転生したのでせっかくだから対戦車道をやってみようと思う   作:倒錯した愛

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ついに始まるプラウダ高校vs聖グロリアーナ女学院(&戦車猟兵一名)の練習試合。

使用戦車一覧

聖グロリアーナ女学院

・チャーチルⅦ 1両
・マチルダ 9両

プラウダ高校

・KV-1 2両
・KV-1s 2両
・T-34-76 3両
・T-34-57 3両

聖グロリアーナ相手に容赦ねえ!JS-2がないだけましかも?


練習試合開始!

試合当日、天候はあいにくの曇り空、試合開始まであと2時間というところで、聖グロリアーナ女学院とプラウダ高校の生徒と戦車が試合会場に到着した。

 

プラウダと聖グロリアーナの準備場所はかなり離れているが、戦車は見えてしまう、距離は会話が聞こえない程度、と言ったところか。

 

まあ使用する戦車は事前に資料で配ってあるからバレるも何もないが。

 

続々と戦車が輸送車両から降ろされて行く中、俺は1人フル装備でバイクにまたがって集合がかかるまで、西住の作戦を資料を片手に何度も読み返していた。

 

このバイク、BMW・R75は大洗学園に古くからあった軍用バイクで、ドイツ国防軍や親衛隊が使用していたと聞く『名馬』だ。

 

どうやら10年以上前の大洗学園内の対戦車道と、今は亡き戦車道の練習試合中に大破寸前の状態になり、自動車部に担ぎ込まれたが修理部品が調達できず放ったらかしにしてたら大洗の対戦車道は衰退、戦車道は無くなってしまったのだとか。

 

俺が対戦車道に入部したのを聞いて会長がすぐに自動車部にレストアを依頼したらしく、その都合で多少の予算が削られたが結果として自動車部の協力を得てR75は蘇った。

 

分厚い装甲付きサイドカーには弾薬がたんまり、牽引車の中には対戦車兵器類と爆薬がたんまり、ドライバーは全身白づくめのガスマスクマン、ただの不審者だな。

 

しかしこれで重い対戦車兵器類を持ち運ばずに済む、自動車部万歳。

 

だが気になることがある、10年以上前は調達できないと言っていたパーツはどこから仕入れたんだろうか?もしや作ったんじゃあるまいな?だとしたら自動車部はプロだな。

 

帰ったら自動車部に礼を言わなければな。

 

しっかし本当に寒いな、いつの間にか雪もチラホラ降り始めた、ホッカイロだけじゃまだ肌寒いな。

 

この寒さではヤル気も凍る、だがやらねば、親善目的の練習試合に無理やりねじ込んでもらったのだ、参加者や西住に失礼な真似や無様な戦いぶりはできないし見せられない。

 

しばらくフィールドマップに描かれた図を見ていると、聖グロリアーナ女学院の生徒が2人歩いてきた。

 

2人とも聖グロリアーナ女学院特有の赤い制服を着用しており、歩き方がとても優雅が、さすがは日本きってのお嬢様学校。

 

そして、日本きってのイギリスリスペクト高校でもある。

 

「御機嫌よう、ダージリンと申します、こちらはオレンジペコ」

 

「御機嫌よう、オレンジペコです」

 

「ジョージ・カーライルさんですわね?」

 

名乗ってからの一礼…………優雅だ、まるで窓辺で紅茶を嗜む貴婦人のようだ。

 

だが日本人だ、金髪碧眼だが日本生まれだ、驚きだな。

 

「ガスマスク越しからで申し訳ない、私がジョージ・カーライルだ、ご紹介に預かり光栄ですダージリンさん、オレンジペコさん」

 

「あら、こちらこそ光栄ですわ、イギリスの方とお会い出来、話ができるのですから」

 

「ははは、恐縮だな、今日の試合はよろしく頼む」

 

「えぇ、こちらこそ」

 

聞けばこの試合、内密ではあるが次期隊長であるダージリンの向上の為に前隊長が企画したものなのだとか、そこに丁度いいからとうちの会長が割って入った、と。

 

「それで…………ダージリンさん、そちらの作戦は?」

 

