Fate/SnowScene Einzbern   作:アテン

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今回も短めです。


第三夜 お見せしよう

あれから、イリヤとは一旦話を切り上げてお互い休むことにした。

イリヤに関しては、昨日の姿を御覧になったようにフラフラだったため俺が部屋を出てからすぐに寝付いたようだ。

眠ったことを知らせるようにパスを通して、召喚されてから乱れまくってた魔力の流れが穏やかになってたのが証拠だ。

ただでさえ、サーヴァントの召喚に膨大な魔力を使うのに、あれからも魔力供給をしながら話し合いをしようとしてたんだ。

 

俺的にはもう少し、自分を労わって欲しいんだけどなぁ。

その頃、俺はというとイリヤが眠りについている間、城の中の見回りをする事にした。

今後からお世話になると思うので、道に迷ったりしない為にも把握しておくべきだ。

眠っているイリヤに負担をかけないように魔力供給をできるだけ抑える為に霊体化して行動をした。

まぁ。その後はすぐに飽きて用意してもらった空き部屋で寝ちまったけどな!

 

 

 

…閑話休題。

 

 

 

次の日の朝……俺は、目の前の出来事に感動する事になる。

何故なら―――――…

 

 

「こっ、これは…!!」

 

 

 

目の前には、豪勢な朝食が並んでるんだからな!

 

 

 

「す、すげぇ…ッ!!これ、食ってもいいのか!?」

 

「ええ、もちろんよ。もともと、その為に用意したんだもの。」

 

 

 

やばい、俺の目の前に天使がいる。

 

 

 

にっこりとイリヤは慈愛の満ちた目で笑みを浮かべて言う。

思わず胸の内が暖かくなる感覚を覚える……こんなに優しい笑顔が出来る人は見た事ない。

猛烈に感動しつつ、俺は両手を合わせて「いただきまーす」と食事の挨拶をする。

スプーンですくった料理を口へ運ぶと…俺の口内で再び感動が湧き起こる。

 

 

「うまっ!めちゃくちゃうまい!」

 

「ふふっ。ありがとう。どんどん食べてね。」

 

 

予想通りで、なおかつ想像以上に美味かった。

こんなにうまい飯を生まれて初めて食ったんじゃないかと思うほど感動した。

同時に「やはり生きているという事は素晴らしい。」と切に思った。

 

 

 

俺はマスターの優しさに甘え、豪勢な朝食を堪能した。

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

「ふぅ、ごちそうさん!すげぇうまかったぜ!」

 

 

朝食を食べ終えた俺は、手を合わせて挨拶した。

俺の生きる糧となってくれた食材と様々な命に感謝を込めるのは当たり前だからな。

イリヤは俺が食べ終わる前に既に済ませており、今は優雅に紅茶を飲んでいた。

 

 

「とても良い食べっぷりね。まるで初めて食べたかのようなテンションで食事してたけど。

 貴方の生きていた時代では、あまり食文化は栄えていなかったのかしら。」

 

 

紅茶を飲みながら、イリヤは聞いてきた。

うーん…この質問は何て返そうか。

あまり、下手に口を開くと昨夜のような失態を犯しそうだし。

 

 

(まぁ、少し思い出した的な感じにごまかせばいいか。)

 

 

うまい飯の恩義は返すべきだ。

いずれはマスターに全部話すんだし、これぐらい大丈夫だろ。

 

 

「いや、美味い飯はたくさんあったよ。

 だが、俺が戦っていた国では紛争や内戦が多い国だったのでね…こんな美味い飯はありつけなかった。」

 

 

英雄時代の日々の食事風景を思い出す。

森での戦闘が多かったときは果実など川で魚をとったり、野生動物を捕獲して食ってたなぁ。

専ら蛇とかカエルが主だったけど、たまに肉食動物が襲い掛かってきたときにはそれを倒して焼いて食ってた。

うさぎとかキツネとかは流石に可哀想だったんで食わなかった。

ジェラルはそんな俺を見て「甘い」と言って呆れていたけど、気の持ちようだと言って説き伏せてたな。

 

一番きつかったのは砂漠での活動だ。

生物があまり生息しないから食料が極端に不足してしまう上、水分も著しく消費する。

その上、砂漠で遭難するとそのまま死んじまうからジェラルからみっちり叩き込まれた。

干し肉とか水とか砂漠の砂の風から身を守る防護服とか調達して、へこたれない精神とか作って――――…

 

