教会の白い死神   作:ZEKUT

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 戦闘内容は大幅にショートカットさせてもらいましたです。
 グダグダ書いてると、4,5話分ぐらい喰いそうだったので。
 納得できないかもしれませんですけど、勘弁してくださいです。
 

 それと気づいたら評価数が百を超えててビックリしたです。
 ありがとうございますです。


 ちなみに次の投稿は遅れそうです、なので今回は少し長めです。
 ごめんなさいです。


 それと最近思ったことなんですけど、カネキ君のマスクって片目見えないようになってるのに、よく距離感とかわかるな~って思った作者です。


蹂躙

 若手悪魔対教会の戦士。そのレーティングゲームの開始日時はすぐに決まり、その話はすぐに有馬らにも伝えられた。

 開始日時は三日後、冥界の首都リリスにて行われることが決まった。

 開始日時が三日と言うのは、流石に性急すぎないかと言う意見も多くあったが、この日取りは上層部の悪魔の強い要望によって決定することになった。

 理由として少しでも早く試合が見たいと言う理由が上げられていたが、それは表向きの理由。裏の理由としては、有馬を暗殺するための期間に余裕を持ちたかったからだ。

 暗殺を実行すると言っても、すぐにできるわけではない。有馬の実力を図り、実行犯の人選、決行の日時、痕跡を消すための根回し、必要なことは多岐にわたる。

 今更だが、有馬は冥界にガブリエルの護衛として訪れているのだ。暗殺をするにしても、それにガブリエルを巻き込むのは流石に拙い。そんな事をすればいかに多くのパイプを持つ彼らと言えど誤魔化しきれない。その事からチャンスは多くはないだろうという事もわかる。

 そんな上層部の要望に流石の魔王たちも、自分らを魔王として推薦してくれた彼らの意見を無碍にできず、日時は三日後に決定した。

 その準備期間、若手悪魔達は一度集まり、作戦を立てることになった。

 なったのだが、その会議は会議と呼べるような大層なモノではなく、若手同士の溝をより一層深める結果となった。

 

 

 対有馬対策として開かれた会議。

 その進行は、かつて有馬の戦闘を目にしたことがあったリアスが司会を務めることとなった。だが、肝心の戦闘はリアスから口で伝えられたモノばかりで、実際の映像は一つもない事からリアスが司会をする必要がない事を指摘され、一悶着が起きた。

 その結果、司会は今回の発端という事もあってソーナが務めることになった。

 彼女が提案した作戦はいたって簡単なモノ、遠方から魔力による物量作戦。

 有馬の戦闘スタイルは基本的に近距離からの攻撃が多い。ナルカミによる遠距離射撃も可能だが、それを物量で抑え込むことによって対処しようと言うのがソーナの考えだった。どこかの中将も言っていたが、戦いは数だ。この作戦は、少数精鋭の有馬たちを相手取ることにもっとも適切と言える作戦ともいえる。

 しかし、その作戦にゼファードルが反対する。離れた場所からではなく、この手で有馬を殴り飛ばしたいと発言する。ソーナはその発言のデメリットを並べていくが、それに首を縦に振ることはなく、付き合っていられるかと吐き捨て会議から離席。

 その後、サイラオーグも自分が遠距離からの攻撃に不向きという事を述べ、一先ずその作戦は保留となった。

 続いてソーナが進言した作戦は若手たちを部隊ごとに分けた作戦だった。人数の利があるのならそれを生かない手はない。教会の戦士一人一人に若手悪魔とその眷属をを差し向け敵を分断、各個撃破するという内容だった。

 その作戦には誰も異論はなかった。だが、その役割分断に問題があった。今回のレーティングゲームのメインディッシュともいえる存在、有馬を誰が相手にするのか、その割り当てで揉めることとなった。

 相手は四人、その内有馬を相手するのは若手悪魔の内二名が選ばれる。そうなると必然的に他の者は有馬以外の相手をすることになる。もしも有馬を倒すことができたなら、上層部からの評価は高くつくだろう。だが、その取り巻きとも言われる他三名を倒しても、その評価は有馬に比べれば微妙だと言わざるを得なかった。

