Fate/SnowScene Einzbern   作:アテン

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次回の仮面ライダービルドで、遂に万丈がクローズに変身することにテンション上がりまくりの私こと、アテンです。
最近、アイディアが浮かばなくて思うように話が進められていませんが、どうかお付き合いいただけると嬉しいです。


それでは、どうぞ!





第七夜 rest

「ん…ここは…」

 

 

重い瞼をゆっくり開くと…そこには見慣れた自分の部屋の天井があった。

まだ寝ぼけているのか、少しだけボーっとして思考がままならない状態で、俺こと衛宮士郎は目覚めた。

周りには誰もおらず、布団の上で横になっている状態で俺一人だけ部屋にいた。

あれからどうしたんだっけ…?確か、冬木教会で聖杯戦争に参加する事を決めて、そして――――――――…

 

 

「ッ!そうだ!あのとき、バーサーカーと戦って――ッ!?」

 

 

フラッシュバックで脳裏に昨夜の記憶がよみがえってくる。

バッと、掛け布団を振り払って上体を起こすと、目の前の視界が歪んだ。

 

 

「うっ…なんだ…これ…」

 

 

ズキリ…と頭痛がすると共に全身に気だるさを感じる。

体の細胞が不調を告げているのが分かる…これは一体どういうことだ?

 

 

「…あら、起きたのね。衛宮くん。」

 

「っ…遠坂。」

 

 

声のする方へ視線を向けると、奥の廊下から遠坂がやって来た。

サーヴァントであるアーチャーの姿がない…まぁ、今は朝だし。いないのは当たり前か。

それにしても、何で遠坂が俺の家に?

 

 

「その様子じゃ、自分があの後どうなったのか分からないみたいね。」

 

 

やれやれ、といったように遠坂が俺を見て呆れたように溜め息を吐いた。

あの後―――――…イリヤとバーサーカーが奇襲をかけに来て、俺達のセイバーとアーチャーが迎え撃った。

けど、バーサーカーが規格外に強くて、銃みたいなの出して終始、セイバーを圧倒してた。

最後には、新都のビルの屋上から遠距離狙撃してたアーチャーに向かって“何か”を撃って…

ビルの屋上を跡形もなく、吹っ飛ばしてそれから――――――…どうなったんだ?

 

 

「貴方、アインツベルンのマスターが帰った途端、急に気を失ったのよ。

たぶん、いろいろな事が立て続きで起きたし、聖杯戦争の凄惨さを間近で見たんだし、疲れてたんでしょう。」

 

 

 

それだけ言って、遠坂は踵を返すように俺から背を向けた。

 

 

 

「今日はそのまま、休んでいなさい。学園の方には私から適当にでっちあげて欠席ということにしてあるから。」

 

「いや、そんなのしなくても大丈夫だ。学園にはちゃんといくさ。」

 

 

そう言って、俺は布団から出ようと立ち上がった。

だが、やはり体の倦怠感に勝てずにフラっと体勢を崩して、片膝をついてしまう。

 

 

「ほら見なさい。そんな見るからに絶不調な姿で学園に来てどうするの?また倒れるだけよ。」

 

 

くっ…何も言い返せない…。

情けない…さっきから、動かそうとしてはいるものの思うように体が言うことを聞かない。

俺の今の姿を見て、遠坂の方からまた溜め息声が聞こえてきた。

 

 

「悪いことは言わないから、今日は大人しく安静にしなさい。夜になれば、嫌でも聖杯戦争と向き合うことになるわ。

昼の明るいうちに安静にして体の疲れを癒し、体勢を整えておきなさい。いいわね?」

 

 

諭すような声音で、それでいて凛とした堂々と遠坂は俺に言う。

なんだか、昨夜から遠坂に迷惑かけっぱなしだよな俺―――――…遠坂様様だな。

何か、俺にできることはないかな…まぁ、今の状態じゃ何にもしてやれないか…早く治さないとな。

 

 

「ああ、それと…衛宮くん。休んだらセイバーにも会いに行きなさいよ?たぶん、道場の方にいると思うから。」

 

「あっ…!遠坂、セイバーは大丈夫なのか?バーサーカーと戦って何か怪我とか―――――…」

 

 

遠坂の言葉でさっきから姿が見えないセイバーの事を思い出した。

バーサーカーと戦って、傷を負っていたりしていなかっただろうか……!?

