仮面ライダーエグゼイド:クロスエンディング~スーパーゲーム大戦~ 作:GAP
※一部独自解釈の部分があります。
※檀正宗がリセットに失敗した世界線の話です。
シルフ領のプレイヤーに追い詰められ、街へと逃げ込んだ鏡飛彩はそこでシルフの少女、リーファに助けられる。自分の事情を受け入れ協力すると言ってくれたリーファと共に行動を始めようとする飛彩だったが、そこでシルフ領と青のレギオン、レオニーズの連合軍に攻撃されてしまう。多勢に無勢で追い詰められた飛彩の元に、己の拳にすべてをかける男たちが現れる。
【ヒーローズ・クロニクル 元ALOシルフ領 市街地】
ALOにてシルフの種族が治めていた土地に、怒号が飛び交っていた。
「そっち行ったぞ!」
「手分けして探せ!」
プレイヤーたちはそんな声を上げながら、街中を走り回っている。
その標的となっている人物、仮面ライダーブレイブこと鏡飛彩は人気のない路地裏に身を隠しながら辺りの様子をうかがっていた。その左腕からは血が流れ、そこを右手でおさえている。
飛彩はこの世界に飛ばされた後、仮面ライダー討伐のために編成されたシルフ領のプレイヤーたちに発見された。飛彩は何の罪もないプレイヤーたちを傷つけるのをためらい、話し合いにて解決を図ろうとしたが、自分たちの世界の危機を前にしたプレイヤーたちは聞く耳を持たず、そのまま猛攻を仕掛けてきたのである。止む無く飛彩も応戦したが、いかんせん数が多い上に元はただのゲームプレイヤーということで中々攻撃に移ることができず、致命傷を負いながらも一瞬のスキをついて戦場から離脱し、近くにあったこの街へと逃げ込んだのであった。
飛彩「くっ…見つかるのも時間の問題だな」
左腕をおさえながら飛彩が立ち上がり、場所を移動しようとすると、ふいに背後から声がかかる。
???「あなた、大丈夫?」
見つかったと思い込み、飛彩が身構えながら振り返ると、そこには緑の衣装に身を包んだポニーテールの少女が立っていた。
飛彩「やるしかないか…!」
飛彩はそう言って右手で白衣のポケットからガシャットを取り出そうとするが、手を離した左腕に激痛が走り、その場にうずくまる。
???「ちょっと、怪我してるじゃない!見せて!」
痛みに苦しむ飛彩を見て、少女が近づいてくるが、飛彩は警戒から距離を置こうとする。
飛彩「俺に近づくな!」
飛彩は少女に向かって叫ぶが、当の少女は飛彩の叫びなどお構いなしに近づき、怪我をした左腕の傷を見る。
???「…相当深い傷だね。ここじゃ治療できないから、あたしのルームまで行こう。回復用のポーションがある」
飛彩「何を勝手に…」
???「四の五の言わない!怪我人は黙ってついてくる!!」
反論しようとした飛彩を有無を言わさぬ一言で黙らせると、少女は飛彩の手を引いて路地を進み、自分のルームへと向かった。
3階にあるルームに入ると少女は飛彩をベッドに座らせ、棚の中をあさる。
「えーと、確かこの辺に…。あった!!」
少女はそう言いながら棚の奥から薬のビンを取り出し、飛彩の前に立つ。そして怪我をしている左腕の白衣をまくり上げてやると、薬を少しずつ傷にかける。
飛彩「ぐっ…!」
薬が傷口に染みる痛みを感じ、飛彩が苦悶の声を上げると少女が、
???「男の子なんだから我慢して。すぐに済むから」
と言ってたしなめ、傷口をハンカチのような布で丁寧に拭いていく。そして、最後に何かのスペルを唱えると、見る見るうちに飛彩の傷口がふさがり、完全に治った。
飛彩「これは一体…。あれだけの傷が、もう治るなんて…」
飛彩が驚いていると、少女は笑みを浮かべ、
???「ハイポーションと回復魔法の組み合わせだよ。うまく組み合わせれば、瀕死状態からでもHPを最大まで回復させられるんだ」
と答えた。どうやら、この世界における回復手段だったらしい。
飛彩「すまない、助かった。それで、君の名前は…?」
