瞳下嬉楽譚   作:炉心

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「今回はこのシリーズ初の前後編です!!」

「のっけから、テンション高いね。読者の皆さんはきっといきなりのことで首を捻ってると思うよ?」

「そんなの全然気にしない! ここは本編とは別世界なんだから、キャラも言動も自由にしていいって作者さんも言ってたし!!」

「まあ、別にいいけど。とにかく、作者さんからお願いされた伝達事項だけはちゃんと伝えなよ?」

「了解了解。眼鏡キャラ特有の真面目さでのフォローにサンキュー」

「明るい髪の色キャラに多い軽さだね……」

「えーと。まず、前後編になったのは1万字を超えたからです。そして、それに関連して今までなかったサブタイトルを付けることになりました……そう言えば、「最初にサブタイトルを付け忘れて以来、完全にサブタイトルを付ける機会を失った」って言ってた」

「適当過ぎだね、作者さん。仕方ないか。オリ主の名前も結局付けず仕舞いで、名無しの少年で突っ走ってるし」

「ま、そこは別に私達が気にすることじゃないし。ドントウォーリー!! てなわけで、手短に伝達も終えたところで、本編に向けてレッツ・ヒー・ウィー・ゴーーー!!!」

「……このハイテンション。もしかして本編の状況からの現実逃避なの?」





キアロスクーロ:前

 

 

 唐突だが、皆さんにとって突発的な出来事と言えばどのような状況を想像するだろうか?

 

 ミカヤ・シェベル――――彼女にとっての突発的な出来事と呼ぶに値する状況は、ほぼ九割九部九厘に至って非常に限定的且つ複雑な心境を向けている人物が関係していたりする。

 

 大概は鈍い痛みの奔るこめかみ部分を指で強く押さえたくなるような、或いは頭を両手で抱えて蹲りたくなるような、ミカヤの持つ理解と常識の範疇を遥かに外れた地点に着地するような意味不明な事柄や行動ばかりなのだが、時たまにその認識すらも甘かったと思い知らされるようなパターンも少なからず多からず存在したりもする。

 

 抜刀術天瞳流の師範代などと大層な肩書の立場に齢二十歳にも満たない若さで席を置くだけでなく、近年のミッドチルダの若い女子の中で一種のムーブメントとなっている魔法戦競技の大会にも幾度となく参加し、好成績を以て名を馳せ、同年代の格闘少女達が凌ぎを削る同大会内に於いてもベテラン組兼実力者として一目を置かれる存在のミカヤ。地の性格は比較的明るくて軽妙な部分も多いのだが、面倒見の良い性格の一面や礼儀正しく年長然とした立ち振る舞い等から冷静で思慮のある人物としてのイメージをもって見られることも多い。

 

 当人としては外面が殊更良いとは思ってなどいないが、人は誰しもがそうであるように、自分を慕ってくる年下相手には多少なりとも年長者としての飾りの付いた仮面を無自覚に被っているのかもしれない。

 

 そんなミカヤの素の部分だが、ここ最近は少々事情に変化が生じ始めている。今まで親しい同年代の友人に見せてきた部分とは若干異なった一面が、何故か高い頻度で表に晒される傾向にあるからだ。

 

 即ち、冒頭に述したある人物と関係した時がそうなのだが、それは同時に彼女の持つ『剣士』としてではない側面、年頃の『少女』としての側面が垣間見える時でもあるのだが。

 

 さて、前振り的なものをつらつらと語ってはみたが、要するに本日もまた御多分に漏れることなくその様子を窺うことが出来たわけだが、今回もそこに至るまでの光景を直前部分の日常的風景から順を追って見ていくことにしよう。

 

 

 

*   *  *

 

 

 

 森厳な空気が支配する練武場に響く威勢のよい掛け声と打ち合いの音。

 

 躍動する肉体から飛び交う汗と荒々しい息吹。朦朧と立ち上る熱気。

 

 天瞳流の練武場で日々見ることのできる光景。飽くことなく繰り返される稽古風景。

 

 程度の差はあれど、各々が剣の道を究めんと日々弛むことなく研鑽を積み重ねている少女達。

 

