Fate/SnowScene Einzbern   作:アテン

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バーサーカー
「いくら、不定期とはいえ、三か月も投稿しないのってショウジキナイワー。」

作者
「誠に申し訳ございません。」(土下座




第十二夜 対峙する運命

色々な遠回りをするハメとなったが、なんとかキャスターとの同盟を結ぶことができ、計画を次の段階へと進めることができるようになった俺ことバーサーカー。

彼女を味方にした事で、今後の動きが良くなったことは自分でも理解できたが同時に思い通りにいくほど、世の中は良くできていないことも改めて理解できた。

 

 

同盟を結べたことに喜びに浸っていたのも束の間、予想だにしない事態が発生したのだ。

 

 

 

なんと、キャスターが召喚していたハズのアサシンがライダー陣営に連れ去られてしまったのだ。

 

 

 

 

原作知識を持っている俺でも、これには驚いた。俺が知っている3つのルートどれにも当てはまらない状況に今陥っている───…要するに。なんだこれは、俺全く知らないよ?っていう状態だ。

 

stay nightではどのルートでも、キャスターがルール違反を犯してアサシンを召喚しているので彼女とアサシンは常にセットであり、彼女を味方にできたら自動的に彼も一緒に来ると無意識のうちに思い込んでいた…だってそうだろ?食玩買ったらメインである玩具と一緒にラムネがおまけでついてくるって思うじゃん。

 

食玩で話を例えるのは我ながらにどうかと思ったが、実際そんなところだ。サイコフレームじゃないνガンダムを手にいれてしまったような気分だ……まぁ、その時点で果たしてνガンダムと言って良いものなのかとも思うがな。きっと、アクシズを押し返せないだろう。

 

 

 

 

人の想いを集められないガンダムの話はその辺にしておこう。

 

 

 

 

 

あの後、俺はキャスターを目の前にしてショックのあまり言葉を失ってしまったどころか思考停止してしまい、一時間弱くらい黙りこんでしまった。

 

 

直立不動で明日のなんとかみたいに真っ白に燃え尽きている姿の俺にキャスターはずっと声をかけたり揺さぶってみたりと何かしらのアクションをしかけていたみたいだが…。

 

 

長い間、時間が経ち…意識が戻った俺の前にいたのは涙目で申し訳なさそうにしていたキャスターの姿だった。…俺としては、「このやろー!なんでアサシン誘拐されとるんじゃあああああ!!」と一度説教してから、段ボールに「私は駄目な魔術師です」と書いて首につけてやろうかとも考えたが、彼女の姿を見たら流石に酷かなと思ってやめた。

 

 

 

とりあえず、数分ほどキャスターを慰めることにした。

 

 

彼女が落ち着くのを確認してから、詳しい話は明日することにし、その日はお開きとなった。

 

 

 

 

色々と問題はあるが、今は一度戻ってから我が主様に今宵の成果を報告しなきゃならんな!なにせ、仲間が増えたからな!それもあの神代の魔女となれば、そこいらの魔術師よりもかなりやれることが増えるぞ!!

 

 

明日が楽しみだ。きっと、あの小さな主人が輝かしい笑顔をする姿が目に浮かぶ───…

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

「と、思っていた時期が私にもありました。」

 

 

 

翌る日、俺の眼前にあったのは我が主様の笑顔ではなく、ローブを被った女と銀髪の幼女が睨み合う見ていて胸が違う意味で痛くなる光景だった。

 

 

「……」

 

「……」

 

 

 

一体、どうしてこうなった。

 

 

思わずそう呟いてはいられない状況に俺はため息を吐く。目の前にいるのは、虎と龍───…いや、猫と栗鼠だろうか?、どちらの表現も正しくないような気もしないでもないが、とにかくこの空間はあまりにも空気というか雰囲気というか、殺伐としているモノがある。

 

 

 

なぜ、このような事態に陥ったのだろうか…。

 

 

というのも、今後の出方を相談し合うためとマスターにキャスターと同盟を結んだことを伝えるために、彼女を城に連れてきたのがそもそもの原因と言えよう。もっと、付け加えるなら“イリヤに何も言わずに”連れてきたことが目下の問題点である。

 

 

俺としては、勝手な行動をしたことを謝罪しつつ、キャスターが戦力になること、俺が考えている“計画”を伝えようとしていたのだが…。

 

 

段取り良く進まなかったようだ…まぁ、それも俺らしいと言えば俺らしいんだけどな…。

 

 

 

ため息を吐いて、肩をがっくりと落としながら考えていると不意にイリヤのほうへ視線を移した────…。

 

 

 

「バーサーカー、これはどういうこと?……昨日は、帰ってくるのが遅いと思ったら、今日はキャスターなんかを連れてきて何のつもりよ?」

 

 

キャスターから視線を一度逸らした我が主様ことイリヤはジト目でこちらを見てきた。内容次第では、可愛らしいものかもしれないが、その奥にある冷めたモノを感じた俺は、まるで心臓を鷲掴みされたかのような衝撃を受けた。

 

 

怖ええよ!うちのマスター!

