魔法科高校の救世主   作:ノット

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突如日間ランキング入りを果たしたと思いきや、一夜持たずに跡形もなく消え去った我が小説。作者は一人大爆笑しました(笑)

読んでくださっている皆様、ありがとうございます!





当主

「それで、この一件についてどうなったの?」

 真由美は今も目を覚まさないとある生徒の顔を見ながら隣に立つ巌の様な男に問いかけた。

「あぁ、そうだな……いや、まずは助かった他二人について教えるが、二人は廃ビルの四階から弾き飛ばされたが大会の運営委員によって特に怪我もなく救出された」

 巌の様な男ーー十文字克人ーーは事の次第を淡々と話し始める。

 

「えぇ、それは見てたわ。二人と会話もしてみたけど特に肉体的にも精神的にも異常はなかったわ。でも、二人とも自分のせいでシュウくんに怪我を負わせたって思って気落ちしてるわ」

 助け出された二人は自分があの状況から無傷で脱せられた事に驚き喜んでいたが、精神的支柱だったシュウがいない事に気付き、すぐに真逆の感情になった。

 

「その二人に関しては後で俺がフォローをしておく。あと、精神的に厳しそうだったのなら明日以降に延期になっているモノリス・コードには出さない」

「えぇ、お願いね」

「話を戻すが、灰村は異変に気付いた直後に動こうとしていた。だが動けなくさせていた魔法を七草は見えていたか?」

 克人から見ても天井が崩れて直ぐに、対処法を考え実行した胆力は見事というべき行動だった。自分ではとてもではないがあそこまで即座に対応する事など出来ないと断言できる。

 しかし、灰村 シュウという一年生が出来た。十師族、しかも次期当主である克人が出来ないにも関わらず。

 相当場慣れしている、と少し戦いに長けている者ならばそう判断するだろう。実際のところ本人はそこまで戦闘経験があるわけではなく、前世の自分がかなり戦闘経験があるだけなのだが……。

 

「一瞬で魔法式が消されたからはっきりとは見えなかったけど、私にも見えていたわ」

「あれは、古式魔法の一種らしい。体をその場に動けなくさせるという効果があるが持続時間はごく短い、欠陥魔法といえるものだと判明した。だが、今回はその短い時間が欲しかった」

「……そうね。摩利を助けた時に見せた速さで大抵の妨害は意味をなさなくできるわけだから、か。でも、誰があそこでシュウ君に魔法を使ったの? 四高の選手とは思えないんだけど」

 

 克人は常では絶対に見せないであろう、怒りの表情を顔に出したが一回深呼吸を入れ冷静な風を装っている表情に戻した。

 そして、事件の犯人を告げる。

 

「……運営委員だ」

 真由美は何を言っているのか理解ができなかった。

「え? だって……。まさか!」

「間違いない。九島老師が魔法を使って聴き出したからな」

 思ってもいなかったビッグネームが突然出てきて、真由美は驚くものの一旦今は置いておくことにした。

「そうだとしたら、タイミングが良すぎない? たまたま四高の選手が試合開始前に索敵をしていて、たまたま間違って入れていた破城槌を使ってしまったってだけでも信じられないのに。それに加えて破城槌が使った直後にシュウ君の足止めをす、るの……」

 

 真由美は口に出して状況を整理していくうちに段々と今回の一件の事を理解していった。

「七草が考えている通りだ。破城槌をCADに仕込んだのも運営委員だった。おそらくだが、試合開始前に灰村たちの居場所がちょうど見える位置に四高のスタート位置があったんじゃないかと俺は思っている。それで、四高の選手は気づかれていないのを良い事に奇襲できるチャンスだと思い魔法を発動したが、運営に弄られたCADは本来の魔法を使うのではなく、破城槌を意図しないで使うことになったという感じではないだろうか?」

「それなら四高が破城槌をあらかじめCADに入れていなかったという主張にも一致するわね」

 

 真由美は十文字の推測があながち間違っていないだろうと思った。

 一高のモノリスのスタート位置から死角になっているところ、隣のビルの上などに四高のスタート位置が設置されていたら克人の言っていたことはあり得る話である。四高は今までの九校戦の結果は最下位。どうにかして一矢報いたいと思っている時に一高に気づかれていない場所に陣取る事が出来た。そうなれば、一塊となっているところを奇襲して一網打尽にしなければいけないという心理が働くかもしれない。

 実際にはどうだったかは分からない。やってしまった事について後で文句を言っても仕方がないし、四高もCADに細工をされていた被害者なのだ。と、真由美も克人も思っている。だが、事件の真相を知らない一高の生徒たちは四高を非難しているかもしれないと考えると胃のあたりが少し痛くなってくる真由美だった。

