♪~めちゃあつ大陸~(足枷太郎)
昏睡レイパー。
田所浩二。
(なんか円がモワンモワンしてるやつ)
すべてのお客様に「うん、おいしい!」を。
中野食道と。
ガッツリ宣伝MSRMZNMの提供でお送りします。
(なんか円がモワンモワンしてるやつ)
朝の下北沢駅前。
仕事へ向かうのか、それとも帰路か。人々は静かに足を運ぶ。
その中、ただ一人だけ、ベンチに座り込み、鋭い視線でその人の流れを見る男。
昏睡レイパー、田所浩二、24歳。
世界でも指折りのレイパーであり、その名を知らぬものは少ない。
下北沢を中心に活動する田所は、いつも朝からここで獲物を待つ。
その目は、突然人間界に降り立った、野獣にも見える。
「基本は朝からですね。そうじゃないと、中々獲物って言うのは見つからないですから」
――どれぐらいで見つかるものですか。
「うーん……大体、20日ぐらい……いい時で10日でとか」
――一日中、探してですか。
「そうですね、ほぼ一日をついやして」
当然だが、昏睡レイプは簡単ではない。大体の人間には嫌がられてしまう。
反撃を受ける可能性も高い。
自分好みにあった顔や体だけではなく、いかに昏睡レイプしやすそうかも、重要な要素だ。
そうなると、獲物になる人間は限られてくる。
この獲物を選別する時間に、レイパーたちは一番、時間をかけるという。
「これをおろそかにすると、そもそも成功しませんからね……一番大変ですけど、それだけ、はい、重要なんです」
――なるほど。彼とかどうなんですか。
スタッフが少しからだが細く、顔のよい男を指差した。
「……」
田所はただ見るだけで、動かない。
素人目から見れば、とてもレイプしやすそうな男性。だが、経験をつんだ田所の目には、まったく別のものが映るようだ。
獲物を探すこと3時間。人も少なくなってきた。
「移動します」
田所は近くでタクシーを拾う。
「この周辺を回ってください……はい、俺が降りるって言うまで」
タクシーは下北沢の中を巡り、田所は窓に肘をかけて、外をじっと眺める。
――タクシーで探すんですか。
「はい。自分で運転してると、探すのに集中できないんで」
――お金かかるんじゃないですか。
「まあ……そこは、ねえ。しょうがないところって感じですね」
その表情はけわしい。
「ぜーんぜん~、みーっつからな~あ~い~……へへ……ホントにいないな」
――今日は不作ですか。
「ですね。いつもなら、獲物にはならなくても、それっぽいのが一人や二人、見つかるんですけど……はあ」
そのまま、実りはなく。タクシーを降りると、あたりは暗くなり出していた。
「こっからは深夜になるまで歩きですね」
――まだ探すんですか。
「はい」
――何時まで。
「スー……その、日によってって言うか、調子によって代わってくるんですけど……大体ぃ、2時とか3時ですね」
日をまたいでも、獲物探しは終わらない。
夜の下北沢を歩き続けて、時刻は2時30分。
やっと家に帰ると、田所は何も言わず倒れるように眠った。
そして、次の日。
「あ、おはようございます」
朝の5時、睡眠時間は2時間足らずだ。
――早いですね。
「いつもこんな感じですよ。たまにベンチとかで寝たり、やわらかいゴミとかあったらそこで寝たりしますね、ハハハ」
そういって、田所は笑う。
表情とは裏腹に、目のくまは、はっきりと疲労を表していた。
――やめたいと思ったことは。
「ないです。好きでやってるんで……確かに大変ですよ、大変ですけど、それだけ達成感って言うか……すっごい気持ちいいんですよ、できたときは」
田所が昏睡レイパーを目指したのは、10歳のときだった。
父親のベッドの下に隠してあったAVを見たとき、田所は衝撃を受けた。
そこには、芸術ともいえる手際で昏睡レイプする男。父が映っていた。
田所の運命は、その時決まった。
「両親にはすごい反対されました。特に父が……たぶん、この世界のことをよく知ってるからだと思います。時代の流れもあるし」
――昔は違ったんですか。
「もうぜんぜん違いますね……俺がー……はじめてやったのが17の時で、その時とはもうぜんぜん」
――どんどん大変に?