飛彩がそう言うと、少女は朗らかな声で答える。
リーファ「あたしの名前はリーファ。一応このシルフ領の人間で、ギルドにも所属してる。それで…」
そこまで言ったリーファの顔が、急に真剣なものになる。
リーファ「あなた、放送にあった仮面ライダー…よね?この街で、何をしていたの?」
リーファのその問いに、飛彩は問い返す。
飛彩「君も…俺を攻撃するのか?」
リーファ「攻撃するなら傷を治したりなんかしないわ。私は、あなたたちに何の目的があって、何をしようとしているのかを知りたい。だから答えて」
リーファのまっすぐな視線に、飛彩は自分がこの世界に来ることになった経緯を話す。
飛彩「俺は…仲間と一緒に元いた世界でバグスター…俺たちの敵と戦っていた。その最中、銀色のロボットが現れて空間に穴が開き、それに飲み込まれて気づいたらこの世界に来ていたんだ。それから、この土地にいたプレイヤーたちに攻撃され、何とかこの街に逃げ込んだ…」
リーファ「ということは、あなたたち自身にはこの世界に害をもたらそうっていう意思は無いのね?」
リーファの問いに、飛彩が勢いよく答える。
飛彩「そんな意思、あるわけがない!俺たちはドクターであり、仮面ライダーだ!人を救うことはあっても、傷つけるようなことはしない!」
飛彩のその答えを聞くと、リーファは肩の力を抜き、優しい瞳で口を開く。
リーファ「そう…。ならよかった。あなたも被害者だったっていうことね」
リーファの言葉を聞いて、飛彩が目を丸くする。
飛彩「信じて…くれるのか?」
リーファ「今のあなたの言葉が本心であることは、目と反応を見れば分かるわ。それに、運営だって名乗っている檀正宗は疑わしいと思ってたしね。だから、私はあなたを信じる」
リーファがそう言うと、飛彩の心は安堵に包まれる。
この街に逃げ込む前、自分を攻撃しようとするプレイヤーにも今と同じようなことを説明したが、一切聞く耳をもって貰えなかった。ゆえに、誰かに信じてもらえたということが、飛彩は純粋に嬉しかったのである。
飛彩「すまない…。大きな声を出してしまって」
飛彩が先ほど感情的に怒鳴ってしまったことを謝罪すると、
リーファ「謝らなきゃいけないのはこっちの方だわ。自分たちの世界のためとは言え、仲間たちがあなたを攻撃してしまって、ごめんなさい」
と言ってリーファ飛彩に頭を下げた。
飛彩「君たちも世界を守るためだったんだ。気にしないでくれ。それと、傷の手当て、ありがとう」
リーファ「当然のことだから気にしないで。それで、今更なんだけど、あなたの名前は?」
飛彩「鏡飛彩だ。変身した後は、仮面ライダーブレイブになる」
リーファ「それじゃ、鏡先生だね。お医者さんなんでしょ?」
飛彩「飛彩でいい。君のことは、リーファと呼べばいいか?」
リーファ「それでいいよ。改めてよろしくね、飛彩先生」
そう言って、リーファは飛彩に右手を差し出し、飛彩もそれを右手で握って握手を交わす。
飛彩「1つ、聞いてもいいか?」
リーファ「なに?」
リーファが怪訝な顔で飛彩に尋ねる。
飛彩「君は俺が仮面ライダーと分かっていながら、どうして助けるような真似をしたんだ?仲間を裏切ることになるんだぞ?」
飛彩の問いに、リーファは微笑みながら答える。
飛彩「あなたが悪い人には見えなかったから…かな?それにあたし、人を見かけとか噂で判断するのって嫌いなんだよね。他の人からすれば悪い人かもしれないけど、やっぱり実際に話してみないと分からないことってあるから。私は自分でしっかりと関わって、その人のことを判断したい」
リーファの優しい言葉を聞いて、飛彩の頭に今は亡き恋人、小姫の姿が浮かぶ。
彼女も勉強ばかりして他人寄せ付けず、周りから変人扱いされていた自分を、他の人学生と同様に色眼鏡で見ることなく、真摯に接してくれた。今のリーファの姿は、そんな彼女とどこか被る。
