
(誰が? 今? ふざけろ‼︎)
試合前ということで、領域干渉をしていなかったのが仇となった。
体を縫い付けるように止める魔法は古式もしくはBS魔法の類だろう。全身に通力を漲らせ無理やり魔法を破る。
しかし、破るのに一瞬かかってしまった。
もう天井に押しつぶされる目前といったところだ。
神速通で瞬時に二人に近づき、思いきり押した。押し込んだ先には割れた窓がある。上手く外に逃がすことが出来たと思いたい。
ーー良かった。
そして俺は瓦礫に押しつぶされた。