「聖グロリアーナの戦車は雪上での長距離移動は困難、少々優雅さに欠けますが、試合開始地点からすぐの村にて陣を引き、籠城戦を展開しますわ」

 

西住の予想通りの作戦できたか、説明の手間が省けて助かる。

 

「こっちの作戦は、籠城する聖グロリアーナの戦車目掛けて突っ込んでくるプラウダの戦車を、フィールド設置車両のアエロサンで後方に迂回して攻撃、足を奪うことだ」

 

「足の止まった戦車を私たちが撃破する……………そういうことですわね?」

 

「Exactly、プラウダには強力な装甲を持つKVや機動力のあるT-34がいるが、足さえ止めれば弱点は狙い放題、余裕があればターレットリングも潰しておくが………あいにく、いくら視界が悪いプラウダの戦車でも、後ろから近づくのは怖いんでね、期待はしないで欲しい」

 

「機動力を封じてくださるだけでも十分ですわ………もちろん、ターレットリングやペリスコープを狙撃してもらってもよろしくてよ?」

 

「予備も含めて全部撃ち砕い良いのかな?」

 

「As you like」

 

いい笑顔で言ってくれる…………ま、ペリスコープの狙撃くらいは余裕なんだが、問題は弾が足りるかどうかだ。

 

ラハティは20発しかないから履帯破壊用にとっておくとして、ボーイズのほうが掻き集めた中で使えそうなのが50発、もちろん全部使うと予算の都合で購入できないかもしれないため、今回は30発を持ってきている。

 

つまり、最大で30個のペリスコープを破壊可能なわけだが、そううまくいくわけがない、今回は全部で10両、1両につき2〜3程度のペリスコープがあるとすればすぐにボーイズは弾切れだ。

 

たとえできたとしても、ペリスコープは交換できるため、躍起になって潰しても無意味になることの方が多い。

 

「さすがに弾が足りない、脅威になりそうな戦車の妨害に使う、必要なら無線を寄越してくれ、出来る限り支援する、周波は………これだ」

 

俺の携行型無線機の周波をメモ書きをしてダージリンに渡す。

 

「全車両の無線機への登録と、車長に敵車両の行動阻止攻撃の要請に関する話をしておきますわ」

 

「あまり期待はしないように、とも伝えておいて欲しい」

 

「謙虚な殿方ですこと…………わかりましたわ、車長のみなさんには『積極的に』支援要請をするように伝えます」

 

「……………なかなかいじわるじゃないか」

 

「いじわるな女性はお嫌いですか?」

 

「そんなことはない、とても好みだ」

 

今は一般人レベルの私にしてみれば、そういう異性のほうが面白いからな。

 

「あら…………いけないお方、試合の前に口説かないでくださいます?」

 

そういうところだよダージリン、言いながらも楽しそうに笑っているじゃないか。

 

「怒らせてしまったかな?美しいお嬢さん?イギリスにもここまで綺麗な女性はいなかったものでね、つい………申し訳なかったよ」

 

「ふふふ…………ええ、いいですわ、元より怒っていませんもの」

 

だろうな。

 

あとオレンジペコの顔が真っ赤なのだが、風邪でも引いたのか?こんな寒いのにミニスカートなのだから引いても不思議じゃない。

 

「そろそろ戦車のエンジンをかけてきますわ、ジョージさんも早く準備したほうがよろしいですわよ?」

 

もうそんな時間か。

 

「お気遣いありがとう、ダージリンさん、ではお言葉に甘えて、備品の整理をさせてもらおう」

 

「えぇ、またあとで」

 

一度分かれ、バイクを格納してブツを持って集合地点へ。

 

集合地点の周囲には壁が設置され、プラウダ側からは様子を伺うことはできないようになっている。

 

聖グロリアーナ女学院の生徒の少し後ろから作戦説明を見る。

 

「私たちの戦車では雪上を優雅に走行できても、相手には機動力で負けてしまいますわ、そこで、スタート地点すぐの村の中心にて防御陣地を引きますわ、ペコ」

 

