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連続投稿で小学生編は終わります。
だから嘘つきじゃないよ?いいね?:(;゙゚'ω゚'):
翌日。
いつも通り登校し、いつも通り授業を受け、いつも通りの放課後を迎えた。
俺は先に校門前で雪ノ下を待っていた。なんでも、先生に話さなければならないことがあるらしい。特に気にはならないが。
こうして一人の時間が出来ると、ふと昨日のことを考えてしまう。ハルの告白と玲那と雪ノ下の衝突についてだ。
ハルの告白によって、俺は他者を信じるということを悪くないと再び思い始めていた。
そして玲那と雪ノ下の衝突。この衝突自体はあまり問題ではない。今日中に解決する程度のものだ。
しかし、この二つの問題から俺は疑問に思ったことがある。
玲那にとって雪ノ下 雪乃は姉のような存在。
なら俺にとって雪ノ下 雪乃とはなんなのだろうか?
以前であれば、自分に都合のいい子で済ませていた。
しかし、雪ノ下の姉であるハルの言葉を思い出すと本当にそれでいいのか?と思う。雪ノ下はハル以上に時間を過ごした存在だ。であれば彼女に対して俺は“何か”を思っているはずなのだ。
玲那が大切な家族であると思っているように。
ハルを厄介でありながらも信頼できると思っているように。
俺は、彼女に対して何を抱いているんだろう?
もしそれが……過去に否定したものであるとするなら、俺はどうすればいい?目を瞑ぶるのか、耳を塞ぐのか…それとも。
いや…これは無駄な思考だ。
「研くん」
「……おう。もう済んだのか」
「ええ」
彼女は微笑み、そう答えた。
なんとなくだが彼女の足取りがいつもより早いような気がする。多分、急いで玲那に謝りたいという気持ちの表れだろう。
しかしそんな彼女には悪いが…
「なあ、雪乃…」
「ん?なにかしら?」
俺はこの無駄な思考に答えを出したい。
そう覚悟を決めていたから。
「これから一緒にカフェに行こう」
俺はあの日と同じ言葉を口にした。
◇◆◇◆◇
喫茶店独特の落ち着いた雰囲気と紅茶の香り。まるで初めて研くんと話したあの日のようだ。
だけど、あの日と違うことが一つある。
それは…彼から緊張感が伝わってくることだ。
「なあ、雪乃…」
「な、なにかしら?」
普段の彼とは違うせいか、思わず言い詰まってしまう。
「お前は……俺をどう思ってる?」
「……え?」
それはつまり…いや、違うわね。
彼はそういうことは求めてないはずだから。
「私にとって、研くんは友人よ」
無難でありながらも、今まで言葉に出来なかったことを勢いで言ってしまった。思わず反応が怖くて俯いてしまうが、彼は変わらない声のトーンで、そうか…と呟く。
「なら……話したいことがあるんだ」
その表情はいつもより堅いように思えた。それほど大切なことなんだろうか?
「俺さ、前の学校で“親友”って呼べるやつがいたんだ」
「……それって」
私は初めて彼の家に行った時の会話をふと思い出す。
『どうして、雪ノ下さんはここに来ることになったの?』
『どうしてって……一緒に勉強しようって誘われたからよ?』
『本当に?お兄ちゃんってそうそう友人は作らないの。前の学校でも、お兄ちゃんから聞いたことある友人って一人だけなのよ』
玲那ちゃんが話してくれたことだ。
しかし彼はそう呼べるやつがいた、と言った。
つまり今は…
「それで転校するって決まった時、真っ先に親友に告げに行ったら………絶交されてな」
渇いた笑いとともにそう彼は言った。
告げただけで…?
「研くんはなにも悪く無いじゃない!転校なんて、研くんにどうこうできるわけじゃないのに」
自分のことにように怒りがフツフツと湧き上がってくる。
家庭の事情なのだから、彼には何も出来ないことくらい誰でも理解出来るはずだ。
なのにそれを彼の罪だと、そう押し付けるかのように絶交するなんて…。
「ああ、だから思ったんだよ。
“そんな絆ならもう要らない”って」
「……ぇ」
「簡単に消えるような繋がりならもう要らない。だから俺は、友人というものを求めなくなった。手に入れる苦労と、それが壊れた時の苦悩の釣り合いがあまりにとれないから」
彼が言うことには共感できる部分があった。
弱い繋がりはいらない。そんなのはあっても無駄だと私も思うから。
でも…。
「それなら…なんで私に声をかけたの?」
繋がりを必要ないと言うのなら…私は一体なんなのだろうか?
