俺のクラスメイト二人が痛いんだが   作:カナリアP

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僕らについて(後編)

 

 

その日の夕方。

輿水はカワイイを俺に伝授するだけすると満足したのか、最初のキョドりっぷりも嘘だったかのようにフフーン! と凱旋していった。

 

「あれ……素だったんだな」

 

世の中には面白い人種がいるものだと感心して、すぐ近くに、今は遠くにいる二人を思い出す。あの二人より面白い人間はそうそういまい。

玄関前に座り込み、俺は深くため息をついた。

 

「…………気持ち悪りぃ」

 

会いたい。

あの二人に、直に。

なんだって変なプライドで断捨離したものを今更惜しんでんだ。

 

いやー悪かった、スマホが燃えて連絡できなかったんだ。

お前らの仕事も忙しいと思ってな、あんまり心配させることもないと思って。

 

「……莫迦か」

 

バカはお前だ、何様のつもりだよ。

あの二人がお前のことをそこまで気にしてるとでも?

ちょっと調子崩して、あの輿水が大げさに言ってるだけだ。

仲間のことだ、少しの変化も見逃しちゃいられなかったんだろ。

 

「……それなら?」

 

それなら、気にすることはないさ。

お前のそのちっぽけなプライドのためにもう二人とは一緒にいない方がいい。

いつか必ず、自滅するに決まってる。

 

それでもーー

 

 

ピンポーン

 

 

「……遅かったな」

 

「遅かったのはキミだ。この前みたいに間に合わせる気すらなかったのか?」

 

「こ、今度ばかりは、許さないから!」

 

ドア越しから聞こえた声に苦笑しながら、扉を開ける。

そこにいた二人は、まぁ、予想通りの顔をしてたよ。

 

 

ーーー

 

1/2のボク:殴る

 

ブリュンヒルデ:我が怨嗟は灼熱の業火を生み出し彼の者を焼き尽くすであろう

 

1/2のボク:彼に期待したのは間違いだった

1/2のボク:やはりボクたちから動くべきだったんだ

 

ブリュンヒルデ:左様

ブリュンヒルデ:我ら双翼の堕天使との約束を反故にした罪は重い

ブリュンヒルデ:その報いを思い知らしめてやらねば

 

1/2のボク:作戦会議だ

1/2のボク:あの愚か者を今度こそ縛り上げてやる

 

ブリュンヒルデ:囚人に魂の楔を!

 

ーーー

 

 

 

さっきまで輿水と対面していた場所に、今度は神崎と二宮が座っている。

今日は来客の多い一日だ。掃除しといてよかったと心から思う。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………あー、そのなんだすまなゴフッ!?」

 

謝ろうとしたら二宮から左ストレートの良いのを食らった。

 

「いやほんとすまばぐぅ!」

 

「こっちが本命だ」

 

本来右利きの二宮の右ストレート。

野郎……二段構えか。

二宮は俺を二発殴ってすっきりとしたのか、ストンと腰を下ろす。そして次に神崎が立ち上がった。俺のそばまで寄ると、俺のヒリヒリとする頬をそっと撫でーーそして平手打ちをかます。

 

「お、お前もか……」

 

「我らが怒りを思い知ったか?」

 

「はい……すみませんでした」

 

その言葉に満足したのか、神崎はふっと笑うとーーそのまま反対側もビンタした。

 

「何故ぇ!?」

 

「あ、飛鳥ちゃんも二回だったから……」

 

「当然の報いだよ。どうせならもう一発と行きたいところだ。今日は何故か、そう何故か、身体がもっと燃えろと鼓動を早めているからね」

 

ファイティングポーズを構える二宮にどうどうと手で抑えながら、俺は体勢を立て直し、そのまま二人に頭を下げる。

 

「……お前らから逃げた。すまん」

 

「…………理由を聞いてもいいかい?」

 

「私たちのこと、もう付き合えないと思ったの……?」

 

違う、俺が、差を見せつけられて焦ったからだ。

そして二人の邪魔だけはしたくなかったんだ。

格好悪いから、惨めだったから。

アイドルとして見ていないと言ったのも、言えば意識をしてしまうから。

どれだけ目を逸らしても、彼女たちの輝きは無かった事にはできなかった。

 