 

 

思わず震え上がってしまう自分自身が情けなく思ってしまうが、あの突き刺すような赤い目で睨まれてしまったらなんも言えないっすわ。蛇に睨まれた蛙よろしく、石化したように固まりそうになった俺だったが、何とかなけなしの勇気を振り絞って言葉を吐き出す。

 

 

「あっ、あのだな!我が主様よ!これには、深い事情と言いますか戦術の一つと言いますか────…」

 

 

 

「マスターのわたしに何の相談も無しに、一人勝手にキャスターのところに行っていたことが深い事情かしら。

それとも、私の意見も無しに勝手にキャスターと同盟関係を結んだことが貴方の言う戦術かしら。」

 

 

 

ぐ、ぐうの音も出ないとは、このことですかねぇ…。

 

 

 

 

「い、いや!それは悪いことをしたと自分でも自覚しているが、ここは話を聞いてほしい!」

 

「話なら、キャスターと会う前にしてほしかったわね。」

 

 

 

だぁぁぁぁぁッ!!めんどくせぇぇ!!

 

 

 

なんでこんなにツンケンしてんだよウチのマスターは!!いつも以上にワガママっぷりを発揮してませんかね?、いや単なるワガママなら、まだ可愛げのあるが…これは聞く耳すら持たんって感じだぞ。

すっかりご機嫌斜めなイリヤは、遂にはフンと顔を逸らしてしまい。完全に会話のキャッチボールを拒絶している。 …やれやれ。これはちょっと彼女の機嫌を直すことで手を焼きそうだぞ……話が全く進まないじゃないか。

 

 

「あら、アインツベルンのマスターというものだから、ただのお人形さんかと思ったのだけど、随分と可愛げのある子ね。」

 

 

「っ!」

 

 

おいおい、キャスター!?急に話し出したと思ったら、なんか煽ってるような口調で話しているんだけど!?

 

 

「なにか言ったかしらキャスター。言いたいことがあるなら直接、目を見て言ったらどう?」

 

「いえ別に?ただ、ちょっと聞き分けのないサーヴァントに手を焼いたくらいで、拗ねるマスター様が可愛らしいお子様だと思ったのよ。」

 

 

聞き分けのないサーヴァントとは、私のことですかなキャスターさんや。こう見えて、主人には逆らわずに基本的には従う性分なんだよ───…え、見えない?まじで?

そんなことを考えつつ、視線をイリヤに向けてみると口を一の字に引き、どこか怒りを我慢しているかのように震えている……まさか、マスター…俺がキャスターにバカにされたから怒ってくれているのか…?

 

 

「お子様ですって…?」

 

 

 

ああ、そっちですか…。

 

 

 

デスヨネーと反射的に想いの節を漏らす。どうやら、現在、我が主様の眼中には俺が見えていない模様。

 

 

 

「そうでしょう?この聖杯戦争最強とまで謳われているマスターが、たかだか使い魔が勝手に動いただけで、こうもヘソを曲げるなんて面白い話でしょう?」

 

 

 

やめて!煽らないで!

 

 

 

 

女性同士の戦いに割って入ることすら出来ない俺は、バチバチと火花散る間で切実な願いを念にして飛ばしてみる…が、ダメ。

俺の願いを聞いてくれるどころか、存在すら目に入ってないようだ────…。

 

 

「わたしは、ヘソなんか曲げてないわ!ただ、主人であるわたしの許可なしに他のサーヴァントと接触したことが気に入らないのよ。」

 

「それが貴方のサーヴァントなのでしょう?使い魔の個性くらいは目を瞑ってあげても良くって?」

 

「自由勝手にやらされて、納得するなんてマスターとしてどうなのよ?わたしは、そんなの嫌よ。マスターのわたしに何の相談もしないなんて…」

 

 

ああ、耳も胸も痛い会話だ……自分のことで、こんなにまで話をこじらせるとは思わなかった…やっぱり、ホウレンソウって大事だよね……反省しよう…。

がっくりと、項垂れていると、キャスターのほうから「なるほどね…」という声が聞こえ、思わず顔を上げた。

 

 

「不安なのね?自分のサーヴァントが、他の誰かに取られるかもしれないって思っているのでしょう?」

 

「はぁ!?」

 

「えっ?」

 

 

 

取られる?俺が?誰に?