彼は表情を変えず、淡々と話していった。
「人は一人きりで生きていけない。一人だけで何かを成すことが出来ても、生きていくことは出来ない。だから俺は…自分に役立ってくれる“能力”だけを求めた。その結果が、“雪ノ下 雪乃との始まり”だ」
「…利用するため、だけ」
「そうだ」
詫びるような様子は一切なく、彼は私をまっすぐ見つめた。
「でもいつからか、俺は雪乃になら頼って良いと心を許していたことに気づいた」
「………」
「だから言おうと思ったんだ。本当に頼りたいなら、その前に信じようと。俺の言いたくない過去を、本音を言うことで…それが“信頼の証”になる…そう思ったんだ」
「…そう」
研くんの話を聞いて、別にショックはなかった。
むしろ納得した…実に彼らしいと。
人の繋がりの脆さに落胆した彼は、信じるのをやめ、価値のみを求めた。しかしまた彼は他人を信じてみようと思い始めた。
だがそれはあまりに都合が良すぎる。だから次は信頼の証として、自身の過去、それと最初は私を利用するためだけに接触したこと…その二つを“信頼の証”として晒したのだ。
隠し続けることに罪悪感を感じたのかもしれない。
でもそんな素直で誠実な彼だからこそ、私は憧憬を抱いた。
「研くん。別に私は貴方に利用されるだけの存在でも良かったのよ」
「………は?」
「私は貴方に必要とされて嬉しかった。それに…救ってくれたじゃない」
彼は目を見開いた。
「なんで知って…いや、それよりもあれは偶ぜ…」
「それでもよ。私は研くんに人生を変えてもらえたの。だから貴方にとって、友人だろうと利用するだけの存在であったって私はかまわない。貴方の役に立てて、そばに居られるなら…なんだっていいの。
でも、研くんが許してくれるなら……
私は…いえ、私が貴方の親友になりたい」
吐き出すように、懸命に伝えた。
少しだけ本音を言えて、なんだか身体が軽くなった気がする。
「……ははっ。まったく、姉妹揃ってなんで俺なんかにそう言えるんだよ」
そう呆れた笑いを浮かべる。
でもそれは仕方のないことだ。彼はそれだけ私と姉さんに影響を与えたのだから。
「…じゃあ、これからも宜しくな。親友」
彼は右手を差し出した。
「ええ、研くん!」
彼の手を握ると少し冷たかった。けれど、その冷たさが心地よかった。
私はこの瞬間、この感触、この匂いを忘れない。
私にとって…本当の親友が出来た瞬間なのだから。
◇◆◇◆◇
雪乃への話を終えると、カフェを出てそのまま俺の家へと向かうことになった。
いやぁ……緊張したわ!!
でも…ふふふ……ふふふふふ……
俺にまた親友が出来たぞぉぉおお!!
Fuuu!!これでもうぼっちは卒業だ!やったぜ!!
俺さ、ずっと思ってたんだよ………雪乃って万能じゃね?
勉強も出来て、玲那や両親にも仲良くて、なおかつ家事全般なんでも出来る。
そして!!!
ここ重要な?
あの!うるさいハルに!対抗できる唯一の人材なんだよ!!(うるさいのは貴様)
いやぁそう考えたら、こんな子と信頼し合える関係なら嬉しいなって思って、俺への印象を聞いたら、友人と思ってくれていたらしいじゃん!
なら、これはもう腹割って話すしか無い!異論反論の余地もなし!
だから俺も雪乃への最初の印象を話して……ついでに黒歴史も話し、そして信頼出来る関係になりたいと、そう伝えたわけ!
そうしたら、ふふふ…俺と親友になりたいと!雪乃が言ったわけよ!もうあの時は涙止まらなかったわ!……心の中でだけど。
でも俺の黒歴史を語った時はマジで緊張したね!
引かれないかな?ってずっとヒヤヒヤしてたもん。だけどそんなこと無くしっかり聞いてくれて本当に良かった!
