High School Fleet ~封鎖された学園都市で~ 作:Dr.JD
どうも皆さんのはこんばんにちは。
Dr.JDです。
大変長らくお待たせ致しました!
前回の更新から半年近く経過してしまいました。
理由としては、物語の展開をどうするかで迷っていました。
なかなか決まらず、筆が止まってしまいましたが、展開が決まった後は早かったですね。
さて、挨拶もここまで。
今回の話から新たな人物に出会います。
出てきた瞬間、うわぁ、懐かしい!
と、思えたら嬉しい限りです。
だって同士ですから。
それでは、どうぞ。
第18話 新たな出会い
[新たな出会い]
2012年、7月23日、10;31;58
高校1年生 陽炎型航洋艦五番艦「晴風」 艦長
岬 明乃(みさき あけの)
日本国 茨城県 尾阿嵯(おあさ)町 図書館
私はこの日、町に出ていました。
町と言っても語弊があり、正確に言えば、図書館1階のテーブルに、本いっぱいの山を築いていました。
今日は人が少ないからか、お客さんはさほど来ておりません。
だから本をこうして山積みにしても、誰にも注意されません。
以前の私なら本と言えば、教科書ぐらいしか読みませんでしたが、今は分厚い本や資料を漁っている状態です。
それはさておき。
図書館と言えば、調べ物をしたり読書をするのに最適な場所で、使用料は発生しない便利な場所です。
私は、前者を理由にこの場所へ訪れています。
その調べるものとは――――
岬 明乃
「………第二次世界大戦中の日米決戦」
私は、私達の世界線で発生しなかった第二次世界大戦について調べています。
ここで少し回想しようと思う。
晴風奪還作戦成功時に、私が見せられた映像の数々。
いや。
見せられたと言うより、頭に直接、映像を流されたと表現した方が適正だろう。
なぜあの人達は私にあんな映像を私に見せつけたのかは知らないけど、決して忘れられない。
あの戦争で起こった、悲劇を。
あんな悲劇的な記憶を見せられて、よくも心が壊れなかったなと思う。
泣きたかった。
だけどそれも許されず、私はあの記憶を見せられ続けられた。
拷問用の椅子に括り付けられて、逃げ出せなかった。
そして私は耐えきれず、その部屋から飛び出して、晴風の元へと向かった。
今思えば、無我夢中で忘れていたけど、あの時は自分でもビックリするくらいに身体能力が向上してた気がする。
そこで私が見たものは――――
檻から解放されて、出航する晴風の後ろ姿だった。
だけど警備ロボットが銃を発砲している場面を目撃した。
そこで怒りが爆発して、いつの間にか警備ロボットを何体か倒していた。
ようやく気が落ち着いたのか、私はふと晴風の方を見ていた。
………その時、シロちゃんと目が合った途端、力がふと抜けていた。
その直後に後部甲板に走り寄っていたシロちゃんが私に向かって手を伸ばし、叫んでいた。
宗谷 ましろ
「岬さん!早くこの手に掴まって!この距離ならまだ間に合う!」
だけど私は、何も答えられなかった。
すでに全身から力が抜けていて、先程まで見続いていた記憶の影響からか、頭痛や吐き気が促される。
うまく腕も伸ばせないし、頭もちゃんと真っ直ぐ前に向いているのさえ分からない。
だから、私が出来ることなんて高が知れていた。
だから私は、シロちゃんに向かって微笑んでいた。
それはまるで、彼女を慰めるように。
私を置いて脱出した事を責めないで、と言うように。
それが彼女に伝わったかどうかは分からないけど。
宗谷 ましろ
「み、岬さん!!」
シロちゃんが私の名前を叫んだ途端、何者かによって背後から私の背中を抑えこまれた。
きっと応援に来た警備ロボットだろう。
だけど、もうそんなことはどうでもよくて。
もう抵抗する力も湧いてこない。
そして最後に、晴風の無事を確認した途端――――
岬 明乃
「っ!!」
そこで現実世界へ戻ってくる。
少しボーッとし過ぎたようでした。
頭を何度か振って、意識を目の前の本に落としました。
大日本帝国とアメリカが対峙した海戦の数々に関する資料を。
それに関する書籍をしばらく読んでいる内に、最後の書籍を読み終えてしまいました。
一度立ち上がって背筋を伸ばすと、本のいくつかを返却するため、本棚へと向かいました。
それにしても、と思う。
あれだけ怖い記憶を見せられて、よくシロちゃん達の目の前で泣き叫かなかったなと。
恐怖心が表沙汰にならなかったと思う。
もしも叫び出していたら、皆にもまた迷惑を被っていたかも知れない。
もしそうなっていたらと思うと、ゾッとする。
でも、どうして。
どうして彼らは私にあの記憶を見せたのでしょうか。
その疑問だけが私の頭から離れません。
と、考えていたら、誰かの手とぶつかった。
その反動で本を床に落としてしまいます。
岬 明乃
「あっ、すみませんっ」
??????