俺の顔を見て、何を思ったのか遠坂が微笑して口を開いた。

 

 

「大丈夫よ。幸い、致命傷になるような傷は負ってはいないわ。」

 

「そうか、良かった…。」

 

 

セイバーは無事のようだ。

そのことを聞いて、少しだけホッとした。女の子が傷つく姿は…見たくないからな。

 

 

「けど―――――…」

 

「?、どうかしたのか?」

 

 

安心するのも束の間、今度は遠坂がどこか困ったような表情をした。

どうかしたのか?、セイバーが無事だというのに何かあるのか?

 

 

「いや、なんていうか―――――…落ち込んでいるみたいなの。」

 

「え?落ち込んでいるって、誰が…?」

 

「セイバーよ。バーサーカーに負けたことがよっぽど、悔しいんでしょうね…道場の方に行ったまま、帰ってこないのよ。」

 

 

な、なんだって!?

あのセイバーが―――――…落ち込んでいる!?

 

 

「そう…だから、マスターである貴方から話してみたらどう?、あんな調子じゃ真っ先に殺されるわよ貴方たち。」

 

「わ、分かった…少し休んで歩けるようになったら、すぐセイバーのところへ向かうよ。」

 

 

まさか、セイバーが落ち込んでいるとは思いもしなかった。

昨日の夜に出会ったばかりだけど、俺から見たセイバーは常に自信に満ちた女の子のように思えた。

あのランサーさえも退けた力量を持っていながらも、バーサーカーへの敗北で何か自信を喪失させるようなことがあったのか。

 

 

「ま、とにかく伝えることは全部伝えたから。私は帰るわね。」

 

 

 

じゃ。と言って、遠坂は玄関の方へと体を向ける。

 

 

 

「なぁ、遠坂。なんで俺にそんな風に親切にしてくれるんだ?遠坂にとって、俺は敵なんだろ?」

 

 

なぜ、遠坂は俺なんかのために親身になって助けてくれるのか。

それが、とても気になった……彼女にとって俺は敵なハズだ。助けることをせず、見捨ててしまえば自分が有利になるはずなのに…。

俺の質問に対し、遠坂は鼻で笑うように後ろ髪を掻き上げるように答えた。

 

 

「何も知らない一般人を相手にそんな事はしないわよ。私は対等に立てる魔術師なら完膚無きまでに叩きのめすけど。

 衛宮くんのような素人に本気を出してもフェアじゃないしね。」

 

 

 

だけど…と、遠坂は今度は真剣な眼差しに変えて言い続けた。

 

 

 

「これで貴方に対する貸し借りは無しよ。次からはお互い敵同士…心おきなく倒しちゃうから悪く思わないでね衛宮くん。」

 

 

それだけ言って、遠坂は玄関の方へ向かって廊下の向こうへ歩き去って行った。

…なんだか、ほんの少しだけど。遠坂という人物について少し知れたような気がする。

俺の中では学園のマドンナで、品行方正で誰も彼もが憧れる存在っていう認識だった。

でも、本当はいつも人前で見せているような感じじゃなく、さっきまでの態度が本当の遠坂なのかもしれないな。

 

 

「…それにしても、セイバーが落ち込んでいるとは―――…」

 

 

本音を言えば、想像もつかない。

あのセイバーが落ち込むなんて―――…というより、セイバーをヘコませたバーサーカーって、やっぱりヤバい奴だな…。

昨夜の戦いを思い出す…ランサーを退けたセイバーの剣戟が通じないどころか、一方的な展開だった。

しかも、相手は銃を武器としながらも接近戦を仕掛けてきたのだ。それでいてセイバーを終始、劣勢に追い込んだ。

 

 

(俺も―――――…強くならなくちゃな。)

 

 

自分の掌を見ながら思う。

あの時は、セイバーだけを戦わせてしまった。それじゃ、ダメなんだ…。

バーサーカーの攻撃を受けて、地面に崩れ落ちたセイバーの姿が脳裏に浮かんだ。

…思わず、握った拳がより一層に力が入る。

 

 

「次からは、俺も一緒に戦おう…もう、セイバーを一人っきりで戦わせたりしないぞっ。」

 

 

握り拳を作ったまま、自分の中で決意表明をする。

セイバーを一人で戦わせない。彼女の隣で一緒に戦う!