 他の多くの流派同様に、『勝負は鞘中にこそあり』を神髄とする抜刀居合術天瞳流ではあるが、現在行われているのは居合刀ではなく竹刀を使ってのかかり稽古である。

 

 本来ならば『後の先』と『鞘放れの一刀』を以て相手を制するのが居合術における正真の刀法ではあるのだが、さりとて剣の何たるかも理解していない人間にいきなり抜刀の稽古などは愚の骨頂以外の何ものでもない。正しい刀法を得るためにも、剣の持つ本質を頭と体の両方で理解する上でも、まずは基礎となる剣術を徹底的に叩き込む。何事も段階を経ずして一足飛びに辿り着ける境地など存在しないのだ。

 

「よし、それまで!!」

 

 喧噪に満ちた練武場の中を突き抜けるような静止の声。打ち合いをしていた門下生全員の動きが止まり、水を打ったような静寂が広がる。

 

 全員の視線がある一点へと集まり、そこで佇む人物へと傾注している。

 

 白磁の肌の身を包んだ白無垢の道着と濡れ羽色の長い髪が見事なモノトーンのコントラストを描いている少女ミカヤ・シェベル。清廉としながらも峻厳な雰囲気をも纏う彼女は、ゆっくりと門下生達の様子を窺うように視線を動かす。

 

 そして、ふっと表情を弛めると、

 

「今日の稽古はここまで。皆、お疲れ様」

 

 稽古終了と慰労の言葉を発した。

 

「「「「「はい!! お疲れ様でした!!」」」」」

 

 応じた門下生の少女達の声が見事にハモる。ミカヤの雰囲気が厳しい剣の師範代のものから優しい年上の女性のものへと変化したのを敏感に感じたのだろうか、稽古中とは違った独特の高いテンションになっている門下生の少女達だった。

 

「では、本日はこれで解散」

 

 「ありごとうございました」「お疲れ様でした」と各々が一礼して練武場から辞去していく門下生の少女達のかしましい姿に、ミカヤは多少の苦笑を浮かべつつも穏やかな気持ちで見送っていた。

 

 剣の稽古に関しては基本的に真面目に取り組み、不真面目な態度で臨むような不作法者などは門下生の中に存在しないが、そうは言ってもその年齢はミカヤとほぼ同年齢か年下の少女達。一昔前の禁欲的な武者修行者に斯くあるが如く、ただひたすら一心不乱に剣の道一筋に生きるなどは有り得ないし、当然ながら試合直前の節制した自己管理を行っている格闘家やスポーツ選手と言うわけでもない。当然と言えば当然だが、皆が皆それぞれ年相応の花のような日々があり、一度しかない人生を謳歌することの大切さを充分に理解しているのだから。

 

 本日は道場としての午後の稽古予定がない為か、耳に届く少女達の話題の大半も午後を如何様に過ごすかといった内容が多い。かく云うミカヤ自身も昼食を取った後に少々の自主練をするつもりではあるが、その後は買い物がてら街を少しだけブラブラしてから早めに帰宅して、残りの半日はまったりとした時間を過ごすことになるだろうと予想している。

 

「では、私も先に失礼するから。後片付けの方は頼んだよ」

 

「はい、師範代。お疲れ様でした」

 

 本日の片付け当番を務める門下生に後を任せ、瞑目して数刻ほど練武場への礼をすると、ミカヤも愛刀を手に練武場から足を外へと向ける。そして、数歩進んだところで不意にその歩みを止める。更に言えば、浮かべていた凛々しくも穏やかな表情が一変している。目尻が吊り上がり、口元はヒクつき、あからさまに怒りの成分を滲ませたものへと変貌しているのだ。

 

 何故? 如何様にしてそうなったかと言えばだが……まあ、ぶっちゃけ定番と言えば定番な理由。

 

「ううむぅ、キミ達イイねっ! 光るモノを持ってるよ!! 俺には判る! 感じる!! 俺の秘められたセブンセンシズにビンビン反応して高鳴ってる!! 間違いない!! ……ところで、キミ達は最近新しく門下生で入った子かな? 名前は? いや、それより単刀直入にどう、絵のモデルに興味ない? 自分達に劃された魅力ってやつを俺の絵で一度確かめてみたくない?」

