Fate/SnowScene Einzbern   作:アテン

15 / 16
みなさん、お久しぶりです。
そろそろ僕のことを忘れてるんじゃないかなぁと思いつつ次話投稿。
楽しみにしていてくれた方々、遅くなって大変申し訳ありません。


そして、お待たせしました。


第十四夜、どうぞ!



第十四夜 超越せし双子大剣 ーー オーバーエッジ ーー

四面楚歌。

 

 

絶体絶命。

 

 

死中求活。

 

 

 

どれが、今この現状にふさわしいのだろうと、じゃらじゃらと音を立てて飛んでくる短剣を頬を横すれすれに避けながら考える俺ことバーサーカーは戦闘中にも関わらず思案する。

 

目の前にいるのは目元をバイザーで隠し、着ていて恥ずかしくないのかと思ってしまうほど露出度の高い格好している騎乗兵のサーヴァントこと『ライダー』…その後方には、彼女のマスターである「間桐 慎二」がにやにやと気味の悪い笑みを浮かべながら、こちらを眺めている。

 

 

一方、そのライダー陣営の横にいるのは赤と紅。

凛とした表情に堂々とした立ち振る舞いをしているのは今回の聖杯戦争の優勝候補者の一人の「遠坂 凛」と、その彼女の傍らにいる紅い弓兵の『アーチャー』だ。

 

 

そして、現在進行形で絶賛この二つの陣営に囲まれ、尚且つライダーの短剣をいなしているのは俺で、その後ろにいるのは、セイバーのマスターである「衛宮 士郎」だ。

 

 

 

全くどうしてこうなってしまったのか、今になっても皆目見当がつかない。

 

箇条書きで簡潔に述べるなら―――――…

 

 

 

(1)アーチャーと“遊んでたら”上の階の教室が爆発して、士郎が降ってきた。

 

(2)士郎が地面にぶつかる前に空中でキャッチしてdeadendを防いだ。

 

(3)そしてら、上から遠坂が降りてきた。

 

(4)俺らの姿を見た遠坂は俺たちがグルであると勘違いし、臨戦態勢を取り出す。

 

(5)すると、何故かライダーとワカメが乱入。

 

(6)現在に至る。

 

 

 

 

…なんだこれ。

字面にして状況を把握できたのは良いものの、原因がまったくもって見えてこないぞ。

それどころか、余計に混迷してきたような気もする…結果として今現在分かることは、士郎を助けたら二つの陣営に囲まれたということ。

そして、この二騎を相手に俺は士郎を守りつつ、一人で撃退しなければならないということだ。

 

 

こちらのハンデ、でか過ぎるだろ。

 

 

素人抱えてサーヴァント二騎相手とか、普通なら無理だぞ。速攻、お荷物になる士郎を切り捨てて逃げるのが定石だ……“普通”ならね。

 

 

 

「はッ…!!」

 

 

 

凝りもせずにライダーが再び短剣を俺の心臓目掛けて放つ…かれこれ、数分くらい反撃せずに防御に徹していたが流石にそろそろ“飽きてきた”。

 

 

遊びに付き合うのも、ここまでだ。

 

 

「いい加減、ふざけた攻撃するのやめろよ…ライダー。」

 

 

俺は、体を揺らすように飛んでくる短剣をかわし。

じゃらじゃらと不快な金属音を立てる鎖を、蛇の胴体にでも見立て掴み―――…

 

 

「っ!?」

 

 

驚くライダーを気にも留めずに暴力的な筋力をもって、鎖ごとライダーを引き寄せた。

彼女の身体は瞬く間に宙に浮き、態勢を立て直すことも出来ずに俺のもとへと引っ張られ、そして…

 

 

 

俺は、ライダーの脇腹に拳を叩き込んだ。

 

 

 

ばきりと、鈍くて嫌な音がしたが俺は気にせず拳を振り抜いた。

 

 

 

すると、ライダーの口から「ごふッ」と赤い血液が吐き出され、己のマスターである慎二の前まで吹っ飛ばされ転げ回る。

まだ終わらない…俺は立ち上がろうとするライダーとの距離を一気に詰めて、追撃を始める。

徒手空拳を用いて、ライダーの顔面を捕えようと岩のように握り締めた自分の拳を振るう……凄まじい速さで振るわれるその拳にライダーはさぞ驚いただろう。

さっきのダメージが残った体を抱えたまま、俺の全力の拳舞を必死に避けようとする。

 

