High School Fleet ~封鎖された学園都市で~   作:Dr.JD

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ypaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!
ズドンッ
バタッ

どうも皆さんおはこんばんにちわ。
作者、デス。

久しぶりの投稿だーーーーーーーー!!!!
なんと前回の投稿から約1ヶ月経過となりました!
楽しみにしていた方、別に待ってねぇよと思っている方、とりあえず読んどいてやるよの方、お待たせしました。
今宵は、混沌化する法廷をお楽しみ下さいませ。

この事件のなぞ、一緒に解いてはみませんか?





第12話 不幸な逆転-前編-

[不幸な逆転-前編-]

2012年、7月19日、16;25;00

高校1年生 陽炎型航洋艦五番艦「晴風」 艦長

岬 明乃(みさき あけの)

茨城県 尾阿嵯(おあさ)町 中央裁判所 第3控え室

 

万里小路 楓

「――――以上が、法廷における規則となっております」

岬 明乃

「何とか、間に合った、ね」

 

テーブルに突っ伏すように上半身を雪崩れ込ませた。

見ていた万里小路さんは口元に柔らかい笑みを浮かべながら、席を立った。

目の前に散らばっている資料の内容は、”法廷における審理の進捗”が書かれている。

急遽、代理弁護人となった私は、裁判所で裁判を行うため、いざ開廷になり支障を来さないようにするための処置であった。

まぁ、素人同然の私が代理であっても弁護士として席を立つのだから、当然と言えば当然だ。

 

ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ

自分の胸に手を当てて、うるさい心臓を沈ませようとするも、なかなか治まってくれない。

嫌な汗もどんどん出てきて、吐き気すら感じる。

………宇宙エレベーターから戻り、地上の裁判所へ出向いた私は、万里小路さんと合流したのだ。

先程まで私と万里小路さんは、裁判における進行方法と、事件の内容について話していた。

と言っても証拠品なんて数少なく、無罪判決なんて取るなど、夢のまた夢だ。

早くもナーバスに陥り、肩をガックシと落した。

今回ばかりは、私の幸運もここまでか。

 

万里小路 楓

「岬さん、元気を出して下さい。蘭さんが今でも現場に残って、私達のために、何より宗谷さんのために頑張って下さっているのです。私達は、できる限りのことをしましょう」

岬 明乃

「うん、そうなんだけどね………」

 

とは言ってくれるものの、それでも落ち着かないのはしょうがない。

色んな初めてが私に降り注ぐのだから、冷静で対応しましょうと言われて、本当に冷静になれるかと言えば答えは至って簡単。

ノーです。

万里小路さんは生まれも育ちも、私の持ってる物も違う。

だけど、当たり前すぎて意識してなかったけど、万里小路さんって結構、頼れる子だった。

どんな場面でも落ち着いているし。

私にとって、これほど安心出来るのは、彼女が普段から変わらぬ姿勢を貫いているからであると確信した。

万里小路さんが意識しているか、そうでないかは分からないけど。

 

ガチャッ

 

??????

「艦長!」

 

控え室の扉が突然開かれて、役職が聞こえる。

驚いていると、そこにはマロンちゃんを初め、クロちゃん、あっちゃん、まゆちゃん、秀ちゃんがそれぞれの表情を写していた。

なんで、今は船に居るはずの仲間がここに?

 

万里小路 楓

「私が、皆さんをお呼びしました。帰るのが遅くなる旨を伝えたら、心配だから見に行くと」

杵崎 ほまれ

「他の子達は、先に法廷で待ってます。ところで、副長が殺人事件の容疑者として逮捕されたって、どう言うことですか?」

黒木 洋美

「あなたが傍に居ながら何やってるのよ!?こんな事になるなら、私も一緒について行けば良かったわ!」

 

クロちゃんから厳しく非難される。

クロちゃんは事実を言っているだけだから、こちらは反論できない。

私はただ黙って聞いていただけだけど、横からマロンちゃんが入ってくる。

 

柳原 麻侖

「クロちゃん!無闇に艦長を責めちゃいけねぇよ。艦長だって望んだんじゃないんだろ?」

岬 明乃

「うん………でも本当にごめんなさい。私がシロちゃんとはぐれちゃったから、事件に巻き込まれてっ」

内田 まゆみ

「落ち着いて下さい。その副長を助けるために、えと、弁護代理人制度?で、副長を救おうとしてるんですから、そこまで気負わないで下さい!」

山下 秀子

「それにさ、副長の運の悪さなんて元々あったんだし、ここまでくればある意味才能だよね」

黒木 洋美

「あなた達ね………!」

 

クロちゃんの眉間にしわが掘り出される。

やばい、クロちゃんを宥めないとまた何か言われる………!

 

万里小路 楓

「皆様、落ち着いて下さいませ。今は宗谷さんを殺人罪から救うのが先決ですわ。安心してほしいとまでは言いませんが、どうか見守っていて下さいませ」

 

万里小路さんの普段と変わらぬ声色に、みんなが押し黙る。

彼女は続ける。

 

万里小路 楓

「動揺される方も多いと思います。私も、最初に知らせを聞いた時はショックでした。ですが、容疑を掛けられてしまった宗谷さんはもっとショックが大きかったと思います。そんな彼女を救えるのは、代理弁護人を引き受けた岬さんしかいらっしゃいません。ですから黒木さん、ここは私達に任せて頂けないでしょうか?」

黒木 洋美

「えっ、いや。ごめんなさい、ここまで強く言うつもりなんてなくって。ちょっと気が動転してしまったから、岬さんに当たってしまっただけなの。だから宗谷さんの事、よろしく頼むわね………?」