「ボクらから逃げたいかい?」

 

ハッと息を飲み、二宮の方を向く。

二宮は意地の悪そうな、いやよくわからない。頬に赤みを帯びていて、恥ずかしそうで、それでいて妖艶さを醸し出している。

 

「何を……」

 

「キミが逃げたいなら、それでもいいさ。ただ勘違いしないでもらいたいがーー世界がキミの思い通りになると思うな」

 

くっくっと意味ありげに笑いながら、二宮が片肘を机に置く。

 

「ボクらはキミと離れるつもりなんてないし、離れたくないんだ。だって数少ない、大切な友人、だからね。だからどれだけキミが逃げたいと、離れたいと思っても、ボクらはキミを逃がしはしないよ」

 

「貴様は我と契約せし従者である事を忘れるでないぞ。魂に刻み込まれている(カルマ)は貴様を縛り付けている」

 

ーー驚いた。

まるで、自己中な奴に、お前自己中なんだよと言われた気分だ。

そして俺は、思ったよりも随分と前に、深く二人と繋がっていたんだ。

 

「俺は……お前らと一緒にいても、いいんだろうか」

 

「愚問だね。キミがそんなことを考える繊細な奴だとは思わなかったよ」

 

「わ、私からもお願いします! い、いい一緒に、一緒に……いて、ください……」

 

真剣に考えてたのが馬鹿みたいだ。

思えば、そうだ。

厨二病は、遠慮なんかしないんだ。

自分のやりたいことをして、反抗して、キャラを演じて、そしてーー友達が少ないんだ。

数少ない友達が減るのは、寂しいもんな。

 

「よし、じゃあ先ずはスマホを買い直すことだね。今から出られるかい?」

 

「未成年でも買い直せるのか?」

 

「下調べしてあるよ。大丈夫だそうだ。まぁ書類などは用意する必要があるけどね。これ、ちひろさんに書いてもらった親権者の同意書、免許証だ。借りてるものだから今日中に返さないと」

 

準備良すぎじゃない?

というか、姉貴にこの二人と知り合いなのがバレたのか……。

色々と覚悟する必要があるかもしれない。いやきっとある。

 

「我が従者よ。急ぐぞ」

 

「ちょ、待てって。腕引っ張んな。あと引っ付くな!」

 

「アポロンが姿を隠し、アルテミスが顕現するまでの刻限が迫ってきている。我の魔力でも抑えきれないほど強力である」

 

「兵は拙速を尊ぶ、だよ。ぐずぐずしてる暇はないんじゃないかな」

 

グイグイと引っ張る神崎に、その背中を押す二宮。

そしてそのまま強引に外へと引っ張り出され、ギリギリの時間で携帯会社で契約を交わし、あっさりと新しいスマホを用意した。

さすがに最新機種では無かったが。

 

帰るときにはすっかりと暮れてしまい、二人を女子寮へと送る。

その際色んな他のアイドルに見られたし、窓際でこっちに手を振る姉貴を見てゾッとしたが、ようやく忙しかった一日が終わった。

 

家に帰ってベッドに寝転び、スマホを見る。

 

データも何もかも消えたから、新しく登録し直した二人の繋がりの線。

 

そんな彼女らに送る、最初の言葉は、まぁこれしかない。

 

 

 

ーーー

 

ハル:ただいま

 

1/2のボク:おかえり

 

ブリュンヒルデ:闇に飲まれよ!

 

 

 




おしまい、とはならないんだよなぁ……。

もうちっとだけ続くんじゃ。


ハル
まだ頬が痛い。
男子中学生特有の謎の葛藤。そしてシンジくん並みに僕はここにいていいんだ的な結論で幕を閉じる。
買うんだったらスマホは8が良かった、と言えば絶対また殴られるだろう。

1/2のボク
身体的痛みの飛鳥パンチ。相手は死ぬ(物理的に)
ハルを手放さないためのまだ残している秘策がある。

ブリュンヒルデ
精神的痛みの蘭子ビンタ。相手は死ぬ(精神的に)
実は割と大胆なことを言っているがあまり自覚はない。



輿水幸子
フフーン!
言わせたかっただけ。
結局何しにきたんだろうこの子。
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