あー、でも雪乃が『利用されるだけの存在でも良かった』とか言い始めた時はビビったね。なに言ってんのこの子大丈夫?ってなったわ。
だって怖いでしょ?そんなこと自分から言い始める子とか。
雪乃も実はハルとはまた違った怖さがあったりして……いや、もう親友なんだかあまり疑っちゃいけないよね。うん、信じよ信じよ。信じる心は世界を救うんだから!多分!
おっと、そんなこと考えてるうちに家に着いた。
「すぅ…ふぅ…」
うん?なんで家入る前に深呼吸してるんですかね、雪乃さん?
あっ…そっか。玲那に会うのが緊張するのか!
「雪乃…玲那のことなら大丈夫だぞ」
「え…!知ってるの?」
「まあ、アイツの兄だからな」
「ふふっ姉さんと同じこと言うのね」
「え、ハルも同じようなこと言ったのか…」
もう言わないようにしようかな…割とマジで。
「あら、姉さんのこと嫌い?」
「いや…そうじゃないんだけどな……」
「昨日は仲良さそうだったのに」
あれはアイツがしつこく絡んでくるだけなんだけどね…。
「まあ、そんなことは良いんだよ。玲那は別に怒ってるわけじゃないから、少し話せば解決するさ」
「……そうかしら?」
「ああ。俺の言うことは信用出来ないか?」
「い、いえ!そんなわけないじゃない!」
「お、おう…そうか。なら良かった」
そんな強く言わなくても良いんだぞ、雪乃。
びっくりするから…ホントに。
俺はドアノブに手をかけた。いつもなら隠してある鍵で開けるのだが、もう17時になりそうな時間だ。どうせハルもいるんだろうし、開いてるだろう。やはり扉はすんなりと開いた。
「ただいま」
「お邪魔します」
いつものように入ると、リビングから顔を出したのは玲那だった。
「お、おかえりなさい…」
玲那は雪乃の顔を見ると、気まずそうに目を逸らした。
一応、俺の方でフォローぽいことは言ってあげたから…二人きりにしてあげれば解決するだろう。
「じゃあ、俺は先に部屋に行ってるぞ」
「え、研くん…?」
「お、お兄ちゃん?!」
決して面倒だから任せようとか…そういったことない!断じて!
◇◆◇
「あっ!おかえり〜。遅かったじゃなーい」
………な?
アイツら二人きりにするってことは、俺はハルと二人きりになっちゃうんだよ。
うるさいよ怖いよめんどいよぉー!
「ちょっと雪乃に話があってな、カフェに寄ってた」
「えっ、ずるーい!私も連れてってよ」
「いや、ハルがいると色々とうるさいから」
「流石に騒がないわよ、私をなんだと思ってるの!」
「そうだな、じゃあ言い方を変える。ハルがいると鬱陶しいから」
「なんで悪い方向に行くの?!もー、そんな風に言われると私も泣いちゃうよ?」
ほらめんどい!
しかも泣いちゃうよ?とか言っておいてめっちゃニヤニヤしてるし!
まあ、でも……たしかに言い過ぎたかもしれないし?
泣かれるのめんどいだろうから…なんかフォローしとくか。
ああ、そういえば……
「悪かったよ。ほら、これあげるから」
俺は自分の机の引き出しから一つのキーホルダーをあげた。
「……白いキツネ?」
俺がだいぶ前にディスティニーランド行った時に何故か売っていた、幸せの象徴のキーホルダーの動物シリーズの一つだ。犬、猫、虎、馬、象、キツネ、蛇、オオカミ、豚、フクロウ、イルカ、ワシの十二種類セット。それぞれ他にも虫シリーズとか、水に住む生物シリーズとかもあった。
俺、意外とこういうの好きなんだよね。ていうかなんであんなところにこれ売ってたんだろう?普通こういうのってファミレスとかで売ってるものだと思ってたんだけど。
ちなみに父親には象、母親にはフクロウ、玲那にはイルカをあげた。
「白いキツネって幸福を呼ぶ象徴らしいぞ」
あと人間関係が良くなるとか!
あっ、この人に一番不要なものだった!
「くれるの?私に…?」
「ああ」
まっ、あげちゃったから…いっか!
「そっか……ありがとう、研」
「…どういたしまして」
……あれ?思った反応と違う。
もっとこう騒ぐ感じに喜ぶと思ってたのに…。
「幸福か……」
ていうかハルさん?その白いキツネのキーホルダーじっと見つめなくて良いんじゃないかな?そういう姿見ると、なんかこっちが恥ずかしくなってくるんですが!ね、やめよ?!