 

「甘めぇ」

 

 

それでも、俺は手は抜かない…ライダーの動きを読んで避けた場所にも拳を繰り出しライダーの顔面を捉える。

殴られたライダーは血を吐きながら避ける間もなく、サンドバックのように殴られ続ける。

拳を振るい続ける中、視界の端に間桐 慎二の姿が映ったが最初と比べてその顔色はすこぶる悪い物へと変わっていた…表情は青く、目は見開き、絶望に打ちひしがれたような姿をしていた。

 

 

それもそうだろう、サーヴァントはマスターにとって剣―――――…それが折れるということはすなわち、自分の死に直結する。

 

今、間桐 慎二はとてつもない絶望と死への恐怖の板挟みになっているに違いない。

 

 

俺は、そこまで思考に至ると血だるまへと変わり果てたライダーの腹を蹴って、学園の壁へと吹っ飛ばした。

九の字に吹っ飛ばされた長身の身体は学園の壁をぶち破り、粉砕された瓦礫の中へと沈んでいった。

 

 

 

「ここまでだ…ライダー。」

 

 

 

もう、ここまでだライダー。

 

 

そう言いながら、俺は土煙に隠れたライダーへと近づいていく。

右手に『アスラ』を召喚して、今だ目視できてない敵に向かって銃口を向ける……すると────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライダーの形をした大量の蟲が、わらわらと分離して俺へと襲いかかり…

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬だけ光ったと思った途端、大爆発した。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

先ほどまでライダーの姿をしていたそれは、形を崩して蟲の大群となってバーサーカーへと襲いかかった。

今まで人の形をしていたものが突然、異形の姿へとわらわらと群がっていく姿に私こと遠坂 凛は少しばかりか目を張った。

あの凶悪な強さをもった狂戦士の不意を完全に突き、蟲で動きを完全に止めた後にそれらを全て爆破する……癪だけど間桐──…慎二にしては良い方法を取るじゃない。

 

 

「はははははははッ!!何が狂戦士だよ!?木偶の坊も良いところじゃないか!」

 

 

 

燃え上がる炎を眺めながら盛大に笑い出す慎二…さっきまで絶望しきっていた顔をしていたのは演技だったみたいね。

 

 

「バカだねぇ衛宮。所詮、お前なんかが出てきて勝てるわけがないんだ!」

 

 

ざまぁみろと衛宮くんを心底、見下したように慎二は嫌な笑みを浮かべながら言い放つ……やっぱり、慎二は慎二か小物感が半端ないわ。

 

 

(ま、これは完全に衛宮くんの負けね。バーサーカーを失った今、彼を守るものはいないし。)

 

 

最悪、令呪を使ってセイバーを呼ぶことはできるが半人前の彼はそこまでの思考に至っていない…その証拠にバーサーカーがいた場所を見つめたまま放心したまま動かないもの。

 

 

「終わったわね…ま、あとは適当に慎二をいなして衛宮くんを保護するとしますか。」

 

「凛。あの小僧を助ける気か?」

 

「助ける気はないわ。ただ、右も左も分からない半人前をいたぶる趣味はないだけよ。」

 

「だとしてもこちらが助ける通りもない。令呪もまだ残っている。セイバーを呼ばれる前に排除したほうがいい。」

 

 

頑なに彼を敵視するアーチャー…なんでこいつ、こんなにも嫌ってるのだか…。

 

 

「あのね、アーチャー…今の彼にそこまでの考えがあると思う?もしその気なら、とっくにセイバーはここにいるでしょ?“バーサーカーが脱落した”以上、衛宮くんに勝ち目はないわよ。」

 

 

私がそう言うと、アーチャーは少しだけ面を喰らったような顔をしたと思ったら溜め息を吐きながら心底、落胆したように「やれやれ…」と呟いた…なんかムカつくわね。一体なんなの。

 

 

「君に限ってそんなことはないと思っていたが────…凛、君は“今の爆発であのバーサーカーが倒れた”と本当に思っているのかね?」

 

「は?いやたった今、蟲に包み込まれて爆発したじゃない。間違いなく跡形もなく吹き飛んだはずよ?」

 

「あの程度の爆発でアレがやられるはずがないだろう。いいかね?炎から視線を離してあの小僧の横に向けろ。その後に、“バーサーカーは、あそこにいる”と思って瞬きを三回程してみると良い。」