万里小路 楓

「はい、お任せ下さい」

 

万里小路さんの一声で、クロちゃんは落ち着いてくれたようだ。

視線でお礼を送ると、万里小路さんは小さく微笑んだ。

 

コンコンッ、ガチャッ。

 

係官

「代理弁護人、開廷の準備が整いましたので、出廷をお願い致します」

岬 明乃

「!はい!今行きます!」

 

今度は制服を着た男性がビシッと敬礼しながら入室してきた。

もうそろそろ戦いが始まろうとしている中、この場の空気が重たく感じた。

………いよいよ始まるんだ。

この世界へ来て、右も左も分からない、この世界で始まるんだ。

Rat事件の全容や、艦艇同士の砲雷撃戦でもない、経験したことのない初めての戦いが。

万里小路さんを見てコクリと頷くと、私達は法廷へと赴いた――――

 

 

 

ワイワイガヤガヤ…………………………………

カンッ

 

サイバンチョ

「これより、裁判を開廷します」

 

入った法廷の一番奥に座っている裁判長が、手元にある小槌を鳴らして開廷を宣言した。

それまでざわついていた法廷は、一瞬にして静まり返った。

さらに裁判長の席の前に居る傍聴する6人の陪審員も静かになる。

彼らは審理を聞いていって、有罪か無罪かを決めて貰う。

有罪か無罪かは何度でも評定は変えられるらしく、途中から変更しても大丈夫だそうです。

でも、6人全員が有罪と判定を出したら、審理の途中であっても終了となり………判決は有罪となる。

沈黙する6人と裁判長を見ていたら、私をさらに緊張へと走らせた。

大勢の人々の視線の中で、私達は戦わなくてはいけない。

自分達とは違う世界で、自分達の身を満足に守れるのか?

 

琴浦 春香

「検察側、準備完了しております」

岬 明乃

「………」

 

サイバンチョ

「あの、弁護人?」

岬 明乃

「あ、はい?」

万里小路 楓

「岬さん、ここは”準備完了です”、とお伝え下さいませ。すみません、事前にお伝えするのを忘れておりました」

岬 明乃

「は、はい!弁護側、準備完了です!」

 

サイバンチョ

「ふむ。ところで、岬明乃代理弁護人でしたかな?裁判を始める前に確認ですが、あなたは法廷に立つのは初めてだと聞きましたが?」

岬 明乃

「はい!ですけど、シロちゃ………被告人の弁護を引き受ける弁護士が不在でしたので、代理弁護人制度を利用して私が弁護士となりました!」

サイバンチョ

「なるほど、経緯は分かりました。大切な親友を助けるために弁護士を買って出るとは、感動しましたぞ………ん?と言うことは、あなたの隣に居る方が?」

万里小路 楓

「万里小路楓と申します。僭越ながら、私が岬弁護士の補佐を担当させて頂きます。以後お見知りおきを」

サイバンチョ

「ふむ。今時の若者にしては珍しく、挨拶がキチンとしている方ですな。よろしくお願いしますぞ」

 

………いざ自分が弁護士だって言われると、少し照れくさくなってしまう。

弁護士資格も持っていないのに、弁護士だなんて………。

 

琴浦 春香

「………裁判長。冒頭弁論を述べて良いでしょうか?」

サイバンチョ

「そうですな、それでは琴浦検事、冒頭弁論をお願いします」

琴浦 春香

「事件が発生したのは、本日の正午過ぎに宇宙エレベーターで一般人向けの見学ツアー中に、火星重力センターのトイレにて発生しました。被害者は鳩山五郎(はとやまごろう)さん、43歳。元エンジニアで、今回の事件の被害者となります。裁判長、検察側は被害者に関する情報と検死報告書を提出します」

サイバンチョ

「分かりました。2点の証拠品を受理します」

琴浦 春香

「事件発生時、現場には2人の人間が居ました。被害者である鳩山さんと、容疑者である宗谷ましろの2名が」

岬 明乃

「異議あり!それだけで宗谷ましろさんの犯行であると言い切るのは早計です!」

琴浦 春香

「待って下さい。まだ冒頭弁論の最中です。反論なら尋問の時に伺います」

サイバンチョ

「うむ、異議を却下します。琴浦検事、続けて下さい」

岬 明乃

「くっ」

琴浦 春香

「そして事件発生時、施設全体が停電に見舞われました」

サイバンチョ

「む?停電ですと?なぜそのような事態に?」

琴浦 春香

「電源施設が何者かによって爆破されているのを発見しました。犯人は不明ですが、停電の原因はこの爆弾による物であると断定しています」

サイバンチョ

「なるほど。ところで、この爆発による怪我人は居ませんでしたか?」

琴浦 春香

「ええ、電源施設は見学ツアーが行われていたブロックとは別の場所に設けられていましたので、怪我人が出たという報告は上がってしません」

サイバンチョ

「ほっ。それはなにより」

 

………ここまでの情報は、私も知っている。

爆弾によって電気施設が壊れて、停電してしまったと言うことを。

 

琴浦 春香

「しかし、怪我人は出ておりませんが、停電したことで乗客達がパニックに陥り、危うく怪我人が多数出るところでした」

サイバンチョ

「今回の事件は、危険な出来事で一杯ですな」

琴浦 春香

「その最中で発生した殺人事件を本法廷で立証していきます。まず始めに検察側は証人を召喚します」

 

――――そう言って琴浦検事が召喚したのは、事件現場でお世話になったイトノコ刑事だった。

証言台に立つイトノコさんを見つめながら、琴浦検事は切り出した。

 

