外伝~2~永い後日談のクトゥロニカ神話『一途な彼等』 作:カロライナ
「わんっ!」
直後、扉の外からラッキーの鳴き声が聞こえ、扉を肉球でベシベシと叩く音が医務室内にも響き始めた。爆雷とドッグテイマーはほぼ同時に扉へと視線を移す。
「むぐー!!! ぐぐぐぐーっ!!!」
「ラッキー! 待て」
「わん」
「むぐぅ!?」
一呼吸を置いてから、ドッグテイマーは爆雷の方に向き直ると再び塞がれた口から、ぐぐもった声を出し催促の咆哮をあげる。しかし、爆雷は部屋に居れることもなく扉越しのラッキーに対し、ドッグテイマーの考えとは異なった指示を送り出し、扉からは静かになった。
「悪いな。もう一つだけ、やらなきゃならねぇことがあったのを忘れるところだったぜ」
「ぐぐぐぐぐぐぅっ!!! むぐーっ!! んぐぁぁぁ!!!」
「はぁー。安心しろ、約束は必ず守る」
抗議の雄たけびを上げようと、落ち着いていたドッグテイマーは爆雷へ睨みつけようとしたが、それがかなうことはなかった。突然目元が暗闇に放り込まれ、文字通り何も見えなくなったのだ。
次に感じたのは自分自身が爆雷の手によって寝そべらされる感覚。次に聞こえたのは何か布性のものが長い間、擦れるような音。更には理解の及ばない言語を口にする鮮明な爆雷の声だった。
「むぐー―――痛ってぇ!!! ふざけんな!!猿轡を外したと思ったら視界を塞ぎやがって!!! オレ様に一体何をするつもりだ!!!」
「すぐに済むって」
「もう二度とてめぇとは取引しねぇからな!! この―――んっ!?」
視覚を塞がれたドッグテイマーが最後に感じた感覚は、ダクトテープの密封から乱暴に解放され、ヒリヒリと痛むような気がする自分の冷たい唇に何か生暖かいものが塗られる感覚。それから柔らかい何かが口を覆った。突然のことで罵倒することすら忘れる。それはとても鉄錆じみた味であったが、ドッグテイマーには未だかつて湧いたことの無いような、力強い決意と甘い優しさを覚えた。
「ぷはっ……。はっ…はっ…はっ…はっ…はぁっ…?」
「…な、すぐに済むつったろ?」
「ガァッ!!!」
口が再び解放された直後、爆雷の鮮明な声が耳元で聞こえる。両手両足があれば、いつまでもおちょくり倒してくる爆雷をくびり殺してやりたいところだったが、だるまの身体では何もできる筈がなく、声のする方向に噛みついてやろうと跳ねる事だけだった。
「おっと、危ない危ない」
「●#&△%$×□@◆!!!!!」
「はいはいはい、ごめんって。ラッキー、もう開けるからもうちょい待ってくれ」
「くぅん…」
再び布が擦れるような音がした後、扉が開け放たれぞろぞろと数多の犬達が室内に流れ込む音が聞こえる。そしてドッグテイマーの視界が元に戻った。そこには大量のハウンドやドギーボムから、彼女の腕や脚、兵装を受け取る防護服を着用した爆雷の姿がある。
数体の犬は、ドッグテイマーが乗っている台を取り囲むかのように包囲し、鋭い牙をチラつかせながら唸り声を上げていた。
「てめぇら…新しい主人が見つかったからって、調子に乗ってんじゃねぇぞ…!! こいつはな!! オレ様と同じてめぇらを特攻兵として仕立て上げるつもりの偽善者だ!! 今のうちに偽りの幸福に浸っているがいい! てめぇらが絶望しきった顔を遠くから嘲り笑ってやるからな!!」
危機的な状況下で謝るでも媚びる訳でもなく、永遠と寝転がった状態で喚き散らすドッグテイマーに爆雷は関心しながらも、8ゲージショットガンによって粉砕した 手足のパーツを手に取り損傷した個所を1つずつラッキーに行ったのと同じ要領で縫合を始めるのであった。
【後書き】
記念すべき1話が8月19日10:17に投稿でき幸せでした。
こちら
ところでクトゥルフにおける最強の探索者とは一体何なのでしょうか・・・
3週間置きに最強の探索者が私の中で移り変わるのです。
現在最強の探索者はDEX2082の探索者ですかね。
その記録も・・・今月後には大幅に塗り替えられてそうですが・・・
次は1万を超えていそうで怖いです。