第2話 銀眼の魔女 中篇
――――――――――― イタリア 某空港
ジェイクの手配してくれた飛行機で数時間のフライトを経て、ようやくイタリアの空港へ降り立ったネロ。相棒である"レッドクイーン”と“ブルーローズ”、少ない私物を無事受け取り、ジェイクとの待ち合わせ場所に急いだ。そこは、空港の中にあるラウンジで先に到着していたジェイクは、タバコを噴かしていた。近づいてくるネロに気がついたのか、タバコの火を消しネロに手を振るジェイク。
「よく来てくれた、ネロ。」
「ジェイク久しぶり。」
数ヶ月ぶりの再会を握手で確かめる二人。最後に会ったのあの事件の一ヶ月前。その後、あの事件が起こりしばらく音信不通だったが、ネロが教団を脱退し、事務所を立ち上げたことを知り度々電話での連絡はあったが、実際に会うのは本当に久しぶりだった。
「長旅で疲れているところ悪いんだが、早速移動していいか?」
「ああ、別にかまわないが・・・。」
「悪い、事態が一刻を争うまでに悪化してしまってな・・・・・・。」
そう言うと、ラウンジから出て空港の出口へと向かっていった。ジェイクの表に出さない焦りを感じ取ったのか、ネロも黙ってその後を追った。
着いた先は空港に隣接する駐車場だった。そこにはすでに待機していた車が一台あった。どうやら、ジェイクが待たせていた車らしい。彼に促され、車に乗り込むと目的地に向かって走り出した。
「・・・・・・、ジェイク。今回のヤマはそんなにヤバイのか?」
「・・・、ああ。電話では十三人と言ったが、昨日さらに三人殺された。」
「!?」
「今分かっているだけで、十六人惨殺されている。だが、実際に確認されている遺体が十六人であるだけで実はもっと犠牲者がいるんじゃないかと捜査本部は考えている。」
「なんだと!」
「何分、遺体すべてが内臓を食い荒らされたかのよう状態なんでな。酷いものだと、四肢が引き千切られ誰だったかさえ判別がつきづらいものまであるからな・・・。」
「・・・、それで俺を呼んだのか。」
「ああ・・・。これが捜査資料だ。」
「先輩、それを一般人に見せていいんですか!!」
ジェイクが事件資料をネロに見せようとしたとき、今まで車を運転していた男が彼を制止した。ジェイクを先輩と呼ぶことから彼の同僚なのだろう。歳はネロより上でジェイクより少し下位だろうか。確かに男の言うことは正論である。が、ジェイクは言った。
「ダニー、これは上が決定だ。それに、ネロは今日から今回の捜査の協力者だ。頼むから仲良くやってくれ。」
ダニーと呼ばれた男は、ジェイクに嗜められるとそれから黙り込んでしまった。
「ネロ、あんまり気にしないでくれ。今回の捜査でみんなピリピリしているんだ。」
「そのようだな・・・。」
「なんせ、一ヶ月以上経つにも関らず犯人の足跡すら掴めずいるのに犠牲者は増え続けていく有様なんでな。捜査本部に誹謗中傷の電話やらメールが殺到してみんなストレスを溜めてるんだ。」
「なるほど、そんな状態の中で犯人がカルト染みた奴だったら本当に洒落にならないな。よくもまあ、俺みたい奴に協力を頼んだな。」
「・・・、俺はお前のこと信頼している。それに、俺とお前が知り合うきっかけがあれじゃ、今回の犯人の件だって可能性とし考えちまうよ。本部部長殿も俺と同じ体験をしてるみたいだからな。」
「そうか。」
「さて、この話はこれで終わりだ。依頼の話に入っていいか?」
「ああ、そうだな。まず、なんで“奴ら”の仕業だと思ったのか理由を教えてくれ。」
「その理由なんだが、これを見てくれるか?」
そう言って一枚の写真をネロに見せた。
そこには内臓の抉られた遺体の写っていた。
―――――――――――― イタリア 某所
イタリア全土を震撼させる惨殺事件の渦中にある街。まだ九時をまわったぐらいの時間にも拘らず、人影は皆無。生暖かい夜風だけが街を通り抜けていく。街の住人達は、いつ降りかかるとも分からない恐怖に怯え、じっと朝が来るのを待っていた。