あけましておめでとうございます!
ペースが上がると言いつつ、課題に追われて上がらなかった狼々です(´・ω・`)
ついこの間、投稿から一周年を迎えまして。
同日、私の作品「東方魂恋録」の二期も投稿を始めまして。
さらに同日、被お気に入りユーザーが100人に到達いたしました。
色々あったぜえ(*´ω`*)
ちょっとずつ、書いていきたい。
新作書くのが愚かしいペースだけど、一作品終わりそうだから入れ替わりみたいな感じになるかな。
では、本編どうぞ!
結局、心のどこかで諦めきれず、幼女を探してみたものの、いなかったようだ。
どんな容姿かもわからなかったが、皆曰く、「見ればわかる」とのこと。
考えてみると、側近のメイドがいるのだ。この場所に黒白の格好など、嫌でも目に付くだろう。
今は紫と魔理沙に会ったときと同じ場所で、ふと覗く満月に酔いしれ、飲み物を手に取って口にしている。
「――がはぁっ!? な、何だこれ!」
「お酒ですよ、お酒。アルコールです」
どこかから現れた射命丸が、飲み物の正体をあっさりと告げる。
喉が焼けるような感覚が迸り、刺激というよりも、そのまま痛みに似たものが駆け巡る。
「アルコールって、俺はまだ十八だぞ!」
「それは昨日聞きました。ここは飲酒に対して特に法が定まっているわけではないので、未成年でも飲酒できるんですよ」
「だからって、人の飲み物を勝手に酒にすり替える奴がいるのか?」
「いるじゃないですか、ここに」
「皮肉だよ、この雌烏が!」
常識的に考えて、あり得ない。
俺に飲酒の経験がないことは、容易に想像が付くだろうに。
「早めに経験しておくものですよ、何でも。慣れです、慣れ慣れ。そうそう」
「この生涯では飲まない予定だから結構。早く俺の飲み物返しやがれ」
「あのオレンジジュースですか? あぁ、私が飲んじゃいました」
「……本当に焼き鳥にして食ってやろうかと検討中だぞ」
今回に限っては、そこまで大案件ではない。
が、以降もこのようなふざけが仕掛けられるのならば、黙っておけない。
真剣に、こいつは常識が欠落しているのでは、と感じ始める。
大体、他人が飲んだ飲み物に口をつけるという行為に対して、嫌悪感や抵抗を覚えないのだろうか。
というよりも、思いの外オレンジジュースが美味しかった。
宴会料理に爽やかな酸味の効いた飲み物が、案外悪くなかったのだ。
「あ、ちゃんと飲んでくださいね。食べ物を粗末にするのはダメですよ?」
「酒が好きな奴にこの酒を注いでやるのが、一番粗末にならない方法なんだがどうだろうか」
「何のために注いだかわからなくなるじゃないですか。今更何を言っているんです?」
「てめぇが勝手に注いだんだろうが! 今更とか『俺から注いだ』みたいな言い方するな!」
怒鳴ってから、グラスの中を覗き込む。
色からして、日本酒。オレンジ色では決してない。
こうして見ると、自分が何故、オレンジジュースと日本酒を間違えたのかが不思議に思えてくる。
もう一度射命丸を見るが、わくわくした様子でこちらを見たままだ。
正直言って、この酒をあの烏に容赦なくぶちまけてやりたいが、そんなことをしたら八百万の神々の何とかがどうのこうのなってしまう。
「おい。お前、酒飲めるか。まだ口をつけたわけじゃないぞ」
「いえいえ、ご心配には及びませんよ。こうして自分のお酒も用意していますから。それと、見え見えの嘘をありがとうございます」
「ちょっと待て。嘘どうこうより俺にもそのお猪口を寄越せ。このグラスで日本酒は量的にまずい」
射命丸が傾けるのは、小手先で弄ばれる小さなお猪口。
自分の手元のグラスは、よくある円筒形で、量もそこそこ。
ただ、それは普通のジュースだとか、お茶だとかの「そこそこ」だ。
日本酒となれば、話は別だ。
誰が日本酒を、こんなにバカでかいグラスで飲むんだよ。
砕けた氷が入る小さなやつだったらわかるが、それの軽く二、三倍の容積はある。
「既に注いだ後なんですから、器なんて関係ありませんよ」
「あぁ、まあそれもそうか――とでも言うと思ったかおい。誰が注いだんだよ、これ。おい、誰だと思うよ」
「さぁ? どこかの妖怪の仕業でしょうね」
「はいはい、記憶まですっからかんでガバガバの烏妖怪さんありがとう」
ともあれ、飲まないと話が先に進まない。
こういう時は、一思いに行動した方が最善かつ楽な道だ。
さすがに一気飲みは危ないので、一口だけ仰ぐ。
「……美味しさは感じられないな」
「まぁ、最初ですからね。酔いの感覚は回ってきますか?」
「いや、まだこれだけだからな。気配もない」
「おっ、もう少し飲んでそれが続けば、思っている以上にお酒に強いのかもしれませんね。どうです? 私と一緒に飲みませんか?」
控えめな笑顔で、彼女のお猪口をこちらに差し出す射命丸。
こうしていれば、素直に可愛いものを。
性格面の問題は霊夢ほどではないが、どうしても馬が合いそうにない。
烏なのに馬が合うとは、これいかに。……はぁい!