琴浦 春香

「証人、名前と職業を述べて下さい」

糸鋸 圭介

「は!自分は糸鋸圭介と申すっす!刑事をしている者っすよ!」

岬 明乃

「………何度聞いてもあの口調、ももちゃんにそっくりだよね。背格好は全然違うけど」

万里小路 楓

「ふふっ、しかし耳たぶにペンを挟んでいる所は同じですね。描く物は違うと思いますけど」

琴浦 春香

「糸鋸刑事は本事件の担当刑事です。それでは刑事、なぜ被告人が事件の容疑者としてあげられたのかを説明して下さい」

糸鋸 圭介

「了解っす!」

 

~証言開始・なぜ被告人が犯人なのか?~

糸鋸 圭介

①「事件発生時、施設全体で電源設備が爆破されたせいで、停電が起きたっす」

②「停電時はほとんど真っ暗で、観光客は身動きが取れなかったっす!」

③「現場であるトイレは、見学ツアーを行っていた場所からかなり離れていたっす!」

④「そして事件現場には被害者と被告人の2人しか居なかったっす!あんな暗い中を動き回れる人なんていないっすよ!この状況を誰が見ても、被告人は宗谷ましろさんしかいないっすよ!」

 

サイバンチョ

「なるほど。確かに停電の中でツアーをしていた場所から離れ、トイレで殺害する事が可能なのは、被告人しか居ませんな」

岬 明乃

「ま、待って下さい!それだけ宗谷さんを犯人呼ばわりするのはっ」

サイバンチョ

「落ち着いて下さい。岬弁護士、あなたにはこれからこの証人に対して尋問を行って貰います」

岬 明乃

「じ、尋問」

万里小路 楓

「………岬さん、尋問は証人が発言した証言の中にある矛盾を指摘するのです。しかし、その矛盾をなかなか出せない時がありますので、その時は相手をゆさぶってさらに詳しい話を聞いていけば、矛盾を見つけられるかもしれません」

岬 明乃

「そ、それって少しずつパズルのピースを集めるような感じ?」

万里小路 楓

「はい。もしも宗谷さんが犯人でないのなら、刑事様の証言が間違っている筈です。その点に留意しながら、尋問を行っていきましょう!」

岬 明乃

「!!う、うん!」

サイバンチョ

「それでは始めて頂きましょう。証人に対する尋問を!」

 

――――この事件について、まだこちらはほとんど情報がない。

時間的にとはいえ、ちゃんと調べきれなかったのはかなりの痛手だ。

だから少しずつパズルのピースを集めていくところから始めよう。

 

岬 明乃

「えーと、あの。電源施設が爆破されたのって、何時頃だったんですか?時刻を確認できるものが何もなくて」

糸鋸 圭介

「お昼の12時30分頃っすよ。その後に停電がすぐに起きたっすから」

琴浦 春香

「爆弾は時限式を採用していて、ちょうどその時刻に爆破されるようにセットされていたみたいですね。因みにこちらが爆破された配電盤の写真です」

サイバンチョ

「爆破現場の写真ですか。証拠品として受理します」

 

爆破現場の写真:電源設備にある配電盤の写真。見事に黒焦げていて、原形を留めていない。

 

岬 明乃

「宗谷ましろさんは、どうやって殺人現場まで行ったんですか?事件当時って、確か施設全体が真っ暗だったんですよね?」

琴浦 春香

「床に設置されている非常灯を頼りに現場まで向かったと推測します」

岬 明乃

「でも宗谷さんは被害者と面識がありません!それなのに殺人なんて犯せませんよ!」

琴浦 春香

「しかし凶器から被告人の指紋が付着していたのは事実。これはどう説明するんですか?」

岬 明乃

「うぐ、そ、それは………」

 

ダメだっ、情報が少なすぎる!

向こうはキチンと情報を得たんだろうけど、こっちはほとんど武器になるようなカードは持ってない!

くっ、このままじゃ………。

 

万里小路 楓

「すみません。一つよろしいでしょうか?」

琴浦 春香

「?なんでしょうか」

万里小路 楓

「及ばずながら、今回の事件の裁判、あまりにも不自然でございます」

サイバンチョ

「不自然ですと?」

万里小路 楓

「事件が発生したのは、本日の正午過ぎと伺いました。そして本法廷が開廷されたのが、午後4時30分となります。僅か3時間ほどのお時間で事件について審理を行うにしては、些か急すぎると思うのです」

琴浦 春香

「………」

万里小路 楓

「序審裁判制度を利用しての裁判は、最長で数日間と決まっております。ですが充分な捜査が行えてない上、施設の特性上、詳細な事件の究明に関する捜査がはばかられるともお聞きしました。その状況下の中、どうやって審理を続行できると言えるのでしょうか?」

琴浦 春香

「………何が言いたいのですか?」

万里小路 楓

「ではハッキリと申します。弁護側は、検察側が所有している証拠品全ての提出を要求します!」

琴浦 春香

「!!」

 

ワイワイガヤガヤ………………………………

カンッ、カンッ

 

サイバンチョ

「静粛に!静粛に!弁護人補佐官!あなたは自分が何を言っているのか、分かっておいでですか!?」

万里小路 楓

「承知しております。弁護側は審理するための証拠品をほとんど持ち合わせていない現段階において、審理する以前の問題でございます。そんな状況下で続ける審理など、意味などあるのでしょうか?」

サイバンチョ

「ふ、ふむ、しかし………」

??????