 

 

 

「な、何言ってるのよ!!そんなわけないでしょ!わたしは、ただ、バーサーカーが相談も無しに勝手に行動したから───…!!」

 

「ただ、勝手行動を戒めるだけならば、ここまで話をややこしくしないでしょう?それに貴方は、バーサーカーが勝手な行動をした事より、私と行動を共にしていた事のほうが嫌だったのでしょう?」

 

「なっ────…」

 

 

え、ちょっとまって…?っていうことは、つまり、我が主様がこんなにも怒っているのは俺が勝手な真似をしたからではなく…。

俺がキャスターと一緒にいて、仲良くしていたと思ってムカついてたってことか────…?

 

 

 

なにそれ、めっちゃ可愛くね?

 

 

 

「だから、可愛いらしい子だと思ったのよ。良かったわねバーサーカー?貴方、自分の主人から大層愛されているわよ。」

 

「~~~~~~ッ!!???」

 

 

イリヤの顔がリンゴのように真っ赤に染まっていく、このままだと湯気でも吹くんじゃないかと思ってしまうくらい真っ赤になっていた。

そして、たぶん俺の表情もみっともないほど呆けた感じになっているんだろう……俺らの姿を見て、キャスターは面白おかしそうに笑っている。

キャスターって、こんなに舌戦に強い奴だったのか…まさか、イリヤを打ち倒すとは思わなかったぞ。

 

 

「も、もうわかったわよ!!今回のことは、不問にしとくわ!でも、バーサーカー!!二度と私に何も言わずに勝手なことしないでね!!わかった!?」

 

「じ、GIG。」

 

 

呆けていたところに、捲し立てるように言い放たれた為に、返答が特撮ネタになってしまった。

自分はいつから、GUYSの隊員になったというのだろうか。

 

 

「…それで、今後どうするつもりなのよ。キャスターを味方につけたってことは何か理由があるんでしょう?」

 

 

先ほどとは打って変わり、イリヤは真剣な表情で俺に問う。

それが引き金となったか、キャスターも笑みを浮かべるのをやめて表情をいつものような読み取れにくいものに戻した。

彼女たちの姿を見て、俺もふざけるのをやめて真剣に話すことにした…もう、イリヤにも話すべきだろう。

 

 

「ああ、キャスターを味方につけたのは他でもない、今後の戦いや行動…そして、俺の“計画”に必要だった。」

 

「計画?どういうこと、バーサーカー。」

 

「結論を言うのは後だ、まずは今回の聖杯戦争がどんなものかについて話し合いたい。」

 

 

我が主様の顔が怪訝なものに変わっていくのを、俺は見逃さなかった。

 

 

「今更、そんなこと話す意味なんてあるの?」

 

「あるんだな、これが──────…今回の聖杯戦争がどんなにイレギュラーなモノかマスターは知っているはずだ。」

 

 

そういうと、イリヤは面を喰らったような顔をしたのち、少しだけ考える素振りを見せてから、ゆっくりと椅子に腰かけた。

彼女の行動から見て、話を続けても良いってことと認識した俺は話を続けた。

 

 

「キャスター、お前は…ここ冬木の聖杯がどんな状況下にあるか分かっているか?」

 

「その口振りだと、聖杯に何か問題があるようね……いいえ、知らないわ。」

 

 

まぁ、そうだろうな。

 

 

「今、冬木の聖杯にエラーが起きてる───…穢れて、願いを呪いに変えちまうようになってしまっているんだ。」

 

「!?───…聖杯が、穢れてるですって…?」

 

 

表情こそ、見えないが明らかに動揺の色が見えた。

それもそうだろう、まさか最大の目標である聖杯がイカれてると知ってしまったんだからな。

この情報は、ある一部の陣営を除いて誰も知らないからな……キャスターが知らないのは当たり前だ。

 

 

「ああ、第三次の聖杯戦争で、ある陣営がルール違反を犯してな。

そのせいで、聖杯が汚れちまって願いを間違った方向で叶えてしまう呪われた願望機になっちまった。」

 