 

 

 

「まさか───…!」

 

 

 

すぐさま視線を衛宮くんの横に向けて言われた通りにしてみる…すると────…

 

 

 

「嘘…」

 

 

衛宮くんの横にあの黒いバーサーカーがいた。

腕組みをしながら悠々と構えたまま、まるで呆れたように勝ち誇っている慎二の様子を眺めていたのだ。

 

 

「確かに今、爆発に巻き込まれて跡形もなく吹っ飛んだはずじゃ…」

 

「それは君がそう思い込んでいただけだ。奴は“他者の認知を妨害する”術を持っている。」

 

「“認知”を…妨害ですって?」

 

 

アーチャーの言葉を聞いて戦慄した。

まさか、あのバーサーカーはそんなことまで出来るというの…!?アサシン類のスキルを持っているとか、インチキ過ぎるでしょ!?

 

 

「かなり厄介ね。まさか、そんな宝具を持っているなんて…」

 

「いや、あれは奴の宝具じゃない…あれは単なるアレが習得している魔術の一端に過ぎない。」

 

「あれが魔術!?冗談じゃない、あんなインチキ臭いのがただの魔術だなんて…!」

 

「まぁ、聞いてる分にはそうかもしれんが…実際は、さほど脅威ではないさ。あれはかなり限定した発動で解除も容易い。君もさっき私の言う通りにしたら、すぐに解けただろう?初見殺しではあるものの、二度目は通用しない単発的なものだ。」

 

 

アーチャーは簡単に言ってくれるけど、それでもあのバーサーカーの脅威性は揺るぎなかった。

完全に初見殺しの業で二度も通用するものではないのは分かったけど、あの黒いバーサーカーが、わざわざ二度目を作ってくれるようには思えない。あれを使ったからには完全に殺しきるだろう。

それだけに恐ろしい。それまでの実力を持っているのにも関わらず、隙だらけの慎二を殺すことなく悠々と構えているだけで何も手出ししない。

 

 

完全に手を抜いている。

 

 

次元が違い過ぎる…。

 

 

なんなのあのバーサーカー!?

 

 

あまりにも脅威的よ…一体、何者なの…?

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

なんか、アーチャーの奴が得意げにこちらを見ながら喋っているけど…どうしたんだろうな?というか、なんか遠坂が俺のことをとんでもないものでも見るかのような…いや、むしろ恐ろしいものでも見るかのような眼で見てきているんですけど…?

俺なんかしたかな?ちょっと魔術使っただけやで?蟲に覆われる前に『妨害』の魔術を使ってちょいと他人の“目線をずらした”だけやで?すぐに解除されちゃうし。別に剣でビーム撃ったわけでも、高速移動したわけでもないんだぞ?

まぁ、完全に初見殺しではあるが───…けど、これで戦闘面ではほぼ使い物にならなくなったな。

 

戦術を一つ失ってしまったのも同義だが、いずれ看破されるものだったし、というか一番厄介な奴には効かない代物であることから、むしろここで使っておいた方が良かったのか。

そんな風に考えながら、ワカメの方に視線を戻す。めらめらと燃え盛る炎をバックにまだあのワカメ笑ってやがるよ…いつまでああしているつもりなんだろうか?

 

 

 

いい加減飽きてきたんで、ここでネタばらし…もとい、魔術を解除、と。

 

 

 

ぱん、と柏手一つ叩くと慎二と衛宮はハッと気付いたように俺の方を見て驚愕した表情へ変わる。

まさか俺がここにいるとは思っていなかっただろう…そればかりか、たった今、目の前で爆発したんだ。心底、驚いているに違いねぇ。

そして、慎二の顔はどんどん青ざめていき、わなわなと震えながら口を開く。

 

 

「な、なんでお前がそこにいるんだよ…!?だって今、そこで僕の蟲の爆発に巻き込まれたハズ…!?」

 

 

 

それは、お前がそう思い込んでいただけだ…とまで言ってやりたいが、その前にッ!