リーファ「ん?なんで笑ってるの?私、おかしなこと言った?」
リーファのその問いで、飛彩は無意識に自分が笑顔になっていたことを自覚し、フッと微笑んでから答える。
飛彩「いや、昔いた大切な人に似ているなと思って」
リーファ「それって、恋人さん?」
飛彩「ああ。今は遠いところにいて、会えていないがな」
飛彩はそう言うと、一瞬寂し気な表情を浮かべる。それを見たリーファは、
リーファ「元の世界で、また会えるといいね」
と優しい声をかけた。
そう、今は会えなくとも、バグスターウイルスの研究が続けば再び会うことはできる。その思いを胸に秘め、飛彩は決意と共に答えた。
飛彩「ああ。必ずまた会うさ」
リーファ「そのためにも、まずは元の世界に戻らなくちゃね。これからどうするの飛彩先生?」
リーファに問われると、飛彩は少し考えてから、
飛彩「まずは檀正宗のいる世界樹を目指す。おそらく俺の仲間たちも同じことを考えているだろうから、途中どこかで会えるかもしれない」
と答えた。それを聞いて、リーファが提案する。
リーファ「それじゃ私が案内してあげるよ。この世界のこと、何もわからないんでしょ?それに、私の仲間やお兄ちゃんも世界樹を目指しているだろうから、途中で会えたらきっと力になってくれるよ」
リーファの提案を聞いて、飛彩が難色を示す。
飛彩「俺と一緒にいたら、君に迷惑が…」
リーファ「迷惑だなんて思わないよ。私たちはもう仲間なんだから、遠慮なく頼って」
リーファそういった瞬間、突然ルームの扉がけ破られ、何人かの剣士が部屋に入ってくる。
リーファ「何よ、あなたたち!?」
怒りと共に聞くリーファに、剣士の中の1人が答える。
剣士「その男はこの世界の敵、仮面ライダーだ。今、この場で討ち果たす!」
そう言うと、剣士は飛彩に向かって斬りかかろうとする。その瞬間、リーファが飛彩の腕を引き、
リーファ「飛ぶからつかまってて!」
と言って窓を突き破って外へと脱出した。それと同時に、背中のピクシーの羽を羽ばたかせ、街中を滑空する。
飛彩「いいのか!?君の仲間と敵対することになるぞ!?」
リーファ「あなただって仲間だよ!」
飛彩の言葉にリーファが叫ぶと、下から攻撃魔法が飛来し、リーファの右の羽を撃ち抜く。
リーファ「あうっ!」
飛彩「リーファ!!」
飛彩の叫びを聞きながら、リーファは何とか飛行を続けようとするが、片方の羽だけでは2人の体重を支えることができずにゆっくりと下降していき、やがて街から出てすぐの平原へと不時着する。
飛彩「リーファ!無事か!?」
飛彩が声をかけると、
リーファ「大丈夫。大したダメージじゃないから…」
と言ってリーファが立ち上がる。そして、2人が街の方に目を向けると、シルフ領の精鋭たちと、青いボディに身を包んだデュエルアバターの軍団が近づいてくる。
そして2人の正面を囲むと、人込みを割ってシルフ領の領主、サクヤと青いデュエルアバター軍団、レオニーズの筆頭、ブルーナイトが前に出る。
サクヤ「リーファ…。その男を、今すぐこちらに渡してくれ。君を傷つけたくない」
サクヤの言葉に、リーファが真っ向から反論する。
リーファ「いやよ!この人に罪や害意はない!サクヤだって分かるでしょ?!」
リーファの言葉を聞くと、サクヤは沈痛な顔で答える。
サクヤ「確かにお前の言う通りかもしれない…。だけど、この世界を救うためには仮面ライダーを倒すしかないんだよ!」
サクヤの言葉に、ブルーナイトも同意する。
ブルーナイト「サクヤさんの言うとおりだ。そいつにどんな事情があるにせよ、倒さないことには世界は救われない。だから、おとなしく渡してくれないか?」
サクヤとブルーナイトの言葉に、なおも反論しようとするリーファだったが、飛彩が肩に手を置いてそれを止める。
飛彩「もういい。君は今すぐこの場から離れろ」
リーファ「それじゃ飛彩先生が!」