「ある陣営…?、とんだ傍迷惑な者がいたものね…どこの魔術師かしら。」

 

 

 

アインツベルン(ウチ)です。

 

 

 

…なんて、これから一緒に行動を共にするのに信頼を損なう危険性があるから言えない。

それに、仮にもイリヤの実家みたいなもんだし……あんまり、悪く言いたくないってのもある。

ちらりと、当の本人に視線を向けてみると目を逸らしてた。やっぱり、思うところがあるんだろうな。

 

 

「まぁ、それは置いといて。つまるとこ、その聖杯に願いを込めてしまえば、たちまち呪いとなって周囲に多大のない悪影響を及ぼすってわけ───…最悪の場合、この冬木が吹っ飛ぶかもしれねぇ。」

 

「…なるほど、だから、貴方は聖杯を破壊したいわけね。」

 

 

納得がいった様子のキャスター。

ちなみに、聖杯を破壊する云々の話は既に我が主様に通してあるため、既に了承済みである。

開口一番に、俺は聖杯を破壊したいって言ったら「正気か、こいつ」みたいな顔をされたが、俺の計画や目的など隠していた事全て洗いざらい話したら、一応、了承してくれたみたいだ。

 

 

 

聖杯の器である自身を目の前にして、聖杯を破壊すると断言したのにも関わらず、それでも了承してくれたことには驚きを隠せずにはいられなかったが、同時に俺のことを信頼してくれているのだと分かった。

 

 

 

その信頼は絶対に裏切らないようにしないとな。

 

 

 

「それで?、これからどうするつもりなのよ?」

 

「決まってるだろ、聖杯を何とかするんだよ。

あれを機能させたら、それこそ何もかもおしまいだ────…だから、そもそも“発動しないよう”にする。」

 

「どうやって…」

 

 

ここで、やっと我が主様が声を上げたが、俺が何を言っているのか分かってないようだ。

対し、キャスターは心当たりがあるのか思案顔で何かを考えている。

 

 

「…ま、それらについては追々分かって来るさ。」

 

 

トラブルはあったものの、まだ致命的ではない。

アサシンは連れ去られたが、キャスター自体は五体満足な上、同盟を結ぶことができたのだ。

本来であれば、アサシンをライダー陣営に連れ去られた時点でHFルート行きが濃厚だが…キャスターが助かっているということ、そして、アサシンが奪取された時期が早すぎるのが、引っ掛かる。

 

 

 

既に俺の知らないルートになりつつあるが、だからといって臆するなんてことはしない。

 

 

 

今はやれることだけをするだけだ。

 

 

 

「…今度は、どこへ行くつもり?」

 

「穂群原学園。どうも、そこでライダー陣営が良からぬことをしているみたいなんでな───…ちょっくら行って、潰してくる。あと、アサシンについても何か分かるかもしれないしな。」

 

 

恐らく、ライダーの正体は『メドゥーサ』のはず。

ならば、原作通り学園には結界のマーキングが施しており、後日…ライダーは鮮血神殿を発動するはずだ。

…まぁ、実際に本当にメドゥーサが召喚されているかどうか分からんから、確たる根拠はないんだがな。

 

 

(それも、含めて穂群原学園に確認しに行こう。)

 

 

「ちょっと、私はどうすればいいの?」

 

 

自分を忘れるなとでも言いたげにキャスターが入って来る。

もちろん、忘れてたわけじゃない。彼女にも、やってもらいたいことがある。

 

 

「キャスターは、ここで我が主様と一緒にモニタリングしててくれ。通信機もあるから何かあったら指示を仰ぐかもしれん。あと、一応だが…ここが、襲撃される可能性も無いわけじゃないからな。我が主様の護衛も頼みたい。」

 

「あら?自分のマスターを他のサーヴァントに任せるっていうの。私が裏切ってマスターを殺すかもしれない危険性があるかもしれないわよ?」

 

「信頼してるから。任せる。」

 

 

口説き文句のようにそう言うと、キャスターはぐっ…と言葉を飲み込み。それ以上何も言わなくなった。

まぁ、キャスターに負けるほどウチのマスターは弱くないし、何より今の彼女の姿を見ていて裏切るような素振りが一切見られないし、そういった邪心は微塵も感じられないから大丈夫だ。

 

 

 

キャスターになら、任せられる。

 

 

 

