ゴクウブラックが第四次聖杯戦争に喚ばれてみた (タイトル命名 ゴワス様) 作:dayz
ランサーのマスターであるケイネス・エルメロイ・アーチボルトは今不機嫌の極みにあった。
現在の場所は彼の拠点として借りきった、冬木ハイアットホテルの最上階のスイートルームである。
貴族でもあり資産家でもあるケイネスは、金に物を言わせて冬木一番の最高級ホテルの最上家全てを借りきって、そこを自分の魔術工房として改造したのだ。
既にこのホテルの最上階はケイネスが運び込んで設置した様々な魔術的なトラップによって、異界とでも言うべき空間になっている。並みの魔術師ならばエレベーターを降りてこの部屋に踏み込むまで10回は死ぬことになるだろう。
例えサーヴァントであっても倒せる―――とまではいかないが、無傷で抜けることは不可能。そう思っていたはずなのだが―――。
「ランサー。出てこい」
「はっ。ここに」
ケイネスは自分のサーヴァントを呼び出した。打てば響くような声と共に、霊体化して控えていたランサーがケイネスの前に膝を付いた状態で実体化する。
ケイネスは現れたランサーをじっと見つめた。この工房の防衛網は、このランサーを基準にして作った部分もある。ランサーが手こずるレベルの罠だから他のサーヴァントにも通用するだろうと考えていたのだが、あの倉庫街の戦いを見てからはとてもそうは思えなくなった。
空中を自在に駆けまわり、高ランクの攻撃魔術に匹敵する魔力弾を乱射するセイバーに、無数の宝具を惜しみなく射出するアーチャー。
特に前者の魔力弾の乱射には隠れて現場を観察していたケイネスも、危うく巻き込まれて死ぬ所だったため恐怖は大きい。
それに比べて自分のランサーはどうだ?
最初のセイバーとの戦いでは一方的に追いやられ逃げ回っていただけ。ランサーの自慢である速度も空を駆けるセイバーや巨大戦車を駆るライダーに及びそうにない。火力に至ってもアーチャーには及ばない。
もしかして自分は弱いサーヴァントを引いてしまったのか?
勿論客観的に見ればケイネスの考えは的外れだ。まずランサーも英霊の本領である宝具を使ってないし、そもそも運用の仕方もセイバーやアーチャー、ライダーとは全く違う。
倉庫街の戦いではランサーの戦闘スタイルがうまく噛み合わなかっただけで、運用の仕方によってランサーも、あのトップサーヴァント達に一矢報いるだけのスペックは充分持っているのだ。
だが人は派手に見えるものに目を惹かれるもの。英霊同士の戦いに詳しくない―――というか英霊同士の戦いに詳しい魔術師などそうはいないのだが―――ケイネスが、そういった考えを持つのは仕方のないことだった。
そんな疑惑の目でランサーを見るケイネスだったが、本人が目の前にいるので直接尋ねてみることにしたのだ。
「ランサーよ。お前に聞きたいことがある。先の戦いの無様さはなんだ?私はお前をそれなりの力を持つ英霊と思って喚び出したのだが、それは私の勘違いだったのか?」
尋ねるというよりは叱責するというような物言いだが、これがケイネス・エルメロイ・アーチボルトという男なのだ。生まれついての貴族であり、魔術の天才。敗北などただの一度も経験したことのない男が、今初めての敗北を意識してしまった為、無意識の内に口調が責めるような口調になった。
「恐れながら我が主よ。私はセイバーに手こずりはしましたが、遅れをとるとは思っておりませぬ。次の戦いで宝具の開張を許して頂ければ、必ずや奴の御首を取り、主に捧げて見せましょう」
