High School Fleet ~封鎖された学園都市で~ 作:Dr.JD
Dr.JDです。
暑いですね!
つい先日、JAXAの一般公開を手伝いましたが、人が多くてもっと暑さを感じました。
さて、そんな汗がダラダラな中で、皆さんには一つ、謝罪しなければなりません。
サブタイトルの〝封鎖された学園都市で〝とありますが、実際にそのシナリオまで辿り着くのはもっと先の投稿となります。
そこまで辿り着くために、もうしばらくお待ちくださいませ。
それではどうぞ。
[観光名所-博物館]
2012年、7月18日、12;30;00
高校1年生 陽炎型航洋艦五番艦「晴風」 艦長
岬 明乃(みさき あけの)
日本国 茨城県沿岸都市 尾阿嵯(おあさ)町 中央区 第2中央航空博物館
蘭ちゃんの厚意により、町を案内してくれることになった。
この事を言ったらシロちゃんに『なにを呑気に遊んでるんですか』って言われそう。
だけど案内してくれる傍らで、ちゃんと調査した結果をすぐに発表できるように、ある程度の情報は入手しておこうかと思う。
そんなこんなで、お昼を済ませた後で今、航空博物館へと来ています。
今日でオープンされたばかりの博物館だったら、人だかりがかなり多かった。
半券を4人分買って、キレイな入り口に入ると、巨大な空間が広がっていた。
左右にはそれぞれ大きなプロペラが付いた飛行機が展示されていて、詳細な説明文が記載されているボードがあちこちにある。
私達が見た飛行機と比べるとすごく小さいけど、それでも驚いてしまう。
横に居たももちゃんがおおー、と声を漏らしながらシャッターを押した。
ここは幸いにも、写真撮影はオッケーらしい。
岬 明乃
「うわぁ、結構広い場所なんだね。あっ、天井になにか飾ってある!」
気になって上を見てみたら、ライトに照らされて浮かび上がる巨大な物体が宙に浮かんでいた。
目を細めてよく見ると、透明なワイヤーで吊されているようだった。
細い機体の正面にプロペラが付いている。
磯崎 蘭
「うーん、私もあれは分からないかなぁ。お兄ちゃんなら知ってると思うけど………」
隣の蘭ちゃんもうーんと首を傾げている。
なんというか、カワイイ。
山下 秀子
「お兄さんって、確かミリオタなんだっけ?」
磯崎 蘭
「はい。よく家でプラモデル買ってきては、部屋に飾っていて、まだ作ってない箱が山積みになっていて………」
??????
「あれは”零戦”って言って、日本海軍が製造した戦闘機ですよ」
談笑している中、背後から女性の声がした。
女性が私達の前に出てくると、説明してくれた。
??????
「皇紀2600年に製造されたことから、年代の00を付けて”零戦”と言う愛称で呼ばれています。ただ先の大戦でほとんどが戦闘により損失したため、世界中探しても状態の良い零戦はほとんどありません」
青木 百々
「へぇ、零戦って言うんすか、あれ。かっこいいっすね!」
??????
