仮面ライダーエグゼイド:クロスエンディング~スーパーゲーム大戦~ 作:GAP
※一部独自解釈の部分があります。
※檀正宗がリセットに失敗した世界線の話です。
ALO、ブレインバースト、そして聖都と別々の世界で起こる怪事件。
その元凶は、ALO世界にある世界樹にいた。
ここから、異世界から来た者たちによる新たな戦乱が巻き起こされる
【VRMMOゲーム ALO 世界樹上部 玉座の間:夜】
荘厳な雰囲気の広間、その一番奥に位置する玉座に、銀色のスーツを着た男が座っていた。男は右手に「風林火山」と書かれた赤いガシャットを持ち、それを満足げに眺めている。
それはかつて、こことは違う別の世界で最悪のデスゲーム「仮面ライダークロニクル」を支配し、その頂点に君臨して多くの人を苦しめた仮面ライダークロノスこと檀正宗であった。
元の世界で正宗は、自分に歯向かうCRの仮面ライダーたちと激しい戦いを繰り広げ、さらに自分の息子である檀黎斗の開発した「ハイパームテキガシャット」の力を得たエグゼイドの前に敗れ去り、「私が世界の、ルールだぁぁぁぁぁぁ!」という絶叫と共に消滅した…はずだった。
消滅するかと思われた瞬間、正宗の中にあったバグスターウイルスと正宗自身の持つ執念が反応を起こし、人間もバグスターも超えた新たなる存在へと進化した。
そのことにより、正宗は次元を飛び越える力を手に入れ、やがてある男の導きによりこの仮想世界ALOに召喚され、無人であった玉座に君臨したのである。そして、今度こそ自分が唯一絶対のルールとなる世界を作るため、行動を起こしたのだった。
正宗はガシャットを持った右手をおろし、ゆっくりと目を閉じる。
そして脳裏に、これから始まる最大のゲームと、それを支配する自分の姿を思い浮かべ、恍惚の笑みを漏らした。
そんな正宗に、正面からさわやかな声がかかる。
???「ずいぶんと嬉しそうですね」
正宗が目を開け、正面を見るとそこには黒い祭服の上から赤い独特のマントを羽織った、白髪の青年が立っていた。
青年「何を、考えていたのですか?」
青年の問いに、正宗は喜びにあふれた声で答える。
正宗「これから始まる新しい世界についてだよ。私こそを絶対の秩序とする世界…。まさに理想郷だ!そこならば、君の悲願である『全ての人々の救済』も可能だよ。シロウ神父」
正宗の言葉に、青年ことシロウは微笑を浮かべる。
シロウも正宗と同じく別の世界の人間で、今正宗の口にした「全ての人々の救済」という願いのために聖杯大戦と呼ばれる魔術師と英霊たちによる戦いに身を投じたが、あと一歩というところでその戦いに敗れ、悲願を果たせずに散っていった。
しかし、それでもなお己の悲願を捨てきれなかったシロウは、その強い思いによって次元の壁を越え、正宗をこの世界に導いた男の手によってALOの世界に召喚されたのだった。
そしてシロウは、その男によって引き合わされた正宗を含む3人と手を組み、新たなる世界で今度こそ自分の願いを果たそうとしているのである。
シロウ「こちらの準備はすでに整っています。あとは、あの2人の帰りを待つだけです。とはいっても、うち1人は人とは呼べないものですが」
正宗「これから生まれる新たな世界では、そのような価値観は些末なものだよシロウ神父。彼らもまた、私のルールの一部となるのだから」
シロウ「そうでしたね。以後気を付けますよ」
シロウがそう言うと、広間の一角で突如ポリゴン型の粒子が集まり、人の形になっていく。
やがて完成したそれの正体は、無制限中立フィールドでスカーレット・レインとブラッド・レパードを襲った謎のアバターだった。
そのアバターに、正宗は満足そうに声をかける。
正宗「戻ったか、ラブマシーン」
正宗の言葉に、謎のアバターことラブマシーンは「キキキ…」という不気味な笑い声で答える。
シロウ「もう1人も戻ったみたいですよ」