宝具を使えば遅れは取らぬ―――。ランサーとしてはそう言いたかったが、ケイネスはそれを別の意味に受け取ってしまった。実際彼の宝具の一つである
「それはつまりこういうことか?私の采配が悪かったからお前は実力を発揮できずに、無様を晒したと。そう言いたいわけか?」
「いえ!そのようなことは!初戦に置いて自分の宝具と真名を隠すのは当然のこと。そこに不満など持ちようがありません!」
マスターの不機嫌さに気がついたランサーは慌てて言い繕うが、ケイネスの不機嫌な顔はそのままだった。更にケイネスがランサーの事を責めるべく口を開こうとしたその時、寝室から別の声が飛んだ。
「いい加減にしなさい、ロード・エルメロイ」
澄んだ女の声だった。
いつの間にか寝室に続くドアの前に一人の女性が立っている。
燃えるような赤毛と氷のような冷たい眼差しを持つ、その美女はケイネス・エルメロイ・アーチボルトがこの戦争に参戦するにあたって呼び寄せた彼の婚約者であるソラウ・ヌァザレ・ソフィアリだった。
「貴方のそれはただの八つ当たりよ。仮にもロードを名乗るなら自分の使い魔に当たるよりもこれから先ランサーをどう使うかを考えなさい」
「いや……これはだな、ソラウ。私はランサーの戦力を確認していただけで、八つ当たりをしていたというわけでは……」
惚れた弱みか、ケイネスはこの婚約者に弱い。たちまちしどろもどろになってしまったが、それを見てランサーが助け舟を出した。
「ソラウ様。先刻不甲斐なき戦いを見せた私を叱責するのは、我が主として当然の努め。どうかそのことで我が主を責めるのは止めにしていただきたい」
主を庇う忠義の騎士のようなその発言に対してむしろケイネスは顔をしかめたが、ソラウに対しては覿面の効果があった。
「ご、ごめんなさいランサー。私は彼を責めているのではなくて、貴方の事を―――」
当のランサーにピシャリと言われたソラウもまた先程のケイネスの様子を繰り返すかのようにしどろもどろになってしまった。これもまた惚れた弱みである。
なんとこの三人はそれぞれが別の相手に好意を寄せてすれ違うという、たった三人しかいないのに極めて複雑な人間関係をしているのだ。
人間三人いれば派閥ができるというが、これはもっと面倒な何かであった。
「おい、ランサー。我が未来の妻に対する暴言は許さんぞ」
「い、いえ、我が主よ。私は決してそのようなことは―――」
「だからランサーを責めるのはやめなさいケイネス。貴方はもっと自分のサーヴァントに対して責任感を持つべきよ。彼を使いこなせないというなら、私が変わってあげましょうか?」
「やれやれ。強大な敵を前に一致団結どころか仲間割れか。本当に人間というのは度し難い生き物だ」
喧々囂々となったホテルの一室。三人はそのまま延々と口喧嘩だか議論だか言い訳を続けていそうだったが、それを断ち切ったのは更なる部外者の声だった。
その言葉に最初に気がついたのはランサーだった。彼は反射的にマスター達の盾になるような位置に飛び移り、武装を実体化させる。そんなランサーの行動に驚いたマスター達もランサーの目線を追ってようやく何者かが、部屋の中に侵入してることに気がついた。
その男はリビングの最高級ソファに座って、まるで自分の部屋のようにこちらに背を向けてくつろいでいた。その手にはこのホテルに備え付けされていたと思わしき紅茶のカップがある。
(一体いつの間に……?)