「そうでしょう!あっ、申し遅れました、私は当博物館の説明員をしております、中嶋悟子(なかじまさとこ)と言います。以後お見知りおきを」
深々と頭を下げる女性、ナカジマさんは微笑んだ。
小柄な人で、ショートカットが似合う人だった。
岬 明乃
「よろしくお願いします!」
せっかくなので、互いに自己紹介する。
これも何かの縁。
黙ってるままでは失礼だと感じた。
ここで中嶋さん、以下さとちゃん、が切り出した。
中嶋 悟子
「ところで、もしよかったら博物館の展示物に関する説明をしようと思うのですが、如何でしょうか?」
おぉ、この申し出は嬉しい。
ついでに資料が貰えるかどうか聞いてみよう。
磯崎 蘭
「あの、ボードの前に置いてある資料って貰ってもいいですか?」
中嶋 悟子
「大丈夫ですよ。あれは来場者に配布する物なので、問題ありませんよ。一部ずつ如何ですか?」
むぅ、また蘭ちゃんに先を越されたよ………。
別に競い合ってる訳じゃないんだけど。
青木 百々
「せっかくなので貰うっす!今度のコミケの題材にするっすよ!」
中嶋 悟子
「マンガを手掛けてるんでしたっけ?」
青木 百々
「そうっすよ。航空機に乗り込む少女達………くぅー!インスピレーションがはかどるっす!」
中嶋 悟子
「ならこちらをどうぞ。では早速ですが、当博物館についてご説明させて頂きます」
山下 秀子
「お願いします」
中嶋 悟子
「当博物館は本日オープンされたばかりの施設になります。展示内容は主に、航空機発祥の歴史から始まり、航空機の構造、仕組み、運用方法、体験スペース、航空機の展示のブースで構成されております」
!!
まさに私達が知りたい情報の全てが、この博物館にあった。
さとちゃんは説明を続ける。
中嶋 悟子
「我々が居るのは展示スペースとなります。実際に航空機に搭乗できます」
青木 百々
「はいはい!是非とも乗ってみたいっす!ナカジマさんが言ってた零戦に乗ってみたいっす!」
中嶋 悟子
「分かりました。整理券をお持ちしますのでお待ち下さい」
さとちゃんは一言残して、カウンターへと向かった。
展示スペースをグルリと見渡してみると、飛行機に乗りたがっている人は多い。
目の前には長蛇の列をなしていて、待ち時間があと1時間とあった。
中嶋 悟子
「お待たせしました。待ち時間があと1時間とありましたので、先に予約しておくことで、お時間になったらお呼びするようにしました」
岬 明乃
「えっ?そんなこと出来るんですか?」
中嶋 悟子
「はい。その間に他のブースへご案内するようにしておりますので、時間を無駄にすることはありませんよ」
これはすごい。
飛行機の説明を受けれるだけでなく、ちゃんと搭乗することも出来るなんて。
よし、帰ったらみんなに報告だ。
――――この後の説明で知った、この世界の航空機の歴史。
きっかけは、ライト兄弟が人類初の有人飛行に成功させたことから始まった。
そこからヨーロッパ各地で改良ラッシュが始まった。
航続距離の向上、機体の高速化、高高度上昇なども行われた。
日本でも航空機の導入が始まった。
その後は、第一次世界大戦が始まった。
余談だけど、この頃から巡洋艦から航空機の発艦が行われたらしい。
偵察任務を兼ねたこの運用は、後の航空母艦として一躍買った。
うーむ、後で航空母艦についても聞いてみよう。
この間、しゅうちゃんとももちゃんは始終、キラキラした目で巡洋艦から発艦した時の写真を見せて貰っていた。
それまでは第一次世界大戦までは、同じ歴史だった。
私達が暮らしている世界と。
航空機の技術の進歩は留まることを知らず、どんどん伸び続けた。
搭載量の向上、エンジン出力の高効率化、兵器の運用方法も然り。
だけどその中、日本は地盤沈下は起らず、代わりに世界大戦が勃発。
それが、第二次世界大戦。
戦死者数が数千万人も出た、歴史上最悪の大戦。
きっかけは、ナチス・ドイツから。
それからは航空機の運用方法も劇的に変わっていった。
日本は大型の航空母艦や戦艦を次々と建造し………アメリカへ宣戦布告した。
その後の話は………口に出したくなかった。
それを聞いた私は、言葉にし難い気持ちに捕らわれていった。
岬 明乃
「………ミーちゃんの、国だ」
その中で出てきた、懐かしい名前。
共に晴風で過ごした、大切な仲間の名前を。
………今頃、彼女はなにしてるのかな?元気に過ごしているかな?