「いや、こっちこそごめんよ。考え事しててさ」
金髪の少年は落とした本を、私に渡してきた。
咄嗟に受け取った私は、彼を再び見つめた。
??????
「それにしても、君、珍しい本を読んでるね。第二次世界大戦の戦史とか。日米開戦を中心に読んでるみたいだけど」
書籍のタイトルを見てそう判断したのか、少し興味津々に聞いてくる。
彼をよくよく観察してみると、どこか海外出身の様な顔立ちで、かなりかっこ良かった。
一瞬だけど、女装したらそのまま女性として通りそうです。
あ、でも喋ったら男の子だってバレちゃうか。
岬 明乃
「え、えと。今度のテストでこの部分が範囲だから、ちゃんと勉強しておこうと思って」
咄嗟に出た嘘に戸惑いつつも、少年はゆっくりと頷いた。
??????
「テストかー。随分と懐かしい単語を聞いたよ。あれ?でも今は君らは夏休み中だろ?テストなら休み明けからだから、まだ早いんじゃない?」
うっ、随分と核心に近づいたなぁ。
私がどう答えようか考えていると、彼は私の手にあるカードに目が向かいました。
このカードは志保さんから受け取ったもので、この町で保護を受けている者であれば、所持しておかないといけない物だそうです。
それを見て、彼は静かに、そしてゆっくりと私に近づいてきました。
先程も言いましたが、彼はかなりの美男子なので、急に近寄られるとドギマギしてしまいます。
??????
「………」
じーっと見つめてきて、何も言い出さない彼を見て、私は疑問に感じました。
だけどそれは長い時間ではなく。
そして短めに一言。
??????
「………君も、この町の住民なんだろ?それと、別に敬語を使わなくてもいい。ダルいだろ?」
先程とは打って変わって、興味が失せたように急に勢いが引っ込みました。
どうして分かったんだろうと疑問に感じました。
一応はこの町に保護されている事にはなってるけど………。
戸惑いつつも、私は問いに答えました。
岬 明乃
「そう、だよ。大分前からこの世界へ飛ばされてきたの。えっと、ところであなたは?」
??????
「ああ、そうか。互いに名乗ってなかったな。俺はクウェンサー・バーボタージュ。まぁ、もと学生になるのかな?そっちは?」
岬 明乃
「私は岬明乃、現役で艦長をやってるよ。よろしくね!」
クウェンサー・バーボタージュ
「わぁ、君の笑顔がすっごい眩しいよ。ん?その年で艦長って………あ、いやでもフローレイティアさんの例があるから、別に変ではないか」
何やら一人でぶつぶつと呟き出しました。
私が艦長であることを伝えても大して驚かないところを見るに、身近に私とそう年齢が変わらなくて、役職が与えられた人が居るのでしょう。
私は勝手にそう解釈しました。
クウェンサー・バーボタージュ
「ところでさ。君が言ってる艦長って、客船の?それとも貨物船?」
岬 明乃
「ううん。航洋艦晴風の艦長だよ………あっ、でも航洋艦って言っても分からないかな?この世界じゃ、えと、駆逐艦って呼ばれてるよ」
クウェンサー・バーボタージュ
「航洋艦?うーん、聞いたことがないな。写真とかってある?」
岬 明乃
「あるよ。えっとね、これだよ」
私はいつ撮ったか覚えて無いけど、クラスのみんなと撮った写真を見せた。
あれ?