余りの出来事にランサーは全身が総毛立つのを抑えきることが出来なかった。単に侵入されただけならまだしも、紅茶を入れるほど部屋内を自由に動かれるなど、最早自害を申し渡されても仕方がないレベルの失態だ。
2人の魔術師もこの異常事態についていけないのか呆然とした様子になっている。無理もない。絶対の自信を持って築き上げた魔術工房を物音一つ立てずにすり抜けてくるなど、考えもしなかったに違いあるまい。
そんなこの部屋の主人達に気にかけた様子もなく、ソファに座った侵入者は紅茶のカップを掲げてみせた。
「なかなか悪くない味だ。水の質が悪いのが残念だがな」
そう言って侵入者―――セイバーはランサーに向かって笑ってみせた。
「貴様! 一体どうやってここに入った!」
最初に叫んだのはこの部屋の主であるケイネスだった。彼の瞳孔は未だ信じられぬものでも見たかのように開ききっている。それも当然。
単に正面から突破してきたのなら話はわかる。ここに居るのがセイバーではなく気配遮断と隠密に優れたアサシンなら納得もしよう。
だが―――よりにもよって正面からの戦闘を得意とするセイバーが一切の警報も鳴らさずに、平然と工房の奥に侵入してくるなど、とても信じられることではない。というよりは信じたくはない。
もしそんなことが可能ならば―――セイバーはいつでも敵対者の工房に音もなく侵入して、工房の主をその圧倒的な戦闘力で蹂躙できるということになる。
それができるとしたら理不尽どころの話ではない。最早悪夢そのものだ。誰もセイバーに勝つことは出来はしない。だからせめて、自分も見落としていたような工房の穴や、何からのトリックがあってほしいとケイネスは心から願った。
だが現実は非情だった。
「ランサーの魔力を魔力感知で辿り、瞬間移動でこの部屋に転移してきた。ただそれだけのことだ」
余りにも理不尽な返答がもたらされる。口に出すと簡単だが、そもそもサーヴァントがサーヴァントの気配や魔力を探知するのは、余程距離が近づいていないとできない。精々が数百メートル程度。このホテルはあの倉庫街からは数キロ離れており、そう簡単に探知できるものではない。
そして何よりも―――
「……瞬間移動だと?」
ランサーは頬を流れる汗を意識しながら呟いた。
「そうだ。それほど珍しいものではあるまい?」
その言葉と共にソファの上のセイバーが消えた。
「……っ!奴は何処へ!?」
反射的に槍を構えて全周囲を警戒するが、もはやセイバーは何処にもいない。現れた時同様、唐突に消えてしまった。
5秒経ち、10秒経って、息をつこうとしたその瞬間、ガチャリという音とともにキッチンへと続く扉からセイバーが現れる。
その手には先程とは別のティーカップが握られていた。
「そして取り込み中のようだったので、こうやって勝手にキッチンを拝借して紅茶を頂いた訳だ。……ふむ、これは面白い味だな。オレンジペコというのか」
そう言いながら手にした紅茶を一口味わう。
「そんな……。セイバーなのに空間転移の魔術を自由に使えるというの?」
ソラウが怯えながら呻く。
彼女の顔に浮かんだ恐怖に満足したのかセイバーは鷹揚に頷いた。
「当然だ。空間転移など神である私からすれば容易いこと。セイバーというクラスのみで計れるほどこの私は浅くはない。……さて、ランサーのマスターはそちらの男だな?お前に我がマスターから贈り物があるそうだ」
「贈り物だと……?冥土の土産とでも言うつもりか?」
「しばし待て。あと五秒程で始まる。……三秒前、二秒前、一秒前」
突然始まったカウントダウンにランサー達は警戒を強める。しかしセイバーは彼らの警戒など知ったことではないとばかりに笑いながら最後の数字を口にした。
「……ゼロだ」
その言葉と同時にビルが揺れた。
「なんだこれは……?地震か!?……いや、このホテルが傾いている?!」
「御明察だ、ランサーのマスター。私のマスターがこのビルに爆弾を仕掛けた。それが今爆発したのだ。なかなかの見世物だ」
「貴様正気か?ホテルごと崩すなど、そんなこと監査役が許すわけが――」
「私の行動に貴様ら人間風情の許可など不要だ」
全く話が通じない。ケイネスはセイバーとの会話を諦めると崩れ落ちるホテルから脱出するべくランサーに指示を飛ばした。
「くそっランサー!私とソラウを連れてここから離脱しろ!」
「おっとそうはさせん。折角の私のマスターからの贈り物だ。じっくりと味わうがいい」
