よいお年を!
慧音先生とは人里で別れて、妹紅さんと影狼を連れて迷いの竹林に入っていく。
迷いの竹林は、霧と緩やかな傾斜、急速成長する竹のせいでその名の通り迷うようになっており、素人が入ってしまえば迷うのは確定事項だろう。
しかし妹紅さんはこの迷いの竹林に住居を構えており、影狼もここにいることが多いため迷うことはないが明確にどういった理由で迷わないのかはよく知らない。
「妹紅さんはどうやってここで迷わずにいられるんですか?」
「私は慣れだよ。歩幅や時間である程度距離や方向を把握してる。感覚でやってるから間違ってることもあるけど、迷ったら飛べばいいからな。それに時間はいくらでもあるし」
「自分の歩幅で距離がわかるとか武道の達人とかと同じことしてません?」
「へへっ、すごいだろ?」
照れ臭いのか鼻を擦る妹紅さんは誇らしげだが、同行している影狼はドン引きしていた。人間よりは長命な妖怪たちでも武道を極めるようなことはしないのかもしれない。妖怪で武道の心得があるのは知っている中では美鈴くらいだし、きっと人間の武道を習得するよりは自己の力を極める方が理に適っているのだろう。
「影狼はどうやってるんだ?予想はできるけど」
「多分あんたの予想通りよ。私は嗅覚が鋭いからそれを利用して迷わずに進めるの」
「予想の範囲内だな」
「うるさいわね」
その後は少し拗ねてしまった影狼を先頭に迷いの竹林を進んでいく。十分もたたないうちに影狼はこちらに振り向き申し訳なさそうに俺に尋ねてきた。
「そういえば私達はどこへ向かっているの?」
「え?」
「どこへ向かっているのか聞いているの!」
「いやお前が進んでいくから俺達はついて行ってるだけなんだけど……?」
先頭を行く影狼が道を知っていると思って、何にも疑問を持たずについて行っただけなため俺もどこに行っているのかは知らない。一縷の望みをかけて妹紅さんの方を見るが首を横に振られてしまった。
「生憎と今大体どこら辺かはわかるだけだよ」
「じゃあ誰かが通った後かどうかは分からないんですね……」
「流石に人が通った判別は私にはできないよ。影狼ならできるんじゃないの?」
「確かにできるけどここからは少し離れているわよ?それでもいいの?」
勿論それが目的なのですぐさま頷く。できれば霊夢の後を辿ってほしいが、影狼は霊夢の匂いは知らないから、霊夢を狙って見つけることは難しいだろう。また、今回は霊夢の他にも異変解決に動いているので、そいつらの倒した相手を見つける必要もあるため、霊夢だけ追うわけにもいかないのだ。
「なあこっちって……」
あれから方向転換していくらか歩いたころに妹紅さんが口を開く。
「どうしたんですか?」
「多分なんだけど、今私たちが向かっている方向なんだけど、永遠亭って所に一直線で進んでるような気がするんだけど」
「永遠亭っていうのはよくわからないけど多分そうよ。人がたくさんいる場所に向かってるもの」
「事前に聞いていたとはいえ、本当に永遠亭に行くんだな……。行きたくねえなあ……」
「ちょっと妹紅さん?ここに来て行かないとか言わないでくださいよ?」
ここで妹紅さん離脱は本当にやめてほしい。今は妹紅さんがいるから何とかなっているけど、妹紅さんがいなくなれば、ただの人間の俺と弱小妖怪の影狼の二人になってしまう。そうなれば原作のように小妖精や妖怪がこぞって俺達に襲い掛かってくるだろう。そうなれば当初の目的を果たすことはできなくなるし、なんなら俺の命すら危うくなる。
「私一人であいつに会うのはいいんだけどなあ……。小さい頃から知ってるお前がいるからなあ……。あんまり知られたくないんだよなあ……」
「ここで妹紅さんがいなくなれば俺の命が危ないので絶対に逃がしませんからね。いなくなるようなら慧音先生に告げ口しますからね」
「わかってるよ。でもさ、あんまり他の人には永遠亭に着いてからのことは言うなよ?」
「仕事関係のことは基本的に他人に口外しませんので気にしないでください」
「ならいいや」
