教会の白い死神   作:ZEKUT

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 今回は短めです。
 何卒ご了承ください。


会談

 会談当日

 

 

 これから三種族の長が集まり、初めての三種族による会談が始まろうとしている。

 悪魔は魔王サーゼクス・ルシファー、セラフォルー・レヴィアタン、護衛としてグレイフィア・ルキフグス

 天使は熾天使ミカエル、護衛のジーク

 堕天使は総督アザゼル、護衛の白龍皇ヴァーリ

 彼らが組織の代表として今回の会談に参加する。

 だが、会談を始めるにあたって、一つだけ重要な問題が発生していた。

 

 

「おいおい、ミカエル。マジで言ってんのか?」

「………大変申しわけないと思っています」

「困ったな・・・」

 

 

 アザゼル、ミカエル、サーゼクス、共に三種族の長が溜息を吐きながら現状に項垂れていた。

 

 

「で、代わりのお前は何か聞かされてんのか?」

「俺は有馬さんに出ろと指示されただけなので」

 

 

 アザゼルはこの場に参加する予定ではなかった人物、ジークに投げやりになりながら聞いてみるが、案の定大した情報は出てこなかった。

 この会談を始めるにあたって重要な人物がいる。

 各種族のトップを務めるミカエル、アザゼル、サーゼクス。

 それと先日の聖剣強奪事件、それに大きく関与した人物。

 以上の者の参加は三種族の会談において必要不可欠だ。

 その為、悪魔側はリアスとその眷属を

 アザゼルは回収に向かわせた白龍皇を

 ミカエルはコカビエルと戦闘した有馬を

 連れてくる予定だった。

 しかし、有馬はこの会談が始まる土壇場で姿を消した。

 スケープゴートとしてなのか、部下のジークを代わりに出席させる辺り余程会談に参加したくないのか。

 予想だにしなかった出来事にこのまま会談を始めていいのか、そう言う雰囲気が会議室に充満していた。

 

 

「今回は私に非があります。まさか少し目を離した隙に姿を消すとは思ってもいませんでしたので。申し訳ありません」

「気にすんな、って言いたいがちと難しいな。今回の会談で議題に上がる予定のコカビエルの件はあいつが重要人物だ。サーゼクスのとこが説明してくれるから問題ないってわけにはいかねえぞ」

 

 

 先日のコカビエルの騒動の簡単な説明はリアスたちでもできる。

 だが、実際に戦い、騒動を収めたのは有馬だ。

 彼を抜きに話を進めていいのか疑問が生じるのは無理はない。

 

 

「やむ得ない。できれば彼本人から説明をしてほしかったが、居ないのなら仕方がない。すまないがリアスたちに説明をしてもらおう」

 

 

 このまま有馬を見つけるまで会談を伸ばすわけにもいかず、妥協案として当事者であるリアスとソーナが説明をする事で会談を始めることにする。

 

 

「では会談を始める。この場にいる者達は最重要禁則事項である『神の不在』を認知している。それを前提として話を進める」

 

 

 その言葉に動揺する者は誰もいない。

 有馬の不在に頭を抱えながらも会談は始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■□■□

 

 

「と言う様に我々天使は―――――」

「そうだな、その方が良いかもしれない。このままでは確実に三勢力とも滅びの道を――――――」

 

「ま、俺らには特に拘る理由もないけどな」

 

 

 あれから有馬が不在の中、順調に会談は進んでいった。

 時折アザゼルがその場の空気を凍らせるような発言に、周囲の者はハラハラしながらも会談は無事に進んだ。

 

 

「さてリアス。そろそろ先日の事件について説明してもらおうかな」

「はい、ルシファー様」

 

 

 サーゼクスの言葉にリアスとソーナが説明を始める。

 内容は予め報告書に書かれていたものとさして変わらないが、それでも当事者からの説明はありがたい。

 彼女らの話を大まかに纏めると

 

 

 有馬貴将が学園に赴き話し合いの場を要求

 翌日にリアスと有馬たちが話し合う

 その夜にコカビエルと戦闘

 途中参戦した有馬がコカビエルを瞬殺

 白龍皇が乱入しコカビエルを捕縛

 

 

 こんな感じだろう。

 

 

「以上です」

「ありがとう、座ってくれたまえ」

「ちっ、この場にあいつがいねえことが悔やまれるな」

 

 

 アザゼルは舌打ちをしながら頭をガシガシとかく。

 各人報告書で確認はしたが、それでも俄かに信じがたかった。

 それだけ有馬の行動は常軌を逸していた。

 

 

「ミカエル」

「何でしょう?」

 

 

 アザゼルが今までにないほど真剣な表情をしている。

 先程まで軽口を叩いていた人物とは到底思えない。

 

 

「俺はお前に有馬貴将の情報開示を求める」

 

 

 突然の言葉に驚きながらも冷静に頭の中を整理する。

 何故アザゼルは有馬の情報開示を此処で求めるのか。

 今までの話の流れでそれが分からないほどミカエルは愚鈍ではない。

 だからこそ、ミカエルは顔を顰める。

 