そう言うとセイバーは黒い魔力炎を放出、一足でランサーの元に飛び込んで素手での格闘戦を挑んできた。
傾くホテルの中で2人の超戦士が激突し、破壊の暴風雨が吹き荒れる。
「貴様セイバー!お前がここに来たのは俺が我が主を助けるのを阻止するためかっ!」
「その通り。喜べ。お前の大事なマスターが目の前で瓦礫に潰されて、挽き肉になる所を特等席で見物させてやろう!」
「おのれ―――!」
ランサーは怒り狂いセイバーを跳ね除けて主の元に向かおうとするも、セイバー相手ではそれも敵わない。落下するホテルの中で2人は戦い続け―――そして数秒後にはホテルは完全に倒壊して瓦礫の山と化した。
1000名近いホテルの宿泊客や従業員達を道連れにして。
◆ ◆
「それでここまでやってたのにランサーのマスターには逃げられて、宝具による手傷も負わされたわけか」
切嗣がとったビジネスホテルの一室でセイバーと顔を付きあわせていた。
確実に敵を仕留める為なら、わざわざ避難警報など出す必要がない。ホテルの宿泊客には世界平和の為の尊い礎になってもらう。
そうセイバーに強行に主張されてはなまじ合理性がある分、切嗣としてもその案を飲むしかなかったのだ。しかしそこまでしたというのにランサーのマスター、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトはランサーの手も借りず、自前の魔術を使って見事に逃げ延びてしまった。つまり巻き添えになったホテルの宿泊客は完全な無駄死にだ。
この場合、あの状況でも生き延びたケイネス・エルメロイ・アーチボルトを褒め称えるべきか、それともこれだけ有利な状況でも取り逃がした自分達の無能を謗るべきか。切嗣にはどうすればいいのかわからなかった。
おまけに倒壊するホテルの戦いにおいてはセイバーはランサーの宝具―――
文字通り自らの生命線であるマスターを背後に抱えた彼は防御を捨てて、鬼神となって襲いかかってきたのだ。その猛攻に対しては流石のセイバーも無傷では居られず手傷を負うハメになったのだ。
代償としてセイバーもランサーに対して消滅寸前の大ダメージを与えたが、あちらにはケイネスの回復魔術がある。おそらくランサーは2日もあれば全快するだろう。対してこちらの手傷は大したことがないものの、ランサーを倒さない限り決して治ることのない傷だ。
このような不覚をとった理由として、先日の戦いでランサーは回復不能な魔槍、
もしセイバーがこの宝具の存在を知っていたら接近戦を挑まずに、光弾で相手の動きを封殺する戦術をとっていたはずだ。
そういった意味ではセイバーのミスというよりは、ランサーの作戦勝ちというべき所が大きい。幸いなことにそう大きな傷ではないものの、未だにティーカップを持つ彼の腕からはじくじくと血が流れている他、微かに腕の腱を傷付けられた為、右腕の動きが僅かに鈍っている。
だというのに手傷を追い、獲物を取り逃がした張本人であるセイバーは、引け目や罪悪感など何一つ感じていないかのように、このホテルの一室にあった据え置きのティーパックの紅茶をリラックスしながら飲んでいる。
「やれやれ。ゴキブリの生き汚さを少々侮っていたようだ。……ふん。安物の紅茶だなこれは。ないよりはマシだが」
「セイバー。真面目に聞いてくれ。僕は君の意見に従ったにも関わらず結果はこの有り様だ。今夜僕達は意味もなくホテルを一般市民ごと爆破しただけのテロリストになってしまった。幸い魔術を一切使わなかったのと、教会の連中もアサシンのマスターを匿うというルール違反のせいで表立って奴らもこちらを非難できないだろうが、次に同じことをすればこうもいかない」
「いちいちこれしきのことで気にするな、我がマスターよ。こんなことで気に病んでいたらこれから先、身が持たんぞ。我々の目的は聖杯による世界平和……。この程度の犠牲など犠牲ですらない。それに得るものならあっただろう?アサシンとそのマスターがまだ健在だとわかったのは大きな収穫だ。そしてアサシンの宝具の詳細と、奴らが私の気配感知を掻い潜る術を持っているとわかったのも大きい」
そう。あの後、ホテルを見張っていた切嗣の手駒である久宇舞弥が、アサシンのマスターである言峰綺礼によって襲撃をかけられたのだ。
連絡によってそれを知った切嗣は付近にいたセイバーを現場に急行させた所、セイバーは無数のアサシンの襲撃を受ける羽目になった。