リーファは食い下がろうとするが、飛彩の優しい表情を浮かべて言葉に詰まる。
飛彩「君は俺の怪我を治療し、追われる立場で敵しかいない俺を信じると言ってくれた…。それだけで十分だ。だから、もういい」
リーファにそう声をかけ、飛彩はそのまま前に進み、リーファとサクヤの間に立つ。
飛彩「俺はもう、逃げも隠れもしない。だが、ゲームオーバーにはなれない!」
そう言うと、飛彩は決意の表情と共にガシャットを構え、起動させる。
『タドルクエスト!』
その音声が響いた後、
飛彩「術式レベル2!変身!」
と叫んで飛彩はゲーマドライバーにガシャットを装填し、仮面ライダーブレイブクエストゲーマーレベル2へと変身した。
ブレイブ「来い!」
ブレイブがそう言い放つと、ブルーナイトとサクヤが同時に号令する。
サクヤ&ブルーソード「かかれ!」
そして、仮面ライダーブレイブVSシルフ・レオニーズ連合軍による戦いが始まった。
ブレイブ「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ブレイブは気合を込めた叫びと共に向かってくる敵を、ガシャコンソードで斬っていく。しかし、相手は50人以上からなる大軍団であり、ブレイブはあらゆる方向から攻撃を受け、ダメージを蓄積していく。
ブレイブ「ならばこれで!」
ブレイブはそう言うと、ガシャコンソードをアイスモードにして地面に突き刺し、向かってきた敵の足元を凍らせる。
そして動きを止めると、今度はガシャコンソードをファイヤーモードに切り替え、
ブレイブ「であぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
という声と共にプレイヤーを切り裂いた。
サクヤ「怯むな!ダメージを負った者たちは後方で回復!温存していた者たちと交代しろ!」
サクヤのその指示と共に、後方から新たな敵がブレイブに向かって攻撃を仕掛ける。ブレイブは相手がゲームオーバーにならないよう、相手のHPをぎりぎりまで削って戦っているため、一度倒しても回復して復活してきてしまう。
ブレイブ「くっ…!」
途切れることのない敵の猛攻にブレイブが膝をつく。その隙を狙い、幾人かのプレイヤーがブレイブを攻撃しようとした瞬間、そのプレイヤーたちの体が神速の斬撃によって蹴散らされる。
ブレイブがそちらに目を合わせると、自分の後ろにいたはずのリーファが剣を構えながら敵とブレイブの間に割って入った。
ブレイブ「何をしているんだ!?はやく逃げろ!!」
ブレイブはリーファに向かって叫ぶが、リーファは敵を見据えたまま言い返す。
リーファ「さっきも言ったけど、私たちはもう仲間なんだよ!仲間を見捨てて逃げるなんてできない!それに、こんな事絶対に間違ってる!だから私も戦う!」
そう言うと、リーファは敵に向かっていき、剣を振るって応戦していく。
ブレイブ「こうなったら、やるしかないか!」
リーファの姿を見たブレイブもそう言って反撃を開始し、何とか体勢を持ち直す。しかし、敵は変わらず50人以上の大軍団。たった2人でどうなる数でもなく、次第に押されていく。
ブルーナイト「この辺で決めるか。コバルト、マンガン!」
ブルーナイトがそう言うと、左右に控えていた側近の侍型アバター、コバルトブレードとマンガンブレードが飛び出し、それぞれリーファとブレイブに向かっていく。やがてコバルトはブレイブを、マンガンはリーファに鋭い斬撃を浴びせる。
ブレイブ「くっ!」
ブレイブは間一髪でコバルトブレードの剣を受けるが、リーファは完全に隙をつかれたため攻撃をもろに食らって吹っ飛ばされ、
リーファ「あうぅっ!」
という呻きともに地面を転がった。
ブレイブ「リーファ!」
ブレイブがすぐさま助けに行こうとするが、
コバルト「行かせん!」
というコバルトの声と攻撃に阻まれ、リーファに近づけない。
