バーサーカーの真名は
『黒帝の破壊者』(こくていのはかいしゃ)と読みます。
”くろみかど”ではないのでお気を付けくださいww
※H30 2/21 宝具発動台詞をオリジナル要素を入れて『曲死』にしていましたが、度々のご指摘があったために『直死』に直します。誤字報告ありがとうございました。
それでは、どうぞ!
遠坂が帰ってから、しばらく安静にしたことでやっと動けるようになった俺こと衛宮士郎。
体の疲れは完全には癒えてはないものの、動かす分には支障がないところまで回復した。
布団をたたみ、部屋から出て腹ごしらえをするために台所へ向かうと作り置きのお粥の鍋が置いてあった。
今日は桜が来る日ではないと分かっていたため、遠坂が作ってくれたのだろう。
…遠坂には、昨夜から助けられっぱなしだな。
今度、会ったら礼を言わなきゃな。
そう思いながら器に粥をよそい、いただきます。と挨拶してから一口食べる。
…丁度いい塩加減と卵の味が出ていて美味い。
疲労の体を癒すにはピッタリな味付けと、喉越しのいい食感だ。
「遠坂って、料理できるんだなぁ。」
粥をすくったレンゲを口に運びながら、脳裏に勝ち誇った顔の赤い少女の姿が思い浮かんで苦笑してしまう。
とりあえず、言いたいのはお粥は凄く美味かった。
◇◇◇◇
粥を食べ終え。食器を片付けた後、俺は離れにある屋敷の道場へやってきた。
遠坂の話に聞くところによると、セイバーはこの中にいるらしい。
目が覚めてから、今現在に至るまで一度もセイバーの姿を見ていない…。
居間で粥を食べている間もセイバーが顔を出すことは終ぞなかったわけで…。
「心配になってここへ来たわけで…」
と、言いながら道場の扉を開けて中へ入ると――…
室内の中央で正座をしたまま精神統一をしているセイバーがいた。
昨夜に着ていた鎧はなく、青いドレスを着たまま…窓から差し込む陽光に照らされるセイバー。
どこか神々しい姿に俺は言葉を失ったまま見惚れてしまっていた。
少しの間、黙ったままの時間が続いているとセイバーの方がこちらに気が付いた。
「シロウ。目が覚めたのですか。」
昨夜の出会ったときと変わらず、凛々しい表情で言う。
だが、声音がどこか嬉しげなものを感じるのは俺が目を覚ましたからかな?
そう考えると、どれだけ寝てたんだよ俺は…と、思わず溜め息を吐いてしまう。
遠坂だけでなく、セイバーにも色々と迷惑を掛けたみたいだし…情けないなぁ。
「シロウ?」
でも見た限りセイバーは無事そうだし…まぁ、いいか。
首を傾げてこちらの様子を伺っているセイバーに「なんでもない」と言いながら、彼女の許へ向かう。
姿勢をセイバーの方へ向けて、対面する形をとって道場の床へ座った…あ、そういえば今日は、まだ道場の中を掃除してないや。
「体の具合は如何ですか?どこか、不調だとかございませんか?」
「ああ、まだ疲労が完全には抜けきってないけど問題ないよ。逆に鈍りきった感じで気持ち悪いくらいだ。」
今すぐにでも体を動かしたいよ。と右腕の力こぶを見せる仕草をする。
俺のその姿に、セイバーは笑みを浮かべながら安堵している様子だ。
「セイバーは大丈夫か?昨夜の戦いでどこか怪我をしたとかはないか?」
「ええ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます…。
ですが、私たちサーヴァントは魔力のパスさえあれば自己修復するので、そういった配慮は必要ありませんよ。」
「いや、何言っているんだよ。サーヴァントだからそうかもしれないけど…セイバーだって女の子だろ?
女の子が傷ついて黙ってみてるなんて、男がすることじゃない。」
彼女の言動に俺は少しばかりか反感を覚えた。
いくら英霊とかサーヴァントと言っても、セイバーが女の子ということに変わりない。
そう言うと、セイバーはムッと目を吊り上げて口を開いた。
「シロウ。私を女として扱うのはやめてほしい。
この身はサーヴァントであると同時に騎士であるのだから、そういった甘い価値観に付き合わせないでほしい。」
「甘いって……なんだよそれ、セイバーのことを考えて何が悪いんだよ。」
「ですから、そのような対応が必要ないと言っているんです。今の私は戦うだけの存在なのですから。」
ああいえば、こう言う!