シロウがそう言った瞬間、ラブマシーンが出てきたところとは逆の空間に穴が開き、そこからエグゼイドたちを襲ったウルトロンが姿を現した。
ウルトロンとラブマシーンも正宗、シロウと同じく別の世界から来た存在だが、2人と違って導かれたのではなく、あの男の手によって復元された存在だった。
それゆえに自我が薄く、2人の協力者というよりは部下のような扱いとなっている。
ウルトロン「奴らはすべてこの世界に連れてきた。これでいつでも始められるぞ」
ウルトロンの言葉を聞いて、正宗は満足そうにうなずく。
そんな正宗を見てから、シロウは手を宙にかざした。すると、そこに赤い光が集まっていき、大きめの杯の形になっていく。
疑似聖杯。シロウのいた世界で魔術師と英霊たちが奪い合った、あらゆる願いを叶える願望器のレプリカで、シロウの魔術知識に正宗やウルトロンのいた世界などの技術を加えて作られた代物だった。
杯を完全に具現化させると、シロウはそれを抱えて隅に置いてあった小さいテーブルを広間の中央に置き、その上にさらに杯を置く。
その様子を見て、正宗が玉座から腰を上げ、そのテーブルの前にやってくると、ラブマシーンとウルトロンもそれに続き、全員がテーブルの前に集まった。
そして、シロウが3人に声をかける。
シロウ「それでは、この聖杯の中に集めていたものを入れてください」
その言葉を受け、ラブマシーンが背後に曼荼羅のようなパネルを展開し、そこからいくつかの光球を聖杯の中へ入れていく。
それは、スカーレット・レインやブラッド・レパードのように、無制限中立フィールドでラブマシーンに敗れた者たちの末路だった。
それに続いて、正宗が懐からガシャット取り出す。先日の夜、自身で手に入れた風林火山ガシャットのほかに、SAOサバイバーを中心として、ALO世界で腕利きのプレイヤー、もしくはギルドのガシャットがある。
そして正宗はそれらをまとめて聖杯の中に入れた。
シロウ「ではウルトロン、お願いします」
シロウはそういうと自分の右腕を聖杯の上にかざし、ウルトロンもそれに続く。
すると、ウルトロンの手のひらから電子的な光が、シロウの手のひらからは赤い禍々しい光がそれぞれ聖杯の中に降り注がれていく。
その光によって聖杯が満たされるとシロウが、
シロウ「仕上げです」
と言ってかざした右手に力を込めた。
すると広間全体が、いや、世界そのものが揺れ始める。
その様子を見て、正宗は邪悪な笑みを顔いっぱいに浮かべた…。
【ALO 始まりの街 ギルドホーム】
洋風のバーカウンターのような部屋に、7人のプレイヤーが集まっていた。
キリト、アスナ、シリカ、リズ、シノン、エギル、リーファ。いつもALOで共に冒険を続けてきたメンバーである。
いつもならここに、風林火山のリーダーであるクラインも加わっているはずだが、先日のクエスト中に起きたあることによって、今はログインしていなかった。
そのこともあり、全員重い表情になっている。
そんな雰囲気の中で、エギルが口を開く。
エギル「しかし、意識不明とはな…」
エギルの言葉に、みんなの顔が一層硬くなる。
クラインは先日、自分が率いているギルド「風林火山」のメンバーと現在ALOで行われている特別クエストに参加していたが、そこで起こった謎の緊急クエストに巻き込まれた。
その結果、メンバーともどもゲームオーバー寸前まで追い込まれたあとなぜか強制ログアウトさせられ、現実世界の肉体は意識不明の重体となってしまったのだった。
キリト「クラインだけじゃなく、この前のクエストに参加していたプレイヤーのうち、SAOサバイバーや名の通ってるプレイヤーはほとんどこの被害にあっている。原因は不明で、目撃者もいないことからゲーム内で何が起こったかもわからないらしい」
そう言ったキリトに対して、シノンが冷静に質問する
シノン「でも、クエストは運営が催してるものなんだから、すぐに原因は判明するんじゃない?」
