精霊転生 ~転生したけど崩壊した現代でした~   作:緒方 ラキア

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1話「転生」

2149年 ネオ東京

 

日本はかつてないほどの発展を遂げていた。

21世紀末に発表された『宇宙エレベーター計画』によって、日本は世界で唯一宇宙エレベーターを完成させた。

さらに衛星上に張り巡らした太陽光パネルにより、日本はエネルギーを自給することができ、さらにそのエネルギーを輸出することで莫大な利益を得た。

これにより、日本はどの国よりも発展し国を豊かにしていった。

 

そして豊かになるにつれ、日本は変わっていった。

 

まず、自衛隊は解体され新たに『国防軍』が結成された。これは他国からの侵略行為に対抗するための思惑が働いていた。

また、サイバー攻撃に特化した防衛コンピューターシステムが開発され自国の情報を独占し、決して情報を漏洩させることはなかった。

実際に他国からの宇宙エレベーターにサイバー攻撃された例が多くあっため、極秘データや開発データは一部の人間しか公開されなかった。

 

だが、決していい事ばかりではなかった。

大きな問題になったのが富裕層と貧困層の格差が生まれた事だ。

宇宙エレベーター計画の成功により、計画に参加した大手企業たちが業界を支配し利益を独占するようになったからだ。

それによって今までは違法であった労働基準が大幅に楽観視されるようになり、どこの企業もブラックなものへと変わっていった。

 

さらに、その間に多くの自然が破壊されていった。

大地が渇き砂漠が広がり続け、南極と北極の面積は減り、海面上昇でいくつもの国が海に沈んだ。

それでも人間は止まらなかった。

自ら滅びの道を進みながら。

 

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ネオ東京のとある大学

 

ここは植物の研究が行われている場所。

だが、ほとんどの研究は人間にとって都合のいい品種を作り出すための研究であった。

 

そんな場所で、ある部屋だけは変わっていた。

 

第8研究室

 

もはや本来の研究目的のためではなく、他の研究室の資料や本、また本来必要のないものまで溢れていた。

資料は床に散乱し足の踏み場がなく、本は棚に入りきらないものは山積みにされあらゆる所に置かれていた。

第三者が見れば、まず間違いなくごみ屋敷と同等だと言えるほどである。

 

そんな場所で一人パソコンとにらめっこしている人がいた。

少し大きな白衣を羽織り、前髪が長く目が見えない。これといった特徴もないただの根暗な大学三年生。

 

小林 陸道(こばやし りくみち) である。

 

彼はいつもここにいて、研究を一人で行っている。

この場合は他の研究室とは離れていて、ほとんど人は訪れない。ボッチや秘密の話、リア充どもが隠れてイチャイチャするのにはもってこいの場所だ。

 

そんな場所に足音が近づいてくる。

 

足音は部屋の扉の前で止まった。

そして、ノックもしないで扉は開かれた。

驚いた陸道は思わず立ち上がり振り向こうとするが、落ちていたレポート用紙を踏み、そのまま見事に転び後頭部を打ち付けた。

 

「何やっているのよ。・・・まったく。」

 

「何するんだ、桜!」

 

染井 (そめい さくら) この大学で1位、2位を争うほどの美少女であり、アイドル的な存在となっている人物である。

学内ではファンクラブまで結成され、町を歩けば誰もが振り返り、芸能事務所の人からスカウトされる。

そんな事が日常となっているほどの有名人だ。

 

いつも一人でいる陸道とは何の接点もないように見えるが、

 

「そろそろ帰りましょう。」

 

そう、彼と彼女は幼馴染である。

元々は家が隣同士で家族付き合いがあったのだが、彼女の両親が亡くなってからは行き場をなくした彼女を陸道の両親が引き取って、今では一緒に暮らしている。

もちろんこのことは秘密にしている。

もし、バレたならば学内の男子の嫉妬で殺される。

 

「わかった。」

 

陸道はパソコンを閉じ、帰宅の準備を始めた。

桜にはどうしても頭が上がらないからだ。

 

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夕日に照らされるアスファルトの道を二人は歩く。

駅までの道を互いの研究の成果や友人の事などを話をしながら歩く。

 

「そういえば、何でわざわざ俺のとこに来たんだ?先に帰っていいって言ったのに。」

 

ふと思ったことを口にしたのだが、桜は頬を染め、口調がとぎれとぎれになりながら言う。

 

「あ・・・。えっと・・・。い、一緒に帰りたかったかなぁ~て、だって今日の講義は変更になってする事なかったし、どうせあなたも暇なんだろうな~って思ったし?たまには昔みたいにいいかな~って。」

 

はっきり言って、鈍い自分でもわかるぐらいバレバレである。

幼い頃から一緒にいるからさすがの自分でもわかる。

だが、

 

「そうか・・・。」

 

陸道は彼女の気持ちに気付いていながら知らないフリをしていた。

改めて意識すると、恥ずかしかったからだ。

 

そう、陸道と桜は両思いである。

だが、互いに微妙な距離感のままで時は過ぎ、現在に至る。

 

気がつくと、もう駅の前にある信号機の前まで来ていた。

 

「ほら、早く行こ。」

 

彼女は足早に渡りきった。

自分も渡ろうとするが、信号は変わってしまった。

彼女はどうやら向こう側で待ってくれるようだ。

 

すると、右側から大きな衝撃音がした。

何事かと横を見れば、自分の前にトラックが迫ってきたのだ。

 

そして、トラックはそのまま陸道を巻き込んだ。

 

・・・体が動かせない。

何が起こったのか理解できない。

考えようとするが、自分の体から何かが失われていく感覚が彼を襲う。

桜が泣きながらこちらに駆け寄って来る。

そして、陸道は自分が血の海の中にいることに気付いた。

それを理解した瞬間、急激に陸道の意識は闇に包まれていった。

 

「陸くん!!」

 

彼女の声は、もう届かなかった。

 

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・・・ここはどこだろうか。

陸道の意識は闇が永遠と続く、虚無の中にいた。

何もないこの場所で、彼は自分の身に起こったことを思い出した。

 

(ここで消えるのか・・・。)

 

すると、自分の体が闇に包まれていく。

まるで陸道の存在を消そうとしているようだ。

 

(迷惑かけたんだろうな。)

 

こここにはいない家族のことを思い出していた。

両親には、まだ何の親孝行をしてあげられなかった。

妹とは、もっと楽しく話をしたかった。

桜、こんなことになるならもっと早く思いを伝えるんだった。

 

彼は目を閉じ、このまま消えようとする。

 

だが、

 

ふと声が聞こえた。

 

『わた・・・力・・を・・・・この・の・・・授け・・・・・。』

 

(誰の声だろうか?)

 

『うむ・・・、こ・・・・なら・・世界・・・すく・・・。』

 

(二人いるのか?)

 

目を開くと、まばゆい光をまとった二人の人陰がいた。

だが、顔はどちらとも光がまぶしくてよく見えない。

 

すると、陸道に手をさしのべた。

陸道は、手を伸ばしてそれを掴んだ。

その手は、まるで両親と同じような優しさと強さがあった。

 

『あなたに託します。』

 

『この世界を任せた。』

 

最後の言葉は、はっきりと聞こえた。

その瞬間、彼の意識は闇の中から浮上した。

 

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