 

「問題はここからだ」

「え? 大会運営委員の目的について?」

「いや、違う。そもそも運営委員は何のために灰村達の近くにいると思う?」

 運営委員とは大会を正常に運営するためにいる。危険があったりしたら魔法を使い競技を行なっている生徒を強制的に止める事をしたり、救出をしたりする。今回、森崎達が助けられたのがまさにそれだったりする。

 

「灰村の近くにいた運営委員は、本来行うはずだった灰村への安全面の対処を何一つ行なっていない」

「……まさか。あの瓦礫に直接押しつぶされたっていうの? 加重軽減魔法で衝撃を和らげたりされずに⁈」

 

 真由美はてっきり、そう思っていた。最低限の安全は確保されているものだと。しかし、そんな事はなかった。加えて、救出されるまでに妨害した運営委員による救出の妨害があったのでシュウは、長時間瓦礫の下に押しつぶされていた事になる。

 真由美の脳には最悪の考えがよぎった。

 

 

「……シュウ君の怪我の具合はどうなの?」

 

 

 

 

 

 

「……左腕が骨折、そして全身に打撲だそうだ」

 

 

 二人の間に沈黙がながれる。

 

 

「え? それだけ⁈」

 不謹慎かもしれないが、真由美が咄嗟に出た言葉はこれだった。

 あの瓦礫に長時間押しつぶされていると知った時は、良くて全身骨折。最悪の場合は目覚めないという想像を真由美はしていた。

 にも関わらず、骨折が一箇所に後は打撲だけ。拍子抜けといったところだ。

 

「しかも左腕はもともと骨折していたらしいという医者の見立てが本当だとしたら、灰村はあの瓦礫に埋め尽くされて打撲だけで済んでいたという事になる」

 

 再び二人の間に沈黙がながれる。

 

「……どんな肉体強度よ」

「……七草、そもそも九校戦で治せない怪我をすること自体珍しい。灰村の怪我の具合は決して軽いものではないぞ」

「いや、うん……そうね、ごめんなさい」

 

「ふぅ、それで今回の事件の犯人……」

 ーーの狙いは何なのかな?

 と真由美が口に出す前にノックの音が部屋に響いた。

 

 真由美も克人も怪訝な顔をする。一高の生徒達はシュウの見舞いに来たがっていたが、真由美がシュウの怪我の具合を知らなかったこともあり一先ず面会はお断りという事にしていた。

 一般人の入れる場所でもないので、誰がきたのか真由美も克人も分からなかった。

 真由美は扉をスライドさせて、ノックをしてきた人物を見る。

 

 

 

「よ、四葉真夜……さん」

 そこには四葉家現当主、四葉真夜がいた。想像の範囲外、九校戦に来ていることすら知らなかった相手がそこに立っていたので真由美は呼び捨てにしそうになったが、なんとか敬称をつけるのに成功した。

 真由美が慌てているのを見て空かさず、後ろから克人がフォローに入る。

「初めまして。十文字家次期当主、十文字克人です」

「初めまして。七草真由美です」

「あら、ご丁寧に。四葉家現当主、四葉真夜よ。よろしくねお二人さん」

 真由美も克人もそれぞれ十師族としての挨拶をする。

 

「それで、この場にどういったご用件でいらっしゃったのですか?」

 ここに現れたからには要件は決まっているだろうが、一応克人は問いかけた。

「瓦礫に押しつぶされたのを中継で丁度見ていたのよ。だから、気になって顔を見に来たのよ」

 ごく普通の心配をしている真夜を見て、毒気を抜かれる真由美。

 

「それで、どうなのかしら?」

「左腕が骨折に全身打撲です」

 真由美が怪我の具合を説明した瞬間、真夜の気配が変わったように感じた。

 

「あら、そう……。部屋に入っても構わないかしら?」

「い、いえすみません。関係者以外の立ち入りはお断りさせていただいていますので」

 

 そんな事はない。一高の生徒のみ立ち入り禁止にしているのであって、十師族の当主を入らせない理由は特にはなかった。だが、真由美は面会を断った。

 理由はいくつかあった。

 あの悪名高い四葉の当主に気に入られてしまったならば、シュウは今後面倒なことに巻き込まれる事になる。既にこうして部屋の前まで来られてしまっている時点で注目されてしまっているのだが、本人ーーシュウは眠っているがーーに直接会うよりはマシだ。