「はい、装甲の厚いチャーチルを中心に、死角になる場所や建物の角にマチルダを展開、内側に引き込んでマチルダで撃破、KV重戦車はマチルダの主砲では厳しいのでチャーチルが相手をします」

 

中心の村のある方向に向けて村の中の建物の角に扇状にマチルダを配置し、チャーチルに飛びついてきた戦車を背面から攻撃して撃破するわけだな。

 

おそらくダージリンはチャーチルの車長、自車を囮にするとは、またなんとも豪胆な手に出たな。

 

確かにチャーチル、それもマーク7ならば、正面152mmの重装甲でプラウダの砲弾は全て弾ける、さらに側面は95mmと、側面だけでもティーガーの正面並みにある、実に頼もしい。

 

しかしそれでも車体後部は51mmと不安が残る、プラウダのどの車両でも垂直ならば貫通は容易なのだ。

 

「ダージリン様、それでは回り込まれたときの対処ができませんわ」

 

「それは、彼の方が警戒して逐一連絡をしてくれますわ」

 

ダージリンはそう言って俺を見据えた、ダージリンの視線を追って他の生徒も私を見て困惑の表情を浮かべている。

 

これは自己紹介の流れだな。

 

「イギリスから留学してきた、大洗学園対戦車道所属のジョージ・カーライルだ、聖グロリアーナ女学院側にて戦車猟兵として参加させてもらう、よろしく」

 

「彼は私たちの後方警戒とプラウダの戦車の行動を阻害し撹乱する役割ですわ」

 

「厳しい状況にある時は無線をかけてくれ、できることはプラウダの戦車の履帯やペリスコープの破壊と、紅茶が沸騰するくらいにエンジンを燃やしてやることくらいだ、過度な期待はしないで欲しい」

 

「私たちが村に戦車を引き込み、彼が動きを止め、私たちが的確に・冷静に撃破するのですわ………他に質問はありまして?」

 

納得した表情でうなづく生徒たち、ダージリンは素質があるな。

 

「では、各員搭乗、スタート地点まで移動しますわよ」

 

「ダージリン、すまないが、私を上に乗せてもらっても良いかな?」

 

「よろしくてよ、座席はありませんが、我が校の戦車はどんな運転をしても、一滴も紅茶をこぼしませんのよ」

 

「乗り心地に期待させてもらおう」

 

少なくとも小柄で揺れに揺れるT-34にタンクデサントするよりは、全長が長くてサスペンションの性能も高いチャーチルのほうが快適だろうことは明白だ。

 

「チャーチルの操縦手と、不整地走破性の高さに期待しよう」

 

チャーチルの車体後部上面に飛び乗って座る、全長が長いと座りやすくて良い、砲塔の高さも相まってここから対戦車ライフルを撃つのも面白そうだ。

 

350馬力のトルクはあるが非力なエンジンを回しながら、チャーチルは走り出した。

 

チャーチルを先頭にマチルダがついてくるという、なんとも可愛らしい、アヒルの親子の行進のようである。

 

車体の揺れに合わせて揺れる、ボーイズ対戦車ライフルに付けたボコストラップ。

 

星のマークがついたM1ヘルメットを被り、M1カービンを持った何処と無くベトナムチックなボコである。

 

ぼんやり見ているとふと思う、ベトナムチックなのは負けたからだな……………なんてことを考えているうちはまだまだ余裕なのだろう。

 

と、装甲板入りポケットの中でケータイが震えた、取り出してみるメールが一件あった。

 

開いてみると、西住からも応援メールだった。

 

『来たよ!応援してるよ!頑張って!(ボコのスタンプ)』

 

ボコのスタンプの入った西住らしい応援メール、ジーンと胸にしみる感動、即座にお返しメールを送信する。

 

『西住が応援してくれるなら、俺は絶対に勝つよ』

 

こういうのを日本ではこう言うんだったか………【負ける気がしない】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタート地点に着き、合図を待つ、あと数秒…………3、2、1………。

 

『試合、開始!』

 

『全車両作戦通りの位置へ展開』

 

アナウンスとほぼ同時にダージリンの無線がとんだ。

 

村に入ったマチルダ9両は地図上の予定の位置に着き、そこで2人を降ろしてシャベルで白い装甲板に周囲の雪をかけて偽装し始めた。

 