 

 練武場の入り口から少し出た場所で、2人の門下生の少女達に向かって何やら適当なことを語り掛け、軽薄な表情だが真剣な目つきで迫っている少年の姿を見咎めたからだ。

 

「あ、あの……私達は……」

 

「そ、そんな急に言われても……」

 

 眼鏡に濃紺色の髪をセミロングにした物静かな雰囲気の少女と、淡く明るい栗色のソバージュヘアーに少し釣り目がちな明るい雰囲気の少女が、それぞれ困惑した表情を浮かべている。いまだ10代前半で、『花より団子』と普段はあまり異性に接する機会が少ない少女達にしてみれば、まさか神聖な道場の中で見知らぬ人間に口説かれ始めるなど想像もしていなかっただろう。

 

「そうか、「確かめてみたくない?」なんて失礼だったよね。当然だ。うん、是非確かめよう! 絶対に確かめるべきだ!! キミ達の中に秘められた可憐なる蝶としての本質を、今だ名も知らない花を咲かせるんだ!! 大丈夫! 俺に任せれば万事も億事もオールオーケーエブリバディだからっ!! さあ、今こそキミ達は新世界の扉を開くんだっ!!」

 

 左手を胸に当て、右手を高く天に掲げた大仰な仕草で、少女達への勧誘と賛美を自信と自賛に満ちた陶酔した表情で語る少年。マンガ的な表現をするなら、少年の背後には点描によるキラキラとした背景が描かれていることだろう。

 

「でわでわ、麗しいお嬢さん方。俺の話も一段落したことだし、もう心は決まったね。んじゃまあ、早速これからの予定決めといこうか? 何時が都合いい? 場所はどうしようか? 俺の部屋でしてもいいけど……初めてだし、何ならどっかの素敵なアトリエを借りてしようか? ――――そうだ!! 折角だし、その辺の話も含めてこれから一緒に昼飯を食べながら話そうか? あ、モチのロンで俺の奢りだからね!! モデルの子にお昼代を出させるなんて真似はしないから安心していいよ!!」

 

 歓楽街のどこぞにでも出没する馬耳東風唯我独尊気味なナンパ男達もお株を奪われるくらいにゴーイングマイウェイな論理展開と怒涛の話術。相手に反論も口を挿む余地すら与えない、圧倒的な口勢で話を進める少年。しかも、どういったわけか相手の少女達に嫌悪感や忌避感を抱かせないのだから、不思議を通り越して神懸っていると言えよう。

 

「そ、そんな急に。一応、今日は午後からは時間が空いてるから、予定的には大丈夫ですけど。ど、どうしよう…………」

 

 この手の強引な流れに弱いのか対処した経験がない為か、両手で熱くなり始めている頬を押さえながら、しどろもどろになっている眼鏡の少女。

 

「えーっと。そ、そうですね。確かに絵のモデルって結構興味があるし、私的にはまあ、うん、でも、ちょっとくらいなら……う~、でも……」

 

 片や、ソバージュヘアーの少女の方は存外に満更でもないというか、握った右手を顎に当てて呻りながらも、結構乗り気な感じが見え隠れしている。

 

 とは言え、少女達に共通しているのは、徐々に頬に熱が集まり、何とも言えない高揚感に身を包まれていることだった。

 

 己のことを持ち上げられて喜ばない人間はいない。真面目で色恋にはいまだ縁遠い剣道少女達とはいえ、『可憐』だの『麗しい』だのと褒めちぎられれば猶更だろう。発する言葉とは裏腹に、少年の纏う雰囲気にいやらしさや下心的なものがまったく感じられなかったのも要因なのかもしれない。現金な話だが、客観的に見ても少年の顔立ちがそれほど悪く部類ではなかったし(少女達にとっても結構好みのタイプだったのも要因大だったりもする)。

 

「ど、どうしよう。本当に……」

 

「う~ん、そうだね。うん、まあ、まず話を少し聞くくらいからなら…………ひっ!!」

 

