いつかオリキャラが出てくる?
あらすじを読んでいればわかると思うけど主人公はFateルートの衛宮士郎。ゴーマイウェイ。
書き方はかなり一人称に近い三人称〈とりあえず今回は〉
――夢を見ている。
鉄を含んだ風が、空を暗い濁った灰色にしていた。
その下に広がるのは――果てのない荒野と無数の
目を潰し耳を覆う砂塵は、死に絶えようとする大地が喘いでいるようだ。
ここは炎に囲まれた孤独な世界。灼けて錆びて磨耗し朽ち果てる――避けえない破滅を迎え入れたある男の墓標だった。
世界に存在する数多の剣はすべて幻であるが故に誰の物でもなく。
つまり存在する意味がない。いつか、在り得ずとも打ち捨てられる日を男は待つ。
そうして、
I am
眠りから覚めようとする心は、硬い鉄に――
/
新都と深山町の間に流れる未遠川から吹き込む風を受けながら、頑丈な作りをしていないのか、ともすれば、いきなり崩れはしないだろうかと不安を煽る冬木大橋を渡り、そして川縁の公園を抜け、寄宿する深山の郊外にある老夫婦の家へと向かう。
この町の冬はわりと暖かいと聞いたが、深夜の三時を越えていればさすがに堪えるほどの寒さになる。
そうでなくとも、一日を探索に費やし、ウェイバー・ベルベットは憔悴していた。聖杯戦争が開幕したと勇んで市街を廻り――結果、日頃の運動不足が祟ったのだ。それなのに何の成果も上げれずに終ったというのも大きい。
バスや電車は止まっている。それに今は修羅に身を置く立場だ。いつ襲撃されてもおかしくはないから、めったな事でもないかぎりタクシーも使えない。
「――――ん?」
我知らず前のめりで歩いていたウェイバーの視界の端に何か――目を惹くほどに美しい銀の髪が映りこんだ。思わず顔を向けるが、夜の闇に沈む道にその主の姿を捉えることを阻まれる。
特に理由のある行いではなかった。敵と出くわしたのかと思う気持ちがなかった訳でもないのだが……ただ何となくというのがやっぱり正しい。
そんな自分に溜息をつきそうになり――マスターである我が身を顧みてすんでのところで抑え込む。
「――――おい、坊主」
と、いきなりライダーが声をかけてきた。――実を言うとタクシーを使えないのは、もっぱらこの大男が原因である。召喚して一週間近くが経つが、これまで何度霊体化をしろと命じても、『身体がある方が心地よい』と言って、聞き入れたためしがない。
まぁ、それはいい。マスターの身からすれば全然よくはないが、今はともかく。
「……どうした、ライダー?」
「余はアレを飲んでみたいんだが……」
ライダーの示す先には自動販売機があった。
あるていど予想していたので、ウェイバーの傷は浅い。
霊体であるサーヴァントは、空腹になることも喉が渇くこともない。また、むやみやたらと高い好奇心が、あの
そんな無駄な事に使う金などないと、そう開こうとした口を、すぐに思い直して閉じた。自分は疲労が溜まっている。糖分が欲しいところだ。が、それならばウェイバーは自分一人分だけを買えばいいだけの話である――
「いいけど。……だけどボクは日本語が分からない。言いだしっぺがオマエで、金を出すのはボクだ。なら、あったかくて、甘そうなのをオマエが選べ」
――あくまで、ウェイバーの精神衛生上の問題を度外視した場合に限るが。
いくらライダーが使い魔とはいえ、ヒトの姿をしたものをおいて、自分だけで飲み食いするのは流石に気が引ける。
こうした経験が少ないのか、しどろもどろに言い捨てたウェイバーはポケットから財布を取り出し、二人分の小銭を掴んだ。
「おう、ありがたい。―――ふむ。ではこのお汁粉なるモノを選ぶとするか」
微笑を浮かべながら、二回とも同じ缶ジュースのボタンをライダーは押す。
ウェイバーのとって本当にどうでもいい事だが、ライダーの身長は二メートル以上もある。勿論、その手も、指もそれに合った大きさだ。
狭い取り出し口に難儀する大男の姿に、内心でしてやったりと思っていると、冷え切った手に、痺れるような熱を宿したお汁粉が渡された。
さすがにお釣りはウェイバー自身が取り、それからプルタブを引く。
すると、まだ開けていないジュースを握ったままで、「坊主」とひどく真剣な顔で呼びかけてきたライダーは、
「開けるのはよく振ってからにしろと書いてあるぞ」
と告げた。ウェイバーは投げやりな調子で、早く言えよと返してジュースの中身を喉に流し込む。