 

 

 

「ひっ!?」

 

 

左手に『ディーヴァ』を召喚して、慎二の右頬を掠めるように弾丸を放つ。

放たれた弾は彼の後方にあった電灯に当たり…再びこちらへと“跳ね返って”くる。

それをすれ違うように俺が避ける…すると。

 

 

「うっ…!か…は…ッ」

 

 

真後ろから、どさりと倒れる音が聞こえてきた。

振り返るとライダーが左肩から真っ赤な鮮血を溢れ出しながら膝を付いていた…ようやく、本物を確認できたな。

 

 

「何故…分かったのですか…私が、後方にいると…ッ」

 

 

まるで、不可解と言いたげな口調でライダーは言葉を漏らす。んなもん、普通に分かるっつーの。

俺は単純に自分の後ろにあった“死を見た”だけだ。別に何かの小細工を使ったわけじゃない。

…などと答えられる訳はなく、俺は無言を貫いた。

 

 

「な…なにやってんだよライダー…僕の大事な計画を台無しにしやがって…本当にお前は使えない使い魔だ!早く立ち上がれよッ!?立ち上がって、バーサーカーを殺せッ!!」

 

 

本当に癇に障るワカメだな…。

生前、原作を見て何度も思ったがライダーが膝を付かせないように事を運ぶのがお前の仕事だろうが。

【EXTRA】のシンジを見習え。お前よりも何個も下なのに心持ちがまるで違う…【FOX TAIL】のシンジは特にかっこよかったなぁ…かっこよすぎて何度も、漫画読み直したわ。

…それに比べてこのワカメは!そんなんだから、小学生以下とか言われんだよバーカ!!

 

 

 

 

心の中で盛大に罵詈雑言をぶちかましていると…ふと、耳に音が入り込んだ。

 

 

 

 

なんだろうか、この音…まるで空気を振動させるような。そう、言うならば──…虫の羽音のような…?

それも一つじゃない、軍団のような振動音が耳の中に入り込んでくる…!?

 

 

「まさか…!?」

 

 

音が聞こえてくる方へ視線を向けると、そこには空しかなかったが微かに黒い塊のようなものが浮かんでいた。

雨雲にしては薄く、それでいてゆらゆらと揺らいでいるのは目の錯覚ではないだろう…あれは、もしかしてもしかしなくても…!?

 

 

「なにあれ…!?蟲!?」

 

「凛、下がれ!」

 

 

 

間桐 蔵硯の『翅刃虫』か…!!

 

 

そこまで思考が辿り着いたや否や、矢の雨の如く翅刃虫の大群が俺達に降り注ぐように襲い掛かってきた。

 

 

羽音によって音は支配され、視界には蟲が飛び回り…さながら暴風雨のようだ。

くそ!あのクソジジイ…本格的に水を差しに来やがったな!

 

 

「うわああッ!!」

 

 

ッ!やべ、士郎を守らなきゃ!

忘れていたわけではないが声を聞くまで行動に移せなかったな…!

蟲を双子銃の銃身と蹴りで蹴散らしながら、士郎の近くまで何とかやってこれた…士郎は何とか無事そうだ。

 

 

「掴まれ!離脱するぞ!」

 

「ッ!?お、おう…!」

 

 

士郎の身体を抱えるように手を回し、全速力でその場を撤退する。

途中で蟲を蹴散らしながらアーチャー達の様子も気になり目を向けた────…どうやら、あいつらも上手く逃げられたようだ。姿が見当たらないことに少し安堵し、俺達もその場を後にした。

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

翅刃虫の群れから逃れた俺と士郎は何とか衛宮邸の門前までやって来た…途中までだが、蟲の追跡もあった。

あの蟲どもマジで許さん…おかまいなしに切り刻んで来ようとしやがって!!『黒帝礼装』じゃなかったら、今頃ミンチですわ!!

間桐 蔵硯め!今度会ったら人類史上最悪の悪口と鉛玉をド派手にぶちかましに行ってやるからな!!覚えておきやがれってんだ!!

 

 

「あの…もう降ろしてもらっていいかな…?」

 

 

あ、いかんいかん士郎抱えたままだった…。

逃走中に効率を良くするために脇に抱えるような態勢になってたのを思い出した。さぞ、乗り心地が悪かったろうに…ゆっくりと丁重にその場に下ろした。

 

 

「ありがとう…その、助かったよ。あんたがいなかったら、死んでたかも…というか、死んでたと思う。」

 

 

おどおどしくお礼を言われてしまった…完全に成り行きで助けるつもりは全然なかったけど無事でよかったわ。

そういった気持ちを込めてこくりと頷いて答えた。すると、意思疎通が出来たことに感動を覚えたのか士郎の奴は心なしかジーンとしてるみたいだ。

そんなに感動的だったか…?