 多少赤らんだお互いの顔を見合わせ、少年の突発的な提案に乗って午後からの予定に変更を加えるのも有りだろうかと相談しようとした少女達だが、横を向いた瞬間に視界に端に掠った存在がそんな思考全てを吹き飛ばす。ソバージュヘアーの少女に至っては、思わず悲鳴すら上げてしまっていた。

 

 「……あれは、世界すら獲れる微笑みだった」――――後にある少女が後輩に秘かに語った言葉である。

 

「「ひっ、ぁ、うっ…………」」

 

 ゆっくりと近づいてくるミカヤの姿を見て、喉の奥から引き攣った音を無意識に漏らしつつ廊下の端へと逃げるように移動する少女達。門下生として道場に通い始めて半年以上だが、稽古でミカヤに剣を向けられた時以上に感じる圧倒的なプレッシャー。それも何か得体のしれない圧迫感と恐怖心が全身を駆け巡るなど、少女達にとってはまさしく初めての体験だった。

 

「おっ! ミカヤじゃないか。おいーすっ! どうした? 随分と上機嫌な顔をしてるじゃないかいな?」

 

((えっ!? この人……正気!?))

 

 近づいてくるミカヤに気づいたのか、衒いのない笑顔での少年の軽い調子で放たれた言葉に、少女達の心の中でのツッコミが見事に重なる。

 

「いやー、ミカヤの素敵で無敵な笑顔が目に眩しいね~。どったの? 何か面白いことか楽しいことでもあったの?」

 

(こ、この人。目がおかしいの? ちゃんと見えてないの? それとも、頭の中の大事なネジが何本か抜けてるの?)

 

(ちょっ、どうするの!? 私、師範代が滅茶苦茶怖くて仕方ないんだけど!! 伝わってくる空気がもの凄く冷たいんだけど!! 絶対零度レベルだよ!!)

 

 意外に毒舌な叫びを心の中で上げる眼鏡の少女と、本気で怯えの混じった泣き出しそうな悲痛な声をこれまた心の中で上げるソバージュヘアーの少女。

 

 少女達には理解できなかった。信じられなかった。誰がどう見てもミカヤが現在進行形で浮かべている笑顔の分類はヤバくて危険な方向性のものの筈だが、眼前の少年は空気が読めていないのか気にしていないのか、完全度外視のスルー状態で言葉を続けている。

 

 正直、生きた心地がしない。

 

 そして、そんな心境の中で少女達は知ることになる。

 

「……ああ、そうだな」

 

((ひっ……))

 

 冷静で静かなで穏やかなにして、

 

「君の言うとおりだ。本当に、どうして」

 

((ひぃっ……))

 

 聞く者の心臓を絶対零度の極寒の烈風で瞬時に凍りつかせ、

 

「なかなか面白い場面に出くわしたよ」

 

((ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっ!!!!))

 

 脆い硝子細工や液体窒素で瞬間氷結した花を簡単に握り潰して粉々にすることの出来る声の存在。そして、

 

「そう思うだろ? そこの二人も……ね?」

 

 優しく慈愛に満ちた笑顔。完全で完璧な仮面のような精緻で不変の笑顔。それを向けられることの本当の意味の一端を。

 

 浅慮で愚かな好奇心の代償として、少女達は結構なトラウマと大切な人生の教訓を得たのだった。即ち、「見ず知らずの人に安易について行こうとしてはいけない」と。

 

「あ、あの……し、師範代。わ、私達は……」

 

「どうしたんだい? さっきから顔色が随分と悪いけど?」

 

 冷や汗が浮かびまくった全身をブルブルと硬直させ、青褪めた顔にパクパクと動く口からドモった震え声を発するソバージュヘアーの少女に、ミカヤの心配げな声が静かに向けられる。

 

「突発的な体調不良かな? それとも、何か悪いことにでも遭遇したのかい? ……ああ、そうか。見ず知らずの男に突然話しかけられたようだから、緊張と委縮で気分が悪くなったのかな?」

 

 ミカヤはずっと笑顔だった。言葉を発し始めてから一切変化することのない表情を少女達に向け、ゆっくりと廊下を進んでゆく。

 

足袋に包まれたミカヤの両足が板張りの床を踏み締めるたび、『ミシッ、ミシッ』と床木の悲鳴が雑音の少ない廊下の中を木霊する。何故かその音が断末魔の叫びに聞こえる世の不思議。