 

 

修行の一環で砂漠の横断は本当にキツかった、マジでアレは過酷だった。

 

 

 

「そうなの…わたしには、よく分からないけど、その表情を見れば想像を絶する程に過酷だったのね…」

 

 

あれ…なんだろう顔に出てたかなぁ。

おかしいなぁ、辛い日々を思い出して感傷に浸ってたのがバレたかなぁ…。

イリヤの憐れむ表情に思わず泣きそうになるが、アレはアレでいい経験だったと思う。

師匠であるジェラルには感謝しきれないな…今の俺があるのは彼のおかげであるからな。

 

 

「それより、食後の紅茶でもいかがかしら?」

 

「いただくよ。」

 

 

そう言うと、イリヤが後ろに仕えていたメイドに指示を出す。

メイドはコクリと頭を下げると、紅茶を注いで俺のテーブルに差し出した。

カップの中の透明感のある茶色液体から香ばしい匂いが沸き立つ。

俺はそっとカップを持って一口飲んでみた。

 

 

「どうかしら?」

 

「…うまい。食後のティータイムというのは初めて体験したが、これなら毎日したくなるな。」

 

 

率直な感想を告げると、イリヤは満足そうに「ありがとう」と答えた。

言葉に嘘などない。これは普段飲んでいるインスタントなヤツと全然違うのは飲んでみてわかる。

味もそうだが、喉に心地よく通る感覚と鼻孔にスッと入ってくる匂い…これらが全て違う。

 

そういえば、修行していた頃はジェラルが紅茶を入れてくれたことを思い出す。

…いや、あれは紅茶と呼ぶにはあまりにもかけ離れていたがな。

ダージリンとかアッサムとかアールグレイなどの葉ではない―――…

何かの食草を鍋に突っ込んで煮た汁を紅茶などと言っていた時には、「こいつは正気か?」と本気で思ったのは無理もないハズだ。

 

 

 

紅茶の味と香りで十分にリラックスできた。

 

途中の回想を除けばだが……。

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

場面が変わり、俺とイリヤは朝食を終えて外へやってきた。

城の外は辺り一面の雪景色で今もなお白い雪が降り続けている。

その白銀の世界に俺は「おぉ…」と声を漏らし、イリヤは寒そうに白い息を吐いている。

 

 

「貴方は雪を見るのは初めてかしら。」

 

「いや、そーでもないみたいだ。なんとなくだが初めて見た感じはしない。」

 

 

生前でも英雄時代でも雪は見たことはある。

特に前者のほうでは、俺は日本でも雪が盛んに降り積もる場所で生まれ育ったからな。

雪を見て感動したというよりかは、久しぶりに見た景色で懐かしく感じたというほうが正しい。

 

 

「それより、マスターは寒くないか?」

 

「ええ大丈夫よ。わたしよりもあなたの方が寒そうに見えるわよ?」

 

 

俺の言葉にイリヤは答えて指摘してきた。

そうかな?改めて自分の姿を見てみると、黒いブーツにジーンズを履き。

上は自分のアイデンティティである半袖パーカーの形をした黒い礼装。

…確かに。こんなに極端に冷え込む外気の中で過ごしている人間とは思えない格好をしている。

 

不思議と全然寒くないのはサーヴァントになったからだろう。

もともとは幽霊みたいな存在なのだから気温など関係ないんだろう。

でもまぁ、我が主様が見ていて寒気を感じてはいけないなと思い。

俺は礼装の形を半袖から厚めの外套に変えた。

 

 

「えっ…い、今何をしたの!?」

 

「うん?マスターが俺を見て寒気を感じないように礼装の形を変えたんだけど。」

 

 

いらぬ気遣いだっただろうか?