 勿論、有馬との戦闘に立候補したのは全員だった。

 この場に居る誰もが評価は欲している。それは自身の夢に繋がることであるなら尚更だった。

 その結果、この作戦は内輪揉めに繋がるとして破棄せざるを得なかった。

 先程の二つが有効な作戦だと言うことは誰もが理解している。だが、それは誰かしらがデメリットを背負う事もあって、頷くことはできなかった。

 新たな作戦を考えるが、それでは効果が乏しいと判断され作戦には組み込まれなかった。

 そして最終的に決まったことが、各々自由に戦うという事だ。

 有馬一人を狙うも良し、有馬以外の相手をするも良し、漁夫の利を狙うのも良し、唯一決められたことは味方同士で争う事は禁止と言う事だけだ。

 話が終了すると、彼らはすぐに会議場所から去っていく。

 誰もが如何に他者を出し抜くか、それを考えていることがわかる。

 最初からプライドが高い若手悪魔同士で協力する、その事自体がどだい無理な話だった。

 有意義とは言えない会議は、時間を無駄に浪費しただけで幕を終える。

 それから彼らは試合当日まで誰一人顔合わせをする事も無く、当日を迎えた。

 

 

□■□■

 

 試合当日、有馬たちは待機場所で各々寛いでいた。

 試合前にもかかわらず読書に没頭する有馬、静かに闘志を燃やすジーク、落ち着かないのかうろちょろするジャンヌ、そんな三人とは対照的に若手たちのデータを読み直しているリント。そんな四人の様子を見守るガブリエル。

 

 

「今更ですが、無理だけはしないでください。貴方達は悪魔にとって若手悪魔と同じ、教会にとっての宝なのです。その命を無為に散らさないでくださいね」

 

 

 懇願にも聞こえるその言葉。

 ガブリエルも有馬の強さは知っている。それでも今回の試合は傍目から見たら圧倒的不利、お世辞にも勝てるとは思えなかった。

 

 

「大丈夫ですって、有馬さんが居ますし」

「ジャンヌ、目上の相手にはもう少し言葉を選んでくれない?」

「問題ありません」

 

 

 ジャンヌは陽気な返事を返し、リントがツッコむ。ジークは我関せずと言った具合だが、そんな言葉を聞いてもガブリエルの不安は晴れない。

 もしもこの場にアザゼルがいたら対戦相手の若手たちを心配してやれとでも言っていただろう。

 そして若手悪魔達にとって残念なことにこの三日間、彼らは無為に時間を過ごしていたわけではない。

 三人は有馬式超スパルタ組み手を、試験前の学生よろしく徹夜に近い形で行っていた。おかげ様で冥界に入る前とは別人と言っていい程腕を上げていた。

 ジークは二刀の心得を、ジャンヌは指摘されていた剣幕の薄さを、リントはどっちつかずの遠近距離の戦闘スタイルを。

 今回、レーティングゲームという事もあって、有馬をメインに戦闘させるわけにはいかないと言う三人の意見もあって隊列が本来とは違った形となった。

 ジークとジャンヌが前方を担当、ジャンヌは主に切り込みをメインにジークはそのサポートとしての立ち回り、リントを中央に配置し漏れがあった敵を排除、後方の有馬が指揮と後詰を行う。

 この隊列に内心俺いらないんじゃね?と思いながらもそれを口に出さない有馬。

 

 

「リント、使えそうか?」

「ええ、少し重いけど」

 

 

 今回のレーティングゲーム、有馬から指示され教会から受け取ってきた魔剣の内の一振り、ノートゥング。それをリントに一時的に貸し出すことになった。

 その経緯は何とも馬鹿な話なのだが、有馬との組手の最中にリントの武器が崩壊したのだ。破壊ではなく崩壊だ。有馬の無茶ぶりにこたえきれず、その結果となった。試合前に武器を調達する時間も無く、やむなしにジークから予備の魔剣を拝借することとなったのだ。

 

 

「皆さん、そろそろお時間です。決して無理はなさらぬようお気を付けください」

「善処します」

 

 

 有馬たちは転移魔法陣に入り、試合会場に転移する。

 若手悪魔と死神、その戦いが幕を開ける。

 

 

 

□■□■

 

 

「ククク、始まったな」

「ああ、始まったな」

「仕掛けは十分に施せたか?」

「問題ない。小僧どもには気づかれておらん」

 

