魔法科高校の救世主   作:ノット

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久しぶりに更新しました。



目覚め

 海の上でプカプカ浮かんでいる。それが今の僕の状況だった。真夜の父親の英作さんに真夜を預けたところまでは覚えているが、それ以降の記憶が無く、気がついたら海の上に流れ着いていた。

 また、記憶喪失かと自らの事を疑ったが、この状況からしてテレポーテーションのような力かもしれない。僕の夢の中に出てくる、人たちの中に空間を移動するような能力の人物がいた事から不可能なことではないのだろう。

 現状を把握したので、ここから移動したいのだが如何せんどこに行けば良いかも分からない。見る限り、辺り一面には海しかない。

 困った僕は夢の中の魔法ーー闇術という力の中から使えそうなモノがないか思い出して見る。

 闇術は攻撃や防御に使えるものは多いが、サポート的に使えるものがあまり多くない印象が僕の中にはある。

 羽毫の体現(デクリーズウエイト)。今回使えそうだと思って使った闇術の名前だ。自身の体重を限りなくゼロに近い状態にすることができる技だ。これによって体を宙を浮き、高い視点を確保することができた。

 

 下からは見えなかったが、北の方向に島が見える。ここから見て、豆粒のような大きさであることからかなりの距離があるようだ。その事がわかり、若干憂鬱になりながらも他に行くあてもないことからその島に向けて泳ぎ始めた。

 

 一時間、二時間、三時間……。どれくらい泳いだ事だろう。自分でも驚くほどの体力があるこの体のおかげで、精神的にはかなりキツイがまだ動けなくなるほど疲れているわけではない。

 だが、一旦休憩のつもりで背泳ぎに切り替える。結局泳いでいるので休憩とは言えないが、空を見ながら泳ぐという事で幾分かは気も晴れる。

(暑いなぁ)

 そんな事を考えている時だった。急に海の状況が変わり始めた。先ほどまでとはうって変わり、波が高くなり始める。ただ、浮いてるだけでは体が波にもっていかれてしまい身動きがとれなくなりそうだった。一旦、落ち着くまで闇術で空にいようと思った時だった。僕は何十メートルあるか分からない程高い波に飲まれてしまったのは。

 

 ◇

 

 

 唇に何かが押し当てられている。これはどこかで感じた事がある柔らかさだった。

 ーー僕が?

 いや、これは夢の中。サラシャという人物が、冥府の魔女という人物が、嵐城 サツキが、漆原 静乃がしてくれた事だ。

 ーーだれに?

 

 そんな事を考えていたら段々と意識が遠くなっていった。

 

 ◇

 

「大丈夫ですか?」

 僕はそんな言葉を聞いて目が覚めた。目の前には優しげな雰囲気を持った女性が一人。どうやら、波に飲まれた自分はこの人に助けられたようだった。体のあちこちが痛いがなんとか立ち上がる事が出来たので、座ってから彼女に向き合った。

 

「あの、助けていただいてありがとうございます」

「いえ、浜辺に倒れていた貴方を運んだくらいしかしてないのでお気になさらずに。それよりも私の前に出ないでくださいね」

 

 どういうことですか? と聞く前にそれはやってきた。

 砲弾だろうか。かなりの大きさがある物質がこちらにとんできていた。マズイと思って目を瞑ったがら衝撃はやってこなかった。目の前の女性が守ってくれたらしい。彼女は魔法が使えるらしかった。真夜にも以前少しだけ聞いたことがあった魔法師というやつなのだろう。

 

 目が覚めてから辺りを見渡していなかったので気がつかなかったが、僕の後ろにも何人か人がいることに気がついた。何やら、銃のようなものを構えているが何をやっているのだろうか。そんな事を思っていると後ろから声が聞こえてくる。

 

「うっっ」

 助けてくれた女性の声だった。

「大丈夫ですか?」

 先程、彼女が僕に言ってくれた言葉を今度はこちらが聞いた。

 彼女は僕の方を振り向いて、微笑を浮かべる。

「大丈夫ですよ」

 

 絶対に大丈夫じゃなかった。額には汗が吹き出ていて、息も荒い。

 けれど、僕には優しく微笑むだけで弱音を吐いたりはしなかった。

 砲弾が次から次とやってくる。

 彼女は限界だった。

 ーーもうやめさせないと体が壊れる。

 

 直感的に僕にはそう分かった。だが、どうすればいい。

 夢の中から今、使えそうな闇術を探す。

 炎、氷、雷、水。覚えているものを瞬時に思い出すがこの状況ではクソの役にもたたない。まず、闇術を使うにはスペリングと詠唱が必要だ。詠唱は無くても使う事ができるが威力が落ちてしまうし、どちらにしろ時間が足りない。

 

(何かないのか‼︎ 僕に、俺に(・・)やれることは‼︎)

 

 

 

 ーー思い出せ。

 そんな言葉が僕の脳裏を過る。

 

 ーー貴方にはもう一つの力があるはずよ。

 何処かで聞いた事があるセリフを思い出した。

 

 ーー勝ったら、キスしてあげるからー‼︎

 そんなバカな事も思い出してしまった。

 

 

 そうか。俺は…。

 

 

 

「思い……出した!」

 

 

 

 

 俺は灰村 諸葉という前世の記憶を持つ人間だ。

 

 思い出したと同時に体から通力(プラーナ)が溢れ出してくる。出来ていなかったのが逆に不思議に思うほど自然に使う事ができた。

 

 そして、前世では認識票を用いて顕現させていたサラティガも何故か自らの手の中にあった。何故あるのかは分からないが、今はそんな事を考えている時間はなかった。

 

 剣に通力をありったけ込めて今、正にやってくる砲弾に向けて解き放った。

 

 技の名前は太歳。通力を放出して暴風を起こすだけの技のはずだった。灰村 諸葉という人物を前世にもっているからなのか、僕の体にはそれはそれは意味がわからないほどの通力があった。それを全てサラティガに込めて解き放ったのだ。

 その結果、何故か分からないが斬撃が飛んでいった。それは砲弾を切り裂き、砲弾を打っていた艦隊にも当たった手応えがあった。何はともあれ、砲弾が止んだので気にしないことにした。

 通力を込めすぎてかなり疲れている中、目の前の女性が倒れるのが見えた。ふらふらとしながらも彼女の下へと向かった。

 どうやら、気が抜けて眠ってしまっているだけのようだった。

 

 俺は彼女のふにゃっとした寝顔を見ながら安堵した。

 それと同時に艦隊の方からとてつもない爆風がやってくる。

 そちらの方向を見てみると、球体状になっている白い光が見えた。なんだかよく分からないが、とてつもないエネルギーをあれから感じた。

 後ろにいた人達がやったことかもしれない。

 俺は立ち上がろうとして、上手く立たないことに気がついた。通力を使いすぎたのか、はたまた泳いで疲れているだけなのか分からないが俺の意識はだんだんと薄れていった。

 

 

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