外伝~2~永い後日談のクトゥロニカ神話『一途な彼等』 作:カロライナ
縫合も無事に終えた爆雷は、モルヒネや注射器など専門的な知識がなくとも知っている薬品を片っ端からショルダーバッグの中に突っ込み、これから必要になってくるであろう縫合糸や針をも詰め込んでいく。窓もない手術室には放射能汚染は一切及んでいないようであり、安全な応急セットなどの備品も簡単に手に入れられた。
この軍事施設は更に広大な地下空間が更に地下深くまで続いているようであったが、爆雷が安全確保の為、先へ進もうとすると犬達が進路を塞ぐためにこれ以上の階下への移動は不可能であった。
現在うるさいドッグテイマーはだるま状態のまま医務室の外に放置しており、見張りとして檻に入れられていた犬達を警護に付かせているが、ドッグテイマーに対する唸り声と、犬達に対するドッグテイマーの牽制が絶えない状況が続いていた。
しかし、うるさい存在が居なくなったことで医務室は先ほどよりも探索しやすい空間が広がっていた。
爆雷は傷を塞いだラッキーと離れようとしない他の犬達に囲まれながら執務机に置かれていた日誌を震える手を強引に動かしながらも読みあげる。そこには、ここで行われていた実験記録や狂った技師たちの哀れな研究記録が大多数を占めていたが、犬工場の座標、世界情勢、死体操作技術について鱗片的に内容として読み解くことができたのだった。
「全ての始まりは1920年の過ちから…か。現代に戻ることができれば機動隊『鷹の目』と『スズメバチ』の出動進言も考えねぇとなぁ…どんどん世界は悪い方向へと傾く一方だ」
「くぅん…」
「ラッキー」
「わぅ?」
一通り日誌の内容を読み合終えた爆雷は、ラッキーの名を呼ぶ。ラッキーは愛想を振りまきながら、その首を傾けながらも可愛らしく返事を返してみせた。
「俺はドッグテイマーとの取引を成立させなきゃなんねぇ。…嫌だろうが、他の仲間を引き連れて部品の回収をしてきてくれねぇか? ごめんな、俺はどうしても、ここでやんなきゃならねぇことがあ――」
「わんっ!!!」
重々しい口調で、爆雷は歯切れが悪そうに頼みごとを伝えようとしたが、それよりも早くラッキーは依頼を聞く前に器用に扉を開け、先ほどまで爆雷にまとわりついていた他の仲間を引き連れるようにして外へ出て行く。大量の犬が廊下を走って行く音が聞こえるのと同時にドッグテイマーの怒声も外から飛び込んできた。
…一呼吸置いたのち、爆雷はとある準備の為ドッグテイマーを引き連れ、医務室に2人きりとなるのだった。
【後書き】
次のクトゥロニカ小説を書く時は、ネクロゥルフとして書いて見たいですね。
ドール達が最終戦争が起きていない、更に過去の世界を冒険するという。
今回にしろ、前回にしろ、次回にしろ黒幕はあの人なので問題ないですね!
先取りで正体を知りたい方は「E=sの落とし子」や「異界のクリスタル」で遊んで、どうぞ