 

 レーティングゲームの観戦席。そこで上層部の悪魔達は機嫌よくモニターを眺めていた。

 彼らが今回のレーティングゲームにした細工は三つ。一つはリタイアシステムの細工、これは教会側にのみ働くように細工をしたものだ。瀕死の傷を負った場合、医療室に転移されるこのリタイアシステム、これが作動しないように彼らは人脈を駆使し、裏から手を回した。これでもし有馬が死ぬような傷を負ったとしても、リタイアすることはない。

 二つ目はフィールド事体に細工を施した。特殊な術式をフィールドに組み込み、若手たちの魔力消費を抑えるようにした。これによって若手たちの戦闘は普段よりも楽なモノになるだろう。

 三つ目は、フィールドの転移場所の設定だ。有馬たちの転移場所をフィールドの中央に、若手悪魔らはそれを囲むように六方面の場所に転移させられる。これによって数の利を最大限に生かした状況から試合が開始することになる。

 

 

「白い死神め、我らに楯突いた事を後悔させてくれる」

 

 

 逆恨みも甚だしいことこの上ない言葉だが、それを彼らに言ったところで怒りを買うだけだろう。

 そんな彼らが自身の行いに後悔するまでそう時間は多くない。

 自分たちの行為が、後に寿命を縮めたことを知るのはまだ先の話だ。

 

 

■□■□

 

 

「ここが今回のフィールド」

 

 

 遮蔽物も何もない荒れ果てた荒野。ここが今回のレーティングゲームのフィールドとなる。

 ソーナはまず自分の眷属が、全員揃っているか確認する。特殊ルールによっては眷属がバラバラの位置に転移させられることも過去のゲームではあったと記録されている。その事を考慮し、確認を行う。

 ソーナの周りには誰一人欠けることなく、全員がその場にいる。どうやらそれは無用の心配だったようだ。

 次に現在の立ち位置を確認しようと周囲を見渡す。フィールドの中央に有馬らが位置し、それを囲むように若手が位置に着いている。どのような思惑でこのような配置になったのか不明だが、その事に内心焦りが生まれる。

 一見、若手悪魔が有利に見えるが、それは外見上だけだ。

 ソーナからすれば全員を一カ所に集められた方が色々と都合が良かった。明らかに自力で劣っている自分たちが離れた位置からの開始、これでは当初自分が考えていた各個撃破を相手にされかねない。

 どうしたものかと頭を悩ませている間にアナウンスが流れる。

 

 

『皆様、この度のレーティングゲームの審判役を務めさせていただきますサーゼクス・ルシファー様の女王、グレイフィア・ルキフグスでございます。今回は若手悪魔の皆様とガブリエル様の護衛であらせられる教会の皆さまとの試合となります。試合開始前に、再度ルールの確認を行わせていただきますことをご了承願います。

 

 

一つ、若手悪魔の皆様の勝利条件は王である有馬貴将様の撃破、教会の皆様の勝利条件は若手悪魔全ての王の撃破。

 

二つ、時間制限はなし。決着がつくまで試合は継続されます。

 

三つ、試合中、自主的にリタイアすることが可能です。

 

 

以上がこの試合のルールとなります』

 

 

 ルール説明を聞く中、ソーナは制服のポケットに入った小瓶を確認する。

 この小瓶はソーナの姉であるセラフォルーから試合前にもしもの時にと渡された物だ。

 フェニックスの涙、どんな傷でもたちまち塞がり、治癒される至高の逸品。

 並の悪魔では手にする事も難しい超高価な一品、これをどう使うかによってこの試合の命運が分かれるだろう。

 ソーナは誰に持たせるべきなのか、教科書通りなら女王か王である自分が持つべきだ。しかし、教科書通りの動きをして勝てるほど今回の敵は甘くない。かといって他の者に渡したとしても一時的に寿命が延びるだけ、状況の好転にはならないだろう。

 少し考えた後、ソーナはこれを誰に託すのか決断する。

 

 

『開始時刻となりましたので、ゲームを開始します』

 

 

 そのアナウンスと同時に、若手悪魔は中央に殺到する。

 

 

□■□■

 

 