襲ってきたアサシンの群れをその圧倒的な戦闘力で叩き潰したものの、そのアサシン達は最初から囮だったようで、いつの間にか彼らはマスターを回収して姿を消していた。
しかもアサシンは隠形に徹してる時は、セイバーの気配感知でも探ることが出来ない。
この一件でわかったことは死んだと思われていたアサシンはまだ生きているということ。そしてアサシンは自分を無数に分割できる宝具を持っているということ。そして最後にアサシンの気配遮断のスキルは、セイバーの魔力探知でも見破ることができないということだ。
セイバーの圧倒的な戦闘力は誰もが知る所だ。だからこそマスターを狙ってくるのは当然の話であり、暗殺のサーヴァントであるアサシンの存在を察知できたというのは大きい。
手傷を負ったこともあり、しばらくはセイバーはマスターの暗殺を防ぐため切嗣とアイリに付きっきりになることだろう。
それでも彼らの拠点は場所が割れているため、襲撃をかけようと思えばかけられるのだが、それは切嗣がストップをかけた。
何しろ彼らの拠点はこの戦争の監査役を務める聖堂教会なのだ。あそこをクレーターにしたらこれから先、セイバーが大暴れしてもそれを隠蔽する者が居なくなってしまう。いやそれどころか、教会から埋葬機関辺りが派遣されて来て、やらなくていい死闘を繰り広げることになるかもしれない。
「私としては、ゴミが何人こようとまとめて始末するだけだが」
「セイバー。全盛期のお前なら確かに世界中の戦力をかき集めても、お前の敵にはならないだろう。だが今のお前は一介のサーヴァントに過ぎないということを忘れるな。お前は確かに飛び抜けた強さを持つがそれはサーヴァントの枠内の強さだ。聖堂教会や魔術協会の最高戦力なら、場合によってはサーヴァントをも打倒できる戦力があるかもしれない。唯でさえ君は魔力消費が激しいのに、そんな奴らと戦って無駄な消耗をするのは僕は御免だ」
今までセイバーの振る舞いを黙認していた切嗣だが、流石に今回ばかりはしっかりとセイバーに釘を刺すことにした。彼のやり方に付き合い続ければ、セイバーより先に自分がギブアップすることになる。もし断られたら令呪を使ってでも説得するつもりだった。
流石にセイバーも自分がしくじったという負い目があったのか、肩をすくめると切嗣の意見を受け入れた。
「まあ、人間の犠牲はともかく、無駄に戦力を消耗するというのも確かに馬鹿馬鹿しい。今回の一件で死んだ人間共の魂を喰らって多少魔力を回復できたしな。しばらくはマスターのやり方に付き合ってやろう。だが次にランサーの居所が知れたら、いの一番で潰しに行くぞ。奴ら魔力封じの礼装か何かで私の魔力感知をうまく避けている。だが逃しはせん。私の高貴なるこの肉体にかすり傷とはいえ傷を付けた報いを受けて貰わなければな……」
自分のあずかり知らぬ所で自分のサーヴァントが魂食いをしていたという恐ろしい事実をサラリと聞かされたが、切嗣はなんとかそれを表情に出すのを堪えきった。
おそらく抗議しても無駄―――それどころか、セイバーから不甲斐ない同志と見なされたら文字通り命の危機だ。
不快感を飲み込んで何でもないように話を続ける。
「そう言ってくれると助かるよ。ランサーの方も僕の方で探しておく。それにしてもこのままじゃ戦争が終わるより先に僕の胃袋がやられそうだ……」
ようやくセイバーをコントロールできそうだとわかって、切嗣は安堵の溜息をついた。
そして無意識の内に令呪を触る。自分の理想の為の多少の犠牲は止むを得ないが、こいつは危険すぎる。勝ち残ったら即座に令呪を使って自害させなければ世界平和どころではない。
既に切嗣はこの短い付き合いでセイバーにとっての理想郷が、とんでもなく禍々しいものだと感づいていた。
だがそれでもこのセイバーは最強なのだ。切嗣の願いを叶えるために切り捨てることはできない。
つけっぱなしになっているビジネスホテルのTVには崩壊したホテルの現場が映しだされていて、そこからは巻き込まれた一般市民達の悲鳴と怒号が絶え間なくスピーカーを通じて流れ、切嗣の精神をヤスリのようにすり減らしたが、セイバーはそれを気にした様子もなく紅茶を味わっていた。
ダイジェスト風味なので書きたい場面だけ書いていくスタイル
というかなるべくIQ下がるようなSSにするつもりだったのに、ゴクウブラックが邪悪すぎてとんだ糞鬱展開になって来た(原作再現感)。