精霊転生 ~転生したけど崩壊した現代でした~   作:緒方 ラキア

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新キャララッシュ


12話「怒りと姉妹再会」

迷子の少女は「星原 明美(ほしはら あけみ)」とすすり泣きながらそう名乗った。

話聞くとこの先にある村にいたのだが、姉よりも早く起きた明美は外に出ると、キレイな蝶を見つけて追いかけている内に、村から離れて迷子になってしまったとのことだった。

村とは恐らく目的地のイオタ村だろう。タブレットを確認して見ると、このまま進めば村に着く。連れて行けば姉とも再会出来るだろう。

 

「この先に村はある。私も行くから付いてきなさい。」

 

リーフは優しく言うと、明美は顔を上げてこれまで見たことのないほどの笑顔を浮かべてギュッと抱き着いてきた。

 

「ありがとう!お姉ちゃん。」

 

「・・・この際だから言うけど、私はお兄ちゃんだ。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

はぐれないように手を繋ぎながら二人で歩いてゆく。

こうしていると人間の頃、3歳離れた妹と並んで帰っていた時を思い出す。今はどうしているのだろうか。

それにしてもこの子、私を見ても恐がらない。人類を滅ぼしかけた精霊族なのに。

リーフは触手を動かしながら問う。

 

「君は私が怖くないのか?」

 

明美はキョトンと首をかしげる。動作がとても愛くるしい。

 

「へーきだよ。だってカスミお姉ちゃんもそうだもん。」

 

そう答えるが、さっき姉の名前は(ひかり)と言っていたような。知り合いに木精霊族がいるのだろうか。

タブレットを見るともう村はすぐそこだ。

だが、リーフは足を止めた。明美はこちらを見ているが、今は気にしていない。リーフは集中して村の方に耳を傾ける。

 

「・・・・・。」

 

「・・・・・ッ!」

 

何やら騒がしい。リーフはタブレットをしまって鞘を持つ。明美を庇いながら茂みに近づいてゆく。

そっと茂みの中から村の様子を伺う。ちなみに顔のすぐ横で明美もリーフの真似をして覗いている。

そこには沢山の人間が跪いていた。何事かと目線を動かすと、少々肉の付いた木精霊かがいた。後ろには豚の姿をした二足歩行の生物が三体待機している。

リーフには見覚えがあった。ファンタジーでお馴染みの豚人(オーク)だ。リトビにも獣人の話を聞いた事があったため間違いない。

すると、跪く人々の中で一人だけ立っている人間がいる事に気付く。

プラチナブロンドのショートヘアー、青い瞳の外国人のようだ。着ている服は村娘のような格好。

 

「お姉ちゃん!」

 

隣の明美は声をあげる。どうやら、今木精霊の前で何か言っている人が明美の姉であるらしい。

いや、違うだろとリーフは思わずにはいられなかった。明美はどう見ても日本人だが、対する姉と顔立ちも異なる。

 

「お願い!お姉ちゃんを助けて!」

 

涙目になりながら、お願いしてくれ明美に思わずたじろぐ。しかし、自ら厄介事に足を突っ込むのは・・・

そう考えている内に明美の姉は連れて行かれそうになっている。そして、リーフは覚悟を決めた。

 

「君はここで待っていろ。」

 

リーフは音を立てずに茂みから素早く飛び出す。すでに姉は馬車に連れ込まれる寸前であった。

リーフは触手を伸ばし、右側の豚人(オーク)に狙いを定める。勢いよく鞭の如く空気を切り触手は豚人(オーク)の脇腹にクリーンヒットする。見事豚人(オーク)は弾き飛び、打ち付けられたところを押さえながら蹲る。

攻撃した事で村人全員の視線が向けられる。ほとんどの村人がリーフを見て驚き、口をぽかーんと開けていた。

沈黙を破ったのは、怒りの形相をした木精霊であった。

 

「貴様、何者だ!」

 

「リーフ・・・。」

 

木精霊の男はリーフを物色するように、視線を向けてくる。やがて、ニヤリと下劣な笑いを浮かべ言葉を放つ。

 

「私は、中位木精霊(アルラウネ)のエルオン・ナトルクス。リーフと言ったか、私に付いては来ないか?」

 

急に何を言い出したんだ?とリーフは思う。さらにエルオンは続ける。

 

「それ相応の立場を与えよう。もし答えぬならば、強引にでも連れてゆくぞ。」

 

何故だろう、この沸き上がる不快感は、確か何処かで。

 

「・・・返答なしか、おい!豚人(オーク)共、いつまで仕事をさぼっている。早くこいつを捕らえろ。」

 

エルオンの言葉にしぶしぶ従いながら、三人の豚人(オーク)はリーフに立ちはだかる。

それと同時にリーフはいつでも抜刀出来るように気を引き締める。そして尋ねた。

 

「お前達、一体何者なんだ?」

 

すると、豚人(オーク)の三人は笑うと、武器を構え名乗り始める。

 

「オレの名は、長男のポーク!」

 

「次男のカツ!」

 

「三男のカクニだブー!」

 