さとちゃんの解説が終わり、次は機体の構造について話を聞くために、移動中のこと。
隣に歩いている蘭ちゃんが声をかけてくれた。
磯崎 蘭
「ミケちゃん、大丈夫?顔色が悪いよ?」
岬 明乃
「蘭ちゃん………うん、大丈夫だよ」
磯崎 蘭
「ショックだった?歴史を知って」
岬 明乃
「うん………たくさんの人が死んじゃって、居場所を失って、友達も居なくなっちゃって」
私達とは違う、世界。
これが、異世界から来た者が感じる気持ちなのか。
地盤沈下によって多くの陸地を無くした私達と。
戦争で多くの人々が犠牲になったこの子達。
私達と違う道を歩んだこの子達は、どんな気持ちなのだろう。
磯崎 蘭
「私もショックだった。初めて歴史の授業を受けて、大勢の人達が悲しんで。でも残った人達で日本を復興することが出来たの。だからと言っては変だけど、悲しまないで」
ギュッ
右手に感じる、暖かい手のひら。
私は今、蘭ちゃんと手を繋いでいるんだ。
岬 明乃
「蘭ちゃん………」
磯崎 蘭
「ほらほら、悲しまないでナカジマさんの話を聞こう?これからのたくさんの思い出作りに、ね?」
岬 明乃
「!!うん!」
磯崎 蘭
「ふふっ………」
ニッコリと微笑む蘭ちゃんを見て、私も自然と微笑んだ。
なんだろう、やっぱりこの子の傍に居ると、特になにもしてないのに安心する。
本当に、不思議な子。
そうだ、せっかく町を案内して貰ってるのに、私がこんなんじゃダメだ。
確かにショックだけど、受け止めて、みんなにちゃんと伝えないと………。
中嶋 悟子
「さてさて、お次はここ、航空機の構造について解説しますよ!」
青木 百々
「おぉー、細かい骨が張り巡らされてるんすね。あっ、こっちはエンジンの設計図っすか?」
いつの間にか別のブースに到着したみたいで、ももちゃんが相変わらずキラキラとした目をしていた。
このブースには、実際に作成された翼の骨組みと、図面らしきプレートが何枚も展示されている。
中嶋 悟子
「これ全てがそうですよ!すごいですよねぇ、ここまで資料を揃えてる博物館なんて、そうそうありませんよ」
磯崎 蘭
「確かに。お兄ちゃんに見せたら、絶対に喜ぶよ」
――――なんというか、ここから先の説明は省略したい。
いや、省略させて下さい。
ただでさえ聞いたことのない単語ばかりが頭を占めてるのに、文章化して説明しているからますます頭にはてなマークが増えちゃうよ………。
うぅ、こうなるなら美波さんをこっちのチームに入れればよかったっ!
磯崎 蘭
「大丈夫大丈夫。私さっきの説明が始まって1分でスマフォ弄ってたし」
うん、同じ事を考えてた子が傍に居て助かったよ。
私一人が理解できてないとか、恥ずかしいし。
中嶋 悟子
「まぁ、初回で理解できる人なんてそうそう居ませんよ。これも簡単に説明した資料あげるから、ね?」
山下 秀子
「すみません、何から何まで………」
中嶋 悟子
「これも仕事ですから。ところで、こんなに熱心に話しを聞くなんて、何か自由研究ですか?」
ドキリッ
いきなり確信のつく質問だったから、かなり驚いた。
どう答えようかと考えていたら、ももちゃんがスマフォを取り出して、ある画像を見せる。
その画像は、ここへ初めて来たときに見た、あの大きな飛行機だった。
青木 百々
「実は、この画像の飛行機を見たんですけど、見た途端にかっこいいって思ったから、ここへ足を運んだっすよ」
中嶋 悟子
「どれどれ………ああ、これはC-5Mスーパーギャラクシーですね。アメリカの超大型の輸送機ですよ。確か200トンの物資を運べる優れものです」
