精霊転生 ~転生したけど崩壊した現代でした~   作:緒方 ラキア

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3話「遭遇」

あれから一週間が経った。

彼は森の中にいた。

陸道はこの世界を謳歌していた。

ああ、本来のあるべき自然の姿、実に美しい。

これがかつて人類が失ったかけがえのないもの、実に素晴らしい。

本当に人間はこの自然を何故壊したのだろうか。

 

だが、楽しいことよりも不可解なことが多かった。

 

まず、自分の体だ。顔は何処から見ても女性にしか見えない。

しかし、それよりもうなじから生えている緑色の触手だ。これは自分の思い通りに動く。伸びろと考えると伸びるし、伸縮自在だ。離れたところにあるものも楽々に取ることができた。鞭のように使うこともできた。現在触手は髪を止める紐として活用している。ポニーテールに大きな紐リボンが付いているみたいで女の子らしさがアップしていた。

 

次に、今いるこの森だ。自分がどれ程眠っていたのかわからない。あの病院の近くに何か手掛かりはないかと調べ回ったけども、何も見つけられずにいた。

森が出来るまでは長い時間がかかる。人間が植樹した場合は約50年、自然の場合は恵まれた環境で最低数百年以上、通常ならば数千年かかると言われる。

この様子を見る限り、植樹された形跡はない。

つまり、最低でも数百年ほど眠っていたこととなる。

だが、問題はそこじゃない。いや、問題であるのだが。

ネオ東京が森に包まれるまで最低でも数百年かかった、ビルなどの建物は人が整備しなければすぐにガタがきてしまう。

しかし、周りの建物は数百年経ったようには見えない。

 

つまり、森が出来るまでの時間と建物の倒壊具合が合わないのだ。

 

他にも、ここいたはずの人々はどこに消えたのか?何故この森に包まれたのか?自分の家族はどうなったのか?

考えれば考えるほど疑問が増えていく。

 

これから自分は何をすべきか。

 

自分がいったいどれ程眠っていたのかわからない。

しかし、家族を探そうと考えていた。

だが下手すれば数百年経っていて、もう生きていないかもしれない。たとえそうだったとしても、家族がどうなったのかを知りたい。生きているなら会いたい。でも自分だとわかってくれるだろうか?

不安と希望を自分の胸に抱きながら、彼はまた歩き始めた。

 

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先程の場所からかなり移動したはずなのに、景色は相変わらず樹木が広がっているだけた。

この森は何処まで広がっているのか?

そう考えていると、不意に奥から物音が聞こえた。

 

彼はそっと音の聞こえた方へ近づき、誰かいるのだろうかと樹木の影から覗く。

人なら声をかけて情報を入手し、危険動物ならばその場を気づかれずに立ち去ろうとしていたが、目の前にいたのはその思考を停止させた。

 

そこには、見たことのないバケモノがいた。

 

体長5メートルほどあり、肌の色はどす黒く、血走った目が8つある。頭から角が生えており、体は細いにも関わらず腹は大きく膨れている。まるで餓鬼のような姿だ。

バケモノはまさに食事中であった。しかし、食べているものはどう見ても人であった。すでに息をしていない者、上半身しかない者、つまり死体を食べているのだ。

その光景に思わず目を逸らした。何だあれは。

バケモノが死体を咀嚼する音が聞こえる。見つかればおしまいだ。反射的に自分もああなると理解した。

ここに居ては危険だと思い、その場から気づかれずに立ち去ろうとするが・・・

 

ポキッ

 

彼の踏み出した一歩は足元に落ちていた小枝を見事に踏んだ。その音はやけに周りに響いた。

恐る恐る後ろを振り向くと、バケモノは手を止め、こちらを見ていた。

バケモノと目が合う。

するとバケモノは獲物を見つけたとばかりに顔を歪めた。

 

(ヤバい・・・。)

 

そう思った瞬間、バケモノは持っていた死体を放り投げ飛びかかり、陸道は荷物をすべて捨てて走り出した。

 

命をかけた鬼ごっこが始まった。

 

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「だぁぁぁぁぁぁーーーーーー‼」

 

