問い:以下の単語から想像すべき光景を述べよ
『腐臭』
『缶ビール』
『缶ビール』
『空の缶ビール』
『膨れ上がったゴミ袋』
『生ゴミが詰まったゴミ袋』
『腐臭腐臭腐臭腐臭腐臭腐臭腐臭』
『埃を被った廊下』
『缶ビール』
『カビの生えた惣菜』
『腐臭』
答え:姉貴の自宅
この問いに正解した者は正気度チェック1d6/1d10。
「なんて考えてる場合じゃねえな……これは」
眉の寄った皺がいつまでも取れないまま、俺はその場で立ち尽くしていた。
掃除という選択をぶん投げるかのように、もはやその場所に清潔さという可能性は消え失せている。
「……しなきゃ、寝る場所も確保できないんだけどな」
つまりは掃除しろ、と。
あの姉貴は弟の俺を清掃員とでも思っているのだろうか。
真面目な話、この部屋の有様を見るにデスマーチは未だに行進中らしい。
およそ一ヶ月は家に帰れていないのだろう。
アイドルの一斉デビューは良いことばかりではないようだ。
まず換気。
腐臭を外に放出し、俺以外の誰かもこの臭いでSANチェックしないかなと最低な願いが頭をよぎる。バイオハザードでウィルスを放出した人もこんな気持ちだったのだろうか。
ゴミ袋は曜日も時間帯も合ってはいないので、嫌がらせに姉貴の部屋に投げ込み隔離しておいた。部屋の前に消臭剤を置いたのは優しさと言う名の結界である。
缶ビールは全部空かと思いきや中途半端に残っているものもあり、俺の手と服が濡れたのは絶対許さない。シンクに残りを捨て、空き缶を全て集め姉貴の扉の前に消臭剤と共にピラミッドを建てる。
カビの生えた惣菜を供え物にしようかと思ったが、さすがに臭いので姉貴の部屋の中に押し入れて置いた。
消臭剤と空き缶ピラミッド、そして中には無数のゴミとカビの生えた惣菜。文字通り墓標である。合掌して満足したのでその部屋は放置して本格的な掃除に移る。
「……掃除機はすげえ高性能なのにな」
吸引力が変わらなくても使わなければ粗大ゴミである。
掃除が終わる頃には、夜が深くなっていた。
ーーー
SANA:どうだった?
SANA:二人
カワイイ天使:ようやく落ち着いたようです
カワイイ天使:二人ともPさんが寮まで送っていきましたよ
SANA:いきなりびっくりしたよ
SANA:事務所に帰ってくるなり泣き出すからさ
カワイイ天使:説明してもらおうにも蘭子さんはともかく飛鳥さんまで何も言えないくらいでしたからね
カワイイ天使:何があったんでしょうか……
博士:興味深い会話をしているな
博士:飛鳥と蘭子に何かあったのか
SANA:晶葉ちゃん今起きたの?
カワイイ天使:生活リズムを整えてくださいとあれほど!
博士:いや発明で集中していただけだ
博士:オフだからって何も反応しなかったのは悪かったよ
カワイイ天使:それなら良いですけど……
SANA:あの二人があんなになるなんて
カワイイ天使:何か心当たりはありませんか?
博士:ううむ……二人とは私生活ではあまり……
SANA:春川くんが何かしたのかな?
博士:む?
カワイイ天使:春川くんって誰ですか?
SANA:二人の中学の友達
SANA:かなり仲が良いみたいだよ
SANA:よくブログとかで出てくる魔道士とか観測者とか呼ばれてる人
SANA:ちなみにあたしの永遠のライバル
博士:……あー、春川、なんと言う?
SANA:えっと……
SANA:確か、春樹だったかな
SANA:蘭子ちゃんが言ってた気がする
カワイイ天使:蘭子さんのブログで凄く人気の人でしたね
カワイイ天使:色んな尾ひれが付いてましたけど
SANA:付けてたのが蘭子ちゃん本人というのが一番面白かったけどね
SANA:晶葉ちゃん?
博士:用事ができた
博士:ちひろさんはまだ事務所か?
SANA:あ、今日は珍しく帰るみたいだよ
博士:家の場所は知らんな……
博士:明日朝一で向かうか
SANA:なんでちひろさん?
博士:千川ちひろ
博士:旧姓は春川だ
カワイイ天使:……偶然でしょう?
博士:幼馴染だ
SANA:なんか……都合のいい推理ゲームみたいな展開だね
博士:言うな
博士:あの馬鹿は何をやっているんだと頭を抱えている途中なんだ
前回が二週間前……!?
誠に申し訳ありませんでした!!(土下座
これにて復活であります!
SANA
推理ゲームはあまり得意ではない。
地道にフラグ管理と答えしらみ潰しを行う。
カワイイ天使
春川くんって誰ですか?
博士
意外な繋がりで頭を悩ませる天才。