精霊転生 ~転生したけど崩壊した現代でした~ 作:緒方 ラキア
さらに二ヶ月の月日が流れた。
新しい仲間も増え、充実した毎日を送っていた。
静かな森の中で技と技のぶつかり合う音が響き渡る。
「はぁーーーーーーーーーー!!」
「温いわーーーーーーーーー!!」
リトビが拳を繰り出せば、リーフも負けじと蹴りを放つ。一進一退の攻防が繰り広げられる。
そこにもう一人追加される。
「オレも忘れんな!」
飛び出して来たのは勿論グランだ。しかし、いつもの土偶のような鎧姿ではない。
動きやすさを重視し、防御力を極限まで削った装備。
ピンクのビキニアーマーである。
正直に言うとすごく似合ってる。だが、動くたびに胸が揺れるから目のやり場に困る。二ヶ月経った今でもなれない。
武器もグランドハンマーではなく、ハルバードを使っている。
今さらながら説明すると、グランの種族は
何でも同族の土精霊達から讃えられるのと窮屈な生活が嫌になって国を飛び出して、この大陸まで逃げて来たらしい。
二人のコンビネーションは厄介だと感じたリーフは森へ駆け出す。それを二人も追いかける。
この辺りの樹木は100mを超えるものが多い。
リーフは触手を木の枝に巻き付けながら次々に木から木へと飛び回る。後を追ってリトビは自慢の脚力を生かして、枝から枝に飛び移る。その姿はまさに忍者そのものである。一方のグランは木の間をすり抜けながら全力疾走で二人を追いかける。
すると、リーフの上空からひゅるると落下音が聞こえた。とっさに横に避けると、すぐにそれは落ちてきた。
落下物はアブルホールの砲撃した特性のペイント弾である。
アブルホールはグランの努力によって、わずか三日で完全に修理されてその日から三人の修行に自ら参加した。
アブルホールは修行の傍ら、三人の動きを分析し的確なアドバイスや改善点、さらには自分達に合ったトレーニングメニューを丁寧に教えてくれる。
現在もリーフ達の周りを偵察ドローンが邪魔をしないようにしながら観察を行っている。
さらにそのドローンから送られる映像と位置情報を分析し、25㎞離れた地点から正確な射撃をリーフ向けて放つ。ペイント弾と言えど、当たり所が悪ければ骨折は免れない。
リーフが避けた隙に、リトビは前に立ちはだかる。
「無影龍脚!」
すぐさま木を蹴り、容赦ない技を放つ。
リーフはそれを体をよじりギリギリで回避する。しかし、それで危機が去ったわけがない。
下からグランがものすごい勢いでリーフに迫る。
精霊族はそれぞれの精霊のタイプによって様々な特殊能力を持っている。リーフの木精霊族はうなじから生える触手、土精霊族は大地を操る能力である。グランは地面に手を当て自分の周りだけを隆起させ、リーフに接近する。
リーフはぶら下がりながら幻龍を抜刀し迎え討つ。
「おりゃーーーーー!」
「はぁーーーーーー!」
気合いの籠った叫びと刀とハルバードのぶつかり合う金属音が混ざり合う。
リーフはグランの足元の地面を切る。グランはバランスを崩して、そのまま落下してゆく。
だが、ここで終わるわけがない。
25㎞地点の崖の上でアブルホールはリーフに照準を合わせる。先程は曲射による砲撃だったが、今度は直射砲撃である。
【目標捕捉、ペイント弾装填、照準誤差修正・・・、
砲撃音と共に、弾は一直線にリーフへ放たれる。
一方のリーフは、発射音が聞こえすぐさま高跳びの背面飛びの如く飛ぶ。背中をペイント弾が通り過ぎてゆく。
空中で一回転したリーフは木の枝に着地する。それと同時に幹に命中したペイント弾が炸裂する。
すると、グランとリトビの姿が見えない事に気付く、辺りを見渡すけれど気配を消しているため何処にいるのかわからない。
すると突然、リーフの後方がら覇気の籠った声が聞こえた。
「こっちだ!リーフ!!」
リーフは声のした後ろを振り返り見上げると、枝の上で仁王立ちしているリトビがいた。
リトビは自信に満ちた声で技を構えると共に叫ぶ。
「限無覇道流必殺奥義!秘宗龍拳!!」
リトビは両腕をクロスさせ気を溜める。
この技は極限まで高めた気を腕に集めて放つ、リトビの最強の一撃である。ただし、弱点として気を溜めるために時間がかかり、なおかつその間は動けなくなるため防御が出来なくなる。
リーフは気を溜めるリトビを触手で攻撃するが、再び地面を隆起させたグランがハルバードで触手を弾く。
そして、グランはハルバードをおもいっきり振り上げ、リーフに投げ飛ばす。ハルバードは高速回転しながら迫ってくる。
咄嗟にリーフは枝から飛び降りハルバードの直撃を回避する。
かなりの高さから飛び降りたが、地面に落ちる前に触手を枝に巻き付け、勢いを殺して着地する。
リーフは上を見上げるが、そこにリトビはいなかった。するとリーフの目の前から異様な気配を感じた。目線を真っ直ぐに向けると、両腕に溜めた気をさらに右腕に集中させ終わったリトビがそこにいた。
カラクリを言うと、リトビが立っていたのは枝の上ではなかった。実際には、グランの能力で作った細く隆起した地面にいたのだ。
リーフが地面に着くと同時に、グランは地面を元に戻したのだ。
もう止められない。ならばとリーフは幻龍を構え直し、柄を強く握る。
リトビが飛び込んできた瞬間にカウンターの一撃を食らわせる。
対するリトビもリーフの意識を感じ取り、淡い光を放つ拳にさらに力を込める。
互いに深呼吸をして息を吐き終わったその瞬間、リトビは地を蹴りリーフに飛び掛かった。
リーフも今までの中でも、最高の横凪ぎの一撃を放つ。
拳と刀が空気を切り、最強の
ビッーーーーーーーーー!