リーファ「う、うう…」
地べたに這いつくばり、ダメージにあえぐリーファに、マンガンブレードの非情の一撃が下されようとしている。
マンガン「恨みはない。だが、邪魔をするならここで打ち取らせてもらう」
そう言って、マンガンは持っていた刀でリーファを突く。その切っ先を見て自分の最期を悟ったリーファはとっさに目を閉じるが、いつまで待ってもその一撃は来ない。
不思議に思ったリーファがゆっくりと目を開けると、自分の目の前に長髪のパーマがかかった男が立ち、マンガンブレードの刃を指で押さえていた。
???「たった2人…。しかも女相手にこのやり方はねぇだろ」
男はそう言うと、手首をひねって指で抑え込んでいたマンガンブレードの刃の先をペキっとへし折る。
一瞬驚愕するマンガンブレードだったがすぐに気を取り直し、男を斬ろうとするが、それよりも早く男が一歩踏み込み、刀の間合いを潰したためマンガンブレードはすぐに距離をとる。
目の前で起きていることにリーファが戸惑っていると、不意に後ろから声がかかる。
???「大丈夫ですか!?酷いケガですね!おーい、英せんせ~い!」
リーファが振り返ると、そこにはスーツを着た冴えない中年サラリーマンが立っており、白衣を着た不健康そうな男がこちらへ近づいてきていた。
英「フフッ。もう大丈夫だ。先ほど調合したこの薬…もといアイテムを使えば、君の体力は元通り」
英と呼ばれた男はそう言いながら懐からビンを取り出し、それをリーファに振りかける。すると、リーファのHPがすぐさま全回復した。
リーファ「この薬、すごい…!」
英「そうだろう?察するに、ここはゲームの世界だ。ならば医療知識のほかに、『ゲームの鉄人はじめちゃん』と言われた経験も役に立つ」
???「さすが英先生!君、もう大丈夫ですよ!戦いはあの、王馬さんに任せておけばいいですから」
中年サラリーマンがそう言うと、長髪の男、王馬が声をかける。
王馬「その女を連れて下がってな、ヤマシタカズオ。こいつは引かないタイプだ」
王馬が構えると、マンガンブレードが問う。
マンガン「名を…聞いておこう」
王馬「十鬼蛇王馬だ。来ないんなら、こっちから行くぜ」
その言葉と同時に、王馬は一気に距離を詰め、マンガンに素早いラッシュを叩きこむ。
マンガン「くっ!なめるな!」
マンガンはそれを捌くと、王馬に突きを繰り出すが、王馬はそれを左腕で絡めとる。
王馬「二虎流水天ノ型…水草取り」
王馬はそうつぶやいたあと、刀ごとマンガンの体を引き寄せ、残った右腕で拳を固め、強烈な正拳突きをマンガンの胸に叩きこんだ。
そのあまりの威力に、刀を手放し、
マンガン「がはぁ!!!」
という声と共に吹っ飛ばされるマンガンを見送りながら、王馬は言う。
王馬「二虎流金剛ノ型鉄砕…。お前じゃ相手にならねぇよ。出直してきな」
たった一発で、勝敗は決した。
一方その頃、ブレイブはコバルトブレード相手に苦戦を強いられていた。相手の振るう剣が速く、手数が多いので防戦一方となっている。
やがて、ブレイブのガシャコンソードが弾き飛ばされ、丸腰の状態となる。
ブレイブ「くっ!」
コバルト「これで終わりだ!」
コバルトがそう言って剣を振り下ろそうとした瞬間、横から不意打ちで何者かの蹴りが入る。
その蹴りに吹っ飛ばされながらも、コバルトは体勢を整え、
コバルト「誰だ!」
と叫び、蹴りの飛んできた方を見る。そこには禍々しい気を放つ、短髪の男が満面の笑みを浮かべて立っていた。
???「オイオイ…ずいぶんと面白れぇことしてるじゃねぇか。俺も混ぜろよ」
男は言いながら、コバルトへと近づいていく。
コバルト「下郎が!名を名乗れ!」
コバルトの言葉に、男は嘲るように笑いながら答える。
雷庵「呉雷庵。今からてめぇをぶちのめす男の名だ。よく覚えておきな」
そう言って、雷庵はコバルトに襲い掛かり、王馬同様ラッシュを仕掛けた。
