「ゼウス、これは一体如何なるアカシックレコードか?」
「父さん、教えてくれるかな」
休日の昼下がりーー娘二人が、不思議そうに一枚のDVDを手渡してくる。
俺は片方の娘の言葉遣いにこめかみを抑えながら、そのディスクについてに思考を割いた。
表には何も書かれていない。真っ白なそれについて、俺は何も思いつかない。
「分からん。見てみるか?」
「エッチなものじゃないだろうね。子どもの前でそんなもの見せるなんて最低だよ」
「分からんって言ってるじゃないか。じゃあお前は見ないんだな」
そう意地悪を言うと、ムッとしたようにいつも不機嫌そうな口元がさらに下降する。
「そうは言ってないじゃないか。大人はいつも決めつけたがるね。これだから父さんはいつも母さんたちと喧嘩してるんだよ」
「すぐに仲直りしてるだろ?」
「知ってるんだぞ。いつもいつも父さんが母さんたちに何かしてご機嫌をとってるの。何してるか知らないけれど、あまり褒められたことじゃないな」
「お前も決めつけるじゃないか……何って言われてもな。ん、こっちに来な」
ちょいちょいっと、手で招く。怪訝そうな顔で恐る恐ると近付いてきた娘を、そのまま抱っこし、その頭を撫でた。
「あー!! ずるいずるいー! 我も、我も!!」
「あぁ後でな。ほら、どうだ?」
「むぅ……こんなことでボクの機嫌が取れるとでも?」
「ダメか? じゃあ交代だな」
「…………取れないとは言ってないじゃないか」
ぎゅっと、降ろそうとした腕を掴む。
全く、親に似て素直じゃない奴め。
「偉大なる王にして、えーと、聡明な賢将である我を忘れるでない! 次! 次私、わーたーしー!!」
「はいはい。ほら、代わってやれ」
「やれやれ、仕方ないな」
さっそく交代する。すると、するすると抱っこではなく首の上に跨ってきた。
「我は巨人を従えしテイマーぞ! こっちがいい!」
「あぁもう、肩が痛いってのに……よいしょーっと」
「ふははははははははは!!!!!! …………は、は」
肩車で持ち上げると、威勢の良さが一転し、ブルブルと震えながら俺のおでこを辺りに抱きつき動かなくなる。
「どうした?」
「た、高い……怖いぃ……」
「あぁ……はいはい。ったく、お前も親に似て臆病な奴だな」
「私も抱っこ。抱っこがいい」
「はいよ」
一旦腰を下ろして、再度娘を腕で抱える。
先ほどの喧しさもなく、背中に手を回して眠るように落ち着いていた。
「…………お父さんあったかぃ」
「お前は暑苦しい」
「むぅぅ……お父さんのいじわる」
「それで? これを入れればいいのかな?」
「ん、あぁ。まぁ見てみりゃわかるだろ」
「…………ほんとにエッチな奴じゃないんだよね?」
「期待するなよ」
「期待なんかしていない!!」
むっつりめ。
娘がふんと鼻を鳴らし、少し乱暴にDVDをデッキに入れ、再生ボタンを押した。
なにかのカメラ映像のようだった。誰かの録画映像か?
見覚えのある劇場。体育館のようだ。
待て。
おいこれは……。
『闇の炎に抱かれて消えろ!!』
「ぎゃあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
すぐさま映像を消そうと動こうとするが、娘が抱きついているため上手くリモコンを取れなかった。そしてその隙に、もう一人の娘がニヤリとした表情でリモコンを掠めとる。
「これは、若かりしゼウスか?」
「おやおや、我らが偉大なるお父様がまさかこんなことをだなんてね。ははっ、あの暗幕はマント代わりかい?」
「うるせえ! リモコン返せ!」
「あっはっは、そんな気の早いことを言わないでおくれ。もう少し鑑賞しようじゃないか」
そう言うと、娘は素早くリモコンから電池を抜き取り、意地悪くリモコンを俺の手が届く範囲にわざと置きやがった。
画面では、あの時の文化祭の劇が垂れ流されている。
何故だ。あの時の映像は全て焼き払ったはずだ。なのに何故あれが俺の家にある。
蘭子か? 飛鳥か?
あの二人が帰ってきたらとっちめなければ。
「わぁ、これはヘラか!?」
「母さんもいるようだね。なるほど、父さんと母さんたちは敵対していて、父さんは帝王なのか」
「やめろぉ……やめてくれぇ……」
黒歴史のフラッシュバック。
いやほんと、あの頃の記憶は消し去りたいのだ。
火事の件とか!!
「いいね、恐らく母さんにも効くだろう。これから面白くなりそうだ、ククク」
「あの聖剣と魔剣はなんだ!? かっこいい!!」
蘭子。
飛鳥。
帰ってきたら、道づれだからな……。
神からの天啓で、大人になった飛鳥と蘭子が思いつかなければ出さなければいいじゃないという思考を授かったので投稿です。
一応これで本当に完結です。
長らくお待たせしました! 心残りはない!
新作も更新していきますのでよろしくお願いします!
ハル
気苦労は絶えない。
でも退屈はしない。
蘭子の娘
独力で邪気眼に覚醒。ゼウスとヘラの子供であると思っている。
飛鳥のことはテミスと呼んでいる。子どもだから詳しいことは分かんない。知らない。だから深い意味はない。本当に。恐らく。
飛鳥の娘
どこか達観している少し大人びた子(自称)
むっつり。父親とよく風呂を一緒に入りたがる。蘭子も誘って上手く誤魔化している(と自分では思っている)
若干飛鳥と蘭子に嫉妬している節がある。