チャーチルも村の中心の広場で停車するとオレンジペコともう1人誰かが降りて車体についているシャベルを取り外した。

 

「私も手伝おうか?」

 

「いいえ、ここは大丈夫ですわ、まだ時間がありますので………ところでジョージさん、ひとつお願いよろしいでしょうか?」

 

チャーチルから飛び降りてオレンジペコに聞いてみるも、砲塔から身を乗り出したダージリンに阻まれる。

 

「お願い?」

 

「はい、知ってはいると思いますが、プラウダ高校のT-34は快速です、ですがこの村に設置されているスノーモービルはそれ以上の速度が出ますわ」

 

「…………なるほど、中心の村に行って偵察をしてこいと言うことかな?」

 

「しばらくはそこで隠れて動向を監視して欲しいのですわ、機を見て妨害もお願いしますわ」

 

「わかった、嫌がらせをするとしよう」

 

プラウダのアカの戦車に雪上で犬掻きをする無様を晒させてやる。

 

地図を見ながらアエロサンを探して乗車、見た目は超簡易的なスノーモービル、機体後部についた推進用のプロペラと小型エンジン、全体的に薄い装甲、上半身が隠れないスーパーオープントップ。

 

DP機銃すら防げるか怪しいぞこれは………どうせ被弾は考えないつもりだから別にいいが、当時の人間は移動するたびに風が当たって寒かったのではなかろうか?

 

今の俺はガスマスクを付けているから感じないが、速度計を見ると40kmで走っている、雪上でこれほどの快速とは、西住の読みは見事に当たっている、これなら相手より早く中央の村に着きそうだ。

 

…………そういえば、JS、SUシリーズ全般に言えることだが、びっくりするほど搭乗員軽視の設計だったらしいな、狭いし脱出ハッチが少ないし、搭乗員が集中配置されているから運が悪いと一撃で搭乗員はミンチ、戦闘不能になるのだとか。

 

かと言って、Ⅲ号戦車くらい脱出ハッチをつければいいってもんじゃないし、ブラックプリンスみたく超重装甲にすればいいわけでもないのだ。

 

そう考えると、どれだけT-34、特に3人乗り砲塔の85はバランスのとれた戦車だったと言えるだろう。

 

まあ、米軍のM4にはちょいと及ばないが…………主に居住性とかな。

 

さて、村が見えて来た、ちょうどいい暗さだ、プラウダがどの辺まで来てるかこのまま向こう側を走ってみよう。

 

ふむ……ふむ…………T-34-76とT-34駆逐を先頭にKV重戦車が来てるな。

 

聖グロリアーナの攻撃が無いことを踏んで速さを取ったわけか、確かに、サイドスカート付きで走ると泥や雪が詰まってしまうほど足回りが悪いとマチルダや、非力で鈍足なチャーチルではT-34より先に中央の村に着くのは無理だからな。

 

さて、見つかるとまずいし、まずは聖グロリアーナが陣を引いている北西の村方向に向けてアエロサンを停車、降りたら高台に登って…………はしごか、ちっ、ラハティが長くて邪魔だな。

 

どうにか登りきり、頭だけ出して偵察する。

 

プラウダの戦車は村の入り口で陣形を変え、KV重戦車を先頭に2列で村の大通りを低速で進んでいる。

 

砲塔やペリスコープの忙しない動きから、どうやら戦車猟兵の攻撃を恐れているようだ。

 

なるほど、村の大通りを通るのはリスキーだが、村を迂回していては時間がかかる、速度優先で戦車猟兵がトラップを仕掛ける前に突入できれば無傷で通れる、そう考えたってところか。

 

アカの戦車乗りにしては頭が回るようだ。

 

「こちら戦車猟兵、プラウダの戦車は全車両が中央の村を通過、シャンパンは準備できなかった」

 

『こちらチャーチル、ティーパーティの準備ができましたわ、でも9名分しかカップがありませんの、あいにくお菓子も少ないので、申し訳ありませんが、大食いの何方かにお帰り願えませんかしら?』

 