 

「貴方は彼が危険だと?」

「むしろ今まで放し飼いしていたお前に驚きだぜ。会談前に一目見たがあれはヤバい。久しぶりだったぜ、俺が人間を見て畏怖を抱くなんてな」

 

 

 ミカエルの言葉に当然だと言わんばかりの返答。

 それは冗談でもなんでもない、アザゼル自身が見て感じたことだ。

 腕を組みなおしながら言葉を続ける。

 

 

「報告書にも書かれていたことだが、白い死神は短時間で、それも無傷でコカビエルを倒したんだ。聖書にも記されるほどの実力者相手に人間が無傷だぞ?これが神器保持者なら納得してやる。だがな、奴が神器保持者だという話は聞いたことがない。聖剣や魔剣のような特別な武器を持っている訳でもなく、ただの人間が堕天使幹部を圧倒する。これの意味がわからないわけがないよな?」

 

 

 沈黙が会議室を覆う。

 まだ若い悪魔であるリアスたちはイマイチ話の内容が分かっていないようだが、トップである彼らは理解していた。

 

 

「・・・彼が、有馬貴将が危険であると?」

「それは早計ではないかな?」

 

 

 ミカエルとサーゼクスの言葉は最もだ。

 それでもアザゼルの意見は確かに理に適っている部分もある。

 今の大きな戦争が無い時代において有馬貴将の戦闘能力は人のソレではないだろう。

 それを危険視することも仕方のない事だろう。

 少しでも有馬貴将の情報を求めるのは間違いではない。

 

 

「俺も別に白い死神を処理しろとは言わねえよ。だがな、アレを首輪も着けずにしているのは危険だ。白い死神の実力はコカビエルじゃ計ることすらできなかった。底がしれないと言ってもいい」

 

 

 処理と言う物騒な言葉に青ざめる若手たち。

 そんな中でもジークは顔色一つ変えることなく、ただ黙って話を聞いているだけだ。

 

 

「俺の予想ではあいつの牙は俺達にも届きうるぞ?」

 

 

 その言葉に先程まで顔色一つ変えなかったトップたちの顔色が変わる。

 それも仕方のない事だろう。

 神器も持たない、それこそ特殊な兵装を持っている訳でもない人間が魔王や熾天使、堕天使総督を殺せると言っているのだ。

 これは見過ごすことができない言葉だ。

 

 

「それは彼が、有馬が私達を殺すとでも言いたいのですか?」

 

 

 ミカエルは表情こそ笑みを浮かべているが、その背中からは6対の白い翼が見える。

 笑うという行為には攻撃的な意味と親和的な意味の二つがある。今のミカエルがどちらの意味で笑っているのかは問うまでもないだろう。

 明らかに攻撃的、怒りを感じている。

 

 

「おいおい、あくまで例えばの話だ。別にあいつが俺らを害するって決めつけているつもりはねえよ」

 

 

 だからその翼をしまえと諫める。

 ミカエルは高ぶった感情を吐き出すように大きく深呼吸をする。

 落ち着いたのか白く輝きを放っていた翼はしまわれている。

 

 

「失礼、少々取り乱しました」

 

 

 若手たちはあれで少々?と冷や汗を隠せずにいた。

 それほどミカエルの放つ光力は凄まじく、少しでも触れようものなら火傷は愚かそのまま蒸発させられそうなほどの光力だった。

 ゴホンと咳ばらいをし話を再開する。

 

 

「有馬貴将の情報開示ですが、この場で長々と話すことではないので割愛させていただきます。後日、資料を送らせていただきますのでそれでよろしいですか?」

「ああ、それで問題ない。さて、ここまで来たら小難しい話はいいだろう。さっさと和平でも結ぼうぜ。その為にわざわざ集まったんだからな」

 

 

 今までの緊迫した空気を壊すように軽い口調で和平の話をきりだす。

 その様子には流石のトップたちも唖然としている。

 どうしたらあれだけ緊迫したやり取りの後に、これだけ砕けた口調で和平の話をきりだせるのか。

 

 

 

「アザゼル・・・・先程まであれだけのことを言っておきながら、和平の話を持ち掛けるあなたの精神力には恐れ入ります」

「おっ、それは褒めてんのか?」

「それを褒め言葉と受け取ることのできる君は中々図太いね」

 

 

 ハハハッと笑いあうミカエル、アザゼル、サーゼクス。

 表情こそ笑ってはいるが、眼が全く笑っていない二人。

 これに流石のアザゼルも『やべっ、タイミング誤ったか?』などど今更ながら後悔している。

 誰から見ても和平を持ちかけるタイミングではなかった。

 

 

「で、アザゼルは何を企んでいるんだい?」

「別に何も企んじゃいねえよ」

「ではこの数十年間、神器所持者を集めていたのは何故でしょうか?私は戦力増強し、戦争でも仕掛けてくると考えていたのですが?」

「神器を生み出した神は死んだ。なら少しでも神器に詳しい奴がいた方がいいだろ?神器所持者を集めたのは研究の為さ。資料が欲しいならまた後日送ってもいいぜ」

  