 

 

「あ、あのさ!良ければちょっと話を聞かせてもらえないかな?」

 

 

え。

いや、良くねぇよ?

成り行きとは言え、俺とお前って敵同士だぞ?

 

 

「あんたと俺が敵同士ってことは重々承知だ。けど、どうしてもあんたと話がしたいんだ。」

 

 

う、ううむ…。

真っすぐな目で言われてもなぁ…。

断るべきなのは理解しているんだが…しかし、士郎が俺に聞きたいことというのも内心気になる。

悩んでいると、腹の虫がか細く鳴り響きやがった。おいおい、魔力供給はちゃんと出来てんのに何鳴いてやがんだ。自分の腹の虫にも悩まされるとはな…。

 

 

「…お茶も出すぞ?」

 

 

そして、しっかり士郎の耳にも聞こえていたようだ。

何とまぁ。情けない。こいつに気を遣われるとはな…。

どうしたもんかと、考えたがまぁ…ここまできたら、何しても同じだよな。

間もなくして、俺は小さくこくりと頷いた…別に恥ずかしかったわけじゃないからなッ!!

 

 

「はは、大したもの出せないけど上がってくれ。」

 

 

そう言って、士郎は先導するように俺の前に立つ門をくぐった。

彼の後を追うように俺も門をくぐり敷地内に入った瞬間────────…がららと、玄関と扉が開いた。

そこに立っていたのは、原作の通り遠坂のおさがりの服を着たセイバーの姿があった。

 

 

「シロウ。おかえりなさ────ッ!?」

 

 

セイバーは士郎の姿を見ると表情を綻ばせたと思いきや俺を見るなり血相を変え、そして…

 

 

「シロウ!下がってください!!」

 

 

 

いつもの白銀の鎧姿に変わり、不可視の剣を構えて斬りかかってきた。

 

 

 

一瞬の出来事だ。

本当に一瞬の出来事だった。色んな事があり過ぎて、彼女の存在を忘れていたということもあるが完全に油断していた…が、咄嗟に体が動いて双子銃を呼び出して防御。

思い切り振り切られた為に後方に下がってしまうが、難なく着地した。

 

 

 

が、俺の心境は甚だ最悪である。

 

 

 

 

「セイバー!?何を!?」

 

「それはこちらの台詞です…どういうつもりですかマスター!敵を陣地に呼び寄せるとは…!!」

 

「ち、違うんだセイバー!確かにバーサーカーは敵だけど今は────!!」

 

 

 

これはない。流石にない。

こちとら、原作とは全く違うルートに進んでいるために原作のルート知識が使えないから四苦八苦しながらやっているというのに…。

今日は全くと言っていいほど計画通りに進まず、それどころか色々な邪魔が入って悩んでいるのに…事情をセイバーが知らないのは重々分かっているけど、それでもイラつかずにはいられない。

 

 

「バーサーカー。この間は随分とやってくれたな……!礼はきっちりと返させてもらう。」

 

 

大胆不敵に宣戦布告するセイバー…それを皮切りに頭の中でぷつりと何かが切れた気がした。

…もうキレたぞ?こうなったら派手にやらせてもらう。

 

 

 

双子銃のグリップを握ったまま、俺は詠唱する。

 

 

 

I am the bone of my sword.(我が骨子は暴れ狂う)

 

 

 

詠唱の一文を唱えると撃鉄を起こすかのように魔力が両手の銃に伝わっていく。

準備は終えた…俺は両手の双子銃を合わせるように接触させると眩い光を放ち形を成していく。

 

 

イメージするのは“純粋な力”──…何物にも怯まず、薙ぎ払い、捻り潰す力。

 

 

思い描いた力は見事、形となった。

それは銃と剣が一体となったモノ。

拳銃のグリップに分厚く長い刀身が付け足されたかのような武器。

俗に言う、ガンブレードというものだ。

巨大な銃剣であるそれはどちらかというと大剣に近い。

 

 

 

覚悟しろよセイバー。

 

俺は、派手にやらせてもらうからな…!

 

 

 

 

これが、俺の宝具の一つにして切り札の一枚。

 

 

 

 

超越せし双子大剣(オーバーエッジ)』だ。

 

 

 

俺はもう────────…知らないぞ。

 

 

 




遂にブチ切れた主人公(笑)

その矛先は何故かセイバーに。

果たして両者は和解できるのか…?



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。