その為には、もっと鍛錬や修行をして、他の魔術師やサーヴァントから身を守れるくらいに強くならなきゃ!

 

 

「よーし、やってやるぞ―――――…!!」

 

 

 

 

やる気満々に意気込む――――…しかし、この時の俺はまだ知らなかった。

 

 

 

 

この聖杯戦争の裏にある―――――…数々の陰謀と。

 

 

 

 

未だ隠されたまま―――――――…俺に計り知れない多くの謎が。

 

 

 

 

 

 

そして、俺自身の未来の姿―――――…その生涯…俺はそれを知ることになる。

 

 

 

 

この戦いで――――――…

 

 

 

 

 

 

 

そんなことも知らず。この時の俺は意気込んだことで、まだ抜け切れていない倦怠感に再び襲われる事になる。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

冬木教会で士郎一行達との戦いを終えた俺ことバーサーカーは、我が主様と共にアインツベルン城へ帰ってきた。

昨夜のアインツベルン陣営での初戦闘は結構いい感じに戦うことができたと思う。

マスターからの魔力供給も安定していて、実戦での活用にも問題ない。

加えて、敵方の陣営における戦力と実力を知ることができたし、俺が今のところあいつらに負け劣ることもないということをイリヤにも知ってもらえたと思う。

さらに――――…これは単なる私情なんだが、士郎がこれから自分が何をすべきなのかを考える良い経験になったんじゃないかと思う。

 

今頃、自分も強くなろうという結論に至って、たぶんセイバーにでも頼んで剣の修行しようとしてんじゃないかな?

原作でも同じようにセイバーに頼んで自己防衛交えての特訓をしていたな。何度も何度も打ちのめされていた姿が印象的だった。

 

 

まぁ、そういう苦労を重ねて強くなっていくのが衛宮士郎の異常さでもあり、魅力でもあるんだがな。

 

 

けど、何故か原作じゃ最優にして強者であるセイバーを引かせて、自分が戦おうとしてたのには流石にドン引きだったわ。

バカにするわけじゃないけど、人間がサーヴァントと戦おうとするなんて猛獣の口に頭を突っ込むようなモノだ。

しかも、士郎は魔術師ではあるものの、半人前に毛の一本すら生えていない半人前以下の実力しかない。

それには、色々な事情があるんだけど――――…それを抜きにしても、生身の人間がサーヴァントと戦おうすること自体、信じられない。

 

 

 

あのハイスペック人外主人公の「両儀式」でさえも、本来の獲物である日本刀と自分の能力をフルで使って“防戦”に徹するなら…とまで言われるほどなのだ。

 

 

 

もともと、両儀式という常識外れと比べるのも間違いでもある気がするが…それでも人間がサーヴァントと戦うなんて“普通”は考えないものだ。

――――…まぁ、士郎も両儀式に匹敵こそしないが負け劣らずの異常な能力を持っているんだけどな。

 

 

 

話が脱線したな。

 

 

 

まぁ、つまるところ…士郎にとって何かしらの良い影響を与えることが出来たんじゃないかってこと。

とりあえず、もう一人で戦おうとは考えなくなった―――――…と、願いたい。

少なくとも、セイバーと一緒に戦うって答えになっていて欲しいけど。

 

 

 

そんなことよりも!

 

 

 

そんなことは置いといてだ!

 

 

 

 

 

 

「なんで俺は正座されているんですかねぇ。」

 

 

 

 

そう――――…城の一室にて、俺は現在進行中で正座をさせられている。

何故、このような経緯になったのかは分からん。ただ、帰って来るなりイリヤに正座をすることを命じられた。

無論、訳が分からないといったように説明をすることを頼んだのだが聞く耳持たず。

マスターの阿修羅のようなオーラと気迫に圧倒されてしまい。今に至るという訳ですハイ。

 

 

 

怖ぇぇよウチのマスター!

