働くアリ。
過ぎる季節。
今日は花咲き乱れる春の日。
花だって歌い、踊り出しそうなポカポカ陽気。
そんな温かな日に桜の木のしたから、歌声が聴こえてきました。歌っているのはキリギリス。
桜の木のふもとではアリ達が行列を作りせっせと食料を運んでいます。
「アリさんアリさん。キミ達はなんで働いているの?」
「来たる寒い冬の日のためさ。」
1匹のアリが手を止めて、キリギリスの問いかけに答えた。
「そんな……命は儚いものだよ。今、この素敵な瞬間を謳歌するべきなんじゃないのかい?」
「キミみたいに楽観視しかできないやつには分からないよ。」
「……そうかい。」
アリは止めていた手を動かし、作業に戻りました。
キリギリスはまた歌を歌い出しました。
今日は日の光射す夏の日。
波が日光を反射し、全身を焼け焦がすようなカンカン照り。
そんなアチチなビーチのパラソルのしたから、歌声が聴こえてきました。歌っているのはキリギリス。
その横をアリ達が食料を蓄えるため、行列を作って歩いています。
「ねぇ、アリさんアリさん。キミ達は何のために働いているの?」
キリギリスは行列を整理しているアリに声をかけた。
「ん?なんだキサマ。そんなの女王の蓄えにするために決まっているだろう。」
「給料は出るのかい?」
「冬にな。この1年の成果に見合った給料がな。」
「……へぇ。そこに転がっている彼は大丈夫かい?」
「あ?あいつか。知らん。」
「助けないの?」
「代わりはいくらでもいる。こんなところで勝手に死んで妻子もかわいそうだな。」
「……そうかい。」
アリは行列整理に戻り、キリギリスはまた歌い出しました。
今日は風の吹く秋の日。
赤や黄色の葉っぱが風で落とされ、一面色とりどりに
涼しげな風の吹く
そこにアリの行列から1匹のアリが歩いてきました。
「キリギリスさん、私です。」
「おや、あなたは春の……」
「そうです。春にあなたと話したアリです。」
「お仕事はもういいんですか?」
「……はい。本当のこと言うと、クビになっちゃって。」
「あら、そうですか。」
「……笑わないんですか?」
「なぜ、笑う必要が?それより、一緒に歌いましょう。」
「……いいんですか?」
「一緒に歌うと楽しいですよ。」
並木のしたからはハーモニーが聞こえてきました。
今日は木枯らし吹きすさぶ冬の日。
まるで体が凍ってしまいそうな、もはや凍ってるんじゃないかと思うほどです。
外とは違って暖かな、キリギリスの家からハーモニーが聞こえてきます。
その家に1匹のアリがやってきました。
「……すいません……」
「おや?あなたは夏の……」
「……ああ。すまないが……いや、申し訳ないが食料をいただけないだろうか。」
キリギリスとアリのやり取りを見ていた、春のアリが
「他の仲間は?」
と聞きました。
その言葉を聞いた、夏のアリはうつむき、声のトーンを落とし
「……女王に……喰われた。あれだけ働いたのにな。」
「……なんと。」
キリギリスは声を出さずに目を閉じた。
少しの間そのままで動かなかったが、やがて目を開けて
「とりあえずご飯、食べましょう。話はそれからです。」
と言った。