初めて知ったよ。セイバーってとても頑固者だったなんてさ。
俺たち二人は、そのまま互いの主張を譲らないまま……気付けば、口論になっていた。
「……」
「……」
こうしたやり取りが数分間続いて、やがて睨み合いへと発展した。
本当に頑固者だなセイバーは…!!
このままだと、一生続きそうだ…セイバーが折れてくれるような様子は見られないし。
けど、俺の方も妥協するわけにはいかないしな……セイバーは戦うことが目的なんだろうけど。
セイバーが傷つく姿は、できれば見たくないし――――…ううん…俺はただ、彼女の力になりたいだけなんだけどな…。
「…いいえ。マスターがそう考えるのも無理もないですよね。」
「え。」
「昨夜のバーサーカーとの戦いを見れば…どんなマスターだって不安になるでしょう。
あのような無様な醜態を晒しておいて、シロウに女として扱うななど言える立場ではありませんよね。」
申し訳なさそうにセイバーは視線を逸らしながら言う。
そういえば…遠坂がセイバーが落ち込んでいるって聞いて、話を聞きに来たんだった。
すっかり、忘れていた……同時に悪いタイミングで思い出しちゃったみたいだ…。
「あの時の敗北は、私の力が及ばずの結果です……。
狂戦士に遅れを取るどころか、満足にマスターさえ守れないなど…最優のクラス「セイバー」失格です私は…。」
「そんなことないって!あれは、バーサーカーの強さがおかしいだけで、セイバーは何も悪くない!」
だから、気負う必要はないと伝えるも、セイバーは首を振って答える。
「違うのですマスター…力や技術で遠く及ばないのなら、私も精進致します。
ですが…私は、あのバーサーカーに手加減された上に、手も足も出せず負けてしまった。」
手加減をした…?
あれだけ強大な猛威を振るっていたバーサーカーが、あれで手加減していたっていうのか…!?
「…シロウ、貴方は気付かなかったのですか…?
バーサーカーは、銃を武器として使っていながらも…戦闘中、“一発も銃弾を放っていない”のです。」
「あっ――――…!!」
セイバーの言葉を聞いて、ハッと脳裏に昨夜の戦闘の映像がリプレイされる。
…確かにあのとき、バーサーカーは一度たりとも引き金を引いていたなかった。
それどころか、銃で接近戦に持ち込み…セイバーを圧倒した。
「私は剣士のサーヴァントです…接近戦なら誰にも劣ることはない。むしろ、接近戦では負けることはないでしょう。
例え、それが最凶の戦士であっても――――…ですが、あのサーヴァントはそれすらも凌駕してきます。
あのようなサーヴァントは、私も初めてです…狂戦士でありながら、まるで理性があるかのような戦い方をするなんて。」
セイバーは自分の腕に自信を持っていた。
その自信を…力や技術を捻じ伏せた上、全てにおいてこちらを上回ってくるバーサーカーに俺は改めて戦慄を覚えた。
圧倒的な力の前に、セイバーは自分の腕に自信を無くしてしまった。
最優と呼ばれたサーヴァントをここまで追い込むなんて――――…いや。
(そうじゃない…あのとき、セイバーの傍にいた俺は一体、何をしていた?)
セイバーがバーサーカーと戦い…アーチャーが援護に回り、遠坂が戦況を打破するために必死で動いていたのに。
俺だけは、何一つ役に立つことが出来なかった…遠坂と一緒に考えることも出来ず――――。
アーチャーのように弓の真似事をしてバーサーカーの注意を反らすこともなければ――――。
セイバーに何もしてあげることができなかった。
くそ…!これじゃあ、正義の味方になんか到底なれっこないじゃないか!!
女の子が戦ってたのに何一つしてあげられずに…。
そればかりか、俺はバーサーカーの力のせいにして逃げているだけだ。
このままじゃダメだ――――…セイバーに守られるだけじゃ…!!
「セイバー!」
そう考え、顔をがばっと上げて俺はセイバーを呼ぶ。
呼ばれたセイバーは、突然の俺の行動に驚いたのかびくりと体を震わせた。
「は、はいっ!なんでしょうシロウ…?」
「悪い!俺、あのとき…セイバーに何にもしてやれなかった!