 

 

 

謎の圧迫感と言うべきか、反抗してはならない空気といいますか威圧感のようなものがあった。

あんなんされたら、どんなサーヴァントだって命令聞いちまうわ!!

原作でヘラクレス先輩がバーサーカーだというのに、イリヤには従順だった理由が少しわかった気がする…。

 

 

「…いや、まぁ…なんとなくだけど、正座させられた理由みたいなのは薄々感づいているけど…。」

 

 

 

ため息交じりに呟いていると、後ろからガチャリとドアノブが捻られた。

ぎぃ。と古臭い木の扉の向こうからやってきた影を見て思わずびくりと体を震わす。

腰まで伸ばしている白銀の髪がゆらゆらと揺らしながら部屋の中に入ってきた少女は我が主様である。

 

 

「……」

 

 

 

入ってくるなり、何も言わずに表情だけを不機嫌なものに変える。

 

 

 

わぁ。やっぱりなんか怒ってますねぇ。

その赤い瞳を釣り上げて、如何にも私怒ってますみたいな顔をしている。

普段、俺のほうが身長が高いのに正座しているせいでイリヤに見下ろされる形となる。

それが無駄に威圧的で、見下ろされているこっちは胃がキリキリと痛むぞ。

 

 

 

うわぁ…この空気なんか嫌だなぁ。

 

 

 

冷や汗をかきながら、俺は正座を維持したまま主様の冷たい視線に耐え抜く。

く、くそう…なんかやりづれぇな。見下ろしているイリヤもなんも言わねぇし。

やっぱり、ブリューナク使ったの不味かったかなぁ…でも、ああしないとアーチャーの螺旋剣が飛んできそうだったしなぁ。

螺旋剣を見逃したら、色々と被害が出るし――――…まぁ、それは俺もなんだけどぉ。

 

 

 

万が一、螺旋剣の余波で士郎が死ぬなんてことが起きたらダメだしさ。

 

 

 

士郎の命と比べりゃあビルの一角なんて大したことねぇだろ!

崩壊した瓦礫もブリューナクの余波で木端微塵に吹っ飛ばして、下を歩いている人にも落ちることはなかったしな!

 

 

 

つーわけで――――…

 

 

 

 

俺は誰も殺してねぇ!!

 

 

 

 

 

「…ねぇ。バーサーカー?」

 

「は、はいいっ!?」

 

 

急に呼ばれて飛び上がりそうになった。というか、飛び上がった。

俺の情けないその姿を見て、イリヤはため息交じりに言い続ける。

 

 

「…もういいわ。正座を解いても。」

 

「え?あ?そ、そうか…?」

 

 

正座を解いても良いという赦しを得たので、崩して俺は胡坐をかく。あー、いてて、やっぱり痺れるなぁ…。

サーヴァントになっても足が痺れたりするのか…痛覚とかそういった感覚は人間と同じなんだな。

これは一つ、豆知識を覚えた覚えた――――…どこで披露すんのかわかんねーけど。

 

 

「ちょっといいかしらバーサーカー。」

 

 

 

一人で勝手に頷いていると、イリヤが近くにあった椅子に腰かけて呼び止めてきた。

 

 

 

「なんだいマスター?」

 

「聞きたいことがあるのだけれど、いいかしら?」

 

 

ほう、なんだろう。

改まって、聞く事となればやっぱり先の件であるブリューナクかな?

まぁ、アレの威力のデカさに問題ありと思うのも無理はないが、あんなのは俺の中では氷山の一角に過ぎ―――――…

 

 

「別に昨夜の宝具について聞く事なんてないわ。自分のサーヴァントが最強であるという証拠だもの。

咎める理由なんて、何一つ無いわ。」

 

 

おうふ。遂にうちのマスターは相手の心を読むすべを手に入れてしまったのか。

はたまた、俺の顔に出ていたのだろうか…そんな下らないことを考える事よりも、さり気無く恥ずかしい台詞を言われて絶句しましたハイ。

 

 

「…まぁ、やり過ぎだとは思うけどね。“あんなもの”を不用心に何度も撃たれまくられたら流石にドン引きだけど…」

 

 

 

 

 

あ ん な も の!?

