この素晴らしき世界に砂ぼうずが   作:たきざわかい

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ハート様キャッチプリキュア

「カエルの討伐も無事クリアできたわねっ」

 

 

「ああ、そうだな、これもカンタのおかげだっ」

 

「……つうかよ、俺一人にばっかり狩りをさせるんじゃねえゾッ!」

 

怒鳴りながらカンタが、ガスマスクを放り投げ、アクアの背後に回り込むと、そのヒップの狭間に顔を埋めた。

 

 

一拍子置いて、ギャーっ、と空に響き渡るアクアの悲鳴。

 

 

「ちょ、ちょっとっ、何すんのよっ」

 

「うるせいっ、報酬三等分じゃ、割に合わねえんだよっ、だったらその分、身体で楽しませてもらうぜっっ」

 

 

アクアがカンタの後頭部を、かなり本気でぶん殴ってやめるように言う。

 

だが、そんなことでやめるような砂ぼうずではない。

 

 

 

「女神である私に向かってセクハラするなんてっ、その内に天罰が下るわよっ」

 

「おもしれえじゃねえかっ、出来るもんならやってみろっ、おらっ、おらっ、つうか、アクア、お前、さっきウンコしてきただろ、ちゃんとケツ拭いてんのかよっ、

何なら、俺が舐めて綺麗にしてやってもいいぞっ」

 

 

アクアの尻に鼻先を埋めて、砂ぼうずが犬のようにスーハー、スーハーと嗅ぎまくる。

 

 

「あ、あれは拭く紙が足りなくて……って、何言わせるのよっ、変態カンタっ」

 

 

「自分で言ってりゃ、世話ねえぞっ、このケツ臭女神がっ、こんなに良いケツしやがってっ、ヒャッハーっ、丁度いいやっ、この場で俺のガキを孕ませてやるぜっ」

 

 

いきなりアクアを草原に押し倒すカンタ、この男は正真正銘のケダモノであり、まごう事なきクズ野郎である。

 

アクアのスカートを無理やりまくりあげ、鼻息を荒げる砂ぼうず。

 

 

その血走った両眼は、獲物を前にした変質者の目そのものだ。

 

 

そんな二人を黙って眺めていたカズマだったが、流石にやばいと思ったのか、カンタをアクアから引っペがしにかかる。

 

 

 

 

放置しておくと、マジでカンタがアクアをレイプしかねないからだ。

 

 

 

「何をしやがるんだっ、カズマっ」

 

「いいから落ち着けっ、カンタっ」

 

 

泣き喚くアクア、暴れるカンタ、ふたりを落ち着かせようとするカズマ、まさに無秩序状態だ。

 

「イタダキマスッ!!」

 

そのままズボンを脱ぎ捨てたカンタが、アクアにルパンダイビングを決めた。

 

 

 

だが、その寸前にアクアの放った前蹴りが、砂ぼうずのタマタマにクリーンヒットッ!

 

 

「ひでぶっ!」

 

 

苦痛に顔を歪め、悶絶したカンタは、アクアの顔面目掛けて壮絶ななゲロをぶちまけた。

 

 

虹色に輝くゲロのシャワー。

 

 

ジャイアント・トードの鳴き声が、遠くから聞こえる青空の下、全ては混沌としていた。

 

 

SSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSS

 

 

冒険者ギルドへと帰投する三人。

 

アクアは、カンタのゲロまみれになったままの状態だった。

 

子供のようにピーピー泣いているアクア、流石に哀れだと思ったカズマが、濡れたタオルで女神を拭ってやる。

 

 

「悪かったって、アクア。公衆浴場で身体洗ったら、今晩は夕食おごってやっから」

 

カンタもカズマと一緒にアクアをなだめてやる。

 

 

「うう、グスン……ゲロまみれ、女神である私は汚れちゃったのよ……」

 

 

 

ギルドにいる冒険者達の奇異の視線が、三人に鋭く突き刺さった。

 

 

女冒険者達が、ヒソヒソと三人を指さしながら、話し合っている。

 

 

 

その時、カウンターにいた冒険者の一人が、三人の前にのそりと進み出た。

 

 

「くくく、ボインの美女をゲロまみれにするとは、流石は砂ぼうずと言っておこうかい」

 

 

挑発するようにカンタに声を掛ける雨蜘蛛──この男もまた、関東大砂漠からやってきた転生者の一人だ。

 