200トン………晴風に積める荷物の量は確か………。
中嶋 悟子
「ん?無線?ああ、どうやら私達の出番が回ってきたようですよ」
山下 秀子
「あ、それって飛行機に乗れる?」
中嶋 悟子
「ええ、早速向かいましょう」
いよいよ私達の出番が来たようだ。
実を言うと少しワクワクしている。
私達の世界になかった乗り物に、乗れるのだから。
私の顔の表情に出ていたのか、蘭ちゃんがニコニコしている。
なんだか可愛いなぁ、この子。
磯崎 蘭
「だってミケちゃん、すごくワクワクしてそうな顔してたもん。分かっちゃうよ」
岬 明乃
「えへへ」
さとちゃんの元へ行くと、ももちゃんとしゅうちゃんが展示されている飛行機をまじまじと見ていた。
航空機の上部に大きく国旗が掲げられていて、どの国の名産なのかすぐに分かるように工夫されていた。
日本の国旗があるブースへ向かった。
青木 百々
「やっぱり大きいっすねぇ………あれ、ここの展示スペースだけ空いてるっすね」
零戦の隣にある空のスペース。
ももちゃんの言葉通り、説明するためのボードが置いてあるだけで、虚しく柵が設けられているだけだった。
中嶋 悟子
「ああ、そこは零式水上偵察機が展示されてたんですが、実はオープンする数日前に盗まれてしまって」
山下 秀子
「えっ、盗まれたって?」
中嶋 悟子
「夜中に盗まれたらしいです。警察には届けを出そうって持ち出したんですけど………」
磯崎 蘭
「?しなかったんですか?」
中嶋 悟子
「警察なんて呼んだら、せっかくのオープンが延期になるから呼ぶなって口止めされたんです。あっ、でもこの子らに言っちゃった。ごめん、今の忘れて!」
両の手を合わせて深く頭を下げる。
まぁ、誰にも言うつもりなんてないし………。
青木 百々
「でもそれだけ大きいモノなら、盗むなんて苦労しそうっすよね。どうやって盗んだんだろう?」
中嶋 悟子
「………実はその零式水上偵察機は、メンテナンスが完了していて、実際に飛行させることが可能だったんです。関係者の一部は、飛行機を操縦して盗んだんじゃないかって」
磯崎 蘭
「でも70年前の飛行機ですよね?古くなって飛ばせないんじゃ」
中嶋 悟子
「確かに劣化した部品は多数あったけど、そこは現代技術で蘇らせて、互換性を保ちつつ出力を安定させられたんです。いやぁ、あれは楽しかったなぁ」
岬 明乃
「さとちゃんも関わったの?」
中嶋 悟子
「もちろん。実は私、高校で自動車部に所属してるんですけど、手伝って欲しいってオファーがあったくらい、自分で言うのはなんですけど腕はあったんですよ?」
ウィンクを決めながら袖を捲って拳を突き立てる。
おぉ、人は見かけによらないね。
………晴風の機関の調子が悪くなったら、マロンちゃん達と一緒に修理して貰うのもありかな?
でも出来るだけ外部の人間に私達の存在を知られちゃまずいよね。
うんうん、この考えはなしにしよう。
中嶋 悟子
「って、こんな呑気に話してる場合じゃなかった!さぁさぁお待ちかね!これから体験として航空機に試乗したいと思います!!」
岬 明乃
「待ってましたー!」
そう言って零戦の前までやって来た。
詳しい話しは省略するけど、初めての体験に結構興奮した。
私達の世界にはない乗り物に乗ったのだから、そりゃそうだろう。
ももちゃんもしゅうちゃんも、蘭ちゃんも結構盛り上がった。
うん、これでまたみんなに報告する内容が増えた!
うーん、航空機の念写が難しい(汗
まぁ細かい念写はこの後でじっくりと描きたいと思います。
それまでに何とか動きとか、操縦方法とか調べないと………。