外伝~2~永い後日談のクトゥロニカ神話『一途な彼等』 作:カロライナ
ラッキーを先頭に1人と1匹は走り出す。時折背後を振りかえれば、接近してくる存在は明らかにヘビトンボの群れに見える。
しばらく荒野を走り抜けていると、やがて廃墟が見えてきた。廃墟の多くは風化や爆破によってして崩れ、瓦礫と化しているが、一つだけ建物内に入ることができる入り口を見つける。ラッキーは爆雷を導くかのように建物内に飛び込み、爆雷もまたその建物内に身を潜めることに決め滑り込んだ。
残りわずか500メートルほどの場所まで、その存在は接近していた。ショルダーバッグから双眼鏡を取り出し確認を取るが、やはりその目に狂いはなかった。
「追ってきやがってやがる…もっと奥に潜りこむ必要があるな。ラッキー、何処か通路のような場所はないか?」
「グルルルル…」
「ラッキー?」
双眼鏡でのぞき込みながら右側で待機しているであろうラッキーへ言葉を投げかけるが帰ってくる言葉は普通の返事ではなく唸り声だった。また頭を撫でようと手を添えるが、その手は尻尾に当たり、不審に思いラッキーへと視線を移した。
ラッキーは廃墟の奥へ向けて警戒した唸り声をあげている様に見えた。
「…何か居るのか?」
「グルルルル…」
手慣れた手付きで爆雷も即座にガスマスクに付着しているボルトを弄り、8ゲージショットガンを引き抜き 再装填し背後からの強襲に警戒しながら建物内の索敵を開始する。
「…すげぇ獣臭ぇ。ガスマスク越しに漂うって…」
じりじりと警戒しながら突き進む。建物に人の気配はないが、犬小屋の中に居るような獣臭さが辺りには充満していた。
「…! ラッキー、聞こえたか?」
「ワン」
さらに2匹の聴覚はあるものを捉える。それは犬の鳴き声であった。音の発生源は現在位置する場所から地下に位置する場所。さらにその吠え声は何処か悲鳴じみた鳴き声であることを察することができる。
「この建物は地下もあるのか…ミ=ゴ共から逃げ切るなら地下に逃げ込んじまったほうが良いのかもしれねぇが…まずはこの場所の安全の確保から優先したいな。逃げ込んだ先がレンのクモの巣窟でした~なんて笑えねぇ。バケモノが住んでりゃなにかしらの形跡が残るはずだ。鳴き声が気がかりだが、先にそっちの確認をするぞ」
「ワン」
「おっしゃ」
2匹は建物内部を細かく虱潰し状に探索を進めて行く。
「なるほどなぁ、この作り…元は軍事施設の跡地か、やけに堅固に造られてやがる…この施設の稼働停止した原因は爆撃かと思ったが…案外、爆発痕が新しいし 壁も大多数が壊れちまってるし…」
「クゥン…」
「大丈夫だ。いざとなったらお前の分だけでも障壁を張ってやるからな」
「ハッハッハッ」
施設を抜け目なく調べて行く間に、ここがどのような施設であるのかを理解していく。廃墟上層部に、爆雷の考察した内容を裏付ける書類や電子機器が無いかどうか探索を続けるもののそれらしき書類は何一つとして見つからない。それどころか奇跡的に見つけた書類も持ち方が悪かったのか、触れた途端に塵となって読むことが不可能となってしまう。
爆雷と共に行動するラッキーは考え込む彼を心配するかのように見上げる。彼もまた優しい声色で応答しながらラッキーの頭を撫でてやるのだ。
「さて、バケモノが移住している代わりに、俺の同種が住んでいる可能性が最も高くなって来た訳だが…さっき見つけた地下への扉から下の階に降りるか」
「ワンッ」
「とりあえず見つけたら説教だな、粗悪品の爆薬なんか使うんじゃないって。第一条件として、まともに話し合える奴だったらいいけどな」
「クゥン…」
「へーきへーき、幸いにも会話が通じなかった時用に 他の言語(肉体言語)なら多少は持ってるから」
「ワン」
2匹はそんな会話を交わししながら、地下へと通ずる重厚な扉の前まで歩いて行く。
地下の扉を開けた途端、先ほど聞こえたよりも大きな犬の鳴き声が階下から聞こえてくる。扉は劣化しているのか軋んで大きな音を立てながら解放された。
「ヒューッ! 埃っぽい場所かと思っていたが、そうでもなかったな。さて、ラッキー 突然の奇襲に見舞われるかもしれねぇ、周囲の警戒を怠るんじゃねぇぞ」
「ワン! …ヴーッ」
「よし、いいこだ」
爆雷は口笛を吹き自分の予想が大きく外れたことに対して馬鹿にするような笑い声を出しながらラッキーへ向けて、おどけてみせ 指示を送る。ラッキーは一吠えだけし、地下へ向けてヘビトンボには見せていない深い唸り声をあげてみせた。
【後書き】
今回も携帯でチマチマと執筆しております。
三点リーダが比較的素直に変換ができるので簡単と言えば簡単に執筆ができて良いですね。