携帯も見て見たけど、みんなと撮った写真が一枚もなかった。
いつの間にか消しちゃったのかな?
でも仲間との大事な写真を消しちゃうかな?
だけど彼の言葉でこの疑問は端へと追いやられました。
クウェンサー・バーボタージュ
「これはビックリだ。写真でしか見た事ないけど、大戦時に猛威を振るってた駆逐艦じゃないか。もしかして陽炎型?」
岬 明乃
「よく分かったね。そうだよ、私達が乗ってるのは陽炎型。ただまぁ、本来の武装と比べると一部変わってるけどね」
クウェンサー・バーボタージュ
「へぇ。生で見るなんて初めてだな。それにしても」
携帯を私に返して一人で唸っていると。
クウェンサー・バーボタージュ
「世界で初めてオブジェクトを開発、運用した島国が生み出した駆逐艦………くぅ!思ってた以上にかっこいいな!」
私の考え事など露知らず、金髪の少年、クウェンサー君は一人で勝手に盛り上がっています。
こう言った大きな船が好きなのかな?
彼の先程のテンションがまた戻ったみたいで、ふと思いました。
岬 明乃
「さっきさ、私がこの町の住民だろって聞いたでしょ?もしかしてあなたも」
クウェンサー・バーボタージュ
「ああ、それね。君と同じ、俺もこの町の住民なのさ。もうかれこれ、1ヶ月は経ってるよ。今でも帰る方法を模索中だけど………」
一間置いて、再び口を開いた。
クウェンサー・バーボタージュ
「この比較的平和な世界も、もう少しだけ満喫したいなー、なんて考えちゃったりするんだ。元の世界じゃ、数え切れないほど死にかけたしね」
ドキリッ
彼がさり気なく放った言葉に、私は心臓を鷲づかみにされた気になりました。
何度も死にかけた。
その言葉に、私は胸をギュッと握りしめていました。
昨日見せられた戦争時の悲惨な映像の数々。
常に死と隣り合わせの戦場。
死んでいく仲間達。
私の中で形成されている視界、いや、世界全てが真っ赤に満ちていく。
同時に私の中の”ある欲”が徐々に満たされようとしている。
自分の両手をまじまじと見つめる。
小さく震えている両手は、目の前にいる彼の首へと向けられている。
当の彼は、私の様子など知らずに何かを語っている、ように見える。
だけどそんなことはどうでもよかった。
息が荒くなる気がしたが、気にもしなかった。
ただ、一点。
私は、この人を、彼を――――
クウェンサー・バーボタージュ
「あれ?明乃、大丈夫か?おい?」
彼が私の両肩を揺すってくれたおかげで、私の身体からさっきの衝動がすっと消えた気がしました。
あれ?私、彼に今、何をしようとしていた?
今やろうとしてたのって、彼の首を――――締めようとしてた?
な、なんで。
岬 明乃
「っ、だ、大丈夫だよっ。それと話をしてくれてありがとう!私、用事思い出したからもう帰るね!」
クウェンサー・バーボタージュ
「あ、おい!」
私は急に怖くなり、彼から逃げるようにその場から立ち去ります。
借りてた本をその場に置いて行ったことは気が引ける、など考える余裕すらありません。
図書館から飛び出るように、一目散に走りだしても、行く場所はありません。
今使っている宿舎に寄っても、あの子達に心配をかけたくはありませんでした。
さっき私がしようとした事は、間違いなく。
間違いなく、人を殺めようとする行為。
まるで自分が自分でないかのように、身体が勝手に動き――――
いや、違う。
あれは間違いなく、私自身の”欲望”から出てた行動だ!
だからあんな恐慌に走ったんだ!
でも、どうして今日会ったばかりの彼に、殺意なんて沸くんだろう?