 

「あ、あ、あ、あのぅ……」

 

 そんな迫りくる謎の圧迫感の中、眼鏡の少女がどうにか言葉を紡ごうと震える唇を開くが、

 

「おろ? 体調不良? マジで? あ~、確かに2人とも顔色が何だか滅茶苦茶悪いな。2人とも大丈夫? 稽古疲れかな? ミカヤの稽古は厳しいからな。こりゃ~、今日は絵のモデルは無理っぽそうだな」

 

 何とも間の抜けた声を上げ、少女達の顔を覗き込む少年。2人揃って青どころか紫に近いくらい顔色の悪くなっていた少女達の様子を見咎めると、器用にも心配げな表情と残念そうな表情を混ぜ合わせた表情を作る。

 

「仕方ない。残念無念だけど、女の子に無理はさせたくないし、今日のところは諦めて、また今度の機会にするかな……っとまぁ、それはともかく。本気で体調がヤバそうなら病院とかに連絡しようか?」

 

「だ、大丈夫です! そこまで心配していただかなくても、少し休めば平気ですから!!」

 

「そ、そうです! ちょっと疲れてるだけですから、モデルの件だけ諦めてくれたら問題ないですから!!」

 

「そう? キミ達自身がそう言うなら……まぁ、いいけど。でも、これだけはハッキリと言っとく……無理は絶対に禁止!! 大きなお世話だとは思うけどね、こいつだけはマジで大切だからさ。ま、お節介なお兄さんからの老婆心の入った忠告と思って聞いといて」

 

 どこか焦った様子の少女達の言葉に耳を傾け、少年は納得と承諾の意思を軽い雰囲気の笑顔で示した後、一転して真剣な表情へと切り替えると、淀みのない真っ直ぐな視線で見詰めながら少女達の身を案じる言葉を発する。そこにふざけたり茶化した要素は一切ない。

 

「……もうその辺でいいかい?」

 

 少年と少女達の遣り取りが一段落したタイミングを見計らって掛けられた声。

 

 トーンの低いどこか投げやり気味な声に少年が振り向けば、何故が非常に微妙な表情をしたミカヤが半眼でねめつけてきていた。

 

「君が彼女達の様子に気付かず、強引に絵のモデルを押し付けるのかと思ったのだが……どうやら懸念で済みそうだ。安心したよ」

 

「なんだ~。その言い方じゃあ、ミカヤは俺が相手の心情も雰囲気も読めない鈍感自己中心的人間みたいじゃないか」

 

「おや? 多少なりとも自覚はあると思っていたのだが……ね」

 

 チラッと僅かにだが視線をずらし、少年の視界から逸れた少女達の顔を見るミカヤ。少女達の顔に浮かんでいる色が寒色系から暖色系へと明らかに変化しているのがわかる。

 

 ミカヤ本人を含めて気付いた人間はいなかったようだが、ミカヤのこめかみに一瞬だが血管がピクッと浮き上がっていた。

 

「そんな! ミカヤが俺のことをそんな我が儘放題な自己中人間に思っていたなんて……心外だなぁ~。ボクぁ~、ミカヤの言葉が心底心外なんだァ~」

 

「……腹立つから、そのふざけた口調と仕草はやめてくれないか?」

 

 両手を大きく広げて大仰に驚きを表現し、舞台で悲劇を演じる俳優のように流暢な動作で悲しみに暮れた表情へと転じる少年。シャツの胸元を右手で掴み、掲げた左手で額を押さえて頭を何度も振って悲嘆と悲愴な雰囲気を表現する少年の姿は中々に堂の入ったものだったが、目の当たりにさせられているミカヤにとっては不快と不評以外の何物でもなかった。

 

 

 

 






「いい感じのところで、前編はここまで!!」

「そんな、いい感じでもないと思うけど? むしろ……中途半端? それにしても、顔色が青いままだけど大丈夫?」

「後編に続く!!」

「一度は言ってみたい台詞だね、その言葉。……やっぱ前書きでのハイテンションは空元気からだったんだね」

「続きはWebで!!」

「……突っ込まないよ?」

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