たった一人でバーサーカーと戦わせて、遠坂やセイバーに守られてばっかで…何もできなかった!」
ごめん!と地面に顔面をつける勢いでセイバーに頭を下げる。
俺のその行動を見て、セイバーは驚いた様子で慌てて口を開いた。
「そんな…頭を上げてくださいマスター!貴方は、昨夜まで聖杯戦争を知らなかった身。
ですが、貴方はサーヴァント同士の戦いから逃げようしなかった…通常なら、逃げ出すほど恐ろしかったでしょうに。」
「そんなの、実際に戦っているセイバーに比べたら大したことないよ。
実際、俺は何もしていない…このままじゃ、きっとセイバーのお荷物になる…いや、実際になっている!」
だから――――…と俺は、顔を上げてセイバーを向き合って言う。
「今度はセイバーと一緒に戦う!だから、俺に稽古をつけてくれセイバー!!
俺、もっと強くなりたいんだ……これからは、君の力になれるように…だから、頼む!」
彼女の翡翠色の瞳を見ながら、俺は頼み込んだ。
もう、彼女を一人では戦わせない。
その思いで俺はセイバーに懇願する。
君の剣を自分に教えてくれ。と――――…
俺のその姿に、セイバーはきょとんとした表情をして…すぐに笑みを浮かべた。
…え、なんだ…俺、なんか変なこと言ったかな?
「いえ…そうですね。今のシロウのままだと、この先にある戦いを勝ち進むのは不可能ですね。」
ぐっ…と胸にセイバーの言葉が胸に突き刺さってくる。
だが、仕方がない…事実なんだからな。
「わかりました…剣の鍛錬、お引き受けします。」
「ほ、本当か!いやー、よかった…」
「ですが、一つ条件があります。」
喜んでいる俺に横やりを入れるようにセイバーが進言する。
「私が剣術を教えるのは、マスターが自身の身を守れるようにするためです。
決して、サーヴァントと戦うために教えるのでありません…その事を踏まえての頼みであるなら聞きます。」
「…わかった。それでいい。」
本当は横に立って戦いたいのだけれど。
今のままじゃ、かえってセイバーの邪魔をするだけだ。
なら、彼女が安心して戦いに臨めるように最低限、自分の身を守る術を手に入れる為の努力をしよう。
「それと――――…強くなるのはマスターだけではありません。
私も、今よりもっと強くなります…次こそは、あのバーサーカーにも遅れは取りません。」
なので…と彼女は言葉を紡いだ。
「これから一緒に……強くなっていきましょうシロウ。
貴方の隣で、貴方を守る剣として、私はこの聖杯戦争を勝ち抜き…聖杯を手に入れます。」
そういって、彼女は俺に手を差し伸べた。
俺は、彼女のその姿に再び見惚れてしまった。
同時に胸の内がかあっと熱くなるのが分かった。
差し伸ばされたその華奢な手を数秒を見つめた後、俺はゆっくりとセイバーの手を取って言う。
「もちろんだセイバー。これから一緒に強くなろう。」
願わくば、君がこうして笑っていられるように。
俺はもっと、今よりずっと強くなる。
俺の言葉に満足したのか、セイバーは今までよりも安らかな笑顔を見せてくれた。
◆◆◆◆
アインツベルン城を飛び出した俺ことバーサーカーは現在、柳洞寺の前までやって来た。
あの後、イリヤに部屋から追い出されてから次の計画のために移動を開始。
城を出て柳洞寺に向かうことにした…が、何も言わずに出ていくのは流石に忍びないということで念話で一応、主様に外出許可を貰う連絡をした。
すると、帰ってきた言葉は――――…
“勝手にしなさいよ!!今は話しかけないでちょうだい!!”
えぇ……。
頭の中で鳴り響く怒声に思わず俺は涙が出そうになった。
いやいや、なんでさ…俺、ただ伝えるべきことを言ったまでなんだが…。
ホウレンソウを守ろうとしたら、主様に叱られたでござる。
理不尽!!
まぁ、その後なんだかんだで念話を閉じる瞬間に消えそうな小さな声で。
“…気を付けてね。”
…って言われて、爆死しそうになったんだがな!
いやいや、うちのマスターあぶねぇモン持ってやがるぜ…!