パッケージからして悪い予感がしていたのだが、その通り、湿った豆の感触に、うぇと咽そうになった。後味も好きにはなれない。
気紛れなんか起こしたからだ、それもライダー相手に……などと益体のない感慨を抱きつつ、寝静まった街に歩を進めた。
「そっちはもう手遅れだが、こっちの無事な方は余の分だからな」
「黙ればか! ってかそんな惨めな姿に見えてたのかボクは……ッ」
マスターの威厳というやつを思い知らせてやる、と幼稚なことを思っていたわけではないが、ライダーの発言はウェイバーのプライドを僅かばかりだが傷つけた。
自棄を起こし、一気にお汁粉缶を飲み下す。その横では、これでもかと言わんばかりに缶を振りまくるライダー。見せ付けているわけではなく、ただ単純にその行為を愉しんでいるのだ。ひげを生やしているいい歳した大男が。
ウェイバーはその光景をヤケ酒ならぬヤケお汁粉で紛らわす。夜の街に、ごきゅごきゅ、とやたらと大きい音が響いていた。
ちなみに、開ける前に振っていようが振っていまいが必ず一粒以上は底に残る湿った豆、もとい小豆がある事を、初見である彼らは知らない。
/ stay night
この世界との接点であるイリヤを下ろした事が関係しているのか、聖杯から滲み出ていた赤い光は消えている。だが、まとわりつくような重い空気と、大気を唸らせる中空に穿たれた黒い『孔』は未だ健在だ。
それでも――ここに、戦いは終わっていた。
あの時に見えた光……おそらくはセイバーはギルガメッシュを倒したという事だろう。ならば勝ち残ったマスター――衛宮士郎は最後に、その
”―――貴方が、私の”
だがそれは、彼女を失うという事。一番大事な者に触れるに事も、言葉を交わす事さえ出来なくなる。
空を見上げたまま、眼を閉じた。
……誰よりもそれを分かっていながら、おまえは長い石の階段を登り、背を向かい合わせて、最後の戦いに赴いた。それぞれが倒すべき敵を倒し、この戦いを終らせるために。
”―――貴方が、私の鞘だったのですね”
そう、そのために”戦う”と決めたのだ。別れは、もうとっくに済んでいる。そこに悔いがないなんて言えない。それでもおまえは彼女の主として、彼女と同じように信じる道を貫き、幕を下ろさなければならない。
「―――俺は……」
その道が。今までの自分が、間違ってなかったと信じている。
衛宮士郎が切嗣のユメに守られているように。最期に、彼女の人生が、胸を張れるものだったと安心して眠れるように。
だから
「ありがとうセイバー。俺はおまえに、何度も助けられた」
万感の籠もった呟きは。
向かい風にかき消えて。
鞘は――やはり、独り――
/
ざっ、ざっ、ざっ……
金砂のような髪が逆巻く風に揺れる。
黒く焦げた大地を踏みしめる音は、それが遠く離れていく事だとでも言うかのように、物寂しい。
青い衣を吹き付けられる風に靡かしながら、彼女の穏やかな聖緑の瞳はまっすぐに、空に浮かぶ聖杯を見据えた。
まるで――黒い太陽の如く禍々しい聖杯を。
その向こう側に、何があるのかを彼らは知らない。ただ理解している。一目見た瞬間から、それが破滅をもたらすものだと。
実際、十年前の冬のあの日にそれは一つの地獄を生み出した。
聖杯戦争に呼び出されたサーヴァントは、敗れると”器”にくべられ、その魂を魔力に変換される。英霊の座に召されるほどの、傑出した人間の魂だ。人の身で扱うには無尽蔵にすぎる膨大な魔力量となる。
ひとたび開放するような事でもあれば、地獄の誕生は免れない。そのときは、それこそ世界に五つしかない魔法か、正真正銘の願望機に託すしか破滅を防ぐ方法はないだろう。だが、この場にそんな奇蹟は存在しない。ならばどうするべきか――
「マスター、命令を。貴方の命がなければ、アレは破壊できない」
「――――――」
ある少女が夢見た理想郷。そこに向かって駆け抜けた王。傷つき、それでも、道を違えず戦い抜いたその強い在り方。
それを――どうして失いたいと思えるのか。
その先に何があるのか、どうなってしまうのか。失った後の事なんて思い描けもしない。セイバーの姿は遥か向こう。誇りを持って、誓いに懸けた望みを信じている。
守れなかった多くのモノを背負って、そこをユメの果てにせず、なおその先の輝きへ。絶望の断崖を前にして、あの血に染まった丘で、まだ――
「―――シロウ。貴方の声で、聞かせてほしい」
背中を向けたまま、セイバーはそんなコトを主に言った。
「――――――っ」