「もしかして、余計だったか?」
「……え?いやいや、そんなことないよ?ただこういうの貰えて嬉しく感じるのって初めてで…」
え、なにその反応。
「…………あ」
そうでした…ハルって俺に告白してきた人だったわ!!!
なんかこういうのあげるのってそういう感じのこと意識してるって思われるかもしれないというか思われてるに違いないぞおい!!そんなのホントに微塵も思ってないのに!いや、分子レベルではあるかもだけど!!
「その、ハル…それは別に」
「大丈夫、分かってるよ。気遣いでくれたんでしょ?」
「…よく分かったな」
「まあね。研の考えること、少しは分かるから」
「そうか……」
え、俺ってそんな分かりやすいですかね?
「でも嬉しいのは本心よ。大切にする」
「まあ、なら良かった」
よし、これで面倒な場面も減ってくれると嬉しいなぁ……。
「それで?雪乃ちゃんとなに話してたの?」
あれぇ?さっそく面倒な質問がきたぞぉ?本当にご利益働いてますかぁ?
あ、ご利益をハルにあげただけで、俺にご利益あるわけじゃなかったぁ…。
「はぁ……まあ要約すると、雪乃が親友になったってことくらいかな」
「そう、親友ね。……え、なにそれズルい!」
あーはぁん?
「ズルいって何が?」
「だって私は友人止まりなのに、雪乃ちゃんが親友なんてズルいでしょ!」
「何言ってんだハル。お前がただの友人なわけないだろ」
「え?そ、そうなの…じゃあ私は研にとって…」
「決まってる。俺にフラれた人だろ?」
「うわーん、すごい傷えぐってきたー!」
「嘘泣きやめい」
「じゃあ私も親友って認めてくれる?」
「いや…そんな親しくないし…」
「……今、素で言った?素で言ったよね?」
あれ?面倒に怖さが加わった気が……
「いや、冗談だよ。あれだ、信頼の裏返しってヤツだ」
「……後付け感がすごいんだけど?」
おっと、笑顔なのに怖いぞぉ?可笑しいな!
いや可笑しくねぇよ!早く逃げ道を探さねば!
「そろそろ夕食になるな。下に降りようか」
「あっ誤魔化した」
フッ、馬鹿め…逃げるが勝ちって知ってるか?お前なんて逃げてしまえばこっちのもんよ!
「なら、私も行くよ」
あ、逃げられないようですね…。
◇◆◇
下に降りると、キッチンから雪乃と玲那の声が聞こえてきた。
察するに仲直りは出来たようだな。
「あら、研くん。それに姉さん。もう少しで出来るから待ってて頂戴」
「分かった」
俺は素直にリビングで待つことにしよう。玲那も鍋見てるし、ここにいちゃ邪魔になる。
「雪乃ちゃん、研の親友になれたんだって?」
って思ったそばから雪乃に絡むなよ!!
「姉さん、研くんを問い詰めたの?」
目を鋭くしてそう雪乃は言った。
「問い詰めた訳じゃないわよ?ただ泣く振りしたら教えてくれただけ」
「はぁ…研くん、さぞかし面倒だったでしょうね」
「えー、そんなことないわよ。ねぇ研?」
うわぁ…自覚ないフリしやがってる。
「いや面倒でしたよ?」
「うぅっ…そんなこと言わないで…」
「それだよ、その嘘泣きだよ。ていうか泣きすぎだし」
「ありゃ、そうだったか…」
「姉さん、白々しいわよ」
ナイスだ雪乃!流石だぞ、親友!!
「まあ、別にいいのよ。戦果はあったしね」
「戦果?」
「そう、コ・レ♪」
ハルは雪乃に見せびらかすようにあの白いキツネのキーホルダーを出した。
「なにそれ…」
やめてー!なんか恥ずかしいからやめてー!
「研がくれたの♪幸福を呼ぶものなんだって」
「あ、それ玲那も貰ったやつだ!私はイルカだったよ」
玲那、余計なこと言うんじゃない!
雪乃だけにあげてない状態なんだから、下手したら仲間外れにしてるとか思われちゃうじゃん。ホントにそんなこと無いからな?