キリト「いや、それがそうでもないらしい。俺も気になって菊岡さんに連絡してみたんだが、どうやら1週間くらい前、ALOの管理サーバーに何者かが侵入し、すべてのシステムを掌握してしまったらしいんだ。運営元のユーミルのシステム班が総出で奪還を試みているが、進捗は思わしくないらしい」
キリトの発言を聞いて、リズが口を開く。
リズ「ってことはALOは外からハッキングを受けて、そのまま乗っ取られちゃったってこと!?」
キリト「乗っ取られたのは確かだが、菊岡さんによればハッキングとは違っていて、どちらかと言えばコンピューターウイルスに近いものらしい。ただ、これまで確認されているどのコンピューターウイルスとも違う、かなり異質なタイプみたいだけどな」
キリトの発言に、アスナが続く。
アスナ「ユイちゃんの話だと、ウイルスというか、人工知能にも近いみたいだけど…」
ユイ「その通りです、ママ」
アスナのそう言った途端。部屋の中に小さな妖精の姿をした少女、ユイが現れる。
彼女はSAOを作り出した茅場晶彦の手によって生み出されたトップダウン型AIで、SAO時代に森で倒れているところをキリトとアスナによって助けられ、それ以来2人をパパ、ママと呼んで本当の親子のように接している。
現在はALOにてナビゲートピクシーとして存在し、キリトやアスナの助けとなっている。
ユイ「メインコントロールルームには入れませんでしたが、データの一部に触れることはできました。その時に、意思というか思念というか、そう言ったものを感じることができました」
リーファ「つまり、ユイちゃんと似たようなAIかそれに似たようなものがこのALOを乗っ取っているってことなのかな?」
ユイ「そこまでは私にも分かりませんが、普通のウイルスやハッカーによる仕業でないことは確かです」
ユイのその言葉を聞いて、これまで押し黙っていたシリカが小さく声をあげる。
シリカ「私、怖いです…。また、SAOの、あの時みたいなことになっちゃうんじゃないかって思っちゃって…」
シリカの放ったその言葉に、その場にいた全員が黙り込む。
ここに集まったメンバーはシノンとリーファを除いて皆、SAOサバイバーであり、ゲームオーバー=死というデスゲームを体験した者たちだった。
それゆえに、VRMMOゲームでのこういった事故、事件に関しての恐怖はほかのプレイヤーたちよりも身に染みている。
口にこそ出さないが、全員がシリカと同じ不安を抱えていた。
そんな雰囲気を吹き飛ばすように、エギルがわざと明るく言う。
エギル「まぁ、これから運営の発表っていうのがあるんだ。例の事件についても、何かいい話があるだろうさ」
リズ「そ、そうだよね!もしかしたらもう解決してるのかもしれないし!」
キリト「そうだな。内容はわからないがまず間違いなく例の事件の話になる。話はそれを聞いてからだ」
キリトがそう言った瞬間、突如ギルドホームを巨大な揺れが襲った。
アスナ「な、何これ!」
ユイ「皆さん、気を付けてください!ALOのシステムが、改変されています!」
キリト「改変だって!?」
エギル「とにかく、全員何かに掴まれ!じゃないと…」
エギルが叫んだと同時に、ギルドホームを含め、その場にいた全員が、赤い光に包まれた。
【現実世界 有田ハルユキのマンション リビング】
重苦しい空気が、室内を支配していた。
現在、部屋には家主であるハルユキの他に、黒雪姫、倉嶋チユリ、黛タクム、倉崎楓子、四ノ宮謡、のネガ・ネビュラスのメンバーと、所属レギオンは違うが楓子の弟子である日下部輪が集まっている。
バーストアウトした後、ハルユキたちはすぐさまスカーレット・レインこと上月ユニコとブラッド・レパードこと掛居美早に連絡を取るがつながらず、美早が店主を勤める洋菓子店に向かった。そして、店の奥にあるVIPルームで意識を失っている2人を発見し、救急車で病院に搬送したのである。
黒雪姫もハルユキも途中まで付き添い、精密検査の結果を待ったが、2人とも意識不明の重体であり、しばらくは経過観察のため面会謝絶となってしまうため渋々病院から帰ってきたのだった。