 また、今回の一件に手を出されたくなかったというのもあった。本人の怪我の状態を見て少し会話をしたら、今回の犯人の裏にいる人物の話になるのは目に見えている。真由美としては当校の生徒が外的要因によって傷つけられたという事がはっきりと分かっているので、七草家と克人家の力を使って今回の事件の裏に潜んでいる敵を捕らえたいと考えていた。

 しかし、ここで四葉に出て来られると少し困る事になる。

 戦力が増すという点については喜ばしい事だが、四葉に借りを作る形になる。かといって、四葉の戦力を断るはっきりとした理由がない。相手が何者かのかもまだ、分かっていないのだから。

 

 真由美は一高の生徒会長として、七草家として真夜にここに入って来られたくはなかった。

 

「そうなの、ね」

 含みを持たせるような真夜の言い方に全てを悟られていると、判断した真由美だったがここは無理矢理にでも押しきろうと思い、言葉を繋げようとした。

「はい、すみませんが……」

 

「なら、入らせてもらうわね(・・・・・・・・・)

 

 真由美は、いや後ろで事の成り行きを見守っていた克人も硬直した。

 ここで、無理に入るのは真夜にとっても良いことではない。そんな事がわからない人ではないと二人は考えている。ならば、答えは一つしかなかった。

 

「あら、ふふふ。そうね、はっきりと言っておいてあげるわ。私は(シュウ)の関係者よ」

 

 真由美も克人もシュウの比類なき魔法力から考えて、十師族の家の血が流れているのではないかと思っていなかったといえば嘘になる。だが、よりにもよって四葉。

 真由美はいろいろなことが起こりすぎて、頭が痛くなってきた。

 克人はこれほどの人物が、十師族に関わりがある人物で一安心していた。

 

「……灰村シュウは十師族の一員という事でよろしいのでしょうか?

 四葉真夜殿」

 一応の確認のつもりで克人は言葉を発した。

「シュウは十師族の一員ではないわ」

 なのだが、即座に否定されてしまい呆気にとられてしまう。

 

「はぁ、面倒だからちゃんと説明するわね。彼には四葉の血は一切流れていないわ。傍流ですらない。だから十師族の一員かどうか聞かれたのなら違うと即答できるわ。だけど、私とあとはそうね、深夜もシュウには深い恩義があるの」

 

「シュウの今の四葉としての立ち位置的には食客というのが一番近いかもしれないわ。今はね……」

 

 そう言い終わったシュウを見つめる真夜の顔を見て真由美は気づいてしまった。

 ーーこの若作りおばさん、シュウ君に気があるっていうの⁈

 

 心の中とはいえ真由美はとても失礼な事を考えていた。

 真由美は真夜の実際の年齢を知らないので、四十を過ぎたおばさんが十代の若い男の子を好きになっているという風に見えている。

 たしかにそう考えるとやばい匂いしかしないのだが、幸いな事にそうではない。

 

「それで、四葉殿は今回の一件どういった行動をするおつもりですか?」

 真由美の心情などかけらも分からない十文字は話の流れを元に戻した。

「それならもう手は打たせてもらったわ」

「と、言いますと?」

「九校戦三日目に貴方達のところの生徒を庇ってシュウが怪我をしたのは覚えているかしら?」

「はい、怪我を負ったという事は知りませんでしたが」

 

 シュウの左腕が折れていた理由を知り、謎の怪我の真相は分かったので納得すると共に腕が折れながらも一競技優勝しているのを思い出し驚愕した。クラウド・ボールは魔法主体ならそこまで動く競技ではないとはいえ、全く動かないわけではない。痛みもあるなかで優勝したのは流石という他ない。

 

「シュウのお陰で大事にはならなかったけど、あれは明らかに人為的に起こされた事故だった。だから、四葉が裏にいた連中も運営委員に紛れ込んでいた人員を全て捕まえた筈だったんだけれども……」

 

 真夜は嘘はついていないが、全てを話しているというわけでもなかった。九校戦の会場である富士演習場に来る前に真夜は九校戦を賭けの対象にしている連中がいる事について知っていた。

 しかし、真夜はあえて見逃した。九校戦が始まる前に既に本拠地も調べ上げていたが肝心の支部の幹部がまだいなかったのだ。だから九校戦終盤になれば必ず全ての人員が本拠地に現れる筈だと判断し泳がせていたのだ。

 真夜の判断はあながち間違ってはいなかったが、直接的な妨害に入るということまで想像する事はできていなかった。

 その結果、起こってしまった事故で怪我を負ってしまったシュウ。

 真夜は責任を感じ、確実に息の根を止めた筈だった。

 