そして何よりも。
何よりも、私が誰かを殺したい衝動に駆られ、行動しようとしていた事が、私の中にあるのを認めたくなかった。
その考えに至った時、私の中で何かが弾けた。
岬 明乃
「い、いやあぁぁぁ!!!」
認めたくない認めたくない認めたくない!!!
私は、海で危険な目に逢う人達を助けるために、ブルーマーメイドを目指したんだ!
なのに、それなのに、彼を、救うはずのこの手で、殺そうと――――
??????
「危ない!!」
岬 明乃
「うわぁ!?」
背後から突然、すごい力で私は後ろへ引っ張られる。
次の瞬間、目の前でものすごい速度でトラックが通過する。
だけど引っ張られた勢いで、そのまま私を引っ張ってくれた人物を押し倒すような態勢になってしまう。
そして私を助けてくれた人物を見た途端、罪悪感に捕らわれる。
岬 明乃
「く、クウェンサー君………」
クウェンサー・バーボタージュ
「ふぅ、何とか間に合った。ったく、あまり心配かけさせるなよ、本気で探しちまっただろ?」
彼の顔が少しだけ赤くなると、私も今の現状について把握する。
次の瞬間、顔がボンっと赤くなり、私は慌てて立ち上がった。
すると彼の顔はだんだん怒気を含むようになった。
クウェンサー・バーボタージュ
「とりあえず………この馬鹿!なんでトラックの前に飛び出そうとした!?あのまま行ってたら、死んじまうところだったんだぞ!!」
岬 明乃
「ご、ごめんなさい!さっきのことで、そのっ」
クウェンサー・バーボタージュ
「さっき?ああ、急に用事ができたって言って俺から逃げたことか?まぁ、俺もあん時は嫌なことでもしちまったかなって思ったんだ」
岬 明乃
「違う!クウェンサー君は何も悪くないよっ。悪いのは、私なんだよ………」
クウェンサー・バーボタージュ
「?どういう事?」
首を傾げる彼に、正直に言っていいのでしょうか。
衝動的にあなたを殺害したかった、と。
こんなこと言ったら、絶対に嫌われてしまう。
私が言い淀んでいると、クウェンサー君から口を開いた。
クウェンサー・バーボタージュ
「話したくないなら、別に無理して話さなくてもいいよ。ただ、さ」
岬 明乃
「………?」
クウェンサー・バーボタージュ
「俺さ、困ってる女の子がいたら、その。ほっとけない性分みたいでさ。いつでも連絡をしてくれ。これ、俺の電話番号だからさ」
私はクウェンサー君から電話番号が記載された紙を受け取りました。
受け取ったら、何だか安心してしまう自分に気付きます。
ついつい顔が綻んでしまい、クウェンサー君を見ると、またドキリとしました。
なぜだろう、彼と話していると自然と心が休まる。
さっきまで抱いていた殺意も消えて、自然と彼と話せています。
急いで携帯を取り出して、彼の番号を登録しようとしても、指が震えて上手くいきません。
すると、見かねた彼は私の携帯を取り上げて代わりに入力してくれました。
クウェンサー・バーボタージュ
「おいおい、大丈夫か?指が震えてるぞ?あまり無理するなよ………ほら、登録しておいたぞ。ついでに君の番号も勝手に登録しといたから、良いだろ?」
岬 明乃
「えっ、あ、うん。ありがとう」
クウェンサー・バーボタージュ
「ようやく笑顔に戻ったな。そうそう、やっぱり女性は笑ってるのが一番だな」
岬 明乃
「もう、なにそれ?口説いてるの?」
クウェンサー・バーボタージュ
「いやいや、そんなんじゃないさ。気分が晴れてそうだから、ホッとしただけさ………それより、相談なんだけどさ」
岬 明乃
「なに?」
クウェンサー・バーボタージュ
「さっきの写真に写ってた駆逐艦を見せてほしいんだ。頼むよ!」
岬 明乃
「えと、別にいいけど、ちょっと遠いよ?」
クウェンサー・バーボタージュ
「大丈夫。さっきの駆逐艦と言う構造物みたら元気が湧いてきたから!よし、なら案内してくれ!」
岬 明乃
「う、うん」
テンションが妙に上げって来たので、断って盛り下げるのも嫌だったからつい頷いてしまいました。
それから私達は、目的地へ向かいながら色々な事を語り合いました。
自分の世界情勢や、周囲の人々のことも。
でも聞いた私は半信半疑でした。
だって、50メートル級の巨大な兵器を一人で乗り回す時代がやってくるなんて。
あとは専門用語が乱立していて、私の頭では理解できません。
うぅ、助けてシロちゃん!