取立てのためなら手段を選ばず、一切合切、容赦なく債務者の魂まで持っていくことから、

関東大砂漠の住人達からは、死神取立て人と恐れられた男である。

 

 

そんな雨蜘蛛は、両刀でサディストという変態であり、また、短小でもある。

 

 

「うっせい、あっちいけ、アマグモっ」

 

 

アマグモを追い払おうとする砂ぼうず、同族嫌悪という奴で、狡猾でこすい手口を用いるアマグモと砂ぼうずは、互いを嫌っていた。

 

 

「ふ、丸くなったな、砂ぼうず。そんなお荷物抱えてジャイアント・トード狩りとはな。俺は先週、魔王軍の上位悪魔を討伐して四千万エリス稼いだぞ」

 

 

勝ち誇ったように高笑いを発しながら、ギルドを後にするアマグモ、その後ろ姿を睨みながら、砂ぼうずは呟いた。

 

 

「あの野郎、いつか必ずぶっ殺してやる……」

 

 

ちなみにこの言葉は綾でも何でもない。

 

文字通りの意味だ。

 

なんせ、関東大砂漠では人間の命ほど軽いものはない。

 

それこそ一山なんぼの世界だ。

 

 

 

無銭飲食は裁判なしで即効で処刑、二束三文で人身は売買される。

 

それが関東大砂漠だ。

 

 

バイオレンスジャックも真っ青の世紀末フォールアウト世界、倫理観?何それ、食えるの?

 

 

そんなロクデナシとヒトデナシしかいないのも、関東大砂漠の特徴である。

 

 

SSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSS

 

 

翌日、一足先にギルドに来ていた砂ぼうずが、ジャイアント・トードの討伐依頼を確保していると、眼帯をつけたウィッチハットの少女が声をかけてきた。

 

「我が名はめぐみんっ!紅魔族随一の魔法の使い手にして、爆裂魔法を操りし者っ!」

 

その名乗りに対し、カンタが応じる。

 

 

「俺の名はカンタっ、関東大砂漠随一の便利屋にして、妖怪砂ぼうずの異名を誇る凄腕のハンターっ」

 

 

「おおっ!」

 

カンタの返しにめぐみんが、驚きと歓喜の混ざった声を上げた。

 

「それで魔法使いのお嬢さん、俺に何か用かい?」

 

 

イケメンぽいポーズを取りながら尋ねる砂ぼうず、だが、全くと言って良いほど様になっていない。

 

 

なんせ、カンタはチビだ。

 

それこそ、カズマよりも身長が低い。

 

 

 

「私とパーティーを組みませんか。ちなみに私は上級職のアークウィザードですっ!」

 

 

「ほほう、それでアークウィザードが、なんでまた駆け出し冒険者の仕事を受けようっていう、俺と組みたがるんだ?」

 

 

アークウィザードなら、ジャイアント・トードくらいはソロでも狩れる。

 

 

というか、他のもっと金になりそうなモンスターでもソロで倒せるはずだ。

 

あるいは他の上級者パーティーに入るという事もできるだろう。

 

 

 

 

それが、初心者クエストを受けようという冒険者と組みたがるのは、何か理由や事情があるはずだ。

 

 

 

「うう、理由ですか……」

 

返答に詰まって、俯くめぐみん。

 

 

そんなめぐみんを砂ぼうずは、疑いの眼差しでじっと睨みつけた。

 

そしてすぐに鼻の下を伸ばし始めた。

 

 

めぐみんが美少女だったからだ。

 

(オッパイはないけど、まだ成長期っぽいし、これはこれでアリだな……ぐふふふ)

 

 

「ふ、なにか事情があるようだけど、、冒険者は相身互いさ。いいよ、僕達と組もうじゃないかっ(ぐふふふ、俺様のハーレム要員になれっ)」

 

 

「本当ですかっ、ありがとうございますっ!」

 

 

表情を明るくするめぐみん、そんな魔法使いの少女の髪の毛を気づかれないように嗅ぐ砂ぼうず。

 

 

「それで他の駆け出しじゃなくて、俺に声をかけたのは?」

 

 

「身長から見て、私の同世代かなと思ったんですっ」

 

 

めぐみんのその屈託ない言葉に、砂ぼうずのハート様は痛く傷ついた。

 

 

それから少しして、砂ぼうずとめぐみんは、アクアとカズマと合流し、ジャイアント・トードの討伐に向かった。


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