「こちら戦車猟兵、茶菓子セットをプレゼントしてお帰り願う、アウト」

 

『アウト』

 

……………やるか。

 

背中のポーチから弁当箱を取り出す、弁当箱はその中心から木の棒が飛び出ており、紐が巻き付けられている。

 

そう、これこそ原初の対戦車兵器と言えるであろう収束手榴弾だ。

 

ポテトマッシャーに爆薬を括り付けた即席爆弾だ。

 

速度を優先して街中を突っ切る作戦は見事だプラウダ、だが突っ切るならもっと速度を出さなきゃダメだ。

 

収束手榴弾のピンを抜く。

 

丁度、車列の先頭が通りかかるタイミングで投下。

 

………そんなに密着してると、地面に落っこちた収束手榴弾が車体の下に入って………………。

 

ボゴォォォオオオン!!

 

《プラウダ高校、『T-34-57』1両走行不能!》

 

まずは1両……………ははは!さすがアカの戦車だ!上から落ちて来た収束手榴弾にも気づかず、地雷だと思ってペリスコープと砲塔が忙しく地面をジロジロ見てやがる。

 

おおっと、報告しなければ。

 

「こちら戦車猟兵、お帰り願うことに成功した、ボリューム満点のお弁当がお気に召したようだ」

 

『こちらチャーチル、お見事ですわ、実はそちらにいらっしゃる『お固い方』、私少々苦手でして………お帰り願えませんこと?』

 

「こちら戦車猟兵、なかなか強情そうだ、お弁当ひとつふたつでは無理だろう、別方向でアプローチをかける、アウト」

 

『ご武運を、アウト』

 

さて、次はKV重戦車をやれと言うのか、まったく無茶が過ぎるお願いだな。

 

そっと見てみると、戦車から数人が降りて地面を慎重に掘っている、どうやら完全に地面だと思い込んでいる。

 

先頭を走るKV重戦車より軽量で、しかも後方にいたT-34駆逐がやられたのに地面と間違うとは…………対戦車地面の特性からやり直すことだな。

 

今ここで生身で無防備な戦車兵に向けてステンガンで仕掛けるのは危険だ、チャンスではあるが、同時に場所が割れる。

 

俺は最後の最後まで見つからない隠密行動を取る必要がある、不用意な行動は避けるべきだ。

 

よし、全員戦車に乗り込んだ、もう1発くらえ!………ちっ、今度はKV重戦車の上に乗っかっちまった!

 

ボゴォォォオオオン!!

 

これで上からの攻撃だとバレたはず、さっさと降りて狭い道で身を潜めなければ!

 

ちらっと見えただけだが、どうやら履帯が切れたようだ、T-34駆逐1両の破壊とKV重戦車1両の足をもいだと考えるなら、妥当な戦果だろう。

 

警戒が強くなるだろう、いったん逃げるとするか。

 

アエロサンに乗り込んですぐに村を後にする、向かうは北西の村、ではなく北東の村だ。

 

聖グロリアーナとプラウダの殴り合いに横合いから殴りかかるクロスファイアの形をとろう。

 

覚悟しろプラウダ…………徹底的に足を引っ張ってやるぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プラウダ隊長(まだカチューシャではない)side

 

 

「履帯の修理急いで!」

 

「Да!」

 

聖グロリアーナの補助の対戦車道のやつの攻撃で切れてしまったKV-1の履帯の修理を急がせる。

 

「地雷の捜索は!?」

 

「ぜんっぜん見つからない、きっとあれ一個だけね」

 

捜索のリーダーをしていた同級生からの報告を聞いて歯噛みする。

 

「ちぃっ!地雷でT-34-57はやられちゃうし、KV-1は収束手榴弾で両方の履帯をやられた上にエンジンとトランスミッションにもダメージが…………」

 

「でも、足の遅いKVで済んだのは幸いね、T-34が2両やられるよずっといいわ」

 

副隊長がそう言う、確かにT-34-57がやられたのは痛手だわ、でも2回の攻撃で1両大破、もう1両のKVは幸いにも足回りの損傷だけですんだ。

 