「ジャンヌK48、ジークE57、リントF13」

 

 

 有馬は試合が開始すると同時に襲い掛かってきた悪魔達を前に、焦ることもなく淡々と指示を下す。

 それと同時に三人も動き出す。

 上空に滞空する悪魔はリントが、地上はジークとジャンヌが対応する。

 雑魚には用はないと言わんばかりに有馬に襲い掛かろうとするが、その悪魔達は尽く切り伏せられていく。

 昇格(プロモーション)した兵士を有無も言わさず蹴散らすジーク、騎士の俊敏な動きを封殺するジャンヌ、上空に滞空する僧侶の動きを制限するリント。

 それぞれが一騎当千の働きをする。

 

 

「ジークD21、踏み込みが悪い。ジャンヌA14、剣幕に無駄が多い。リントC67、反応が遅い」

 

 

 だが、それに満足する有馬ではない。

 新たな指示を出しながらも駄目出しをする。

 その指示に対応するよう三人の動きも変わっていく。

 ただでさえ深く切り込んでくる斬撃に鋭さが増し、剣幕はより一層攻撃的なモノに変化し、射撃は的確なモノに変貌していく。

 端的指摘を受け、動きに無駄がなくなっていく。

 

 

「くっ!」

「我が愛馬をもってしても防戦一方とは!?」

 

 

 ジークは現在二人の騎士を相手にしている。その傍には既にリタイアの光に包まれている影も幾つか見える。

 

 

「聖魔剣よ!」

 

 

 地面から剣山が隆起し、ジークに襲い掛かる。意表を突いた攻撃、その攻撃すらもジークは最小限の動きで回避する。そこに待っていたと言わんばかりに人馬が突貫し、両手に持つランスで高速の連突を繰り出す。

 不意を突いた奇襲、ランスがジークを捉えたと確信した瞬間、その姿が消える。それと同時に騎馬の騎士の脇腹に鋭い痛みが走る。

 

 

「コンマ2タイミングが速い」

「すみません」

 

 

 謝罪を口にしながらも手は休めない。

 続けてもう一人の騎士にも斬り掛かる。一合目の斬撃で怯ませ、二ノ太刀で剣を破壊、締めの刺突で仕留めようとするが、彼は身体を捩ることで致命傷を避ける。態勢の崩れた相手の息の根を止めようと迫るが、そこに聖なるオーラが迫る。

 ジークはそれをバックステップすることによって躱し、同時に間合いも開ける。

 

 

「木場!無事か!?」

「すまない、助かったよ」

「アルトブラウをもってしても届かぬとは」

 

 

 二人の騎士を救ったのは、デュランダルを片手に持った元悪魔払いゼノヴィアだ。

 彼女は先程のジークの動きを離れた場所から辛うじて追うことができた。だからこそ、その常軌を逸した行動に驚きを抱かずにはいられなかった。

 あの時ジークは、高速の連突を躱すのではなく、その穂先に刀身を当てることによって微妙にランスの軌道を変えたのだ。それだけでも恐るべきことにもかかわらず、それだけでは飽き足らず穂先をずらす際に、相手の重心をランス側にずらすという離れ業までやってのけたのだ。その態勢が崩れた一瞬の間に、馬上の死角に入り込み一閃。これが態勢を崩されていない状態なら馬であるアルトブラウが避けていただろうが、そうさせないためにわざわざ重心をずらすと言う手間までかけたのだ。

 常人なら二度は死んでいるであろう事を平然とやってのけたジーク。それを二人の騎士は気づくこともできていない。それに先程の反撃は失敗だ。本来なら相手の腕が伸びきる直前に穂先を逸らし、大きく態勢を崩したところ一撃で仕留める予定だった。しかし、慣れぬ二刀の操作にタイミングが早まり、一撃で仕留めることができなかった。

 この時点で、ジークと彼らの剣士として格付けは終了した。

 

 

「聖魔剣がまるで通じない。流石は魔帝剣グラム、その強さは並ではないね」

 

 

