外伝~2~永い後日談のクトゥロニカ神話『一途な彼等』   作:カロライナ

14 / 21
Episode14〖アンデット〗

 辺りに残されたのは硝煙の香りと爆雷が口元から垂れ流している鉄錆の香り、そして改良が施されたミントの香りが漂う粘菌の香りが地下には充満していた。

 

「…! ラッキー!!」

「ワン! ワン!!」

 

 脅威がなくなったのと共に爆雷はいち早くラッキーの元へ駆け寄る。ラッキーは自身のことなど気に留めた様子もなく、爆雷が無傷である事を喜ぶかのようにその場で跳ね飛ぶようにジャンプしながら歓喜の声を上げていた。

 …跳ねるたびに臓物が音を立てて崩れる。

 

「ダメだ!! 動くんじゃない! あぁ! クソ!! (はら)が! (はらわた)が!!」

 

 跳ねて喜ぶラッキーに対し、爆雷は跳ね上がった所を抱えるとこれ以上内臓が漏れないように優しく地面に降ろし、再び跳ねだしそうなラッキーを一喝した。そして止血するかのようにラッキーの腹を抑え、ショルダーバッグの中身を漁り始める。

 突然のお叱りにラッキーは何故自分が叱られたのかよくわからないが、ガスマスクを通しても彼が自分に対して心配していることだけは悟り、平気を示すためにガスマスクをベロベロと舐める。

 

「すぐに応急手当して動物病院に連れて行ってやるからな!! ちょっと待ってろ!」

「わんっ」

 

 しかしラッキーの行動は虚しく爆雷には届いているようには見えなかった。

 それどころか、焦りがラッキー本人への注目を阻害し、普通では考えられない異常事態に気付けることもなかった。

 その頃、ドッグテイマーは何処かぐったりとした様子で四肢のなくなった身体を大の字に広げながら空虚な瞳で天井を見上げ軽い溜息をつく。

 

「…おい ドッグテイマー。 ここは軍事施設だって事は検討ついてんだ…! つーことは医務室があるはずだろう? それは何処だ。何処にある?! くたばる前に吐け!! 吐きやがれ!」

 

 天井を見上げているドッグテイマーの視界に、非常に焦った様子のガスマスク姿の爆雷の姿が映り込む。ガスマスクのおかげで相変わらず表情は読めないが、声色から非常に焦っているのだけは彼女にもわかった。

 ドッグテイマーは、なんとしてでもこの憎き仇は自分自身の手で寝首を掻いてやろうと意気込みつつ瞳を爆雷へと向ける。

 

「あ゙? 誰が死んだって?」

「…!?」

「…何、マカドリが豆鉄砲を喰らったかのような顔をしてやがる。もうオレ様は、とっくの昔に一度死んでんだよ。死人がそう簡単にまた死ぬわけねぇだろうが」

 

 ドッグテイマーは胸倉を掴んで乱暴に前後へ動かす爆雷に向けて、睨みつけると歯を食いしばり鋭い犬歯を見せつけた。

 死んでいると思っていた存在が、苦痛の声1つあげることもなく動いたのだ。爆雷は大きくショックを受け固まる。怯んだ瞬間は絶好の攻撃のチャンスであったが、だるま状態にあるドッグテイマーには憎まれ口を叩くほかなかった。

 

「バウ!!! バウバウッ!!!」

「うるせぇぞ!! 脱走兵! てめぇ…! オレ様の基地に野良犬どころか、狂犬なんか連れ込みやがって!! この身体が修復されたら覚えておけよ!!」

「あ……あ……あ…?」

 

 目前で起こったあまりの衝撃に今度は逆に爆雷が尻餅を付いてしまう。明らかに怯えた様子で爆雷が尻餅を付いたことに対して、ラッキーは異変をいち早く察知したのか、爆雷の命令に背いてでも爆雷の元に駆け寄り、また何かを仕掛けてきたと思われるドッグテイマーに対して吼えた。

 しかし、動けなくなったとしても犬ごときに怯えるドッグテイマーでもなかった。寝転がった状態のまま犬に噛みつかん勢いで牙を向ける。

 

「きゅぅんきゅぅんきゅぅん…」

 

 ラッキーは固まって動かない爆雷へ悲しげな声を響かせる。先ほどと同じようにガスマスクを舐めてみるが反応はない。まるで石像にでもなってしまったかのようだ。

 

 




【後書き】
これは見事に1/1D8のSANチェックに失敗してますね。
SAN値が燃え尽きて狂人になるのが先か、命息絶えるのが先か。
元の世界に帰るのが先か。全ては神のみぞ知る。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。