走る、走る、走る。彼は樹木を避けながら必死に走り続ける。捕まれば殺されあのバケモノの腹の中だ。

しかし、図体の大きさのわりにかなり速い。森の中でなければすぐに追いつかれていただろう。

だが、走り続けていると急に視界が広がった。森を抜けたわけではない。

道だ。舗装されているわけではないのだが何か通った跡がある。

しかし、状況は最悪になった。

バケモノは障害物がなくなって本来のスピードで迫ってくる。

陸道はさらにスピードを上げようとするが、石に躓いた。バランスを崩しその場で止まってしまったのだ。

だが、バケモノが待ってくれる訳がない。

これがチャンスと見なしたバケモノは、口を大きく開け、そのまま食らい付こうと飛びかかってきた。

喰われると思った瞬間、陸道は地面を蹴りおもいっきり上へ・・・

 

20メートルほどの高さまで飛び上がった。

 

(はぁ!?)

 

飛び上がった本人の方が驚いていた。思わず周りを見渡す。見事な大森林が広がっている。

 

(ん?)

 

ふと、大森林の一画がやけに樹木の生えていない場所が見えた。よく確かめようとするが、不意に体が重く感じ、浮遊感がなくなった。

重力に引かれ先程の場所に落下しつつあった。もちろん下には、獲物を見失ったバケモノが自分を探していた。

 

だが、陸道は落下しながら体勢を整え、右足を突き出す。

そしてそのままバケモノの後頭部に・・・

 

右足が見事にめり込んだ。

 

重力によって落下するだけであったものの、気付かなかったバケモノにその不意討ちは効果絶大であった。渾身の一撃はバケモノの顔面が地面にめり込むほどであった。

その隙に陸道は先程見えた景色の方へ走り出した。

 

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着いた場所には翼の折れた戦闘機がいくつもある滑走路であった。

 

ネオ東京国防軍基地

 

ネオ東京に創られた新たな基地であった。

世界的に目覚ましい発展を遂げた日本は自衛隊を廃止して国防軍にしたのだ。

最先端の科学技術が集められ、選ばれたエリート達が国のために働いていたことで有名だった。

しかし、現在は他の見てきた建物と同じように朽ち果てていた。

陸道はシャッターが壊れて開いたままの倉庫の中に入った。中はひどい有り様であった。あらゆる機械のパーツや隊員の武器、その他に組み立て中の戦闘機の残骸が足の踏み場がないほど床一面に広がっていた。

だけど、これで少しはやり過ごせると安心した直後。

 

後ろのシャッターが吹き飛ばされる音が響いた。

 

振り向くともう目の前にそいつはいた。バケモノは右腕を振り上げ、陸道を凪ぎ払った。腕は彼の左腕に当たり、そのまま倉庫の壁に打ち付けられた。

 

陸道は立ち上がろうとするが、左腕に激痛が走る。先程の一撃によって骨が折れたのだ。感じたことのない痛みに左腕を抑えながら壁にもたれ掛かってしまった。

ふと見ると、バケモノは顔を歪めながらこちらに迫る。もう逃げ場はない。

陸道は何かないかと床を手探りで探す。すると何かを掴んだ。掴んだのは斧であった。

だが、掴んだ瞬間にバケモノは飛びかかってきた。

陸道はバケモノを睨み付ける。ここで死んでたまるかと、掴んだ斧を全力で振るう。

 

一際大きな音が倉庫に響いた。

 

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倉庫の中は蓄積したホコリが舞い上がり視界は0。

 

その中、陸道は生きていた。

 

しかし、今起こったことが信じられなかった。

目の前には頭部を失ったバケモノの死体があった。陸道の全力で振るった斧はバケモノの左側頭部に突き刺さった。だが、その一撃の勢いは止まらず首の筋肉を引きちぎり、頭を持っていた斧と共に吹き飛ばしたのだ。

何だこの力は?本当に自分は何なのか?

明らかに人間ではあり得ない力だ。

 

陸道は倉庫から出た。左腕を抑えながら歩くけれども足取りがおぼつかない。

すると彼は倒れ込んでしまった。頭を抑えると、頭から血が流れていた。

そしてそのまま陸道は意識を失った。

 

森の中から二人の影がこちらを見ていることに気づかないまま・・・

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