外伝~2~永い後日談のクトゥロニカ神話『一途な彼等』 作:カロライナ
「お前…ほかに仲間は? 1人なのか?」
「ワンッ」
彼はこの犬の他に犬が居ないかどうか、犬に問いかけながらも一度立ち上がり目を皿のように凝らして周囲を見渡す。しかし目に映るのは荒廃した世界ばかり。それらしき存在が彼の眼中に入る事は無かった。『犬』も起き上がった状態から「おすわり」の姿勢になり力強く肯定するかのように吼えてみせる。
「そっかー。1人なのか。実は俺も一人なんだよ…他の部隊員全員が迷子になっちまってな、おかげで今のところ俺一人で未知の神話生物に対抗する羽目に…」
「クゥン?」
何か脈拍のおかしい発言に『犬』は疑問でも持ったかのように「おすわり」の状態で首を左に傾ける。
「あぁ、お前に愚痴っても仕方ないことだな。で、だ。折角巡り合ったのも何かの縁だし、俺と一緒に神話生物狩りに参加する気はないか? それにいつまでもこんな放射能汚染がスゲェ場所に居座ったら化学的に身がもたねぇだろうし…」
「クゥン…」
「大丈夫だ。お前でもヨグ=ソトースの息子は仕留められる!」
そんな一語一句に対して、理解を示しているかのような『犬』の仕草に気が付いていないのか、彼は項垂れていた姿勢から姿勢を正すと犬に向けて親指を立てて突き出してみせる。
「ワンワンッ!!」
唐突な勧誘行為に『犬』は、一瞬挙動が固まりその動きを止めていたが、数秒後「おすわり」状態から起き上がって見せると初対面当初よりも尻尾を激しく振りながら彼の足元にじゃれ付くよう身を寄せた。
「ところで…」
「わぅ?」
「その背中に付けているジャケット、ちょいちょい気になっていたんだが…そいつは一体全体なんだ?」
男はついてくることを承諾した『犬』の背中に触れた。触れられた『犬』は一度だけ身体を震わせるとそのまま大人しくピクリとも動かなくなる。
そのジャケット状の服は救命道着や防弾チョッキのように奇妙に分厚く、ゴテゴテとしていた。胴体に位置する部分には四角形状の粘土のような塊が左右に3つずつ配置されており、首輪に位置する部分には黒っぽい丸い球体がネックレスのように6つ着いている。更に尻尾の位置にはまるでラジコンのようなアンテナが立っているのが分かる。
彼は手慣れた手付きで、『犬』のジャケットに備え付けられている“アクセサリー”について丁寧に己の知識と技術を持って解析を試みた。
「…なるほど、どこの世界にも自爆特攻兵を作りたがる奴は居るモンなんだな」
どこか冷めたような口調で呟きながら、彼はショルダーバッグを広げる。中から工具箱を取り出すと、まるでこれから手術でも始めるのかと疑わしくなるようなペンチやニッパーを周囲の地面に置きながら、淡々とジャケットの副産物の除去準備を進めていた。
「にしても、人間は本当に歴史から学ばねぇなぁ。この作戦はソ連が同じような事して失敗してたじゃねぇか、おい 動くなよ。今その身体に捲きついてるものを解体してっから」
『犬』はその場に「伏せ」の姿勢を取る。『犬』頭を二度三度撫でると彼は無言になり、引き続き解体作業に移った。
【後書き】
今回は、ダイスの出目非表示の他に執筆の方法も一転してお送りしたいと思います。
今までセリフの最後に「。」を付けていたり、三点リーダは『・・・』を採用していましたが『…』と言ったような変更などですね。