クウェンサー・バーボタージュ
「それじゃあ、明乃がいる世界は航空機がなく、飛行船で大陸を横断するしかないのか」
岬 明乃
「うん。ドイツに知り合いの子がいるんだけど、会いに行くには飛行船使って長旅しないといけないね」
クウェンサー・バーボタージュ
「どれくらい掛かるんだ?空港はいくつか利用するだろうけど、それでも旅客機さえあれば数日で着くと思う。でさ、代わりに水上フロート技術が発達してるんだっけ?」
岬 明乃
「うん。メガフロートととも呼ばれてるけど、とにかくすっごく大きいんだ!」
クウェンサー・バーボタージュ
「石油リグなんて赤子だって?それ言ったら人とオブジェクトなんて比べてたら、きりがないよ」
岬 明乃
「そのオブジェクトって、どんな形してるの?人型ロボット?」
クウェンサー・バーボタージュ
「人型なんてしたら、重心が高すぎて歩いただけで転倒しちゃうよ。俺達の部隊が保有してるのは球体の形状をしていて、下にU字型の電磁浮遊式のフロートを装着してるんだ」
岬 明乃
「それで宙に浮かせて高速移動が可能になるって言ってたっけ?でも総重量って結構重たいんじゃ」
クウェンサー・バーボタージュ
「うちの場合だと20万トンだね。それだけの重量をどうやって分散させるのかも、設計士の腕の見せどころさ」
腕まくりして力をアピールする。
………腕はかなり細くて頼りないけど。
えと、総重量20万トンってことは、大和の排水量の3倍だから………。
その大きさだけを見てもかなり巨大であることが想像できます。
でも全体像は全く想像できないので、彼の話を聞いて、質問するしかありません。
そうこう話している内に、晴風が停泊されている港までやって来ました。
私達以外の人は誰もいないので、誤解されずにすみそうです。
そして私は晴風がある方へ歩んでいくと――――
クウェンサー・バーボタージュ
「うおぉぉぉ………これが、帝国海軍の誇る駆逐艦!やっぱ生で見ると全然迫力が違う!」
晴風の姿を視認した途端、クウェンサー君は目をキラキラさせてマジマジと見つめました。
口々に、高射砲が設置されてる!とか、見たことのないカラーリングだ、とか。
色々な単語を口にしながらあれよこれよと観察を始めました。
そう言えば、今日は午前中から整備があるとかで、マロンちゃん達の機関科が残っているはずだけど、姿が見えません。
機関室にいて作業しているのかな?
岬 明乃
「………良かったら中も見てみる?何人かクラスメイトがいると思うけど」
クウェンサー・バーボタージュ
「えっ、それは嬉しいけど、大丈夫か?いきなり来て迷惑じゃないか?」
岬 明乃
「大丈夫だよ。皆そんな悪い子達じゃないし、それにほとんどの子は外に出払ってるから」
クウェンサー・バーボタージュ
「ちなみに聞くけど、もしかして船員って全員女の子かい?」
岬 明乃
「?そうだよ?」
クウェンサー・バーボタージュ
「………ヘイヴィアが知ったら、また発狂しそうだけど、秘密にしてれば良いか。よし、じゃあ頼むよ」
岬 明乃
「よーそろー!」
気になる発言をしてましたが、気にしないことにしました。
タラップを上り、晴風の案内をしました。
案内している間は、ずっと目を輝かせていて、とても楽しそうに私の話を聞いてくれました。
思わずこちらも嬉しくなりながらも、案内を続けていきます。
そして兵装内部や居住区、機関室へやって来て――――
クウェンサー・バーボタージュ
「なぁ、なんか暑くないか?」
岬 明乃
「そうだね。おかしいな、暖房なんて着けてないんだけど」
黒木 洋美
「艦長、こちらが缶を修理しているのに男連れてデートですか?」
服をパタパタしだしたところで、機関室から汗だくだけど、対称的にどこか冷たい視線を向けているクロちゃんが出てきました。
で、デート!?