「……まぁ、別に断る理由もないしな」
「あっ、デレた!」
「ごめんやっぱ断る理由がついさっきできたわ」
「あぁん、そんなあ、つれないですねぇ」
と言いつつ、早速日本酒を飲み下す射命丸。
一秒もせずに、小柄な盃が空になって、底が見えた。
「ほう、中々じゃないか」
「これくらい普通ですよ。飲めないなら、無理して飲まなくていいんですからね? まだまだ未成年のお子様ですからね」
「つくづく口数が多い烏だな。何なら試してみるかよ?」
「私としては、別に、どうだって」
一方は悪戯に、また一方は意地が悪く、口角を釣り上げる。
日本酒を取ってきて、席に着いた後に、器に唇が付けられた。
「その辺りにしておいた方がいいのではないですか?」
「あ~、まぁそうかな。俺としてはまだ大丈夫だが、初めてだしここらで切り上げるか」
かれこれ、数杯に渡ってグラスを持ち上げた気がする。
烏の持つ盃も、数え切れないほどに底を見せては満たされていた。
透明なタンブラーグラスでも、日本酒は飲めるものらしい。
見た目の量が精神的にキツいが、それさえ何とかなれば大した差はないものだ。
「貴方、本当に初めてなんですか? とてもではありませんが、そうは思えないですよ」
「未成年で飲酒しただろって言いたいのか? 残念、法は守っているんだな、これが」
いくら性格や口が悪くとも、違法行為はしていない。
未成年飲酒も、無免許運転も、法に触れることは一切、だ。
……いいや、そういえば。
自分の中で反響する音に、耳を塞ぐことしかできなかった。
嫌悪感から、自分のグラスを地面に叩きつけたくなる。
「……そういうお前も、結構な量を飲んでいるじゃないか。正直に言うが、驚いたぞ」
「ふふっ、中々でしょう? お酒の強さに関しては、自信があるんですよ?」
若干頬が赤らんだ笑顔は、それはもう魅力的だった。
どこか扇情的な自慢顔とは、男の心を揺らしてしまう。
例え妖怪だとしても、可愛らしく美しいものは、そのまま可愛らしく美しいもののようだ。
「で、霊夢と魔理沙と紫の姿が見えないが、三人はどうしたんだ?」
「巫女は皆の方に連れられて、魔法使いさんは既に帰ったかと。紫さんも同じく見つからないので、帰ってしまったと思いますよ」
一方的に捜索を手伝ってもらった挙句に、お礼の一つもできなかった。
せめて一言くらい、言っておきたかったものだ。
次に会うときがあれば、その時までの先回しとしようか。
―*―*―*―*―*―*―
有象無象の境界の先に葬られそうな光の跡を眺めながら、盃を傾ける。
「ねぇ……あの氷裏って男の子、どう思う?」
「どう思う、と言われてもねぇ」
隣で私と夜酒を交わす紫からの質問に、答えあぐねていた。
私の中で一番適切な答えが、中々出せずにいる。
抽象的な物ばかりが思い浮かんでは、相応しくないと消えていくのがわかった。
「さぁ。強いて言うなら、面倒ってことくらいかしら」
「それはどうして?」
「どうして、ってまた言われても……性格が悪いから?」
「本当に、それだけ?」
やけに語調が強く、回答の再確認を促される。
共にした時間が少ないこともあるが、わからない。
彼がどうして面倒だと思うのか、理由がわからないのだ。
「そう、わからない。わからないのよ」
「何よ、そっちもわかっているじゃない」
「わかっていない」という事実がわかっている。
無理解への理解は、執着するまでもなく。
まるで思考を読んだかのような紫の発言に、呆れるしかなかった。
