外伝~2~永い後日談のクトゥロニカ神話『一途な彼等』 作:カロライナ
まずドッグテイマーは爆雷へ向けて、簡潔に自分や犬達が生き物とはかけ離れたアンデットであることを伝えた。
それだけの内容を伝えただけで驚愕する爆雷の姿は、戦闘時とはうって変わって実に面白味があったが、取引が成立し自身の身体が思い通りに動くまで、最後のお遊びは取っておくこととした。
次にドッグテイマーが話したことは世界の情勢について。彼女が知る限りの現在の年号について話し、また爆雷もまた自分が知りうる年号を彼女に伝える。
ドッグテイマーからしてみれば爆雷の話は馬鹿げた話であったが、真剣に傾聴するかのようにその耳を傾けて聞いていた。本当に爆雷の話は馬鹿げており、何度も鼻で笑ってしまいそうになりかける。目元しか見えなかったが、しかもそれが非常に真剣な様子で話すものだから、故に笑い転げそうになり笑死しかけた。
世界には神話生物と呼ばれる存在が暗躍しており、地球上に住まう人間を滅しようとしたり、混沌の裾のに陥れようとしていたり、研究の為に脳味噌だけを缶詰めに落し込んだり…。本当に、頭のおかしい、馬鹿げた話だった。
そして最後にドッグテイマーはこの地下に存在する施設について爆雷に教えた。詳細は彼女も知らなかったが、医務室の位置だけは都合よく知っていたために教える。
「…なるほど。つまり、白蛇様が言っていた1つの未来の姿ってのは…」
「何、ブツブツ言ってやがる? 気持ち悪ぃな」
「すまん。思い当ることがあってだな」
話を一通り終えると爆雷は考えるかのように、やや俯きガスマスク越しでボソボソと呟き眉をひそめる。その様子をだるま状のドッグテイマーは、命が惜しくない勢いで貶したものの爆雷は気にした様子は見せない。それどころか憐れんだ瞳でドッグテイマーを一瞥し、ラッキーの頭をひと撫でする。
「……因みに外界を飛来していた3メートル級の羽と脚が複数ある化物について…知っていることはあるか?」
「…ねぇな」
「そうか…」
「クゥン…」
落ち込んだ口調を慰めるかのようにラッキーは彼の掌を優しく舐めた。
「オレ様が知っていることは全て話してやったぞ、さっさと確認に行ってオレ様の身体を直しやがれ!」
「あぁ、確認しに行く前にやんなきゃならねぇこともあるがな」
「あ?」
脱走兵の頭を撫でているばかりで、なかなか地下の確認や情報の正誤性について確認しに動こうとしない爆雷に対して、ドッグテイマーは非常に苛立った様子で声を荒げる。しかしどんなに声を荒げようともドッグテイマーは、その文字の通り手も足も出ない。威勢を張っているだけのドッグテイマーの動きに見通した爆雷は壁際に置かれた檻へと手を掛ける。中にはラッキー同様、血気盛んそうな爆弾ジャケットを羽織っている犬や牙の鋭い犬が多数、放り込まれていたが、爆雷が近づいても吠えることはしない。それどころかじっとガスマスク姿の男を見つめるだけであった。
爆雷は1頭ずつ丁寧に檻の鍵を開け、檻の中から犬達を地面に降ろしてやる。降ろされた犬達は全員が檻から出されるまでの間、無駄吠えもせず爆雷を中心に囲うような形で後を付いて回り、まるで新たな主人に付き添う従者の如く佇んでいた。
「お前で最後だ」
「クゥン」
全ての檻を解放し、全ての檻から犬達が爆雷を取り囲む。その数はおおよそ50匹ほどの大御所であった。爆雷がドッグテイマーに近づこうとすれば、その進路上に居る犬達は言葉を発する前にその進路から退き、爆雷が先に進めばその約50匹の犬達もその後ろを付いてくのだった。
「んじゃ、行くか」
「うわっ!! 何しやがる!!! 離しやがれ!!!」
「バカかお前。お前いねぇと確認できねぇだろうが。ラッキーごめんな、もうちょっとの辛抱だからな」
爆雷は軽く腕のストレッチをその場で行うと、だるま状態にあるドッグテイマーの首根っこを掴みあげ、片腕で抱えるようにして軽々と持ち上げた。ただ抱き抱えられるドッグテイマーでもなく、突き出た骨で爆雷を傷付けようと奮闘するが何もできず、結局ぬいぐるみのように抱えられ連れて行かれる。
【後書き】
今回のクトゥロニカの舞台も、クトゥルフの世界線が核戦争と言う愚かな道を歩んだ後の世界のお話ということで書かせて頂いております。ネクロニカシステム世界観構築の作者様には申し訳ないのですが、クトゥルフとのクロスオーバー楽しいです。
もしかすると作者しか楽しくねぇよと言う意見もあるかもしれませんが、それも一つの意見として一興です。
ところで、だるまっ娘って可愛くありません?