そんなんじゃっ。
クウェンサー・バーボタージュ
「あー、違う違う。俺と明乃はそんなんじゃないから。今日出会ったばかりだからね?」
動揺する私を無視して、クウェンサー君が手を振って否定する。
………なんだかイラッとしたので、彼の足を思いっきり踏んづけました。
クウェンサー・バーボタージュ
「いったあ!?ちょっ、いきなり何すんの!?」
岬 明乃
「ふんっ、知らない!」
クウェンサー・バーボタージュ
「………?」
黒木 洋美
「やれやれ………それより艦長、どうしました?今日は一日、図書館に籠もるとか言ってたのに、男連れ込むなんて」
岬 明乃
「彼が晴風を見たいって言うから、案内してるの。彼、すごく大きな機械が大好きみたいだから」
クウェンサー・バーボタージュ
「ねぇ、君が出てきた所って、機関室だろ?少しだけ見せてくれないか?」
黒木 洋美
「ダメよ。どこの誰かも分からない人に、缶を預けられないわ。そもそもあなた誰よ?」
クウェンサー・バーボタージュ
「俺はクウェンサー・バーボタージュ。君達と同じこの世界に迷子になった者だ。これでいい?」
君達と同じ迷子、の部分を聞いた途端、クロちゃんは私を睨んできました。
あまりにも鋭かったので、私は視線を彷徨わせてしまいます。
自分達の身元を彼に言ったのがまずかったのだろう、と思いました。
と、ここで気を察したのか、クウェンサー君が庇ってくれました。
クウェンサー・バーボタージュ
「俺が彼女に迫るように聞いたから、彼女は答えただけだ。彼女は悪くないよ」
岬 明乃
「それより何かあったの?」
少々強引に話を元に戻すと、クロちゃんは鋭い視線を収め、はぁっとため息を吐きました。
これ以上、言っていても埒が明かないと思ったのでしょう。
言葉が刺々しいのは変わらないけど、背後の機関室に目を向けながら両肩を落とします。
黒木 洋美
「缶がトラブルを起こして、今はサウナ状態なの。温度が戻るまでに時間が掛かるから、麻侖達は外に出払ってるのよ」
クウェンサー・バーボタージュ
「だからこんなに暑かったのか………なぁ、相談なんだが」
黒木 洋美
「なによ」
クウェンサー・バーボタージュ
「そのタービンを俺に見せてくれないか?俺は機械にはそれなりに詳しいし、もしかしたら直せるかもしれない」
黒木 洋美
「あのね、人の話を聞いてた?今は機関室はサウナ状態だって。入るのはお勧めしないわよ?」
クウェンサー・バーボタージュ
「扉をいっぱいに開けて、換気すれば問題ない。それに危ないと判断したら諦めるさ。それに」
腕まくりをして、どこからか取り出したか分からない工具類を手にしました。
………相変わらず細い腕だと思うけど、言葉にしません。
だって――――
クウェンサー・バーボタージュ
「せっかく異世界へ飛ばされて、第二次世界大戦時の駆逐艦のタービンをいじれる機会に恵まれたんだ、少しくらい役得するくらいはいいだろ?」
どこかギラついた目つきに変わり、何かを言ったところで彼は止まりそうになかったからです。
案の定、クロちゃんがため息を吐くと。
黒木 洋美
「はぁ、勝手にしてちょうだい。でもあなたが中に入るなら、私も中へ入るわ」
岬 明乃
「えっ?どうして?」
黒木 洋美
「この人が缶に細工しないとも限らないわ。まだ出会って間もないんだもの、簡単に信用なんて出来ないわ」
岬 明乃
「ちょっと、クロちゃん!?」
クウェンサー・バーボタージュ
「別に構わないさ明乃。男がいきなり土足で踏み込むんだ、彼女の言い分だって聞くくらいの真摯さは持たないとね」