ただでさえ遅いKVの足回りが損傷してしまったのはかなり痛い、だがT-34-57が2両やられるよりはマシだ。

 

KVではチャーチルを倒せないけけど、チャーチルの主砲では遠距離のKVは抜きづらい。

 

まだ行けるわ。

 

「えぇそうね、でもこれで10対8…………時間も食われたうえ、聖グロリアーナは陣を構えてる、もしくはもっと頑強になってるかもしれないわ」

 

「これだけやって影も形もないなんて……………本当に初心者なの?」

 

懸念は聖グロリアーナだけではない、さっきの信じられないほど鮮やかにT-34を撃破した対戦車兵の攻撃にも注意しなくてはいけない。

 

「最近イギリスから留学してきたらしいわ、信じられる?日本に来るまで戦車道を知らなかったのよ?なのにこっちの動きが解ってるみたいに先制攻撃されて、攻撃の要のT-34-57を1両食われた」

 

「………実はプロなんじゃないの?じゃないと、いくらT-34とはいえ地雷くらいじゃ…………」

 

「隊長!T-34の下から手榴弾の柄が!」

 

「……………そういうことか!」

 

収束手榴弾をT-34-57の車体底部に滑り込ませて破壊したのね!

 

「でもどこから?」

 

「……………あの塔の上から落としたんでしょうね、路地の索敵はやっていたから」

 

「上から投げた手榴弾を地雷に偽装させて撃破した……………じゃあ、最初から地雷は………ない!?」

 

「っっ!」

 

やられた!

 

「履帯の修理終わりました!」

 

「全員乗車!全速力で北西の村に向かうわ!」

 

「「「「Да !」」」」

 

これ以上時間をかけていられない!これ以上こんなところに留まっていたら北西の村の防備がさらに厚くなる!

 

解っている地雷原を進まなきゃならないなんていうのは、パックフロントに正面から突っ込むのと同じようなもの!

 

マチルダの主砲ならゼロ距離でない限りは無傷で突破できる、地雷原もT-34-76を盾に突っ込めば2、3両で済むかもしれない。

 

でも、その後ろには75mmのチャーチルが待ち構えてる、ゼロ距離なら確実にこっちの全車両がやられる!

 

かと言って村の中に入ってもウダウダしていたら対戦車兵にやられる…………卒業前の最後の練習試合がこんな最悪な状況とか笑えないんだけど!

 

「たとえ、やられても、次の隊長がこの借りを返してくれるわ」

 

それでも、負けられない、負けてなんかいられない、負けてやるもんか!

 

「全国戦車道大会の優勝校として!」

 

戦車は地上最強だってことを、歩兵に分からせてやる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジョージside

 

 

「こちら戦車猟兵、お固い彼女にサプライズプレゼントを贈ったが、受け取り拒否されてしまった、足の脛をぶつけた様子だ」

 

『こちらチャーチル、最上の結果ですわ、お見事です、今はどちらにいらして?』

 

「こちら戦車猟兵、誰よりも先に太陽が見える村にいる」

 

『こちらチャーチル、わかりました、では、お客様が迷っていないか見ててくださるかしら?』

 

「こちら戦車猟兵、わかった、ティーパーティーの準備は終わっているんだったかな?」

 

『こちらチャーチル、すで終わっていますが、より凝った飾り付けをしているところですわ』

 

「こちら戦車猟兵、了解、パーティー会場までお客様を見届ける、アウト」

 

『無理はなさらないように、アウト』

 

お次は偵察任務、障害物のない雪原でアエロサンに乗って止まっていたらいい的だ、中央の村と北西の村の直線上を見渡せるいい位置がないものか……………。

 

……………あった、地図上では少しだけ盛り上がった丘のような場所がある、ここにアエロサンを止めて頭を出すくらいなら見つからないはずだ。

 

「そうと決まれば」

 

アエロサンに乗り込んでエンジンをかける…………かなり吹雪いてきた、あまり吹雪かないうちに目標地点に行かないと、敵の目の前に出てしまっては阿呆もいいとこだ。

 

20m先も見えない雪原をなんとか進み、丘の裏側についた。

 

アエロサンのエンジンを切る、ラハティと無線機のみを担いで丘の上の方へ。

 

匍匐状態でラハティを隣に起き、頭を少し出して双眼鏡で覗く。

 

まだ通らないか、まあ当然か、だがT-34くらい見えていい時間なんだが…………。

 

うーむ、側面迂回か?北東方向にいる俺に見えないのなら、南西方向まで行ったか?