まさか、ツンデレという技をこうも自在に操るとは…おそれ知ったぜ!
珍しく、いつものツンツンが3倍増しでデレに変わって帰ってきたことに数秒固まっちまったが。
何とか「…おう」と不愛想ながらに答えられた。
いやぁ…うちのマスターはいつも理不尽な怒りをぶつけてくるけど、なんだかんだいって俺の事を気遣ってくれるよな。
パスから通じてくる魔力は全力をいつでも引き出せるほどの部類だし。
でっかい城に住まわせてくれるわ、食事は与えてくれるわ。
なんも情報を提示しない怪しいサーヴァントのことを今でも信頼してくれるし…。
やっぱり、我が主様は最高である。
彼女が俺のマスターでよかったなぁ…と切に思っているし。
これからも、あの小さな主様を守っていこうと胸に固く決意している。
なんだ、ただのノロケじゃないか。
自分で自分の主人愛に少しばかり引いてしまう……訂正する気はこれぽっちもないけど!
「さて…では、本題に戻るとしよう。」
計画の第一段階「衛宮士郎、並びに遠坂凛たちと戦うこと」は達成し。
確認されているサーヴァント…今は三体のみだが、誰が召喚されているのかを知ることが出来た。
幸い確認された三騎士の英霊全て、俺の知っているものだった。
同時に今進んでいる流れも、原作通りで今のところ変わった様子はない。
序盤は終わり、物語はこれからさらに加速していく。
原作では、士郎とセイバーはこれから騎乗兵のサーヴァント『ライダー』とそのマスターの間桐慎二と戦うことになるだろう。
確か、ワカメが学園を乗っ取って鮮血魔城――――…は、違うやつだ。
学園全体を鮮血神殿にして、生徒や教師たち全員から生命力を巻き上げていたんだったな。
赤く染まっていく学園に次々と倒れていく生徒と教師たち…。
その中には士郎の大切な友人たちや後輩、姉もいて――――…
「っ、くそッ。」
生前に見た映像の景色を思い浮かべて、俺は気持ち悪さと歯痒さに悪態をつく。
やっぱり、あのワカメは許しちゃあおけねぇわ。
昔に何があったかは正直、うろ覚えで分かんなくなったけどさ…。
辛い思いとかいっぱいしてきたんだと思うけどさ…。
「人を――――…命を、あんな風に弄ぶ奴を俺は許さない。」
鮮血神殿は何としてでも俺がぶっ壊してやる…聖杯戦争に犠牲者なんて、出してはいけないんだ。
俺たちの自分勝手な戦いに巻き込むなんて間違っている…もう、第四次みたいな被害を出すわけにはいかない。
…ふぅ、少し熱くなっちまったな。
話を元に戻すか…とりあえず、俺が柳洞寺に来た理由は一つ。
魔術師のサーヴァント「キャスター」を味方にするためである。
なぜ、そうする必要があるのか…理由を話す前に俺がいつも言っている計画が何なのか伝えるとしよう。
まず、俺がこの第五次聖杯戦争で掲げている最終目標は「イリヤスフィール・フォン・アインツベルンを救うこと」である。
知っているやつもいると思うが、この聖杯戦争の最大の優勝景品である聖杯っつーのは、ぶっちゃけイリヤのことを指している。
イリヤはいわゆる、願いをため込むための器……つまり、水を注ぐための空のコップのような役割を持っており。
その水というのが“願い”…勝利者の望みを叶えるための力の源だ。
水をすべて満タンにしたとき願いは叶うってわけだ。
そして、その水を器に入れる方法がサーヴァントの消滅ってことだな。
だからこそ、七体の英霊…そしてマスターたちは殺し合いをするのだ。
最後の一人(一体)になるその日まで。
…上手くできたシステムだよなぁ。
みんなが叶えれるわけでなく、たった一人しか叶えられないなんてな。
結局、みんな殺し合いをするしかないんだからさ。
「でもそのシステムも狂ってんだけどな。」
