“N” ―本作主人公。緑色の癖の強い髪が特徴。普段は心優しい青年だが、戦闘、特にガンダムタイプを相手にすると性格が豹変する。
先輩 ―文字通り先輩。“N”のサポート役。なんの先輩かは不明。
広大な砂漠の中、闇夜に紛れて砂埃を上げて進むモビルスーツ達がいた。砂漠に溶け込むように黄土色に塗られた機体は、地球連合軍の量産機である〈ストライクダガー〉。脚部には砂漠での移動に適したホバーユニットが接続されている。近くには地球連合軍と、連合制に反対するゲリラ勢力とプラントが組んだ同盟勢力が衝突する紛争地帯があり、彼らはその紛争に従軍していた。それぞれの武装は最低限のものだけで、それぞれが大型のコンテナを背中に装備している。補給路への攻撃などが相次ぎ、徐々に押され始めた連合軍が苦肉の策で実行している「ネズミ輸送」の最中であった。
遠くに響く、僅かなそれらの駆動音を捉え、薄く瞼を開く。それを掻き消すようにコクピットの中に響くのは、錯綜する作戦指示の無線。しかも現地語の訛りのせいで聞き取れない単語も多い。程よい1Gの重力に身を任せ、睡眠の態勢に入っていたパイロットは、その喧騒に目を覚まさざるを得なかった。普段はノイズとして聞き流す音も、睡眠時とあれば話は別である。寝る時には程々の雑音があった方がいい、などと言う人もいるが、どうやら残念ながら自分には当てはまらないようだ。
『おい、聞こえているのか?』
多くの声の中から見つけたその声は、自分に向けての言葉である事を気付かせるほどに、耳に馴染む。
やっぱりZAFTの標準語が一番美しい。ボクが弾くピアノのアリアはプラントの人間にしか任せられない。
『どうした、何か問題があるのか?応答しろ』
「聞こえてますよ」
『ならさっさと返事しろよ……。どうせ寝てたんだろう?世界標準時からズレたこんな辺境の地じゃ無理もないだろうがな』
呆れと皮肉を増量した返事に苦笑いを返す。
『そっちのルートに一個小隊だ。やれるか?』
「問題なし。バッテリーも外付けのおかげでほぼ満タンです」
『ったく、その機体はホントに電池食いだからな。まあ、問題ないならいいさ。とにかく、以降は無線封鎖。規定時刻まで緊急時を除いてはダンマリで頼むぜ、“N”君?』
「了解、先輩」
ふと目の前に垂れた緑色の癖っ毛をかきあげながらフットペダルを踏む力を強める。
甲高いアクチュエータの稼働音と振動がコクピットに反響し、仰向けになっていた機体とともに徐々に水平へと戻り始めた。
「ミラージュコロイド外部迷彩解除、フェイズシフト起動」
音声コマンドに反応し、コンソール内の表記が変化する。ミラージュコロイド散布状態を示すアイコンが消え、代わりに[Phase Shift]の文字が灰色からアクティブを示す赤へと切り替わった。外から見れば、起き上がろうとしている巨人が突然そこに現れたかのように見えるのだろう。
そして、同時にアラートが鳴り響く。ミラージュコロイド粒子はレーダー波と可視光線を撹乱する効果があるが、それは自分の機体にも反映される。既にレーダーの探知領域内に入っていた敵機も、ミラージュコロイドを遮断した今になってようやく観測できたという事だ。尤も、それは相手も同じことで、今頃突然現れた伏兵に大わらわになっているのだろう。その分、熱を利用した索敵システムや“先輩”の索敵を利用して既にその存在を知っていた“N”に分があると言える。
「さて、悪いネズミは駆除しないといけませんね」
ゆらりと立ち上がったそのモビルスーツは、黒く変色したフェイズシフト装甲を鈍く光らせ、ギロリとモノアイが迫る〈ストライクダガー〉達を睨んだ。
両腕の前腕に接続された〈グレイプニール改〉が獲物を待ち構えるかのように蠢く。
地獄から這い出た悪魔のごとき凶悪な機体、〈ブリッツガンダム・ガイスト〉はスラスターを煌めかせ、一直線に跳躍した。
急激に掛かる加速Gに快感を覚えた“ニコル”は、その様を脳内に描き、ニヤリと笑う。
死んだはずのモビルスーツとパイロット。それは、旧世紀の神話で語られた悪魔のようであった。
「いや、“その物”かもしれない」
そう呟くと、悪魔は嗤った。
―おしまい
説明
“N”
―オーブ近海でキラによって撃墜され死亡したニコル・アマルフィのパーソナルデータを元に作られたカーボンヒューマン。一応本人ではない模様。カーボンヒューマンって便利……。
ブリッツガンダム・ガイスト
―ブリッツガンダムをモノアイにして両腕にグレイプニールくっつけた奴。これを書くきっかけになった改造ガンプラが元ネタ。突然ザフト側で無線兵器(ドラグーン)使い出したプロヴィデンスだけど、ルーツはなんだろうと考えた結果、グレイプニール辺りじゃね?ブリッツのスペアパーツとか大破した残骸とかをベースに復元したやつに試作型ドラグーンを搭載したよ、っていうなんでもアリのやりたい放題機体。ビームサーベルとしても使えるビームキャノンが内蔵されている。ぶっちゃけSEED版のハンマ・ハンマ(ミラコロ付き)。
先輩
―何も考えていませんでした。多分ライブラリアンかなんかの関係者。
ストライクダガー(局地仕様)
―ジム顔マドロクが陸ガンのコンテナ背負ってて、マドロクみたいな砲撃能力がない量産機のSEED版。CEのホバー機ってドム以外にはゲテモノしかいなかった記憶。
と、あまり考えずにブリッツガイストが活躍する様子を妄想して文字に起こしただけの、まさにチラシの裏に書けよっていう超短編でした。ここまで読んでいただきありがとうございました!