その後、事態を重く見た黒雪姫の発案でネガ・ネビュラスのメンバーを集め、ハルユキの自宅で会合を開くことになり、黒雪姫の口からすべての事情が説明されたのだった。
その説明を聞き、全員がショックを受ける。
ここにいる全員が、レインとレパードとは同盟を結んでいるレギオンのメンバーというだけではなく、プライベートでも遊んだりするほど仲だったので無理もないことだった。
そんな空気の中、タクムが静かに口を開く。
タクム「何者なんでしょう、そのアバター。マスターやタクの話を聞く限り、バーストリンカーとは思えない」
黒雪姫「動きも、他のリンカーにはない変則的なものがあった。もしかしたら、我々の知らない新たな神獣級エネミーなのかもしれないな」
その言葉に、ハルユキが驚愕する。
ハル「先輩でも知らないエネミーなんて存在するんですか!?」
ハルユキの言葉に、楓子が諭すように言う。
楓子「鴉さん、いくら私やサッちゃんでも、加速世界のすべてを網羅しているわけではないんですよ。それに、不定期ではあるけれどアップデートだってなされています。その際に、新種のエネミーが現れることだってあるんです」
楓子の言葉に続いて、謡がニューロリンカーのテキスト画面に文字を打ち込む。
彼女は幼いころにあったある事件がきっかけで、言葉を話すことができなくなってしまったため、会話するときはこのような手段をとっているのであった。
謡『確かに、その可能性はあります。というか、私たちのような古参のリンカーが知らないとなると、新種のエネミーとみるのが一番自然じゃないでしょうか?』
タクム「問題は、さらわれた、というより取り込まれたレインたちをどうやって取り戻すか、ですね」
タクムの言葉に、その場にいる全員の顔が引き締まる。
チユリ「やっぱり、バトルに勝つしかないんじゃないかな?リンカーでもエネミーでもまずは闘ってみないことにはわからないよ」
黒雪姫「闘うにしても、作戦がいる。何といっても奴は私のヴォーパル・ストライクをかき消したほどの実力を持っているからな。生半な攻撃では倒せないだろう」
黒雪姫がそういうと、それまで黙っていた輪がか細い声を上げる。
輪「そんな相手に、私たちで勝つことができるんでしょうか…?」
弟子の弱気な発言を聞いて、師匠である楓子がたしなめるように言う。
楓子「輪、そんな弱気はだめですよ。レパードもレインも私たちの大事な友人です。大丈夫、不安なら私がまた鍛えてあげますから」
楓子の言葉を聞いて、輪が若干おびえながら居住まいを正す。
輪「すみません師匠。私も、できる限り頑張ります」
楓子「よろしい!」
その様子を見てから、ハルユキが黒雪姫に尋ねる。
ハル「先輩、具体的にはここからどうするんですか?」
ハルユキの問いに、黒雪姫は少し考えたあと、
黒雪姫「まずは情報を集めよう。あのアバターは通常バトルフィールドにも現れていたようだからな。そこから、奴の足取りを追うことにしよう」
黒雪姫の言葉に、ハルユキが返事をしようとした途端、バチバチィッ!という音と共に、視界にあるものがいきなり青く変わっていく。
それは、ブレインバーストにアクセスする「バースト・リンク」の時に起こる現象と同じだった。
しかし、アクセスには自分の口でバースト・リンクのコマンドを発声する必要があり、今のような状態で勝手に発動することなどあり得ない。
ハルユキ「こ、これって一体⁈」
ハルユキが戸惑いながら周りを見渡すと、他のメンバーも自分と同様に、いきなりブレイン・バーストへのアクセスが始まっているようであった。
黒雪姫「みんな、気を付けろ!原因は不明だが、強制的に加速世界にアクセスされるぞ!」
黒雪姫の叫びを聞いて、全員がそっと体を身構える。
その瞬間、ハルユキたちの視界は赤い光に覆われ、加速世界ではない、まったく別の世界に飛ばされたのであった。