第三次聖杯戦争でアインツベルンはルール違反をして、エクストラクラスのアヴェンジャーを召喚したってことは前に言ったよな。
そのアヴェンジャーが思いの外、使えなくてすぐに脱落したってことも知っているはずだ。
話の本番はここからだ…アヴェンジャーが器に注がれたことで聖杯は汚染されてしまったんだ。
聖杯は真っ黒に歪んでしまって、勝利者の願いを叶えるというシステムが間違った方向へ進んでしまった。
要するに…願った内容が極端なモノに変わっちまうってことだ。
例えば、恒久的な平和をその聖杯に願ったとしよう。
すると、システムはその願いを「その願った人間以外全ての生物を滅ぼす」という風に叶えてしまうのだ。
どんな願いでさえも汚染された聖杯には、歪んだ形で叶えられてしまう。
あれだけ頑張った末に勝ち取った勝利が…こんなに歪められしまうなんて常人なら耐えられないだろうな。
「機械のように徹していた切嗣でさえ、壊れちまったんだからな。」
生前の記憶を思い出しては、すぐに俺は頭を振って思考を元に戻す。
今は切嗣に同情している場合じゃない。
聖杯が完成されると、イリヤも本懐を遂げて死んでしまう……そんなの、俺は見たくない。
俺の目的はイリヤを救うことだ…聖杯の器になんかさせてたまるか。
そうさせないために、器の中に願いを貯めることだけは避けなくちゃならない。
だからこそ――――…
「七騎のサーヴァント…並びに全てのマスターたちの生存。」
目的の一つ。もう一つは――――…
「汚染された聖杯の破壊、並びに浄化することだな。」
聖杯の事も放ってはおけない。
イカれた願望機になった聖杯も何とかしなくてはいけないだろう。
そして、もう一つ――――…
「あいつのことも何とかしてやんないとな。たぶん、放っておいたら間違いなく士郎を殺すだろうし。」
頭の中に過ったのは、赤い弓兵の姿。
あいつは……アーチャーは今も、自分自身を許せていない。
今んところは大丈夫だけど、いつ後ろからバッサリやっちゃうか分かんないからな。
…放置するわけにはいけないよな。まぁ、追々何とかしていくとするか。
「ま、そんな諸々のことを俺一人でやるなんて流石に無理なんで、な。」
そういうこともあってか、魔術などで色々なサポートができるキャスターの存在が非常に欲しいところだ。
なんとしてでも味方にしなければならない…!!
「ここが正念場だなぁ…よぉぉし。」
気合を入れなおすか。
柳洞寺の階段の前で準備体操をする俺。
膝の屈伸!いっちにーさんしー…ゴーロクシチハチ!
◇◇◇◇
「おけい!いくぜぇ!!」
一通りのウォーミングアップを終えてすっきりとした気持ちになる。
そして、再び柳洞寺の長い階段の頂上へ視線を移す………かなりなげぇなこの階段。
しかも、よく見ると周りの空気ってか流れっていうか…力の流れみたいなのが感じる。
ああ、そういえば、柳洞寺には龍脈が通っているんだっけか…。
そういうこともあってか、キャスターは柳洞寺を拠点に選んだのだろう。
流石はキャスターといったところか、魔術工房の拠点選びはお手の物だな。
まぁ、それはさておき―――――そろそろいくとするか。
俺はスッ…と両手を地面に付けて前屈みに状態を倒して、腰を上げる…。
処遇、クラウチングスタートのポーズである。
「さぁ、派手にやるぞキャスター!!うおおおおおおッ!!」
ダン!と地面を蹴り上げ、俺は階段を凄まじい速さで駆け上がっていく。
サーヴァントゆえの身体能力の向上のおかげで、どんどん頂上へと近づいていく。
このままいけば、キャスターのところへ殴り込みをゲフンゲf…もとい、到着するのも時間の問題だろう。
さぁ…このまま、頂上へたどり着いて――――…ん?