 

 

 

 

 

 

まだ、日本語が慣れていないのかな。

俺の耳では、結構な罵倒モノな言葉が入って来たのだが聞き違いかなぁ。

 

 

「ま、そんなくだらない事はどうでもいいのだけれど。」

 

 

おやおや、言うだけ言っておいてどうでもいいときましたか。

最近の若いのは無気力でいかんねぇ…もう少し、未来について真剣に話しましょうや(意味不明)

 

 

「私が聞きたいのは、それとは別な事よ。」

 

「我が主様よ。聞きたい事があるなら、早く言ったらどうだ…」

 

 

この後も、やらなきゃいけない事や確かめなきゃいけない事が山積みなんでね…。

と、言ったものの本心では、これ以上マスターに自分の評価を下げられるのが嫌なだけなんだがな。

そんな情けないことを思っていると、我が主様がこちらに視線を向けているのに気が付く。

なんだろう…どことなく、慈愛に満ちていると言うべきか…。

いや、この場合は悪い所を指摘されて不貞腐れた息子を微笑ましく見守る母親のようだと表現すべきか…?

 

 

「そうね。悪かったわ。じゃあ、単刀直入に聞くけど――――…バーサーカー、貴方の目的は何?」

 

「…目的?」

 

 

はて、我が主様は何を言っているのだろうか?

今さら、何を聞いているのだろうと俺は怪訝そうな表情を隠す事なく顔に表す。

 

 

「目的なんて、聞くまでもないだろ?聖杯を手に入れることは、どこの陣営も同じこと――――――…」

 

 

 

 

 

 

「言い方が悪かったわ、言い変えましょう―――――――…貴方の聖杯に対する願いは何かしら?」

 

「……」

 

 

聖杯戦争に参加しているマスターとサーヴァントなら、必ず聞かれるだろう質問に俺は言葉を詰まらせた。

この手の質問は、俺にとってあまり触れられたくない部類の話だ。

サーヴァントの情報開示もさることながら、こういった質問は悪く転べばパートナー間で亀裂が生まれるからだ。

主にヒビ割れの原因となるのが互いの方針の違いとか、過去の行いとかで懐疑的な方へ縺れちまうとか。

 

そう考えると…Fate/Zeroでの切嗣とセイバーのパートナー間は最悪だったな。

なんつーか、マスターである切嗣が一方的にセイバーとの関わりを断っている所もそうなんだが…

主と従者のスタンスが真逆だったし、価値観も論理的思考も含め全てにおいてソリが合ってなかった。

 

 

 

セイバーが太陽とするなら、切嗣は月。

 

 

 

セイバーが人々を照らす陽光だとするなら、切嗣は全てを塗りつぶす影。

 

 

 

セイバーが清廉な水であるなら、切嗣はそれを掻き乱す油である。

 

 

 

 

…うんまぁ。こう言った具合に例えても、あの二人は相性が悪かったな。

よくまぁ、あんなんで最後まで戦い抜いたと思う…理由は、ひとえに二人とも頑固で負けず嫌いだったというべきか。

俺には上手く説明できない――――――…信念のようなモノがあったに違いない。

仲はクソ悪かったけどな。

 

 

 

まぁ、そういったことを対処する(強制的に)為の令呪なんだけどな…。

 

 

 

話がまた脱線したな。

とりあえず、言える事は非常に今現在ピンチである。

ただでさえ、素性不明な従者なのに目的さえ分からんとなると、イリヤにとってかーなーり不安だろうな。

 

 

(まずいな…。)

 

 

もう、何度目か分からないほどピンチに陥っている。

こういった、やり取りは俺にとって非常に好ましくないな…。

さて、どう返答したものか――――――…

 

 

「…なんてね。言ってみただけよ。答えなくてもいいわ。」

 

「は…?」

 

 

あ、れ?