それに…ほら、ね?残るプレゼントって少し恥ずかしいじゃん!
「姉さん…ズルいわ……」
なんか似たようなことさっきも聞いたなぁ…遺伝かなぁ?
はい。遺伝とかそんな大層なことでもなかったですね分かってます!
「大丈夫だ、あとで雪乃の用にやるよ」
「え、でもそんなの悪いわ…」
「遠慮するな」
もうこうなったらあげたほうが俺の心すっきりするし!
「えー、じゃあ研。私も親友って認めてよー」
「なんだよ、じゃあって。あー分かった分かった。いいよいいよ」
「え、本当に?適当に言うと後で後悔するよ?」
怖いよ!その言い方!
「もう少し静かにしてくれたら認めるよ」
「そんなことでいいの?」
「研くん、正気に戻って!認めても面倒には変わらないわ!」
「…雪乃ちゃ〜ん?」
「……じ、事実じゃない」
あの…雪乃?
強気なこと言いながら、そっと俺の後ろに隠れるのやめようか?なんか小ちゃくなって可愛いけどさ。
「分かったわよ、もう少し大人しくするわよ」
おお、ハルが少し引いた!流石だぜ、雪乃!
「じゃあ、キーホルダーは帰るときに渡すよ」
「ええ、楽しみにしてるわ」
◇◆◇
そんなこんなで夕食後。
後片付けを終えてみんなが一息ついているときに、ハルがおもむろに口を開いた。
「そういえば雪乃ちゃん。海外に行くことは担任の先生に言ってきたの?」
「ええ、問題ないわ」
初耳の単語が耳に入った。
「海外…?旅行でも行くのか?」
「え、雪乃ちゃん言ってないの?」
「ごめんなさい、玲那ちゃんもいる時に言った方がいいと思って…」
「なるほどね。まあ海外に行くのは、旅行もなんだけど…留学の下見って感じかな」
「留学の下見?」
ずいぶん金持ちだなぁ…留学の下見兼ねての旅行とか。
「ハルが行くのは分かるんですけど、雪乃も行くんですか?」
「ええ…私も中学に入ったら行く予定なのよ。だからついでに行くことになって」
「そうなのか…」
「なにぃ〜?私と雪乃ちゃんがいなくなって寂しいの?いないって言っても今回は旅行だから1週間くらいだよ?」
何言ってんだこの人は。
「寂しいに決まってるだろ。いつもいる奴がいないんだから」
部屋のポジションに空きが出来るんだから寂しいに決まってるだろうが!
ほら、コレクションとかでほんの数個空きがあると寂しいのと一緒だよ。
「そ、そう…寂しいのね…」
「…研って女たらしなのかな?」
…なんでお二人さん顔赤くしてんの?
まさか…いやでも…寂しいって言っただけなのに?
女ってよく分からないなぁ…。
「それで?いつから行くんだよ?」
こう言う時は話題チェンジで。
「その、来週からなのよ…」
雪乃が申し訳なさそうに言った。
「来週ってことは、今日が金曜日だから……明後日か」
日曜日って結構すぐだな…。
「ちょっと急だけど、お土産楽しみにしててね!」
「そうか。というかお土産って…どこに行く予定なんだ?」
「確か、アメリカのどこか…」
「どこか…って自分のことなのに適当だな」
「仕方ないでしょ、あまり行く気になれてないんだし。雪乃ちゃん、分かる?」
「姉さんが行き先決めたら教えてくれるって言ったから、私まだ聞いてないわよ?」
「あら、そうだったかも…」
ホントに大丈夫なの、この人。
前にハルって完璧超人だよなぁ、なんて思ってたけど…今そんな面影全く感じないぞ。
「でも仕方ないじゃない…今の私は、研に夢中なんだから♪」
「はいありがとうー」
「あのね、研。お姉さんこれでも結構モテるのよ?私から告白はしたけど、そんなぞんざいに扱ってると、あとで泣くことになるぞ?」
「え?俺を諦めるんですか?なら早めにお願いします」
「うわーん、酷ーい!少しも振り向いてくれなーい!」
「お前が泣いてどうするんだよ…ていうか雪乃と玲那いるのに言っていいのか?」
あまりにサラッと言っていたけどさ。
「私は姉さんから直接聞いたから大丈夫よ」
「玲那もお兄ちゃんたちがいない時に聞いた」
マジか……こういう恥を余裕でバラせる所は素直に凄いって思うわ。
「うふふっお姉さんをナメないでよね?」
…………これ話終わらねぇな。
あれま、もうこんな時間か…。
「もう夜遅いし、そろそろ送るよ」
それと、雪乃用のキーホルダーも取ってくるか。
「ねぇ、無視は酷くない?」
かすかな怒気を帯びたその一言を、俺は全力で聞かなかったことにする。大丈夫。聞いてなければ罪ではない。バレなければ犯罪じゃない原理と同じだ。だってよく言うでしょ、無視が一番だって!
