1/2のボク:夏休みももうすぐ終わりを迎えるね
1/2のボク:今年はすごく短く感じるよ
ブリュンヒルデ:然り
ブリュンヒルデ:遣わされた使命と、グリモアから生み出される英知への門に続く難題
ブリュンヒルデ:流石の我も苦戦している
ハル:おい
1/2のボク:しかし確かにアイドルとしての仕事も学校の宿題も両立しなくちゃなんてのはかなり厳しいものがあるね
1/2のボク:僕はもう終わらせたけれど、蘭子、キミのはどうだい?
ブリュンヒルデ:抜かりはない
ブリュンヒルデ:時期に終焉を迎えるであろう
ハル:おいってば
1/2のボク:なんだい
ブリュンヒルデ:如何様か?
ーーー
「リアルで会ってるのに黙々とLINEするこたねーだろ」
346事務所内部の休憩所。
俺たちは今そこに集まっていた。
建前としてはデスマーチ中の姉貴の着替えを持ってきた体で来たが、本当は二人に呼び出された。
「ふふふ。いやね、こうしてキミとこうやって会話するのもなんだか懐かしくてさ」
「いやいやいや、しなかったのほんの一日ふつかじゃねえか。しかもそれから毎夜の度に話してるし」
「むぅ、左様。これではいささか味気ないと思うが」
神崎も不満げにスマホを置く。その様子を見て二宮はふっと笑うと、いやニヤリと、か? どちらにせよ意地の悪そうな笑みだ。
「うん、そうだ。でもそうだね。じゃあ本題に入ろうか」
その言葉を聞いた途端、神崎はビクンと跳ねる。驚いてそっちを向くと、露骨に俺から目を逸らした。
「なんだよ、本題って」
「なに、今回の件でボクはキミに言っただろ? キミがボクらから逃げたいと思っても、決して逃がさないって」
「……それが?」
「うん、だからね。キミに呪いを授けようと思ってね」
呪い?
また神崎絡みかと思って、神崎の方に目を向けると、信じられないくらいに顔を真っ赤にした神崎がそこにいた。
今まで揶揄うとムキになって顔を赤くしていた神崎だが、それに比喩にならないくらいになっている。
「いいかい? 蘭子」
「うううううううううううううん。だだだだだだだだいじょぶだいじょぶ……」
「大丈夫かこれ、壊れたPS2使った時の嫌な止まり方してるけど」
「大丈夫だよ、問題ない」
「それは大丈夫じゃねえよ」
この神崎の取り乱しよう、呪いって一体なんなんだ?
嫌な予感しかしないぞ。
「……言っとくが無理難題は聞かんぞ」
「それはキミ次第だね。大丈夫、
「マジで何させる気だよ……」
そう呟くと、二宮は三本の指を立てて、俺に突きつける。
「三つだ。三つ、ボクらの言うことを聞いてほしい」
「……なんでもは聞かねえぞ」
「そういう保険を掛けても構わないさ。言っただろう、強制はしない」
「う、うむ……であるぞ。無理強いはせぬ。ただ、その……出来るだけ叶えてくれると」
強制はしない。
もはやこれ自体が呪いの言葉だ。ズルイとさえ思う。こいつらを前に、この前の件を振り返って、断れるなんて出来るのか?
「……まぁ、聞くだけ聞くよ」
「その言葉が聞きたかった!」
……あ、これ二宮も緊張してるやつだ。神崎だけかと思ってたら、二宮も変なテンションになってやがる。
まぁもう、どうとでもなーれの精神だから覚悟は決めたけども。
「まず一つ、ボクたちと名前で呼び合うようにすること!」
「飛鳥、蘭子。これで良いのか?」
「ひうっ!?」
「き、キミに羞恥心は皆無のようだね」
嫌だって、別に……晶葉だって名前だし、紗南もそうだし。
特に今更気にする必要も……もっと酷いのを予想してたし……。
「で、ではそれでつ、次だ……」
「おいおい待てよ飛鳥、それは通らないぞ」
「うくっ、な、なんだい?」
立場的にはあちらが有利なのに、なぜか凄く上位にいる気分だ。
反撃するなら今しかない。
「俺が呼んだんだし、飛鳥も呼び合う仲と言ったじゃねえか。なぁ? 蘭子」
「う、ううむ。そ、そうで、ああるな……うむ」
「というわけで、はい。今度はお前らのターンだ」
「くっ、は、はる……」
「はるき……うぅぅじゅ、従者ぁ……」
勝ったな(謎)。
そのあと、結局のところ俺の名前が呼ばれることはなく、LINEネームのハルで妥協することになった。
まさか一時間かけても呼べないとは思わなかった。
コホンと仕切り直して。
「二個目、だ」
「お、おう……」
「文化祭で、ボクらと一緒に劇をすること」
「無理だ」
即答だった。頭で理解する前に本能で答えていた。
こいつらと劇? 正気か?