 

全軍で迂回は無いはずだ、だとしたら軍を二分化して正面と側面から攻撃するのか?

 

…………そういえば、結局の話になるが、プラウダは西住の言うような速攻は仕掛けてこなかったな、やはり戦車猟兵の存在はアカの戦車乗りにとっては恐怖か。

 

あの手この手で対戦車戦闘を挑んでくるドイツ兵に相当手を焼いたそうだしな。

 

まあ、そのドイツに新鋭戦車をことごとくやられてしまったのは、手痛い歴史というのかな。

 

だがティーガー1両に15両の新型巡航戦車クロムウェルがやられたというのは信じられないが…………やはりティーガーは神造兵器か何かなんじゃないか?

 

8.8cmを水平射なんかしてなければ、第二次世界大戦はもっと早期に解決していただろう、1943年くらいにな。

 

まあ、そうなった時は、より強力な対戦車兵器が出来上がってそうだが。

 

おっと…………見えた、薄っすらとだが煙を吹いている奴がいるな、たぶんエンジングリル周りにダメージが入ったか、さすがは元祖対戦車兵器、M24を7個分で1.2kg近いTNTだ、威力が違う。

 

とりあえずKV重戦車が1両、他は…………ちっ、視界が悪い。

 

結局見えたのは煙を吹いてるKV重戦車のみ、速度は……………かなり遅い、10km/h出てるかも怪しい。

 

周りが速度を合わせているなら…………あと60分で北西の村に着く、50分もすれば村からも薄っすらと煙が見えるはずだ。

 

「こちら戦車猟兵、時速10km〜15kmでドライブ中のオキャクサマを見つけた、あと50分もすればお顔が見えるはずだ」

 

『こちらチャーチル、ありがとうございます、では動きましょうか……………2号車から5号車は村入口で待機、見え次第攻撃開始、無理はせず牽制で良いですわ』

 

やっと動くか、しかし牽制か………まあ、お世辞にもマチルダではT-34は抜けないだろうし仕方ないか、BTなら違っただろうが。

 

『戦車猟兵さんはしばらくそちらで動向の監視を、動きがあるようなら連絡をお願いしますわ』

 

「こちら戦車猟兵、了解、引き続き監視を行う、何かあれば通信をくれ」

 

『わかりましたわ、では、アウト』

 

「アウト」

 

ふぅ…………いい加減、雪の上で匍匐状態は寒くて冷たくてかなわん。

 

持ってきたホッカイロはもう冷めてしまっている、試合はこれからだというのに…………。

 

「まあ、いいさ」

 

今はまだうまくいってるが、戦車同士の戦いになれば聖グロリアーナが不利だ、先手を打って1両を潰せたが、それほどの大差じゃない。

 

まだまだ、試合は長いんだ、観客席にいる西住をもっと楽しませなきゃな。




「わっ、わー!すごい!もう1両撃破しちゃった、T-34の車体下部なら装甲は20mmくらいだし、弾薬庫も近いから誘爆撃破かな?」

「…………!、いた、みほだ、あの男の試合を見にきていたのか………」

「あっ!……あー惜しい、うーん、40mmは収束手榴弾じゃちょっと無理…………あれ?あっ、なにかダメージを与えられたみたい!」

「むっ、KV-1のエンジンが…………撃破はできなかったようだが、あれでは満足に動けまい」

「そしてすぐに逃げる、うん、ちゃんと分かってくれてるみたい」

「本当に初心者か疑わしい判断力だ、撃破しそこねて焦って攻撃を続けては的になる、あそこは逃げた方がいい」

「ふふっ、頑張れ、ジョージ君」

「ジョージというのか彼は………うん?聖グロリアーナ女学院に男?…………エリカ、あぁ私だ、調べてもらいたいことが…………」
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