しかし、まさにぶつかろうとした瞬間、ブザーが大きく響き渡った。
すると、偵察ドローンが飛んで来るとスピーカーからアブルホールの声が聞こえた。
『
二人は互いの拳と剣を収める。しかし、ちょうど良い所で止められたのは、なんとも不完全燃焼な気分になる。
「惜しかったの~。あと2秒あれば!」
「ええ、同感です。」
「・・・後で組手するか?」
「お供します。」
二人は、巨大樹の枝を飛び交いながら、スタート地点に戻って行くのだった。
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一足先にグランとアブルホールはいつもの修行場で待っていた。ご丁寧に手まで振っている。
着地するとリトビは側を離れて三人は集まり、話し合い始めた。
黙って待っていると、三人の意見はまとたったらしくリーフに向き直る。
「えー、三人の審議の結果・・・満場一致で合格です。」
「よし!」
リーフは思わずガッツポーズをとった。
今回の一連の戦闘は、言うなればリーフの卒業試験であった。
昨夜、リーフはいつまでもここにいるわけにはいかないと、三人に相談したところ
三人と戦い、全員から認められれば良いと言って、戦っていたのだ。
「まあ、これ程の実力があれば問題ないじゃろ。」
「けど大丈夫か、リーフは女性に弱いだろ?」
「大丈夫じゃ、お前ほどのビッチは存在せん。」
リトビの言葉にさすがのグランもカチンと何が切れる音が聞こえた。そして二人の間にとてつもないオーラが溢れ出す。
「リトビぃぃぃ。あっちで今までの決着つけようぜ!」
「望むところじゃ、儂も不完全燃焼なんじゃ。容赦せんぞ。」
二人はそう言い合って奥へと消えて行った。そしてすぐ後から激しくぶつかり合う音が響き始めた。
「・・・あの二人は放っておきましょう。」
何だろう、アブルホールがここにいる中で一番まともに思えてくる。
「では、合格記念にこちらを。」
アブルホールが差し出したのは、見覚えのあるタブレット端末であった。
「こちらに、私のデータベースをコピーしておきました。この世界の情報を入れてありますので、これから役立ててください。動力は魔力ですので、触れていれば充電の必要はありません。」
アブルホールは体内で素材と設計図があれば、大抵の物を作り出せる。さらに、かつて電気で動いていた機械を改良し、魔力で動かせるように出来る。
アブルホールの存在は絶対隠しておいた方がいいとリーフが考えていた時、一際凄まじい衝撃音が響く。
二人が振り返ると、リトビとグランが仰向けで大の字になって伸びていた。
やれやれと思いながら、リーフは気絶した二人をアブルホールに乗せて洞窟へ帰るのだった。
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翌朝、朝日に照らされるいつもの修行場に四人はいた。
リーフはいつもの胴着ではなく、久しぶりの袴姿であった。最初と違って両腕にはグランの作った籠手が巻かれていた。
そして、左手には三人からもらった道具や少しだがこの世界の通貨を入れた風呂敷包みを持っていた。
「では、行ってきます。」
「気を付けての。」
「またな!」
「たまには連絡してください。」
リーフは背を向けて歩き出した。しばらくして振り返ると三人は手を振っていた。
リーフも手を振り返して再び歩き始める。
目指すは、この先にある『人間保護特別区域“イオタ村”』。家族の手掛かりを求めて。
現在、生き残った人間が暮らしている地域は大きく2つに分けられる。
1つは、戦時中に精霊連合側に捕らえた捕虜や一般人を、精霊が各地に作った保護区の『人間保護特別区域』に住んでいる人間達。
最低限の生活が出来るように国から物資は支給されているが、区内から外に出ることは出来ず、監獄のような場所らしい。
2つ目は、生き残った人間が残った科学を結集させて作った『人類革命連合』である。
『再び人類に栄光を』とスローガンを掲げ、未だ精霊と争いを繰り返している。
国の周りを高い鋼鉄の壁に覆われ、内部の情報はほとんど外に漏れない。
不確かな情報だが、魔法を使える人間が生まれて、反撃の機会を狙っていると他種族の間では噂になっている。
歩き始めて約15分、リーフは早速タブレットを使ってイオタ村に向かっていた。気が付けば周りの木々は普通サイズのものに変わっていた。
こうしていると、自然の力をこの身に感じているようで、良い気分になる。
しばらく歩いていると、急に横の茂みから音が聞こえた。
リーフは思わず、いつでも抜刀出来るように幻龍に手をかける。そして、茂みの中から出てきたのは・・・
可愛らしい幼女であった。
さすがのリーフもこれは予想外であった。
年は8~9歳だろうか。三つ編みのおさげ、着ているスカートは二十世紀の昭和頃の服に似ていた。あとは胸に名札があれば完璧な昭和の小学生に見える。
そしてリーフと目が合った、すると突然、幼女は目から滝のように涙を流しながらリーフに飛び付いてきた。そして、
「うわーーーーーん!お姉ちゃんーー!」
リーフに抱き着き、さらに泣きじゃくる。
(・・・名も知らない少女よ、私はお兄ちゃんだ。)
リーフは驚きながら、心の中で突っ込みを入れた。