妹紅さんを説得することに成功したみたいだ。これで俺の命は助かった。
「私もそうしてもらえて助かるわ。私一人なら逃げれるだろうけど白鹿と一緒だと絶対に無理だし」
「見捨てないでね」
「見捨てたらどうせ巫女に殺されるから、絶対に見捨てないわよ」
「頼んだぞ」
「奇跡にだってなんだって縋る勢いで死力を尽くすわ。それでその死力を尽くさないといけないかもしれない場面がもうすぐ近くに迫っているかもしれないのだけど、どうする?」
竹林を歩いて行くと何度か大きく開いた場所にたどり着くことがあるが、今たどり着いた場所も大きく開けた場所だった。他と違うのは空に花火のように輝く無数の光の玉と光線があるせいで、夜なのに少し明るく感じることだろうか。
空はまさに大乱闘中のようで、霊夢と魔理沙、アリスが咲夜と妖夢の相手をし、紫母さんと幽々子さんはレミリアさんと戦っているようだ。
ただし、共闘しているようでしていない状態の様子で、ときたま裏切ったり敵を利用したりと本当に誰が誰を攻撃しているのかわからない状態だ。ただし相方には攻撃しないようにしているため、何度か目くばせをしたり指示を飛ばしたりして、意思の疎通は図っているようだ。
「……なぁにこれ?」
「こりゃあ壮観だな。弾幕ごっこは基本的に一対一でやるからこんな風に混戦になることなんて滅多にないぞ」
「そうっすね。でも俺には速すぎて目で追えないっすわ。どうです?妹紅さんも混ざりますか?」
「嫌だよ。あん中に混ざろうものなら、いっきに集中砲火くらって直ぐに負けるわ。それにお前に流れ弾が行かない保証もないからお前の傍を離れるわけにもいかないからな。お前は自分の所の巫女とその相方でも応援しておきなよ」
「それもそうですね。……霊夢ー!頑張れー!負けるな―!」
霊夢を大声で応援して、合間合間に紫母さんと今は見えないが藍お母さんも小声で応援する。
すると、急激に霊夢と紫母さんの動きが攻勢に転じて動き始める。俺の目からは確実に当たっていると思われる弾幕も全て寸でのところで
瞬く間に霊夢と紫母さん以外のグループは撃墜され、空に佇むのは霊夢と紫母さんのみになっていた。霊夢がこちらを一瞥してきたので手を振っておくと、霊夢と紫母さんが小さく手を振り返してくれたので、気合を入れなおし要救助者を集めに行く。霊夢と紫母さんはすぐに飛び去ってしまったので、おそらく永遠亭に向かったのだろう。
「さて、負けたやつらの手当てをしていきましょうか」
「全員で6人か……。こりゃあ骨が折れるな……」
「私はあそこの魔法使いの子たちから手当てしていくわね」
流石に一人ではないため全員で作業を割り振りした。俺は紅魔館組、妹紅さんは妖夢ちゃんを見たことがあるとかで白玉楼組、影狼は一番手がかからなそうな魔法使い組をそれぞれ担当して手当てしていく。
良し頑張るぞと意気込んだところで、よく見ると全員そこまで大きな怪我をしているわけではなかったので、すぐに霊夢達を追いかけていくことができそうだ。
紅魔館組、白玉楼組はただの面白半分で異変解決に参加しているだけだったようで、ここで帰ってしまったが、魔理沙は負けてもまだ解決に向かいたいようで、すぐに動こうとしていたが魔力を消耗し過ぎたのか、力が入りずらくなっている様子だ。
「おぶるか?」
「すまんが、頼んだ……」
目的地も同じなため魔理沙を負ぶって、アリスも仲間に加えて永遠亭に向けて歩を進めるが、背中からすごく見られている気がしたので振り返ってみると妹紅さんが眉間に皺を寄せてすごい顔で俺のことを見ていた。
「年端もいかない少女と男が何の躊躇いもなく密着してる……」
「なんかいかがわしく聞こえるのでやめてくださいよ。別にそんなんじゃないですよ。なあ魔理沙?」
「そうだな。これくらいは普通だな」
「お前らどういう関係なんだよ」
「
「友達の
魔理沙とは霊夢や紫母さん達の次に関係が長いので、親戚くらいの気持ちだ。姪っ子とかそんな感じ。でも一番しっくりくるのは先ほど言った通りだろう。
「いや、お前ら認識共通してんのかよ」