……いざとなれば雪乃を盾にしよう。うん。
◇◆◇
「じゃあ、玲那。送ってくるよ」
「うん、行ってらっしゃーい」
玲那に見送られて俺は玄関を出た。
「それじゃあ、行こっか」
「そうね」
「……ああ」
よかった…先ほどのハルの怒りは消えているようだ。
「それで、その…研くん……」
「ああ、大丈夫。忘れてないよ」
家出た途端言ってくるとは思ってなかったが、流石に忘れてはいない。
そして、彼女にあげる動物も決まってる。という一択しか無いだろう。
「ほら、猫だ」
「っ…ぁ…ありがとう、研くん」
おお、流石生粋の猫好き。目の輝きが尋常じゃない。
因みにあげたのは招き猫とかではなく、普通の猫の形をしたものだ。
猫は厄を退け、福を呼ぶものとして知られる。また女性のシンボルであり、繊細さや隠し事なども指すらしい。
まあ雪乃の場合、隠し事というのはあまり合わないが…これだけ喜んでくれるなら、渡して正解だろう。
「ねぇ、研って雪乃ちゃんに甘いよね?」
「そうか?」
「甘いよ。甘々だよ。だから!少しくらい私にも甘くして欲しいなぁ、なんて♪」
結局そういう方向に持っていきたかっただけだか。
昨日と比べて二割り増しなくらい鬱陶しかった人が何言ってんだよ。
まあ、でも…確かに可哀想に思えなくも無いか…
「分かった。じゃあ何して欲しい?」
「え?……本当にいいの?」
「そんな呆気にとられた顔しなくてもいいだろう?それとも、やっぱ無し…」
「そんなわけないじゃ無い!」
お、おお…あまり強く言わないでよ。びっくりするだろ。
……ていうか雪乃が歩きながらも、ずっとキーホルダーに向かってにゃあにゃあ言ってて、こちらに全く反応が無いんですが?
「じゃあ…そうだなぁ…………キスとかは無理そうだし」
ちょっと?小声で何言ってるの?
「うーん。明日まで考えておく…じゃあダメ?」
まあ、それくらいならいっか。
「分かったよ」
そう言うと、ハルは満足そうにうなづいた。
……よく考えると、余計なこと言っちゃったかもな。
「にゃあ……にゃあ………」
あの雪乃さーん?
そろそろ戻ってきてくれていいんだよ?
…ていうか戻って!!
◇◆◇◆◇
「またね。研くん」
「じゃあねー、研」
「ああ。また明日」
いけない。気付いたらもう家の近くまで着いていたようね。
恐ろしいわ、この猫の魔力。
「ねぇ、雪乃ちゃん」
「なにかしら?この猫なら触らせてあげることは出来ないわ」
「すごい気に入ったんだね…。違うよ、聞きたいことがあるの」
「姉さんが私に?」
珍しいわね…。
「研が一つ頼みを聞いてくれるんだけど、なにを頼もうかなぁって…」
「ちょっと待って。一体いつからそんな話になったの?」
「ついさっきよ。あ、そっか。ずっとにゃあにゃあ言ってたから…」
「姉さん?…それで私になにを聞きたいの?」
それ以上口にするのは許さないと、私は目で訴える。
「…はいはい。まあ、要するに雪乃ちゃんだったら、研くんになに頼むって聞いたかったの」
「私なら…?」
「そう。私が思いつくの全部研にダメって言われそうだから…」
「逆に訊いてみたいわ、姉さんの考え。まあ言いたいことは分かったわ。でも珍しいわね、姉さんがそんな気遣いするなんて」
前までの姉さんならこんなことはしなかった。いくら彼のことが好きだからって、ここまで変わるのかしら…?