ウィンクを決めながら親指で自身を指すと、クロちゃんは先に機関室へと向かっていく。
クウェンサー君もその後に続く。
と、ここでクウェンサー君は振り返ります。
岬 明乃
「どうしたの?」
クウェンサー・バーボタージュ
「明乃はそこで待っていてくれ。危険だろうから、上にでも上がってて」
岬 明乃
「うん、分かった。それとごめんね?機関の修理なんてさせちゃって」
クウェンサー・バーボタージュ
「言ったろ?駆逐艦のタービンをいじれる機会を逃したくなかっただけさ。それを言うなら、俺だって悪かったと思ってる」
岬 明乃
「なんで?」
クウェンサー・バーボタージュ
「図書館で君に話しかけなけりゃ、今頃勉強の続きが出来ただろうにさ。ま、そこはお互い様だけどな」
岬 明乃
「ふふ、そうかもね。でも気を付けてね?何があるか分からないから」
クウェンサー・バーボタージュ
「心配性だな、明乃は」
互いに笑い合ってると、不機嫌なクロちゃんが戻ってきました。
黒木 洋美
「あんまり人前でイチャつかないでくれるかしら?とても腹が立つのだけれど?」
岬 明乃
「ご、ごめんなさい」
クウェンサー・バーボタージュ
「やばっ、あれは怒ったら怖いタイプだっ。それじゃ明乃、またな」
岬 明乃
「うん、またね」
クウェンサー君とクロちゃんは機関室へと入っていきました。
その場に残された私は、他にクラスメイトがいないかどうか、探しに行きました――――
自然と足が向かったのは、食堂でした。
もうそろそろお昼の時間になるので、2人に何か差し入れを持って行こうと思ったからでしょう。
食堂へやって来ると、ミミちゃんがテーブルの書類と睨めっこしているのが見えました。
岬 明乃
「ミミちゃん、何の書類を書いてるの?」
等松 美海
「あっ、艦長。戻られてましたか」
岬 明乃
「ついさっきね」
等松 美海
「この書類は今、晴風に搭載されている火器のリストです。それに付随するように弾薬数や兵器稼働率を示した書類なんですけど」
岬 明乃
「あ、そっか。この町にいる間は、非常時を除いて晴風の出航は認められないんだっけ?」
等松 美海
「ええ。ですから停泊している最中に、外部から弾薬を抜き取られて外へ流出するのを抑えるために、こうして数と一致しているかの確認をしてました」
岬 明乃
「そうだったんだ………ねぇ、お腹すかない?良ければおにぎりでも作るけど?」
等松 美海
「えっ、あ、もうこんな時間………じゃあ、お言葉に甘えて良いですか?」
岬 明乃
「いいよ。具材は何が言い?」
等松 美海
「梅干しで」
コクリと頷くと、釜の中のご飯と具材を冷蔵庫から取り出しました。
適当な量を入れて、両手で握っていって――――
人数分を用意すると、早速、ミミちゃんに差し入れました。
岬 明乃
「はい、どうぞ。ミカンちゃん達のように上手く出来なかったけど、どうかな?」
等松 美海
「ありがとうございます、頂きます………おっ、美味しい!」
岬 明乃
「良かった~!これなら他の皆に出しても問題ないね。そうだ、他に誰が晴風に残ってるか知ってる?」
等松 美海
「私と黒木さん、八木さんとマッチ、後は宗谷さんを除いた艦橋組でしょうか?」
岬 明乃
「オッケー、ありがとう。よし、じゃあ後は――――」
八木 鶫
「助けてミミちゃん!」
新しくおにぎりを作ろうとした矢先、食堂に大きな声が響きます。
入り口には今にも泣きそうな顔で、ツグちゃんが駆け寄ってきます。
岬 明乃
「ど、どうしたのツグちゃん!?」
八木 鶫
「あ、艦長が居てくれてた!実はね、さっき日置さんから通信が入ってっ!」
等松 美海