 彼は一つ誤解をしている。

 彼らの差は武器の差ではなく、単純に所有者の格の問題だ。膂力、剣速、反応速度、それらの全てにおいて彼らはジークを下回っていた。何より、ジークは幼少よりグラムを使い込み、己の一部のように扱うことができるが、彼らは良い使い手どまりだ。その差は余りにもでかい。武器の強さでステータスが変わるのは特殊な武器だけだ。本来、使い手の実力に伴って武器の性能も左右されることが普通とされている。有馬なら、それこそ傘でジークと遜色ない動きを容易く行う事ができるだろう。

 

 

「さて、悪いけど、もう少し足止めさせてもらうよ」

「貴殿を私の主君の元へ行かせるわけにはいかん!」

「名高い魔剣使いの戦い、この目に焼き付かせてもらおうか!」

 

 

 この勝負も終盤へと迫っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで27人斬りっしょ!」

 

 

 ジークが騎士らと闘っている間、ジャンヌは唯一人で多くの悪魔をリタイアさせ続けていた。

 ジャンヌの高速の剣捌きについてこれる者はおらず、そのアクロバティックな動きに終始翻弄され続け、ほぼ全員が脱落した。 

 

 

「こ、小猫ちゃん……!」

「だ、大丈夫です。傷は浅いのばかりですから」

「お嬢さんは少し休んどきな。ここは俺達男に任せておけ。行くぞ!」

「………」

 

 

 偉丈夫の巨腕が振り下ろされる。余裕をもって躱すが、そこに金髪の騎士が斬り込む。瞬く間に十数合の斬り合いを演じるが、無傷のジャンヌに反して相手の切傷が増えていく。それに溜まらないと言わんばかりに距離を開けようと後ろに大きく飛び退く。すぐさま追撃をかけようとするが、そこに偉丈夫が割り込む。邪魔をするなと連撃を叩き込むが、身体が硬く、薄皮をきる程度の傷しかできない。

 

 

「流石に硬いっしょ」

 

 

 偉丈夫の防御力は並で無いことをすぐに見抜いたジャンヌ。残念だが、今の装備では正攻法では攻略が難しい相手だ。どうやって倒そうか考えるが、すぐに考える事を放棄し、感覚の赴くままに戦いを再開する。

 再び剛腕が薙ぎ払うように振り回される。風圧だけでも力を抜けば吹き飛ばされそうな威力。だが、その速度は大したものではない。ジャンヌは躱しながらもその剛腕に何度も剣戟を叩きつける。

 何度も繰り返される光景に違和感を感じる相方の騎士、序盤の攻撃で斬撃の効果が薄い事は相手も理解しているはず。なら何のために何度も攻撃を?

 

 

「ッ!一度下がれ!?」

 

 

 騎士は何かに気づき、すぐさま仲間に後退するように指示をする。

 

 

「逃がさ―――――――――ッ!」

 

 

 追撃を行おうとするが、急激に身体が重くなる。突然の出来事に空白の時間が生まれる。その間に、偉丈夫は騎士の元まで退避している。

 

 

「やってくれましたね。ガンドマの防御を数で越えようとするとは」

「斬れないなら、斬れるまで斬ればいいだけですよね?」

 

 

 何当然の事を言ってるんだ、と言わんばかりの言葉に苦笑を隠せない騎士。普通は別の方法を捜したりするものなのだが、どうやら目の前の剣士はそう言ったセオリーには当てはまらないようだ。

 

 

「それよりも、これ貴方のせいですか?」

「ああ、俺の神器、魔眼の生む枷(グラヴィティ・ジェイル)を使わせてもらった。悪いがお姉さんはこれからまともに動くことはできない」

「あっそ、じゃあ勝手に動きますね」

 

 

 ジャンヌはそう言うと、先程と遜色無いとまでは言わないが、それでも鋭い動きで二人に肉迫する。

 ジャンヌが行っていることは簡単だ。重力を利用した移動、それだけだ。

 超感覚派の彼女は、この場合どうすればいいのか、それを考えるよりも早く、意識する前に身体が動く。

 その事に驚きを隠せず、不十分な態勢で攻撃を受けることとなった。

 

 

「ぐっ!出鱈目にも程が――――――――」

 

 

 言葉を言いきる前に腹が斬り裂かれる。鋭い痛みに身体が強張る。その刹那の間にジャンヌは素早い身のこなしで相手の視界から姿を消す。すると先程までの重圧から解放される。