「良いんじゃねぇの?裁判長さんよ」

 

ここで、今まで沈黙を貫いていた陪審員が口を開き始めた。

その人はいかにもチンピラって感じの人で、金髪に耳にピアス、目つきが悪いの三拍子揃った人だった。

ざわついていた法廷も彼の一声で静まり、代わりに困惑が混じっている。

 

サイバンチョ

「しかし陪審員4号さん、検察と弁護士の役割を知らない筈はないでしょう?」

陪審員4号

「だから何だってんだ?別にそこのお嬢さんの味方をする訳じゃねぇが、このまま行ってもつまんねぇだけだ。なら検事が持ってるもん出して、議論交わした方がよっぽどマシだ」

 

シュポッ

ライターとタバコを取り出した。

持っているタバコに火を付けて、フーッと万里小路さんに向かって煙を気持ちよさそうに吐き出した。

対する万里小路さんは、頭を軽く下げて、スカートを少しだけ上げながら陪審員4号さんに向かって会釈するだけだった。

 

サイバンチョ

「こら!法廷内では禁煙ですぞ!」

陪審員4号

「へっ、細けぇこた良いじゃねぇの。それより他の陪審員はどうなんだ?このまま審理が続いても、分かりきった結果をただ鵜呑みにすんのか?そんじゃぁ、今日は何のためにここへやって来たんだ?」

 

挑発するように左右の陪審員を鼻で笑う。

ここから席が離れているけど、それでも誰かの息が呑む音が聞こえる。

だけど、返事はすぐ隣からやって来た。

 

陪審員3号

「確かにあなたの言う通りですわ。検事側だけが確固たる証拠を多数所持しているのに、それが弁護士側のみなにもなしでは、審理も尋問もありませんわ。ただ、私は一つだけ賛同できないところがあります」

陪審員4号

「あん?」

陪審員3号

「あなたが隣でタバコを吸うことに関してだけは、賛同できません。すぐに消しなさい!」

陪審員4号

「おー、こえーこえー。へいへい、消せば良いんでしょ、消せば」

 

男はふぅっと大げさなため息を吐くと、携帯灰皿を出してタバコを押し付けた。

すると端っこで美少年がスッと手を黙ってあげる。

………もっとも、シャツに”SOS団、万歳!!”と書かれている時点で、色々と台無しではあるが。

 

陪審員6号

「でしたら僕も、陪審員4号さんと同じ意見です。いくら序審裁判制度を適用したとしても、解決させるには早急すぎます。もっとも、検察側にとって有利に事を運べるのは、変わらないと思いますが。どう思いでしょう?万里小路さん」

万里小路 楓

「覚悟の上です。今のまま審理を進めても、どのみち有罪に変わりないでしょうから」

陪審員1号

「ちょ、ちょっと君っ!みんなで話し合って決めたじゃないか!犯罪者を有罪にしようって!」

陪審員6号

「それは被告人が犯罪を犯したと立証できたらの話です。今の段階で結論を出すのは、えん罪を生むかと」

サイバンチョ

「ふむ、これで3人の陪審員が検事側が持っている証拠品の提出を求めていますな。過半数を超えてるので、証拠品の提出を認めても良いのでは?」

琴浦 春香

「………」

 

怒濤の展開に、琴浦さんは黙り込んでしまった。

さっきのハッキリとした口調で、次々と言葉が飛び出して、陪審員を味方に付けた万里小路さんを見つめてしまった。

いつもとは、全く違う彼女の姿に唖然としてしまったのだ。

法廷全体が騒ぎに包まれている隙に、ちょっと話をしてみよう。

 

岬 明乃

「あの、万里小路さん?」

万里小路 楓

「はい?」

岬 明乃

「あの、万里小路さんって、その、今日が裁判初めてなんだよね?」

万里小路 楓

「お恥ずかしながら」

岬 明乃

「さっきのやり取り見てさ、初めてって感じが全くしないんだよね。むしろすごく頼もしく感じるよ。だから、ホントに初めてなのかなーって」

万里小路 楓

「………まぁ、確かにそうですわね。なぜでしょう?」

 

先程とは打って変わって、万里小路さんの様子が普段のモノへと戻っていた。

少し悩んだ末に、万里小路さんからの口から出たのは、彼女自身も感じてる疑問だった。

さっきの雰囲気は一切感じられず、今はうーんっと首を傾げている。

 

岬 明乃

「それに、さすがに証拠品全ての提出は厳しいんじゃないかな。向こうだって手の内を晒したくはないだろうし」

万里小路 楓

「ふふ、もちろんその点に関しても織り込み済みです。こちらが無理難題な要求をすれば、向こうの反発は必須です。でもこちらは初の法廷で、右も左も分からない状態です。少しくらい無鉄砲な発言をしても、初法廷と言う名目で許容できますので、こちらが白い目で見られる心配はないかと」

 

この時、私は万里小路さんから次々と出てくる言葉に、舌を巻いた。

普段とは違う姿にも驚いたが、今の発言の裏にある意図的な策略に、またも肝を冷やされた感じだ。

そんな中、長く沈黙していた琴浦さんがとうとう口を開いた。

 

琴浦 春香

「………陪審員の皆様の意見、把握しました。ですが、さすがに全ての証拠品を提出するのはさすがに容認できません。検察側は新たに証人を入廷させます。その人物は、事件当日、現場付近で事件を目撃した人物です」

サイバンチョ

「分かりました。それでは糸鋸刑事、その証人を入廷させて下さい」

糸鋸 圭介

「はっ、了解っす!」

 

ビシッと敬礼を決め、その証人を呼びに法廷から出て行った。

………やった!万里小路さんのおかげで次に繋げられた!