 

 

「そ、そう…あなたにはそんな能力があるのね。」

 

 

俺の行動を見て、一つ把握したイリヤはそう言った。

それに対して「まぁな。」とだけ返しておく。

 

 

 

この俺の礼装…『黒帝礼装』には他にも様々な能力があるんだけど、それはまた次の機会にでも教えよう。

 

 

 

「…さて、随分と話が長くなったが。俺の力を見せてほしいってことだったな?」

 

「ええ。この先、一緒に聖杯戦争を戦っていくんですもの。

 自分のサーヴァントがどんな事が出来るのか、ちゃんと知っておいたほうがいいわ。」

 

 

 

続けざまにイリヤは「それに」と言葉を発する。

 

 

 

「このわたし、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンの使い魔が最弱なんてありえないもの。

 聖杯戦争に参加するサーヴァントの中で最強であることを見せてほしいわ。」

 

 

そういって不敵な笑みを俺に向ける。

スッ……と彼女の言葉が胸の内に入ってくる。

同時に心の中にあった熱いナニかが滾るような……言葉では言い表せない何かを感じた。

 

 

(ああ――――…そうか。)

 

 

俺は高揚しているんだ…戦っている時とは違う、ナニカに。

自分の心が、本能が昂りを感じているんだ。

 

 

 

この無垢なる少女に―――――。

 

 

自分の主様であるこの女の子に―――――。

 

 

仕えることの喜びと、期待されているという事実に―――。

 

 

俺の本能が“この子を守れ”と告げているんだ――――。

 

 

 

参ったな。

そういわれちゃあ、やるしかないじゃないか。

 

 

「いいぜ…見せてやるよマスター。お前が手に入れたピースは間違いなく―――…最強の駒だ。」

 

 

強く…それでいて優しく語りかけるように告げ。

俺は自分の力をこれから見せる為に彼女の前に立った。

イリヤは、それを見て俺の後ろへと下がって指をパチンと鳴らした。

 

 

 

 

 

すると、地鳴りのような音と共に雪の積もった地面から巨大な人形がたくさん這い出てきた。

 

 

 

 

 

「アイツベルンが作った演習用の魔術ゴーレムよ。

 最大出力で設定しているから魔術師はもちろんのこと、並のサーヴァントでも簡単には倒せないと思うわ。」

 

 

ふぅん。

“並のサーヴァント”ならねぇ…

 

 

「甘く見ないほうがいいわよ?」

 

「甘くは見ねぇよ。我が主様が作ったんだ、その言葉に嘘なんてないんだろうよ。」

 

 

 

ただ…と俺は言葉を続ける。

 

 

 

「あんたのサーヴァントは“並の”なんていうレベルじゃねぇっていうことをお見せしよう。」

 

 

それだけ言って、俺はゴーレム共の前に立つ。

見てなイリヤ……あんたのサーヴァントが一番最強だということを分からせてやるよ。

 

 

 

「さぁ…派手にやるぜ!!」

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

わたしの名前はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。

この城の城主にして、今回の第五次 聖杯戦争に参加する魔術師の一人で。

聖杯を手に入れるために、アインツベルンが作り出した最強のマスター。

そして、この黒いバーサーカーがわたしのサーヴァントよ。

 

急に話が変わるけど、このサーヴァントは少し変わっている。

いつも飄々としてるし、こちらの問いかけに対して上手くかわして流すし、サーヴァントなのに食事をとる。

さらにどこか俗世的っていうか、偉業を成した英雄って感じが全然しない。

服もどちらかというと近代的だし……なんだか、サーヴァントっぽくない。

 

 

 

だから、最初はハズレのサーヴァントを引いたと思った。

 

 

 

召喚の時の失敗もせいもあるけど、なによりヘラクレスじゃない英雄を引いた。

真名も忘れてしまっている。『宝具』も使えるかわからない。

辛うじて覚えているのは自分がどんな英雄だったのか程度くらい。

こんな状態で聖杯戦争が勝ち抜けるとは到底、思えない。

わたしがなんとかすればいいだけかもしれないけど……自分らしくないほど、自信がなかった。

 

 

 

 

でも、その認識も改めなきゃね。

 

 

 

 

 

 

 

 

たくさんのゴーレムの亡骸の散らばる中。

 

 

 

一体のゴーレムの上に立つバーサーカーがわたしを見下ろして言う。

 

 

 

 

 

「どうだマスター?、これでも足りないか?」

 

 

不敵に笑みを向けてくる彼。

 

ああ……わたしは今、ようやく確信した。

 

 

「いいえ、上出来よ。貴方こそ―――…唯一、わたしに相応しいサーヴァントよ。」

 

 

わたしのその言葉にバーサーカーは嬉しそうに、それでいて当たり前だと言わんばかりに嗤った。

 

 

 

 

 

このサーヴァントこそ、聖杯戦争を勝ち抜くための最強のピースだ。

 

 

 

 

 




次回「バーサーカー、冬木へ立つ」
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