その声を聞くたびに、胸が軋む。それが我が侭であると分かっていても、共にいたいと手を伸ばしそうになる。
否、だからこそ衛宮士郎は決して
ギリ、と歯を強くかみ締めて耐えた。
ありとあらゆる誘惑を胸の奥に押し込める。それと一緒に、彼女と過ごした思い出も仕舞いこむ。あまりにも多いそれは、だが、がらんどうのような胸に全て収まりきる。そうしてやっと。
「―――セイバー。その責務を、果たしてくれ」
まなじりを引き絞り、偽りのない心で、士郎は告げた。
同時に、左手の甲にある刻印がその力を解放する。剣と鞘を象った令呪が、焼き消えていく。
――溢れる光。
星が鍛えた聖剣が、光を紡ぎ束ね上げる。
セイバーの手の中から奔出する黄金の輝きが、視界すべてを埋め尽くすその中で。
「そん、な―――」
有り得てはならないものを見た。
/
刀身より噴き上がる膨大な魔力。世界の理から遮断する光の粒子。
――黄金の輝きが、周囲へと押し拡げられる。
それは、けっして一つの宝具によるものではなかった。
――極光の中に、二つの黒い孔が穿たれている。
その一つは、剣を振りかぶるセイバーの体に現れていた。
孔はいまだ不安定だと、言峰は口にしていた。聖杯が成就するには、接点が――つまりサーヴァント七体分の魂を受け止めた聖杯の器であるイリヤが必要なのだと。
そのイリヤは、今は少し離れた木陰に休ませている。
あるいは、不安定な聖杯は求めたのではないか。聖杯へと捧げられる供物を。あの虚無の孔は、生き物のように
すなわち、令呪によって最強の聖剣を放つだけの魔力を受けたセイバーは、極上の獲物だったのではないか。
聖杯の孔は、セイバーをその内側に引きずり込もうとしている。抗えるはずはない。それは、自分自身に穿たれているのだから。
だが、騎士の王がそう易々と呑み込まれる事も、また有り得ない。
それを以ってすれば、セイバーが取り込まれる事はない。……ただし、彼女が万全の状態であった場合の話であるが。
セイバーはいま二つの宝具を同時に使用している。令呪によるサポートがあったところで、最高位の宝具の使用するだけの魔力を賄えはしまい。
鞘を以て自分の身を守るか、聖剣を以て聖杯を完全に破壊するか。気高い彼女が、そのどちらを選ぶかといえばそれは――
光の渦が視界を覆いつくす。
――悪寒と吐き気。
その不快感は衛宮士郎の感じたものではなく、マスターとサーヴァントの間に繋がるラインから伝わってきたセイバーのものだ。だがそれも、いま彼女が感じている何十分の一にも満たないだろう。
だからこの頭は白熱する。堪えなどきかず、不快感を怒りと共にぶつけるようにして地を蹴るが、すぐにつんのめって膝をついた。
体力は聖杯の泥を相手に消耗しつくし、魔力は言峰綺礼との戦いで使い切っていた。彼には、もはや彼自身が期待するほど余力は残ってはいなかったのだ。
「こ、っの――――」
なおも立ち上がろうとするが、孔から吐き出される向かい風に抗えない。たったあれだけの距離なのに……!
――ならば。魔術師である衛宮士郎は何を武器にすればいい?
――明瞭だ。足りないものを他で補え。それでも無理なら作れ。
そうだ、まだ心臓は動いている。この鼓動があるかぎり戦える。意地を張れるとまだこの体は訴えているのだから、それに応えなくてどうする。
精神を束ねる。限界を超えて、生命を燃やし魔力を生成し、魔術回路を廻す。その、分不相応な駆動に、全身の神経がギチギチと軋みを上げた。
「ふざけるな、それが何だ………!」
その痛みに、罵倒でフタをして、赤く染まった世界へと挑みかかるように走る。
ただ、許せなかった。こんな終わり方も、飲み込まれようとしている彼女の姿も我慢ならなかった。
サーヴァントである彼女にとって、聖杯に飲み込まれる事は『死』ではない。
だがそんな事が、見逃す理由になるわけがないと士郎は思う。
俺はただ普通に、穏やかに息をついてくれればそれで良かったのに、そんな当たり前な安心すら叶わないなんて、頭にくる。
だからそれは――衛宮士郎が無茶をする理由には充分すぎるだろう。
「―――
吹き荒ぶ風に髪を逆立て、血を零しながら呪文を口にした。
撃鉄の落ちた回路に、複製する宝具のイメージを乗せ、身体を奔る
ここで終了。切っとかないと長すぎてしまうので。
しかしなんというかこれまで遅くても仕方がないくらいには忙しかった……。しかも十日経ったらまた机に向かわなければ……。