心中で喜びつつ、次の証人に目を向けていった。

開始早々、終わりそうになった裁判。

さっきはうまくいかなかったけど、今度こそは――――!

 

次の証人が法廷へ入り、証言台前までやって来た。

妙齢な男性で、口元にあるちょび髭?が印象的な人だった。

ただ気になる点としては、手に絵画を描くような紙?台?名前は忘れたけど、それを持って、何か書いているようだった。

志保さんが言ってた変な証人って、この人のことだったんだ………。

 

琴浦 春香

「証人、名前と職業を述べて下さい」

証人

「………」

 

証人と呼ばれた人は絵画を眺めては、絵の具を使って書き始めた。

しかし無反応である。

 

琴浦 春香

「証人、名前と職業を」

証人

「………」

 

少しイラついた強い口調で尋ねる。

しかし無反応である。

 

琴浦 春香

「証人!!」

証人

「………」

 

額を指でなぞりながら、琴浦さんに怒鳴られても絵画から目をはずそうとしない。

しかし無反応である。

………近付いていって、琴浦さんが呼んでるのを伝えよう。

そう思って弁護席から離れ、証言台に近付いていった。

後ろから声を掛けようとして、私は止まった。

彼が描いている絵画に、見惚れてしまったのだ。

風景はどこかの国の街の情景だった。

中央には巨大なドーム状の建物が見え、空には巨大な飛行船が描かれていた。

そしてバックは、朝日が昇っている。

 

岬 明乃

「絵、すごくお上手ですね。どこの風景なんですか?」

 

思わず口に出していた。

すると男性はこちらを見て、なんとも形容しがたい表情で出迎えた。

嫌な表情をされるかと思ったが、気宇に終わった。

 

証人

「………君は、この絵の素晴らしさが分かるかね?」

岬 明乃

「はい!とってもキレイな街だなって感じました。あとは、えと。ごめんなさい、うまく口で表現できなくて」

証人

「いや、それでいい。芸術とは、言葉にならないモノを描く物でもある………私の夢は、私が描いた絵をベルリン全てにある芸術館に展示することだ」

岬 明乃

「わぁ、すごくステキですね!もし展示されるなら、見に行っても良いですか?」

証人

「もちろんだ。芸術は誰にでも触れる権利があり、自由なのだ………君は実に面白い子だな、名前は?」

岬 明乃

「岬明乃って言います!」

証人

「そうか………覚えておこう。それで、私になんの用かな?」

岬 明乃

「あ、はい。あなたのお名前と職業をお聞きしたいのですが」

証人

「ああ、そうか。私は事件の目撃者としてここへ連れて来られたのだったな。それで、何を聞きたい?」

琴浦 春香

「………証人、名前と職業を」

 

イラついた声を抑えることなく証人を睨み付けていた。

だけどそんな視線を気にすることなく彼は続けた。

私は大急ぎで弁護席へ戻った。

 

証人

「名はアドルフ・フューラー。職業は、まぁ、美術大学で美術を教えている。ドイツ人だ」

 

静かな声で彼、アドルフ・フューラーさんが語った。

あの人、ドイツ人だったんだ。

ミーナちゃんといい、この人といい、みんな外国の人なのに日本語が上手いなぁ。

 

万里小路 楓

「岬さん、その点は思っていても口に出してはいけませんわ」

岬 明乃

「へっ?なんで?」

サイバンチョ

「琴浦検事、彼が事件の目撃者ですか」

琴浦 春香

「そうです。事件発生時、彼はこの位置から事件を目撃していました」

 

琴浦さんが映し出したプロジェクターに、宇宙ステーション・火星重力センターの見取り図が投影された。

事件現場であるトイレ………の反対側の通路?に目撃者の文字。

もしかして、そこから事件を目撃したのかな?

 

琴浦 春香

「証人は現場の反対側にある通路から、事件を目撃したそうです」

サイバンチョ

「分かりました。この見取り図を証拠品として受理します」

琴浦 春香

「では証人、話して頂きましょう。あなたが目撃した事件について!」

アドルフ・フューラー

「ハイッ」

 

右手を斜めに傾けながら、先程とは打って変わって声を張り上げた。

どうしちゃったんだろう?

 

~証言開始・事件当日何を見たか?~

アドルフ・フューラー

①「あの日わしは、目の前に広がる神秘的な宇宙を描こうと1人、通路を歩いていた」

②「その最中、わしは不気味に光るトイレが気になって、見つめていた」

③「そこでわしは目を疑った。被告人が被害者に襲い掛かる場面を見たのだ!!」

④「事実かどうかを確認するため、わしは大急ぎで現場へと駆けつけた!」

 

サイバンチョ

「ふむ。ではそこで事件を目撃したのですな?」

アドルフ・フューラー

「その通り。わしの美術的な眼は、しかと捉えていた!決定的な瞬間をな!」

岬 明乃

「!!ま、待って下さい!」

琴浦 春香

「弁護人、意見があるなら尋問をしてる最中に言って下さい。それと、法廷では証拠が全てです。反論があるならそれを突きつけて下さい」

岬 明乃

「うっ」

 

ああ、もう。

どうして気持ちだけが先に行っちゃうんだろう。

シロちゃんは絶対に人を殺したりなんてしない。

さっきの言葉を飲み込んだ。

だから代わりに、違う言葉を吐き出した。

 

岬 明乃

「すみません………尋問をさせて下さい」

サイバンチョ

「分かりました。では弁護人、尋問をお願いします!!」

 