 その事にやっぱりと言った表情をする。

 そして

 

 

「さようなら」

 

 

 無慈悲な宣告、それとともに喉笛を斬られる。金髪の騎士は糸の切れた人形のように倒れ、粒子が身体を覆い、リタイアする。

 そこに仲間の仇と言わんばかりに剛腕がゴウッと言う音をたてながら地面に振り下ろされる。

 敵を一人倒し、油断が生まれたところに奇襲。確実に仕留めた。そう実感した一撃だったが、右目に鈍くもマグマのような熱さが込み上げてくる。

 なんてことはない。ジャンヌが腰に下げた鞘を偉丈夫の眼球に刺し込んだだけだ。

 発狂しそうなほどの激痛は身体全体を駆け巡る。しかし、その叫びをあげることすら彼には許されない。みぞおちを柄で殴られる。その衝撃が横隔膜まで届き、呼吸困難に陥る。すると仲間の騎士と同様、身体が粒子で覆われる。

 どうやら、審判が続行不可能と捉えたようだ。

 

 

「まだ残ってる。フィールド内の悪魔は全部駆逐しなきゃ」

 

 

 くるりと傷だらけの少女たちに向き直る。

 その視線に恐怖する。

 眷属仲間ではないにしろ、共に共闘した仲間も無残にやられた。

 なら次は?

 その考えが浮かぶ前に、予想外の援軍が彼女たちを助ける。

 

 

「大丈夫かい?」

 

 

 優しげな風防した男、若手悪魔の一人、ディオドラがジャンヌの目の前に遮る。

 

 

「ああ、君達と再び出会うことができるなんて。僕は何て運が良いんだ」

 

 

 その視線に特別な感情を乗せながら、ディオドラは魔力を高める。

 そんな相手を気に掛けることも無く、ジャンヌは大台の三十人目を駆逐するべくその剣を振り上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「重いな……ッ!ノートゥングは!」

 

 

 リントは慣れないノートゥングを懸命に振るいながら、僧侶や女王たちを相手する。

 降り注ぐ魔力の弾幕。その中に雷や氷、火などが混ざっているが、それを器用に斬り払い、避けていく。

 

 

「数が多い……けど、有馬さんの攻撃ほどじゃ!」

 

 

 この三日間の訓練内容を思い出しながら剣を振るう。

 初日にして、自分の愛用の武器が破壊された。と言うか攻撃に耐え切れず崩壊した。

 あの時は柄にもなく涙が零れそうになった。

 二日目は筋肉痛と雷に襲われながらも、必死にジークから借りた魔剣を振るった。

 三日目にして悟りのようなものを開きそうになった。まさか龍と闘って来いと言われるとは流石に予想していなかった。何とか撃退することができたけど、ノートゥングは重いわ、相手の一撃も重いわで散々だった。

 それに比べると、相手からの攻撃に脅威は微塵も感じなかった。

 当たったらただでは済まない。それでも脅威とは感じなかった。

 

 

「ふっ!」

 

 

 攻撃を弾きながら、銃弾を放つ。発砲音が聞こえると同時に、一人の悪魔が翼を撃たれ失墜していく。

 リントはこの緊迫とした状況で的確に翼を狙い撃ち、地面に引きずり落とす作業を何度も繰り返している。有馬は『目でも狙えば?』などと言っているが、こんな状況で数十mも離れた動く敵の眼を正確に射抜ける変態的な技術はリントにはない。

 

 

「有馬さんはなんてことないように言ってるけど、私には無理だな」

 

 

 そう愚痴りながら失墜した敵を切り裂く。

 

 

「流石に全員捌くのは難しいかな?」

 

 

 口から零れた言葉と同時に雷鳴が響く。

 どうやら有馬も戦闘を開始したようだ。

 その事に自然と笑みが零れる。

 有馬が仲間に居る、後ろで自分たちの事を見守っている。そう考えると安心して戦うことができる。

 

 

「さて、有馬さんに全部持ってかれる前に、私も頑張るか」

 

 

 握り直したノートゥングを両手に、リントは魔力の雨に身を投げ出す。

 

 

 

 試合開始から10分、若手悪魔とその眷属、その半分が脱落。

 試合は終盤にへと向かう。

 

 

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