 

 アザゼルを訝しむトップたち。

 会談が始まってから、場を掻き乱すだけ掻き乱して放置しているアザゼル、今までの行動から信用が一番ない事は、第三者からしても明白だった。

 

 

「ったく、三竦みの中で俺の信用は最低か?」

「そのとおりだ」

「そのとおりですね」

「そのとおりね☆」

 

 

 アザゼルの言葉を全肯定する。

 流石のアザゼルも飄々とした表情を崩し、面倒そうな表情で嘆息する。

 

 

「聖書の神や魔王よりもマシかと思ったらそうでもねえな、おい!流石あいつらの後釜だよ」

 

 

 アザゼルは毒づきながら言葉を続ける。

 

 

「お前らだってこのままじゃまずいってことはわかるだろ?聖書の神は死に、魔王も死んだ。過去の大戦が再び勃発すれば俺らは唯じゃすまない。三種族とも滅んで良しだ」

「・・・アザゼルにしては冷静な判断ですね」

「アザゼルにしてはは余計だ」

「天使の長をしている私が言うのも何ですが、戦争の大元となった神と魔王は消滅しました。これ以上三竦みの関係を続けるのは私達にとって害にしかならないでしょう」

「戦争は我らも望むところではない。再び戦争が起れば、今度こそ悪魔も滅ぶ」

 

 

 どの勢力も戦争は望まない

 当然と言えば当然だ。

 悪魔は悪魔の駒(イーヴィル・ピース)に頼り切り

 天使は神の不在のため純粋な天使が増えず

 純粋な天使が増えない以上、堕天する者も減る

 戦力の維持が困難な状態で戦争が起れば、どの勢力も再起不能な打撃を受けることは間違いない。

 その被害は三大勢力だけではなく、他神話勢力にまで被害を及ぼす。

 例えばの話だが、現在の冥界は悪魔と堕天使が領土として使用している。

 もしも、悪魔と堕天使の勢力が消えれば、その領土は空白となる。

 冥界の広さは並大抵ではない。

 その領土が一つの神話に取り込まれれば、勢力図は大きく変わることになる。

 悪魔と堕天使が滅べば、他神話による冥界争奪戦が始まってもおかしくはない。

 被害は人間界にこそ出ないが、間接的に人間に被害が出ることは間違いない。

 自分たちのいずれかが滅ぶだけならまだいい。

 だが、戦争が始まればどの勢力も壊滅は避けられない。

 だからこそ、トップたちはこの場で和平を望む。

 

 

「なら正式に和平を結ぶ、それで構わないな?」

「こちらとして異議はない」

「詳しい内容はまた後日」

「問題なしね☆」

 

 

 最終確認を行い、正式に和平を結ぶことが決定する。

 一時はこの場で戦闘が起こるかと思われたが、そう言ったことも無く、無事とはいいがたいが、和平は結ばれる。

 

 

「さて、和平を結ぶにあたって二天龍様の意見も聞いてみるか。赤龍帝、兵藤一誠。お前はどうしたい?」

「お、俺ですか!?」

 

 

 突然話が振られたことに動揺する一誠。

 二天龍はかつての大戦で三勢力に甚大な被害を齎した。

 その事に未だ恐れを抱いている者は少なくない。

 それだけ二天龍の力は強大だったのだ。

 

 

「仮にも二天龍を宿してんだ。お前自身が世界を動かす要因の一つでもあることを理解しろ。お前が曖昧な考えを持つと、こっちとして動きづらい。ならヴァーリ、お前はどうしたい?」

「俺か?俺は強くなるだけだ。誰よりも強く、どんな奴も歯牙に掛けないほど強くな」

「白龍皇らしい意見だ。赤龍帝、もう一度聞くがお前はどうしたい?」

「しょ、正直わけわからないです。俺はまだ悪魔になってまだ日が浅いし、話の内容もいまいち理解できてません・・・。でも、俺の力はリアス様の為に使います!だって俺は――――――」

 

 

 その言葉を言いきる前に世界の時が止まった。

 

 

 

 

 

■□■□

 

 

 

「始まった」

 

 

 駒王学園から少し離れた場所。

 そこで一人の人間が駒王学園の状況を観察し続けていた。

 人間は、駒王学園の時間が停止したことを確認すると、簡易魔術を行使し通信を行う。

 

 

「会議で話していた通り、襲撃が始まった。予定通り頃合いを見て、彼らをポイントに転送してくれ」

 

 

 魔術による通信を終え、再び離れた場所に目を向ける。

 

 

「さあ、物語の続編だ。新たな役者も揃い、第二章の開幕といこう。作者は不明、役者は僕達だ。この物語が英雄譚なるか、それとも悲劇となるか、その答えは神のみぞ知るってところか」

 

 

 人間は口元に笑みを浮かべながらこの場から離脱した。

 

 

 




 会談ぶっちしてしまえ、と言う意見があったのでやってみました。
 そしたらあら不思議、話の内容が訳分からない内容になってしまいした。


 申し訳ない………


 次回は早目に投稿するので勘弁してくださいです。

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