なんか、答えなくてもよくなったみたいだぞ?急にどうしてだ?

我が主様の急な態度の変化に首をかしげていると、当の本人はクスリと笑みを浮かべてから口を開いた。

 

 

「なんで?っていう顔をしているわね。別に理由なんてないわ…ただ、言ってみただけだもの。特に理由なんて無いわ。」

 

 

それは果たして本当だろうか?

どこか、釈然としない気持ちになり俺は再び首を傾げる。

本当に理由なしに聞いてみただけだろうか…さっきの表情を思い出すにイリヤは知りたかったんじゃないだろうか。

俺の真名を、俺という英雄が一体どんなことを成し遂げたのか…知りたかったのではないだろうか…気のせいかな。

 

 

「マスターは俺の正体とか、目的とか知りたくはないのか?

仮にも、サーヴァントとマスターだし―――――…こう、やっぱ聞きたくなるもんじゃないか?」

 

 

「あら。じゃあ、教えてくれるのかしら?貴方が一体何者なのか。」

 

 

いらん墓穴掘った気がする!!

いい感じに流れる話だったのに、わざわざまた掘り返しちまった!

やっぱり、会話の駆け引きとか交渉みたいなのは俺に向いてないかもしれんな…ボロが出まくる…。

また、言葉に詰まって俺を見てイリヤは悪戯が成功した子どもみたいに答えた。

 

 

「冗談よ。知りたいのは山々だけど、まだ答えられないのでしょう?なら、無理に聞こうとは思わないわ。」

 

「でも……」

 

 

 

それに―――――…と、浮かない顔の俺にイリヤは言葉を続けた。

 

 

 

 

「貴方はセイバーとアーチャー…三騎士のサーヴァントを二体相手にしながらも、それらを退け。

 

 わたしに答えてくれた―――――…だから、今はそれでいいの。貴方が話してくれるのを待つわ。」

 

 

 

 

うちのマスターが凄く良い女に見えた。

その可憐で優しい笑顔に思わず俺は見惚れてしまった。

同時に何かすげぇ申し訳ない気持ちになった…この人は、素性が一切明かしていない不信感の塊みたいな俺を信じて待っているのに。

今の俺は、何一つ答えてやることができない…それが、もどかしくて嫌な気分になる。

 

 

 

自分を想ってくれる主に答えてやれない。

 

 

 

すごい悔しいな…これ。

 

 

 

 

「…悪いな。いつか、話せるときが来たら必ず話す。」

 

 

 

今、俺が出来るのは我が主様に頭を下げるしかできない。

もどかしいが、今は我慢するしかない……イリヤを救うためには、計画をここでやめるわけにはいかないからな。

ここはぐっと堪えろ、そして…代わりに俺が言ってやれる言葉は―――――…

 

 

 

 

「だけど…これだけは信じてほしい。俺は絶対に君を裏切ったりしない。

 

 召喚されたあの日に誓ったことは嘘じゃない。この身は君を守るための影であり、君の敵を倒す剣だ。」

 

 

 

 

 

じっと、イリヤの赤い瞳を見つめて答える。

この言葉に嘘はない。どんな敵がやってきても彼女だけは絶対に守って見せる。

 

 

 

 

例え、世界中が敵になっても。

 

 

どんなサーヴァントが襲い掛かってきても。

 

 

あの英雄王が慢心を捨てて殺しにかかってこようと、外道神父がどれだけ悪行を重ねようとしても。

 

 

 

 

 

 

俺は絶対にこの子だけは守ってみせる。

 

 

 

 

 

 

んでもって、俺が絶対に―――!!

 

 

 

 

 

 

「この聖杯戦争を勝ち抜いて、イリヤは絶対に俺が幸せにしてみせるぜ!!」

 

 

 

グッと握り拳を作って高らかに宣言する。

おおとも!イリヤは今までたくさん苦しい思いをしたんだ、彼女は必ず幸せになるべきだ。

そのためなら、俺はどんなサーヴァントが相手になろうが絶対に負けないぞ!!

槍でも鉄砲でも持ってこいってんだ!!