「んじゃ、行ってくるわ。」

 

「バーサーカー…。」

 

「ん?」

 

「シロウのこと、守ってあげてね。」

 

「分かっている、俺に任せとけ。」

 

 

 

彼女が安心できるよう、優しい声音で語り掛ける。

大丈夫だ、士郎も遠坂も学園の奴らも誰一人死なせたりしない……絶対に俺が、ライダーを止めてみせる。

それだけ、告げて俺は城を後にした。

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

昨夜は酷い目にあったと、俺こと衛宮士郎は生徒会長である一成から事前に頼まれていたストーブを直しを終えて、誰もいない放課後の廊下をただ一人っきりで歩いていた。

買い物終わりに、イリヤと公園で話をしていたら、つい遅い時間帯になってしまった為にセイバーの食欲に火をつけるばかりか、何故か居た藤ねえにまで、たかられる始末だし…。

 

それだけじゃなく、セイバーのことを説明する前に藤ねえに見つかってしまったのも悪かった。

我が家にいた彼女を発見した冬木の虎は、今晩も飯をたかろうと意気揚々と乗り込んだのの、知らない外国の少女が居間で正座をして待っていた姿を目撃して、大層仰天したそうだ。(そりゃそうだ。)

 

好きなだけ夜食を食べた後に、ぐわっと吼えるようにセイバーについて問いただしてきたときは流石に勘弁してくれと泣きたくなったが、しまいには「見ず知らずの女の子を家に連れ込むなんて、お姉ちゃんそんな風に育てた覚えはありません!!」などという始末……面倒は見てもらってはいたが、残念ながら育ててもらったような記憶が見当たらなかったのだが、そこは口にしないようにした。

 

 

 

感情のままに吼える虎を宥めるように、セイバーについては「親父の知人で、親父に会いに来た」というカバーストーリーを立てることにした。

 

 

 

そうすると、先ほどまでにギャーギャー言っていた藤ねえは納得したのか、急に黙り込むと「分かった。」と一言だけ呟き──────…。

 

 

「じゃあ、勝負しましょう!私に勝ったら、この家に住むことを認めます!!」

 

 

 

なんてことを、言いやがった。

 

 

全然、わかってないじゃないか……と言いたくなったが、こうなった藤ねえは誰も止められないのは分かっていた為、黙って見守ることに徹した。

離れにある、道場で竹刀を使った真剣勝負?を始めた二人だったが、そこはサーヴァントと一般人ということで終始、セイバーが藤ねえを圧倒し、途中で卑劣な妨害すらも容易くいなして勝利を収めたことにより、衛宮家にホームステイすることを認められたのだった。

 

 

「全く、藤ねえは相変わらず頑固なんだからなぁ。」

 

 

思わず、ため息を吐いてしまう。

あの強情で自分中心に動く虎には振り回されっぱなしで手を焼いているが、不思議と憎めない人だ。

それに、ここぞという時は凄い頼りになる人だ。切嗣が死んだときも、俺のことを気にかけて面倒を見てくれてたしな。

 

 

 

ああいう、憎めないところが藤ねえの良いところだ。

 

 

 

「衛宮くん。」

 

 

不意に後ろから声を掛けられて、振り向くと──────…そこにいたのは、階段の上でこちらを高圧的な眼で見降ろしている遠坂の姿があった。

 

 

「遠坂…?、まだ学校にいたのか…どうかしたのか?」

 

「どうかしたのか──────…じゃないわよ、貴方……私がこの間、言ったこと…もう、忘れたのかしら?」

 

 

この間──────…?

 

はて……何のことだったか。

 

 

 

思い出そうと首を傾げていると、遠坂から心底呆れた果てたような、ため息を漏らす声が聞こえてきた。

 

 

 

「…どうやら、貴方にはマスターとしての、魔術師としての覚悟もないみたいね。

サーヴァントを連れずに、出歩くなんて正気の沙汰とは思えないわ。」

 

 

そう言いながら、遠坂は左腕の制服の裾を捲ってみせた。

左腕には、青火色に輝く魔術刻印が刻まれており、魔術師たる象徴として存在していた。

魔術刻印を見せつけてどうするつもりだ…?、と考え込んでいると人差し指をこちらに向けて銃口を向けるように構えた──────…って!?

 

 

「お、おいッ!!何の真似だ遠坂!?」

 

「何の真似…?、変なことを聞くのね衛宮くん。

聖杯戦争に参加しているマスター同士が対面したら、することは一つでしょう…?」

 

 

 

まさか…ここで、戦うつもりなのか!?