読めていることをわざわざ聞くなど、酒飲みの時間だとはいえ、野暮だ。
一応、神社の縁側で中心部から外れているが、宴会中。今日この時間くらいはゆっくりさせてほしい。
「えぇ。だって、わかるもの。貴方がわからないってことを。霊夢はああいう人種に会ったことがないでしょう?」
「まぁ、言われてみればそんな気もするわね。何となく全体像が掴みづらい、というか……」
「掴みづらいはずよ。あんな能力を持っているのだから」
正直、紫の言葉の意味さえもわからない。
『欺く』能力は、虚偽弾幕のように、オンオフを切り替えるタイプだ。
ただ能力を持っていることと、効果を
私が怪訝そうな顔をしていたのか、紫の口が再び動く。
「霊夢は、気付かないわよね。私だって、本当は気付かなかったからね」
「紫、さっきから何が言いたいの? 言いたいことがあるのなら、はっきりと言えばいいじゃない」
募るイライラに、思わず強く言葉を返してしまった。
こうして勿体ぶる必要など、あるはずがない。
何が好きで、こうも渋るのだろうか。
意識して疑問する前に、口が先に動いてしまったのだ。
「ごめんなさいね。怒らせるつもりは全くないのよ。ただ、ここで話すことを口外しないなら、ね?」
「……そんなに重要なもの、なの?」
「えぇ。
私は無気力に「それ」を眺めるが、見た上ではそこまで特別なものとは思えない。
しかしながら、紫から私の手に渡った「それ」は、紫の話からか、妙な緊迫感をひしひしと感じさせる。
とてもではないが、私に走るピアノ線のような緊張が、嘘だとは思えなかった。
しばらく時間が経って。
「――なるほど、ねぇ。何となくだけどわかったわ」
「それであの子、どんな姿で幻想入りしたと思う? さっき文が氷裏と離れたときに聞いたんだけど、血塗れだったそうよ」
「…………」
境遇、というものは時に残酷で、無慈悲だ。
この時ほど、それを他人の言動で痛感したことはなかった。
そも、自分の行いでさえ後悔することはあっても、痛感することは珍しい方だ。
それを物を通して静観するだけで、これほどまでに。
これほどまでに、知り得るものだったのだろうか。私は、知らなかった。
「……まぁ、私が下手に関与するのはおかしいわ。だって私は、本来知らないはずなんだもの。今まで通り接するわ」
「えぇ、ありがとう。そうしてもらえると、助かるわ」
「ただ、限度ってものは弁えなさいよ。時間は待ってくれないんだから、いつかは正面切って話さないといけない時がくるわ」
弊害というものは、二種類の解決法がある。
一つは、きっぱり向かい合って、その壁を乗り越える。または破壊する方法。
一つは、辿った道をすっぱり諦めて、別の道を探して渡る方法。
後者に至っては、最早「解決法」と言えるのかさえ怪しいところだ。
結局それは逃げでしかなく、問題を先延ばししているに過ぎない。
いつかは再び目の前に立ちはだかって、逃げた自分の過去を酷く恨む日が来てしまうのだから。
「わかっているわよ。その時は、手伝ってもらうわ」
「これを見て『はい見過ごします』、とはさすがに言えないわ、いくら私でも。できる限りは協力するわ」
いつの間にか一杯を飲み干していたので、盃からはそれ以上滴が零れない。
お猪口並々に日本酒を注ぐと、一思いに、一気に飲み下した。
ありがとうございました!
最終更新から一ヶ月経った気がしません。
書き溜めが五話くらいあるので、先に進んだ気分に(´・ω・`)
前書き長かったから、後書きは短くいこうかな。
ではでは!