岬 明乃

「通路を一人で歩いていたって言いましたけど、他には近くに誰も居なかったんですか?」

アドルフ・フューラー

「実はあの時、ツアーの列から離れて、次の絵のテーマを考えていたのだ。従業員は誰も居なかったから、わしを見ている者など居なかっただろうがな………」

岬 明乃

「離れる前に誰かに、”ここから少し離れる”とか伝言を残さなかったんですか?」

アドルフ・フューラー

「伝えてないな。連れに言ってもダメだのなんだの突っぱねるから、黙ってツアーから離れた」

岬 明乃

「あはは………それと、事件を目撃したって言いましたけど、停電が発生した時はどうしてたんですか?」

アドルフ・フューラー

「その場から動けなかったよ。だから事件を目撃した時は、心底驚いたよ」

岬 明乃

「何を見たんですか?」

アドルフ・フューラー

「施設全体が停電する中、不気味に発光していたトイレを見たのだ!そして――――」

岬 明乃

「それで、どうしたんですか?」

アドルフ・フューラー

「事件の瞬間を目撃してしまったのだ!被告人が被害者に真正面から襲い掛かる瞬間を見たのだ!!その時に持っていた凶器によって被害者は殺害されたのだ!」

岬 明乃

「………!!」

 

あれ、ちょっと待って。

今の発言、かなり引っかかる。

手元にある証拠品をもう一度だけ確認する。

そして見つけた………今の証言の矛盾を示せるだけの力が!!

 

岬 明乃

「異議あり!!」

 

法廷内に響き渡るように、声を張り上げる。

そして同時に、身体の内側から力がグツグツと沸いてくる錯覚を感じた。

今なら、行ける!!

 

岬 明乃

「アドルフさん、あなたはこう言いました。被告人が被害者に真正面から襲い掛かったから、被害者は殺害されたと言いましたね?」

アドルフ・フューラー

「うむ。わしの目に偽りはない」

岬 明乃

「ところがそうはいきません。こちらの証拠品をご覧下さい」

 

自然と言葉がつらつらと並べられるのに動揺したけど、今は目の前の説明に集中だ!

私は手元の証拠品を見せつける。

 

検死報告書:死亡推定時刻は12時30分~50分の間。死因は背中をナイフで刺された事による失血死。

 

岬 明乃

「こちらは被害者の検死報告書です………死因は”背中”をナイフで刺された事による失血死であると」

サイバンチョ

「それがどうしましたか?」

岬 明乃

「分かりませんか?もしアドルフさんが言っていることが本当なら!」

 

バンッ

机を思いっきり叩きつけて、視線を鋭くする。

これが、私からの人生で最初の反論だ!

 

岬 明乃

「被害者は正面から刺された事にならないとおかしいのです!!」

アドルフ・フューラー

「ま、マジっすかい!?」

 

ワイワイガヤガヤ……………………………………

カンッ、カンッ、カンッ

 

サイバンチョ

「静粛に!静粛に!た、確かにその通りですぞ!もし被害者が正面から刺されたのなら、刺し傷は正面に付くはず!なのに背後から刺されたとありますぞ!」

 

よし!

初めて証言から矛盾を突きつけられた。

アドルフさんには悪いけど、こっちは大事な家族が有りもしない罪を着せられようとしてるから、構ってられない!

 

岬 明乃

「さぁ教えて下さいアドルフ・フューラーさん!背後に刺された傷が、どうしたら正面へ移るのかを!!」

アドルフ・フューラー

「う、うぅむ、確かにワシは真正面から襲い掛かった瞬間を目撃したのだ!見間違えるはずがない!」

 

アドルフさんは、なおも自分の見間違いでないと言い張る。

うーん、でも私も彼が嘘を言っているようには見えないしなぁ………。

もう少しだけ掘り下げてみる?

でも何を聞いてみる?

 

万里小路 楓

「あの、一つよろしいでしょうか?」

サイバンチョ

「む?なんでしょうかな?」

万里小路 楓

「証人に伺いたいのですが、目撃した際の状況を詳しく証言としてお話しして頂けないでしょうか?私としては証人が嘘を言っているようには見えませんので、別の視点からアプローチを図るのもありかと………」

サイバンチョ

「ふむ、分かりました。では証人、お願いしますぞ。目撃した際の状況について!!」

 

~証言開始・目撃した時の状況について~

アドルフ・フューラー

①「目撃してた時の状況か………」

②「周囲は暗闇になっていたな。停電のせいでな、物音一つしなかったよ」

③「だがそう言えば、事件を目撃する直前に少し揺れたな。まぁ、恐らくは爆発の影響で揺れたんだろう」

 

岬 明乃

「!!待って下さい!」

サイバンチョ

「む?どうしましたか?」

岬 明乃

「爆発があったのは停電する前です!停電した後に爆発があるなんてあり得ません!」

サイバンチョ

「おお!確かに!今回は尋問が始まる前に不審点を上げられましたな」

アドルフ・フューラー

「わしは確かに揺れをこの芸術魂をかけても、感じ取ったと確信している!疑うのは筋違いだ!」

岬 明乃

「どう言う事なんだろう?この2回の揺れが、事件と関係あるのかな?」

万里小路 楓

「整理しましょう。証人が感じ取った揺れは、証拠から推理するに爆発による揺れではないのは確かです」

岬 明乃

「停電した後に揺れたって証言してるしね。じゃあ、この2回目の揺れの正体はいったい?」

サイバンチョ

「しかし弁護人、私の見解の述べますと2回の揺れが本事件とは関係があるようには思えませんが」

万里小路 楓

「1つ確認したい事がございます。琴浦検事、この”停電後の揺れ”についての見解をお聞かせ願います」

琴浦 春香

「………」

 