「……どうしてだい?」
「いや、普通に無理だろ。お前らがどんな劇するかもう分かるもん。ぜってー魔王とか悪魔とかそういうのが来るもん」
「帝王である!」
「変わらねえじゃねえか蘭子。いやいやマジで、しかもお前らプロと劇なんざ公開処刑も良いところだろ」
「ちゃんと、ボクらが付きっ切りで指導するよ。プロトレーナーには及ばないがそれなりには教えられる」
「左様。我々の持つペルソナは強固であり、自我を保つ能力である。その力が我らは常人に比べ遥か上を行くのだ」
そりゃ中二病バリバリで現在進行形でキャラを演じてりゃそうもなるわ。
「まぁこれはお願いというより決定事項に近いんだけどね」
「はぁ?」
「文化祭で、ボクらは劇をすることに決めた。そしてその主役キャストにボクらを当てはめる。クラスのみんなも納得してくれているよ」
そう言って掲げたスマホの画面にはクラスLINEの画面が映し出されていて、飛鳥の言う通りクラスのみんなも乗り気だった。と言うかほとんどが俺に向けられた憐れみと嘲笑であったのは涙を禁じ得ない。
こいつ、前も思ったが前準備が良すぎる。根回しのプロかよ……。
「ボクはこれでも情報戦には自信があるんだ。中二病の力を舐めないでもらいたいね」
「あーはいはい……ったく、なにが強制しないだよ。思いっきりしてるじゃないか」
「別に強制はしてないよ。ただ、断れるものなら断ってみてくれとしか言えないけどね」
そう言ってニヤリと笑う飛鳥。
さっきの時間、もう少し虐めておけばと少し後悔した。
「み、三つ目!」
俺と飛鳥の睨み合いに不穏さを感じたのか、蘭子が慌てて三本の指を立てて俺たちの間に割り込んだ。
その瞬間、飛鳥も蘭子も顔を赤くして俯き始める。何故だか凄く迷っているようだ。
「……で、三つ目ってなんだよ」
「三つ目は、その……」
「えっと……うん、まぁそれはその………なに、まだ早いと言うか……」
「…………えへへっ」
訳がわからん。
二人はギクシャクとしながら、一枚の紙を取り出してきた。
「なんだこれ」
「け、契約書である。魂の盟約に従いここにハ……従者の印を授けよ」
「どちらにもだよ、絶対。あ、あと……契約書なんだからあとで無しと言うのは禁止だ」
何の契約書なのか読み込んでみると、そこには一文だけが記されていた。
『もし私たちが三つ目のお願い事をした時必ず頷くこと』
「……えーと、つまり。保留、ってことか?」
「ち、違うっ。それは……その、まだ早いんだ」
「お願い事はもう決まってるから!」
ずいっと紙を差し出してきて、サインをしろと強請ってくる。
やはりこれのどこが強制しない、なのか。
まだ早い、願い事は決まっている……。
うむ、さっぱり分からん。
「……言っとくけど、無茶だけは言うなよ」
「…………善処するよ」
「然り」
仕方なく、自分の名前を書く。
まぁ、もう劇もすることになったんだ。
これ以上怖いものなどありはしないだろう。
「ほら、書けたぞ」
「……うん。じゃあ」
「……六年後、まで待ってて」
最後、蘭子がなんて言ったのか。
俺はその時、きっと聞き耳ロールをファンブルしたに違いない。
「蘭子、ボクはもうハルに任せっきりにしないよ」
「うん。私も、だよ」
「これで魂の鎖の原型は出来上がった。完成まで六年。それまでに何とかして、ファンに認められるように努力しよう」
「大丈夫、だよ。きっと、私達なら、できるから」
「……三つ目のお願い事」
「それはーー」
ーー
これにて、「俺のクラスメイト二人が痛いんだが」はめでたく完結です!
お疲れ様でした。
めちゃくちゃ雑だったり、途中失踪しかけたりと前途多難でしたが、何とか終わらせることができました。
それもこれも応援してくださった皆様のおかげです。誠にありがとうございました!
春川春樹
六年後、契約書を突きつけられ折れる。
以来、訓練されたファンから神格化されるほどの存在に。
二宮飛鳥
六年後、三つ目の願いを叶えさせる。
そしてアイドルとしても大絶賛され、幸せを掴み取った。
神崎蘭子
六年後、三つ目の願いを叶えさせる。
もうはや彼女を傷ついた悪姫と呼ぶものはおらず、今日も黒歴史と戦っている。
英文の翻訳?
意訳だよ気にすんな
後ついでに続編予告としてもう一話するから……まぁ実質これが最終話ではあるけども……