 

 

 

「やめろ!!ここは、学校だぞ!?戦いは他の人気が無くなってからするんだろう!?」

 

「あら?じゃあ、周りを見て見なさいよ──────…“私たち以外に、人はいる”かしら?」

 

 

その言葉にハッと気づいて、辺りを見回す──────…彼女の言う通り、今この場所には俺たち以外の生徒は存在しなかった。

それが分かった瞬間、今、自分はとても危険な状態にあることに気付き、背筋に氷塊でも流し込まれたかのような感覚に襲われた。

 

 

「本気…なのか、遠坂──────…」

 

「ええ、残念だけど……貴方には、ここで終わってもらうわ衛宮くん…!!」

 

 

遠坂はそう告げると、突き出した左手から嫌な気配が集まる。

赤黒いエネルギー体──────…魔術的に言うならば…そう、まるで“呪い”のような──────…!!

 

 

「くらいなさい!!」

 

 

 

──────よせ!遠坂!!

 

 

 

そう言葉が出る前に、彼女の左手から魔弾は発射されて俺の右頬を掠り、後方の壁を破壊した。

窓ガラスは割れ、壁は土煙を上げながら、パラパラと石くずとなった破片が崩れていく……俺の乏しい魔術の知識によれば……あれは北欧に伝わる呪いの一つ『ガンド』だろう。

だが、彼女が放ったそれは…俺の知っている呪いとは全く、かけ離れていた。

 

 

(ただ、人を病気にさせたりするだけの呪術のハズなのに──────…なんだ、あのバカでかい威力は!?)

 

 

あれをモロに喰らったら、病気になって弱るどころじゃない。

触れたら最後…一瞬にして消し飛ばされる!!

 

 

「次は…外さないわよ。」

 

「ッ!?」

 

 

 

──────このままだと、やられる!!

 

 

 

それだけ、理解したら十分だった。

あまりの衝撃な出来事に微動だにしなかった足に鞭を打って、その場から駆け出した。

 

 

遠坂から、離れなければ……!!

 

 

「待ちなさい!!」

 

 

後方から、遠坂がヒステリックに叫ぶ声が聞こえて、階段から飛び降りたのか着地したような音もやって来た。

 

 

何故だ…!、どうして遠坂と戦わなくちゃいけないんだ!?

 

 

頭の中に、そんな感情が過ったが止まったら消し飛ばされることは確実だ……!

 

 

 

なんとかして、遠坂を止める方法を考えなくては──────…!!

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

城から出た俺ことバーサーカーは、寄り道をすることなく穂群原学園の校門前までやって来て、そこから学園の今の状況を確認していたのだが……うーむ、これは遠目でも分かるぐらいに結界の存在が見え見えだ。

まだ、発動はしていないようだが、それでも時折…赤い景色が視界に過ってくるというか、踏み込んですらいないのに粘っこい嫌な気配が纏わりついてくるような、そんな気配だ。

 

士郎の奴は、甘ったるいとか言っていたけど、俺からしてみれば害虫の住処のような気色悪さを覚えた。

…正直、こんな蜘蛛の巣みたいなところに入りたくないが、帰る訳にもいかないので意を決して結界内へと足を踏み込んだ。

…顔面を蜘蛛の巣に叩きつけられたかのような気分だが、まぁ、そこはサーヴァントなんで普通の人間よりかは全然平気だ。

 

 

「さて…どうしようかな────…!?」

 

 

その時、頭上から殺気を感じて視線を素早く向けると……そこには、こちらへと数本の矢が迫って来ていた!

突然の不意打ちに思わず、舌打ちをこぼしてしまうが、バク転をして矢の軍勢を回避する。

俺がいた場所に、迫ってきたいた矢が全て突き刺さると、遅れてやってくるように“矢を放った犯人”もやって来た、その犯人とは────。

 

 

 

「貴様…こんなところで、何をしている…。」

 

 

「アーチャー……。」

 

 

 

遠坂 凛のサーヴァントであり───…俺の因縁の相手でもある、あの赤い弓兵だった。

 

 

 

 

 

 




この作品のバーサーカーは、英雄時代に多くの魔術師と渡り合ったことや直死の魔眼を何度も使った経験から、結界といった魔的なものに士郎よりも敏感です。
かなり研ぎ澄まされた感覚を持っている持ち主なのです。
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