「そうですね。カメラも増えて、まあいいことなんですけど、警察もすごいちゃんと捜査するようになって。でも、こっちからすると、すごいやりづらいんですよ……昔はよかった」
昔はよかった。
田所は昔の話を振り返ると、いつもそういった。
時代は昏睡レイパーたちを、排除しようとしていた。
一緒にタクシーに乗り込もうとしたとき、我々はこんな様子を目にした。
「え、ダメですか」
運転手は、田所がレイパーであることを知っていた。
「でも……ああ、そうですね……はい……はい」
運転手からあびせられる、罵詈雑言の嵐。
それに田所は、ただ相槌を打つ。
非人道的、人間の屑、タンカス野朗、犯罪者。
すべて事実だけに、何もいい返せない。
いうだけいうと、車をいってしまった。
「いわれちゃいました……うん、まだそのー、レイパー……に対するイメージっていうのは悪くて……やっぱり、分かってもらえないことも多いですから」
――こういうのは多いんですか。
「めっちゃくちゃ多いですよ、ハハ……まあ、仕方ないのかなって……うん。どうにかしたいって思うけど、いちレイパーにできることは、ありませんから」
レイパーに対する認識は、よくなる兆しはない。
そんな中、田所はもがいていた。
今日は、久々の休みだった。
レイパーの後輩たちと席を囲み、ジョッキを鳴らす。
「そこでさ、ひいちゃダメなんだよ、やっぱ」
「あーはいはい」
「うん、一番そのー相手がさ、来そうなときっていうのは、逆にチャンスだから」
「隙があるってことですか」
「隙がある、隙があるっていうか、あの、うーん……まあ、そういうことだな」
――田所さんはどういう人ですか。
「まあ、一言でいうなら伝説、レジェンド」
「おいおい、いいすぎだろお前」
「いや、ホント。これ以外にいいようがないっすって」
「バッカ、お前なー……そうやって俺をなんか変な風にする気だろ」
帰路、タクシーに乗った田所は、揺れながら窓の外を眺める。
その目は、いつもの獲物を探る目とは違う鋭さを持っていた。
「大変ですよ……俺なんかよりもずっと、あいつらは。これからもっと、レイパーは生きづらくなっていきますから……俺なんかぜんぜんですよ」
これからのレイパーたち。彼らを思い、田所は思いをめぐらせていた。
自分の知識を、若きレイパーたちに役立てたい。
そう思い、田所がはじめたのがレイプの講師だ。
今日は受講生たちを前に、熱弁をふるう。
「いいか!睡眠薬だ!睡眠薬を飲ませるタイミングってのが一番大事!途中どっかでトチっても、そこさえ押さえれば、とりあえずベッドには運べる。そこまでいけば8割……いや、9割はレイプ成功も当然だ」
時に、熱くなりすぎることも。
「何でわかんねぇんだよ……なあ」
「いや」
「いやじゃねえよ、いいわけすんな」
「はい」
「いいか、レイパーになりたいならな、ちゃんと毎日勉強しろ……やる気のないならやめちまえ。そんなやつにレイパーは無理だから」
「はい、すいませんでした」
「簡単じゃねえんだよ!みんな必死で勉強してんだよ!お前だけ何もせずにレイパーになれると思うなよ。一回だけちょっとうまくいってレイプできたからって、調子にのるな分かったか」
「はい」
「チ……座れ」
終わると、そこには肩を落とす田所の姿があった。
「時にはああやっていってやらないと、ホントに取り返しのつかないことになりますから……まあ、分かってもらえればいいんですけど」
その時は、突然に訪れた。
いつもどおり、朝の下北沢駅にいるときだ。
「ちょっと、いきましょう」
田所は立ち上がると、スタッフには目もくれず人ごみの中に入り、歩き出した。
ついていくと、前にいる青いパーカーの男性を指差した。
「あれですあれ、あの……あの、青いビニール袋もってる」
どうやら、獲物候補を見つけたらしい。
見つからないよう、距離をとってついていくと、男はマンションに入っていった。
「ここに住んでるっぽいので、ちょっと張り込みます」
少し距離のある電柱から見張ること3時間、男が出てきた。
「いきます」
また、尾行が始まる。
すると、男はボクシングジムらしき場所へ入っていった。
「あー……ジムかあ。難しいなあ」
――ダメなんですか。
「はい。普通のジムなら、まだいいんですけど……ボクシングジムだと……ちょっと見てきます、ここで待っててください」
田所はジムへと駆けると、じっと中を見た。
その表情は真剣そのものだ。
すると、一人、二人と田所を囲う男たちが現れる。
どうやら、警官のようだ。
――やっべ。
突然、田所がスタッフを指差したため、すぐにスタッフは逃げ出した。
翌日、下北沢の駅前に、田所の姿はなかった。
♪~カメピカリ~(足枷太郎)
田所は今、どこにいるのかは分からない。
ただ、田所の熱意を我々は知っている。決してここでとどまる男ではない。
田所の昏睡レイパーとしての戦いは、まだ終わらない。
END ――制作会社KBS――