「日置さんなら、今日は砲術科のメンバーと射撃訓練に行ってくるって言ってたような」
八木 鶫
「その射撃場でちょっとしたトラブルが起きて、大変な事に!」
岬 明乃
「た、大変な事って!?」
八木 鶫
「何でも、近くにロボットを研究する施設があって、そのロボットが暴走しちゃって、それで!!」
ロボットと聞いて、昨日の警備ロボットの姿を思い出されます。
私よりも大柄で、ライフルで武装していた彼らに襲われているのだとしたら――――
ピリリリリッ、ピリリリリッ
ポケットの中にある携帯電話が鳴り始めます。
画面を見てみると、先程登録したばかりのクウェンサー君の名前が表示されていました。
今はこっちの問題もあるけど、クウェンサー君のことも無視できない。
とりあえず電話に出ると、切羽詰まる彼の声が聞こえてきます。
クウェンサー・バーボタージュ
『明乃!大変なことが起きた!』
岬 明乃
「えっ!?クウェンサー君のところも!?」
私はとりあえず、スピーカーモードに切り替えて、皆に聞こえるようにします。
2人には彼の事なんて一切話してないけど、今は説明している余裕はありません。
彼は続けます。
クウェンサー・バーボタージュ
『今相棒から通信が入った!海上プラットフォームで射撃訓練をしている最中に、大型ロボットに攻撃を受けたとの事だ!!』
岬 明乃
「ロボット!?実はクラスの子達もロボットに襲われたってっ」
クウェンサー・バーボタージュ
『場所は聞いているか!?』
岬 明乃
「ツグちゃん!じゅんちゃん達が向かった射撃場ってどこか聞いてる!?」
八木 鶫
「えっと、確かこの町の近海にある海上プラットフォームだって」
クウェンサー・バーボタージュ
『くそっ、俺の相棒もそこに行ってるんだ!』
岬 明乃
「う、嘘!?」
等松 美海
「そ、そんな………!」
その事実を聞いて、私は大いに困惑した。
今日出会ったクウェンサー君。
そして別の場所で私の仲間が、彼の仲間と同じ場所で危機に瀕しているなんて。
こんな偶然、あり得るのでしょうか?
クウェンサー・バーボタージュ
『………明乃、相談がある』
岬 明乃
「奇遇だね。私もだよ」
自然と出た言葉は、全くためらいがない。
きっと、彼も同じ事を考えているんじゃないか?
今日、あの場所で出会ったのは、ただの偶然ではないと。
クウェンサー・バーボタージュ
『俺は相棒を助けるために、海上プラットフォームへ向かわなければならない』
岬 明乃
「私は大事な仲間を救うために、その場所へ行かなくちゃいけない」
私達は別に示し合わせたわけではない。
きっと、これは。
お互いの仲間を助けるために、手を取り合って。
でなければ、きっと。
どちらかが、戦場で倒れてしまうだろう。
クウェンサー・バーボタージュ
『明乃、相棒を助けるために君の力を貸してくれ』
岬 明乃
「私の仲間を救うために、クウェンサー君の力を私に貸してほしい!』
そうして。
そうして共闘していって、仲間を救う。
これこそが、彼と出会った意味なのだろう。
だからこそ、私は彼との言葉が重なった時、すごく嬉しかった。
クウェンサー/岬
『「この船でプラットフォームまで向かってくれ!!/あなたの持つ知識で、皆を助ける知恵を貸して!」』
如何でしょうか?
ヘヴィ・オブジェクト、良い作品ですよね?
この作品の2期を期待してますが、いつ頃になりそうですかね………
クウェンサーと岬は無事に仲間達を救うことは出来るのでしょうか?
次回からはバトル念写が出てくると思います。
次回更新は、5月頃を予定しております。
感想や意見などをお待ちしております。