 

 

 

そんなことを一人で勝手に思っていると、ふとイリヤから何の反応も帰ってこないことに気が付いた。

 

 

 

はて?と視線を向けてみると、そこにあったのは口を開いたまま放心状態の我が主様がいた…なんですか、その表情(かお)は…?

 

 

 

やがて、しばらくすると顔を茹ダコみたいに真っ赤に変えたのち、ボン!と蒸気のようなものが出た―――…って、おいおいおい!

 

 

 

「どうしたイリヤ!大丈夫か!?」

 

 

 

我が主様の奇怪な様子を見て、俺は思わず駆け寄ろうとした―――…その瞬間!

 

 

白いウサギがデフォルメされたぬいぐるみが、顔面に飛んできた!!…いてっ。

 

 

「…なんですかねこれは。」

 

 

突然の攻撃に対処できなかった俺はジト目で睨みながら言う。

おかしい。なぜ、俺は守るべき対象から攻撃を受けるのだろう…。

投擲武器として使われ、今や役目を終えて床に落ちたウサギさんに視線を移す―――…ごめんよウサギさん。キャッチできなかったわ…。

 

 

どことなく悲しげな顔をしているようなぬいぐるみに合掌しつつ、ウサギをぶん投げた原因を見る。

 

 

…顔を真っ赤にして、肩で息をしていますねぇ。

なんだろう、生前に見たラブコメに同じような場面があった気がする。

タイトルは忘れたけど、確かこの後…第二波が飛んできたような―――…いてっ。

 

 

 

今度はクマが飛んできて、次にライオンを飛び、その次にトラとペンギンのぬいぐるみが―――…って、まてまてまて!!

 

 

 

「ちょっ、まてっ、おいっ!何だよマスター!?何がしてぇんだよ!?」

 

「うるさいうるさい!!あ、貴方が変なことを言うからでしょ!?」

 

「本音を言っただけだろ!!変なとか言うなよ!こっちは、本気で言ってんだからさ!!」

 

「ほ、ほほほ、本気って貴方ねぇ!?」

 

 

 

ぽんぽんと、こちらをめがけて飛んでくる無数のぬいぐるみたち…。

なんだろう、うちのマスターは王の財宝(ぬいぐるみ限定)でも使えるのだろうか。

 

 

 

つーか、この部屋にどんだけぬいぐるみがあんだよ!?

 

 

 

「もう知らない!ばかばかばか、バーカーカー!!」

 

「おい、またその名前で呼んだな!?それはやめろって言ってんだろ!?」

 

「うるさいうるさい!どっかいっちゃえ!!」

 

 

やれやれ…と心の中で溜め息を溢す。

話を聞いてもらえそうな空気じゃないな…とりあえず、部屋から出よう。

ぬいぐるみの弾幕を上手く避けながら、俺は部屋から上手く抜け出た。

 

 

 

良いこと言ったつもりなのに、彼女にはお気に召さなかったようだ。

 

 

おかしいなぁ…なんか変なこと言ったかなぁ。

 

 

自分なりに主様を想っての言葉であったのだが……解せぬ。

 

 

 

「…女心と秋の空ってやつか…?」

 

 

一人でに呟くが、その場に誰もいないため返答は帰ってこなかった。

なんだか、余計に切ない気持ちになった……。

 

 

「まぁ、そのうち機嫌を直すだろ……とりあえず、計画を“次の段階”へ移すかな。」

 

 

七人のサーヴァントが揃い、聖杯戦争は始まったばかりだ。

改めて気を引き締めていこう。今のところ大丈夫だが、この後に必ずしも俺の知っている事が起きるとは限らんからな。

いつ、予測不明な事態が起きてもおかしくない。その時、自分一人だけで解決できるとは断言できない。

だからこそ、そんな状態にいつなっても対処できるように協力し合える仲間が必要だ。

 

 

 

…よし。では本題に入ろう。次に俺が行うことは――――――…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次の作戦はキャスター―――…『コルキスの王女メディア』を味方につけることだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回の投稿は11/22に予定しています。
詳しい詳細は近いうちにTwitterなどで掲載するので、よろしければご覧ください。
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