「三人揃って、傭兵豚人(オーク)三兄弟!!」

 

豚人(オーク)の三人は戦隊ヒーローのようなポーズをとる。

・・・なぜだろう、三人の名前を聞いて無性に豚肉料理が食べたくなってくるのは。洞窟にいた頃は、ほとんどが野菜や魚、芋ばかりだったからな~、兎見つけた事があったけど、リトビがいたから食べれなかったし。

そう湧き出る涎を我慢していると、豚人(オーク)達は動かないリーフに一斉に飛びかかる。

 

「悪く思うな、こいつも命令なんでね。」

 

長男ポークがそう言うが、リーフは別の事を考えている。

ーーー動きが遅すぎる。

リーフは知らないだろうが、あの三人はこの世界でも相当の実力者なのだ。今までそんな三人からリーフは修行を受けていた。当然ながらリーフの身体能力は本来の中位木精霊(アルラウネ)よりも格段に上であるのだ。

しかし、だからと言って攻撃をさせる気はない。リーフは三人が認識できないほどの速さで背後に回り、豚人(オーク)の意識を刈り取る。

気絶した豚人(オーク)達は、バタバタと倒れる。

 

「なっ!?」

 

豚人(オーク)達が倒れ伏すのを見たエルオンは信じられなかった。

リーフは残ったエルオンを睨み付ける。しかし、高圧的な態度は一切崩していない。

 

「くそが!貴様、私に手を出してみろ!」

 

愚かな奴の言うセリフだな。しかし、先程の不快感は消える事なくこびりついている。

 

()()()()に私に楯突きおって!」

 

その一言がリーフの怒りを目覚めさせた。

陸道は女性に間違えられる事が、この世で最も嫌っていた。

かつて陸道は中学生時代、部活の罰ゲームで女装して町を歩いていた。元から長い髪と声、部員の本格的なメイクでかなりの美少女だった。その時声少しやんちゃな男達が声をかけてきたのだ。

その男集団は陸道を人気のない所に誘い、乱暴されかけた。結果的に男として再起不能にして助かったものの、その時の恐怖と男達の視線は今でも脳裏に焼き付いている。

そんな思い出したくもない記憶を呼び覚まされた事でリーフはすでに我を忘れかけている。

リーフの周りだけが、絶対零度になったようであった。村人達は様子がおかしい事に気付き始め、その場から遠ざかろうとしているが、エルオンは気付いた様子は一切ない。それどころか、リーフをさらに貶す言葉を言い放っている。

 

「おい・・・。」

 

エルオンは急に言葉を遮られた事でリーフを睨み付けるが、対するリーフはこれまで出した事のないほどの殺気が籠った目をエルオンに向ける。

さすがに気付いたが、すでに時遅い。

 

 

 

「俺は男だーーーーーーーー!!!」

 

 

 

リーフは力任せに二本の触手をエルオンに叩きつける。衝撃によって吹き飛ばされたエルオンは馬車の中で激突する。

すぐ様リーフは刀を抜き、歩き出す。村人達は恐怖から逃れようとリーフに道を開けていく。その様子はモーゼが海を割るかの如くであった。

しかし、エルオンを乗せた馬車は動き始めた。異変に気付いた御者が身の危険を感じ逃げる準備をしていたのだ。

リーフは気付き駆け出すが、馬車は門をくぐり抜け逃げ去ってゆく。

リーフは袖からクナイを取り出し投擲するも、馬車の後ろの窓ガラスを割っただけであった。

 

「逃げられたか。」

 

刀を鞘に仕舞いながら呟く。

横で腰を抜かしている明美の姉を見る。しかし、目が合った瞬間ひどく怯え、後ろに下がろうとする。周りの村人達全員が同じような表情を浮かべている。

怖がらせ過ぎたかと、リーフは頭を抱える。昔から普段はおとなしいが、怒ると手がつけられないと言われていた。失敗だな、第一印象最悪じゃないか。

いや、それよりも。

 

「あの・・・、明美ちゃんのお姉さんはあなたですか?」

 

なるべく優しく声をかける。すると、彼女は驚いた表情を浮かべる。そして恐怖を忘れリーフに掴みかかってくる。

 

「妹を・・・、明美をご存じなんですか!?」

 

目に涙を溜めながらそう言い寄ってきた。改めて顔を見ても、明美とは血が繋がっているようには見えない。

それよりも、今は妹と会わせるべきか。

 

「少し待ってください。」

 

リーフは、先程出てきた茂みに近づいてゆく。自分の怒り狂った姿を見て逃げていないだろうかと考えながら。

茂みに頭を突っ込み中を確かめる、そこには明美が最初と変わらずそこで純粋な曇りない瞳をこちらに向けて待っていた。

リーフは明美の手をとって茂みから出す。そして、姉と妹の目が合った。

 

「明美!!」

 

「お姉ちゃん!」

 

姉妹は走り出した。そして互いに涙を流しながら抱き合う。

 

「心配したんだからっ!!」

 

「ごめんなさい。」

 

感動的な光景をリーフは離れて見ていた。

 

(良かった。)

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