「私もらしくないって思うよ。でも研には本気で嫌われたくないんだ」
「あんなにちょっかいかけておいて?」
「だって…こんな純粋な気持ちなんて持ったことなかったから。私もどうすればいいのか分かってないの」
「……………」
姉さんの言っていることが、少し分かる気がした。
要するに不安なのね。
未知とは、初めてとは…冒険のようにワクワクするものだけれど、それと同じくらい怖いもの。姉さんはそんな物事にも対処出来ていたはずなのに、彼だけは特別だから失敗したくない…それが私にすら意見を求める理由なのだろう。
「まあ、それくらいの質問なら答えてあげる」
「…ふふっ。ありがと」
だけど、私もすぐには思いつかない。
彼に頼みたいことなんて……あ、そうだわ。
「私なら…研くんの連絡先を教えてもらいたい、かしら」
「おお、それいいかも!雪乃ちゃんも旅行帰りに買って貰えることになったからね♪」
「ええ。それに関しては姉さんの力もあるから感謝してるわ」
「私も買って貰えるしちょうどいいわ」
そう、私もとうとう携帯を買って貰えるのだ。もちろん、真っ先に連絡先に入れたいのは研くんだ。
それにしても本当にお父さんに借りがあったなんて驚きだわ。
って……え?
「姉さん、持ってなかったの?」
「うん。別に高校生からでいいかなぁって思ってたから。でも、研が持ってるなら私も欲しくなっちゃって」
「まったく…勝手ね。姉さんらしいけれど…」
いけない。長話が過ぎたわね。
「そろそろ行きましょう。旅行の準備あるだろうし」
「そーだね。研へのお願いも決まったし♪あっ…そういえば今日はお母さんいたかもしれないしね…」
「それ先に言いなさいよ、姉さん……」
◇◆◇
次の日。
今日は土曜日ということで、午前授業。
普段であれば、授業を終えた後は研くんの家へ行くのだけれど…。
「ごめんなさい、研くん。実は昨日、少しお母さんに言われて…今日は真っ直ぐ帰らなきゃいけないのよ」
案の定というべきか…昨日の夜、旅行の準備をしなければならないという事情が絡み、お母さんから今日はすぐ帰ってくるように言われたのだ。姉さんも同じく、相当悔しがっていた。
「そうか…じゃあ次に会うのは、旅行から帰ってきた時か」
「ごめんなさい」
「まあ、仕方ないよ。こんな付き合い方が許されているのが凄いことだから」
「そうね。そう言った意味では姉さんの存在は大きいわね」
「……なんだか、前より姉に対して敵対心みたいなの無くなったよな」
「それは……研くんのおかげでもあるんだけれど」
「は?そんな大層なことしてないと思うけどな」
彼がそう言うなら、そういうことにしておきましょう。
「じゃあ、俺もこのまま帰るよ」
「それじゃあ…また今度ね」
「ああ、楽しんでこいよ」
「……ええ、そうね」
本当は貴方も、玲那ちゃんもいて欲しい…それを知っていて欲しかった。
考えてみれば、私は今まで研くんに言えなかったこと、伝えられなかったことが多かった気がする。
だから私は、かならず後悔する日が来るような気がしてならなかった。
◇◆◇◆◇
さてと、ちゃっちゃと帰るかぁ。
にしても雪乃とハルがいない……柄にもなく寂しく感じる。
でもまあ、たった一週間の辛抱だ。
あのうるさいハルがいないんだから、逆に言えば静かな一週間を過ごせるということ。
雪乃がいないのは少し大変なところあるだろうが、まあ玲那も色々できるようになったし大丈夫だろう。
「だだいまー」
あれ…?
なんかいつもと違う?
「靴が…2人分多い?」
でも見覚えはあるものだ。
「もしかして…父さんと母さんか?」
過去を辿った 鎌ヶ谷 研 はわずかに前進し、二人はカタチを見つけた。
よくよく考えたら、やはりオリ主は前世のクズな部分が治ってないのかもね。言っていいことと悪いことがあるでしょ(他人事)
書き直しまくったせいで、頭が少しクルクルパー化状態。
もし変なところあったらすみません。にしても終わり方が想像についちゃうね…(゚ω゚)
エピローグは明日までには投稿してるはずです(それは連続なのか?)
にしてもゲームのイベントの遅れを3日で取り戻すのって大変だね。