「はて?」
ぴたりと足を止めて、首をかしげる。
おかしい…確かに俺は階段を駆け上がっていたはずだ…。
なのに何故―――――…
「なんでさっきからおんなじ場所から動かないんだ?」
地面のいる場所から、登り階段の中央まで辿り着いた俺だったが……
その先から、何度も駆け上がっているのにも関わらず景色が全然変わらない。
なんですかねぇこの怪奇現象は…うわーこわいなぁーこわいなぁー。
「なんてな―――――…これは何なのかはなんとなくだが分かる。」
恐らくこれは、魔術だろうな。
人除けの魔術の強化版といったところか…ある対象を永遠に迷わらせるみたいなもんだろうか。
十中八九、キャスターの仕業だろうな…俺のことを警戒しているということか。
…まぁ、そりゃあそうだろうな。当たり前か。
「さて、無駄話はここまでだ…まずはこの―――…結界をなんとかしないとなッ!」
そう呟いて、俺は右手にアスラを呼び出して近くの木に向かって引き金を引く。
銃弾が放たれる音が鳴り響き、弾丸はどこにも直撃せずにどこかの次元飛び去って行った。
なるほどー、そういうことか。
「空間を歪めている系の類か。」
一発撃ってすぐに理解した。
こういった結界は、どっかに魔力の源みたいなのがあるんだ…それを見っけて“殺さないと”な。
じゃあ、やることは一つだな…そんなことを考えながら、近くの木々へ近寄って落ちている枝一本を拾う。
「うん、これでいいか。」
ちょうどいい大きさだし。“変える”分には問題ないだろう。
時間もないし…さっさと始めるとしよう。
「
持っている枝に魔力を通す。
俺が今から行う魔術は、アーチャーが使う“投影”とは逆の発展した魔術。
イメージするのは一本のナイフ。
誰かが使っていたわけでもない、ただの無銘の小刀。
それを、今から現実へ“すり替える”だけだ。
魔力を流した枝から、パキキ…と赤い水晶が覆われてパキン!!と音を立てて割れる。
すると、その中から持っていただろう、枝が一本のナイフへと文字通り“変わって”いた。
これこそ、俺が扱う魔術の一つ……『変換魔術』だ。
持っている物体を、自分が思い描かくモノに変える魔術だ。
これは、英雄時代にジェラルから最初に教えてもらった魔術であり、今までも多くに渡って多用してきた。
ジェラル曰く、これは本物を複製する投影魔術とは違い…変換魔術は“偽物を本物”に変える魔術だとか。
持っているモノの形状によるが、実際さっきのように武器じゃないものもその気になれば武器に変える事が可能だ。
「で…次は、と。結界の源か…。」
それを探すには骨が折れるだろう。
簡単な位置にキャスターを隠すわけないし…しょうがない。
「『宝具』使うか。」
その方が簡単そうだし。
むしろ、それしかないんじゃないだろうか。
それだけ考え、俺は瞳を閉じて精神を集中する――――。
「――――――――…“直死”。」
言葉とともに瞳を開けると、世界の景色が変わる。
先ほどまでなかった――――…“線”と“点”が辺りに一面に存在していた。
線と点が交差する景色は、ぐにゃりと歪んでおり…それを見るだけで吐き気を催してしまう。
だが…あいにく、俺はこれに“慣れて”しまったから何の問題もない。
とにかく、このまま俺は結界の源を探す……そして。
「――――…あった。」
この空間の中で一際、大きな青黒の点。
それを束ねるように無数に絡み合う青黒い線。
俺は――――…それに近づき…持っているナイフで――――…
線を“なぞり”。点に“突き刺した”
すると、その場の空気が震えているかのように空間が歪み…。
最後にはガラスのようにバリン!!と音を立てて“無くなって”しまった。
これが俺の宝具――――…英雄としての証でもある力。
『直死の魔眼』である。
万物にはあらゆる綻びがある。
俺の眼はそういった、モノの死を見ることができる。
さっきのように線をなぞり、点を突き刺すことで“殺す”ことが出来る。
まぁ、詳しいことはまた追々話すとして。
無事に結界をぶっ殺すことが出来たようだな…あとはキャスターに会うだけか。
それだけ考え、俺はふとナイフへと視線を向ける。
結界破壊のために用いられたナイフは刃こぼれをしており、刀身もひび割れて使い物にならなくなっていた。
これが変換魔術の欠点だ。
変換魔術は物体を自分の好きなものに変えられるが、その形状と同じ…あるいは近しいものにしか変えられない。
それと、物体と同じランクのものにしか変えられないのも欠点だ。
まぁ、要するに…おいそれと好き勝手にできるなんてことはないっつーわけだ。
「さて…随分と時間がかかったな。さっさと上へいくか…」
もはや用済みになったナイフをその辺に投げ捨てて、俺は階段を再び登り始めた。
なんか軽い感じで宝具がでてきましたが、こういったところじゃないと活躍する場がない気がする。
そして、セイバーを落ち込ませるバーサーカー…なんて恐ろしい子。
次回もよろしくお願いします。