万里小路さんの質問に、私は琴浦さんを見つめた。

しかしこちらの問には答えずに、黙って佇む琴浦検事。

 

琴浦 春香

「………黙秘します」

サイバンチョ

「な、なんですと!?黙秘とはどう言う事ですか!?」

琴浦 春香

「そのままの意味です。たかだか2回施設が揺れた件と今回の事件の関連性がない以上、協議する必要がないと判断しました」

岬 明乃

「異議あり!証人は間違いなく2回の揺れを感じています!これを無視するんですか!?」

万里小路 楓

「では弁護人は、この2つの出来事に関連性が有ると言うのですね?」

岬 明乃

「えっ、あ、はい!もちろんあります!」

 

うわぁ、どうしよう。

勢いで言っちゃったから、関係あるかなんて分からないよっ。

おまけに有るって言っちゃったし。

おかげでみんなの視線が痛いくらいに突き刺さってくるよ。

特に私の事を知ってるシロちゃんから、名前の通り白い目で見てるし………。

 

万里小路 楓

「岬さん、当てはあるのでございますか?」

岬 明乃

「え、えと………実は勢いで言っちゃったから、関係あるかなーって考えたり、あはは」

万里小路 楓

「うまく相手のペースに乗ってしまいましたわ。さすがはベテラン弁護士と呼ばれております」

岬 明乃

「でもそのベテランさんが黙秘するって事は、既に調べていて結果は分かってるんだよね?」

万里小路 楓

「恐らくは。ただ、あの言い方ですと、”検察側は何か重要な情報を隠しているのでは”っとこちらが疑ってしまいます。手慣れた方がそのような発言をするのは思えませんが………」

岬 明乃

「でもどの道、関係があるって示さないと始まらないよね。だったら」

 

前から思っていたことを、この場で言うのもありかもしれない。

証人を疑うようで悪いけど!!

 

岬 明乃

「証人、一つ伺ってもよろしいですか?」

アドルフ・フューラー

「何かね?」

岬 明乃

「証人って、本当に事件を目撃したんですか?」

アドルフ・フューラー

「………なんだと?」

岬 明乃

「ただ状況を詳しく話しただけでも証拠にはなるんでしょうけど、それはあくまで証人が一方的に語っているに過ぎません。それに法廷では証拠が全てなんですよね?なら証人が事件を目撃したという証拠を見せて下さい」

琴浦 春香

「!!」

アドルフ・フューラー

「………ふふふふ」

岬 明乃

「?」

アドルフ・フューラー

「ふっふっふっふっふ。そこまで言うのなら、本来は見せるべきではなかったが、わしはこいつを証拠品として裁判所へ提出する!!」

 

高笑いしながら懐から取り出した1枚の紙。

いや、あれは画用紙かな?

さすが芸術家を名乗っているだけあって、道具は常に持っているようだ。

さっきも1枚だけ絵を見てたけど。

 

アドルフ・フューラー

「これはわしが事件が発生した時に書いた物だ!こいつを提出するぞ!」

サイバンチョ

「しょ、証人!あなたは先程の証言では次の作品を考えながら歩いていてとは言っていましたが、絵を描いているとは言いませんでしたぞ!」

アドルフ・フューラー

「芸術家とは、時には絵を描きながら次の作品を考えているモノなのだ!ゴッホがそうだったようにな!」

万里小路 楓

「ゴッホさんは音楽家であって画家ではございませんが」

サイバンチョ

「ごほん!と、とにかくこちらは証拠品として受理します」

 

フューラーの描いた絵:事件当時に描いていた絵。被害者と被告人が争っている。かなり綺麗な絵。

 

サイバンチョ

「なっ、こ、この絵は!!」

アドルフ・フューラー

「ふっふっふ、裁判長も気付いたようだな。そう、わしの絵は見たモノを正確に描くことが可能なのだ!だから今時の写真なんぞに頼らなくても証拠品として扱えるはずだ!」

岬 明乃

「………!!」

 

その絵を見ていて、次の言葉を無くしてしまった。

確かにそこに描かれていたのだ。

シロちゃんが………背後から被害者を襲う瞬間を!

 

アドルフ・フューラー

「さぁ岬明乃君!これでもまだわしが、事件を目撃していないと言えるのか!わしは事件の目撃者だぞ!」

琴浦 春香

「………」

 

ワイワイガヤガヤ………………………………………………

 

っ!?

騒ぎ出した法廷の中で今、琴浦さんがこちらを見て笑っていたような気がする。

周りの空気とは対照的な、あの態度。

なんで、そんなこと。

 

万里小路 楓

「くっ、まんまと相手の手中にはまってしまいました」

岬 明乃

「は、はまった?」

万里小路 楓

「琴浦検事はこうなるように仕向けたんです。こちらが万策が尽きた時に、確かな証拠としてこちらに不利な証拠を提出させる。これが、法廷での戦い方ですか!!」

陪審員4号

「………勝負ありかね、こりゃ」

 

ざわついている法廷から、1つの声が落された。

その声に法廷も静寂に包まれる。

ま、待ってっ。

 

陪審員4号

「こいつは決定的だ。ハッキリと被害者をぶっ殺してる被告人が映ってる。このおっさんは妙な絵描きだったが、確かな証言をしてたな………裁判長!俺は有罪にするぜ!」

 

そう言うや否や、陪審員4号さんは手元にあるボタンを押した。

すると法廷の背後にある天秤に向かって、日が飛んでいった。

白と黒の2つの天秤があり、今は黒の方へ入った。

確か、この意味は………。

 

万里小路 楓

「有罪に、1票入ったと言う意味です。これが6票全てに入ったら、審理はそこで終了となり、裁判はっ」

陪審員3号

「これは言い逃れできません。犯罪者にそっこく裁きを!」

陪審員1号

「ふん!やっぱり外から来た奴は皆、犯罪者だ!さっさと判決を下せー!!」

陪審員2号

「………」

陪審員5号

「ハンザイシャ、コワイ。ハヤク、ユザイ!!」

 

犯罪者。

みんな口々に叫んでは、次々と有罪の炎へと転身していった。

天秤の傾きは激しくなり、ほとんどが有罪へとなりかけていた。

これで全ての票が有罪へとなってしまった。

私じゃ、シロちゃんを助けられないの?