ブレイブ「何なんだ、あいつは…」
ブレイブが呆気に取られていると、後ろからドレッドヘアーの巨漢が近づき、ブレイブを立たせる。
???「大丈夫かい、アンタ?」
巨漢に声を掛けられ、ブレイブが答える。
ブレイブ「ああ。あなたは?」
ブレイブが尋ねると、巨漢はニッと笑いながら答える。
関林「俺は関林ジュン。プロレスラーだ。さっきのやつは呉雷庵。まぁ喧嘩が大好きな魔人だな」
ブレイブ「魔人!?」
ブレイブが驚きながら雷庵の方を見ると、自分があれだけ苦戦したコバルトを追い詰めている。
雷庵「そらそらどうしたぁ!そんなもんかよ!?」
雷庵が小バカにしたようにコバルトに声をかけると、コバルトは
コバルト「甘く見るな!」
と言って雷庵の胸元を切り裂く。
コバルト「下郎ごときに遅れをとるほど、私の腕は落ちぶれちゃいない!」
コバルトが雷庵に向かって言い放つ。しかし、これがコバルトの敗因となった。
雷庵「…殺す!!」
そういった瞬間、雷庵の体に変化が起こる。肌が赤褐色になり、全身の欠陥が浮かび上がった。
雷庵の一族に伝わる秘伝、「外し」。体のリミッターを外し、人間の持つ力を100%発揮する技術である。
コバルト「な…!?」
コバルトが呆気にとられた瞬間、突撃してきた雷庵の右ストレートが顔面に決まり、そこから拳や蹴りが凄まじい速度で叩き込まれていく。やがて木偶人形のようになったコバルトの首をつかむと、雷庵は思い切り地面にたたきつけ、その後ブルーナイトに向かって投げつけた。
雷庵「図に乗るなよ三下が!!」
そう言うと、雷庵は外しを解除し、そのまま他のプレイヤーたちを蹂躙し始めた。
関林「終わったようだな」
雷庵の戦いを見てそう言ってから、関林はブレイブの肩に手を置いて声をかける。
関林「まぁここからは俺たちに任せな。他にも、仲間が来てる」
その言葉に辺りを見渡すと、雷庵や王馬、関林の他にもあちこちで見知らぬ連中がシルフとレオニーズの連合軍と戦っている。
ガオラン「2人相手にこのような多人数でかかるとは…恥を知れ」
ガオランはそう言うと、周囲にいたプレイヤーたちに得意技である神速のジャブ、フラッシュを浴びせる。
大久保「喧嘩とイジメの区別もつかへん奴は俺が違いを教えたる!」
大久保はそう言ってシルフのプレイヤーの1人をヘッドロックで捕まえ、その顔面にパンチを叩きこんでいく。
その他にも、若槻猛や今井コスモ、鎧塚サーパイン、御雷零などそうそうたる猛者が至る所で戦闘を繰り広げ、あれだけ多かった敵を圧倒していた。
その光景に、誰よりも驚いていたのは、この土地の領主、サクヤだった。50人以上いた己の精鋭たちが、今や半分以下に減っている。このまま戦えば、負けるのは自分たちの方であろう。
リーファ「サクヤ…」
サクヤがその声のした方を見ると、リーファが不安げな表情で立っていた。
リーファ「もうやめよう。こんな戦い、意味ないよ。あなただって、分かってるでしょ?」
サクヤ「し、しかし…」
なおも意固地になるサクヤに、ブルーナイトが声をかける。
ブルーナイト「引き際だぜ、サクヤさん。これ以上は被害がでかい」
サクヤ「ブルーナイト…」
ブルーナイト「元から気乗りしなかった討伐戦だ。この子を信じてやめてもいい」
ブルーナイトの言葉にサクヤは少し考えると、
サクヤ「分かった…」
と短く返事をした。
ブルーナイト「よし。それなら…」
ブルーナイトはそう言うと、ひときわ大きな声でこの場で戦うすべての者たちに声をかける。
ブルーナイト「シルフ・レオニーズ並びにそれと交戦している諸君!俺たちの負けだ!ここは撤退させてもらうぜ!」
ブルーナイトの声に、雷庵が真っ先に反応する。
雷庵「今更何ふざけてんだ?殺すぞてめぇ!」
雷庵はそう言いながらブルーナイトに詰め寄るが、ブルーナイトは軽い感じで返す。