「裏にいた連中が紛れ込ませた運営委員が元々いた運営委員を唆したらしくてね。それを見逃してしまい、今回の事故が起こってしまったの」

 下っ端が更に雇った下っ端。見つける方が難しい。

 結果的に、真夜が取り逃がしてしまったことでこのような事故が起こってしまったが、そもそも真夜と克人は犯人の組織名すら分かっていなかった。ここで、真夜を責めるのは筋違いというものだった。

 

「あの、取り逃がした一人だけでここまで手の込んだ事が出来るとは思えないのですが……」

 真由美は暗にまだ見つかっていない人員がいるのではないかと真夜に聞いた。

「それはないわ。捕まえた運営委員に無理矢理聴き出したからこれ以上はないと確信できる。これが起こったのは私達が捕まえる前に既に仕込みを終えていたからなのよ。そして取り逃がした一人はあの場面で魔法を使うだけで計画は完璧なものになった、なってしまった」

 何も知らない運営委員は自分達の中に敵の間者が潜んでいることなど考えてもいなかったので軽いパニックに陥っていた。だから、スタート位置の確認などする余裕がなかった。

 

 

「幸いな事にシュウ以外は怪我人も出ていないのがせめてもの救いね」

「灰村には悪いですが、被害者一名に留められたのは不幸中の幸いと言えるでしょうね」

 

 

「シュウの無事な姿も見れたので、私はそろそろ失礼します」

 真夜は眠っているシュウの頰に手を当てながらそう言った。

 

「今回の一件について、お力を貸していただきありがとうございました」

「ありがとうございました」

「いえ、シュウのためにやった事なのでお礼は不要です。なので貸し借りというのも今回は気にしないでくださいね」

 

 真由美と克人は一高の生徒が害された事件が起こり、自分以外の手によってしかも四葉の手によって事件が終わった事で、四葉に貸しを作ってしまう形になっていた。真夜としてはシュウのためなのだが、真由美と克人には関係がない。二人とも不利益を被ると思い、若干気落ちしていたが真夜の一声によって霧散した。

 

 

 

「はぁ、なんだか疲れちゃったわ」

「そうだな。しかし、思っていたより人間味のある人物で少し意外に感じたが七草はどう思う?」

「そうね。四葉といえば、非人道的な行いをしていて危ない連中ってイメージだったから意外といえば意外だったわ」

 

「……それで、四葉殿の真意はなんだと思う?」

「……シュウ君との関係を明かした事についてって事でいいのよね?」

 真夜は無理にシュウとの関係を明かす必要があったのだろうか。

 二人にとってはメリットがある話だったが真夜にとってはそうではない。寧ろ四葉の弱点になりうる事情が盛りだくさんの話だった。

 ーー弱点になりうる人物が恐ろしく強いというのはまだ誰も知らないが。

 

「そうだ。部屋に入るためだけに教えるとも考えられん。何か考えがあると思う方が自然だろう」

 

「そうね。私達との繋がりが欲しかったから? いや、でも……。うーん、私には分からないわ」

 

 シュウを通じて七草と十文字との縁を作りたかったとも考えられるが、それならこんな突然伝える必要はないだろう。正式な方法で伝え、本人が起きている時に真由美たちと話した方が色々と都合が良い。

 真由美と克人には様々な考えが頭に浮かんでいたがこれというものは結局分からなかった。

 

 

 

 




九校戦でのシュウSUGEEEは終わりです。次回からは……。

補足1
三日目……シュウが怪我を負う、真夜激おこ。
四日目……四葉の手の者「無頭竜このやろ、全員いるな‼︎ 捕まえたるわ。ブッコロだぞお前ら」
五日目……四高「はやめにCADのチェックに行こっと」四葉の手の者「シュウさんの試合凄いなぁ。あ、やべ運営委員捕まえなきゃ」
六日目……四葉の手の者「シュウさんの試合が凄かったから、これを隠れ蓑にして運営委員全員捕まえよ。ブッコロブッコロ」
七日目……真夜「シュウ格好いいな、ポッ」……真夜「なんで天井崩れんのやコラッ!!」四葉の手の者「…………」

補足2
下っ端の下っ端「え、金もらえるんすか。やりますやります!」
下っ端「じゃあほい!」
下っ端の下っ端「やっほい!」
……後日

下っ端の下っ端「あれ? お金くれた人いなくなってるな。どこ行ったんだろ? でも、俺は金をもらったからには仕事はやる人間だぜ‼︎」
下っ端の下っ端「足止め足止め」

真夜「てめぇ、ブッコロな」
下っ端の下っ端「ひぇっ‼︎」
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