万里小路さんも、悲痛な顔で投票されるのを見つめていた。

当のシロちゃんは泣いてないけど、両の目は濁りきっていて、この世の終わりとも思える表情となっていた。

 

これで、5票が有罪となり、裁判は………5票?

まだ、投票してない人がいるのかな。

でも、このままじゃ………。

 

サイバンチョ

「む、陪審員6号さん?どうしましたか?有罪へ投票しないのですか?」

陪審員6号

「ああ、いえ。少し考えごとをしていましたので、ワンテンポほど遅れてしまいました」

サイバンチョ

「そうでしたか。それで、考えはまとまりましたか?」

陪審員6号

「おかげさまで。ですが」

 

一間呼吸して、続ける。

 

陪審員6号

「僕は、被告人が犯行に及んだとするのは、まだ早計であると判断しました。よって、僕の投票はまだ保留とします」

 

私は、一瞬だけど時間が止まった気がした。

彼の言っている意味が分からないのではなく、ただ単に………嬉しかったのだ。

不甲斐ない弁護だったのに、みんなからは犯罪者呼ばわりされてるシロちゃんの無実を信じてくれる人がまだ居てくれるんだ。

 

陪審員1号

「なっ、何を言い出すんだ!決定的な証拠だってあるのに、何を疑問に思うんだ!?」

陪審員6号

「いや、そう言われましても、この絵だけでは彼女の犯行かどうかなんて判断できません。肝心の凶器の姿が描かれていませんし」

サイバンチョ

「ふむ、言われてみればそうですな。しかし、それは単に身体に隠れているからでは?」

陪審員6号

「他にもあります。そもそもの問題として、彼女の殺害の動機が全く見えてこない。殺人事件を扱うのに一番重要な動機の点が不明なのです。これを抜きにして審理を進めるのは、僕としてはいささか疑問を感じます」

 

丁寧に分かりやすく説明して、ふぅ、と一息吐く。

手を前のめりにして組む。

 

陪審員6号

「以上の2点が解消されない限り、僕は彼女を有罪とは決して認めません。僕の票で、えん罪を生むのは趣味ではありませんので」

サイバンチョ

「うむ。では、仕方ありませんな。このまま審理を続行して頂きましょう」

 

………助かった、のだろうか?

たった1人の反論で、まだ審理が続いている?

シロちゃんを助けるための議論がまだ終わっていない?

知らぬ間に、私は両目から涙を流していた。

まだ、戦える!

 

サイバンチョ

「では私の主観を述べたいと思います。この裁判自体、不明な点が多くありすぎます。検察側、弁護側共に充分な証拠の集まっていないと見受けました。よって、本法廷の審理につきましては、後日とさせて頂きます!」

岬 明乃

「って、言うことは………」

サイバンチョ

「本法廷はひとまず、これにて閉廷とします!なお、本日の法廷は明日に持ち越します。検察側、弁護側共に本日中までに調査を終えるようにすること!」

岬 明乃

「やった!裁判を明日にまで引き延ばせた!」

万里小路 楓

「ふふ、チャンスが生まれましたわね」

琴浦 春香

「ぐっ」

サイバンチョ

「それでは、本日の法廷はこれにて閉廷!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                      「待った!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

裁判長が小槌を打って、裁判の閉廷を宣言した途端に、それは起った。

法廷中に轟く、1人の声で法廷は再び混乱に巻き込まれる。

何事かと思い証言台を見てみると、そこには1人の男性が立っていた。

だけどその人は頭に包帯を巻いていて、怪我をしている。

 

??????

「待って下さい裁判長!私の話を聞いてくれませんか?」

サイバンチョ

「は、はぁ。しかしたった今、当法廷は一時的に閉廷となりましたので」

??????

「お願いです!重要な事なんです!」

サイバンチョ

「そもそも、あなたはどなたなのでしょうか?さすがに事件と関係ない人物の証言など、聞けませぬぞ」

??????

「関係大ありです!なぜならば――――」

 

 

 

??????

「私は、この事件のもう一人の被害者なのです!!」

 

 

 

岬 明乃

「えっ」

万里小路 楓

「はい?」

琴浦 春香

「は?」

サイバンチョ

「な、な、なっ、なんですとおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!???」

 

ワイワイガヤガヤ………………………………………………………

 

ま、まさか。

事件の、もう一人の被害者?

殺害された被害者とはもう一人、別の被害者がいたって事?

それが事実なら、なんで今まで出てこなかったの?

この事件との関係は?

疑問が疑問を呼び、とうとう収集が付かなくなっていった。

法廷は、ますます混乱を極めたまま、閉廷する事となった。

 

 




P.S その内、見取り図や事件現場の写真などの挿絵を入れたいなと思います。
※但し、絵はまだ書けていない………
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