ブルーナイト「こっちはアンタらに側近2人も戦闘不能にされてんだ。このあたりで勘弁してくれ。この通りだ」
ブルーナイトがそう言って頭を下げると、雷庵は舌打ちをしてから、
雷庵「興がそがれたぜ。好きにしな」
と言った。
ブルーナイト「…おい、みんな撤収だ」
ブルーナイトがそう言うと、残っていたレオニーズのメンバーはその場を後にする。
サクヤ「あんたたちも先に引き上げな。私はこの人たちと話がある」
サクヤは側近にそう命令して部下たちを引き上げさせ、その場にはブレイブ、リーファ、サクヤと乱入してきた男たちが残った。
サクヤ「まずは謝らせてくれ。運営に言われたとはいえ、何の罪もないアンタを襲ってしまった。すまない」
そう言って、サクヤがブレイブに頭を下げる。すると、ブレイブは変身を解き、
ブレイブ「俺が同じ立場でもそうしただろう。だから、気にする必要はない。頭を上げてくれ」
とサクヤに声をかけた。
リーファ「こっちの件はこれで片が付いたとして、後はあなたたちね」
リーファがそう言うと、その言葉を受けて山下が口を開く。
山下「いやー、と言われましても、我々もいまいち状況をつかみ切れてなくて…。あ、申し遅れました。私の名前は山下和夫。隣にいる十鬼蛇王馬さんの雇用主です」
それを皮切りに、男たちが自己紹介を始める。
王馬「十鬼蛇王馬だ。気が付いたらこいつと一緒にここにきてた」
雷庵「呉雷庵だ。俺も変な煙みたいなもんを浴びて、気づいたらここにいた」
関林「関林ジュンだ。俺も雷庵と同じく変な煙を浴びて気づいたらここにいたんだよ」
英「英はじめ。これでも医者だ。私も関林君と同じく変な煙を浴びてここにいる」
ガオラン「ガオラン・ウォンサワット。右に同じくだ」
若槻「若槻猛だ。俺は控室で仮眠をとって、目が覚めたらこの世界だった。いまだに夢だと思ってるよ」
コスモ「俺も若槻さんと同じかな。あ、名前は今井コスモ。よろしくね」
御雷「御雷零だ。精神統一が終わって目を開けたらこの世界にいた。そうとしか言えない」
御雷がそう言うと、最後にひときわ大きな声の男が雄叫びのごとく自己紹介をする。
サーパイン「俺はァァァァァァ!!鎧塚サーパインだァァァァァァァァァァァァァァァ!!何が起きたか知らねえが!!最ッ高に燃えるぜェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!!!」
サーパインがそう言うと、リーファが苦笑いしながら口を開く。
リーファ「ずいぶん元気な人なんだね…」
そのリーファを見て、ガオランが声をかける。
ガオラン「すまないな少女よ。こいつは生来うるさい奴でな。この場は勘弁してほしい」
リーファ「ああ、大丈夫ですよ。あと、あたしの名前はリーファっていうので、気軽に呼んでください」
ガオラン「承知した、リーファ殿」
そのやり取りを見て、飛彩も続いて自己紹介をする。
飛彩「自己紹介が遅れたな。鏡飛彩だ。仮面ライダーブレイブに変身している。この世界では敵のような扱いだが、俺に敵意はない」
飛彩が自己紹介をした後、サクヤが改めて口を開く。
サクヤ「今後のことだが、我々シルフ領は仮面ライダーを全面的にバックアップする。あんたを信じるよ、リーファ」
サクヤの言葉に、リーファの表情が明るくなる。
リーファ「本当に!?」
サクヤ「ああ。今後のことは、むやみに傷つけてしまったお詫びと新たな客人の歓迎会も兼ねてうちの城で行おう。食事も用意してあるよ」
王馬「そいつはいい。ちょうど腹が減ってたんだ。行こうぜ、ヤマシタカズオ」
山下「そうですね!我々も、この世界のことを教えてもらわなきゃいけませんから、皆さんで行きましょう!」
山下がそう締めると、その場にいた全員がサクヤの居城に向かって歩き始める。
こうして、この電脳の異世界に、闘技者と呼ばれる新たな戦士たちが参戦したのであった。