彼にとって、あの事件は頭から消すことができない事実。
そして最後まで見ていた彼もまた、頭から消すことはできなかった。

少量のギャグ要素入り。

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過ち

プロローグ

 

「…うっ…」

ふと起きると、目の前が真っ暗だった。何事かと思ったが、どうやら目隠しをされているようだ。

「なんだ…?」

とりあえず目隠しを外そうとするが、腕が動かない。それどころか、上半身が全く動かないことに気がついた。

「くっ!」

必死に暴れるが、ジャラジャラと金属が擦れるような音が耳につくだけだった。おそらく、鎖のようなもので縛られてしまっているのだろう。

「クックッ…お目覚めかね」

その時、乾いた笑いと共に誰かの足音がした。

「誰だ!!」

威嚇するように大声を出すと、相手はもう一度笑った。

「無様だな、ウルトラマンゼロ。しかし残念だ。もう少し良いリアクションを期待していたんだがな。恐怖におののき泣きわめく…とか」

「顔も見せられねぇてめーなんかに、誰が怯えるんだよ」

皮肉を言うと、何か鋭いものが首もとに当たった。

「減らず口はそこまでにしておいたほうがいい。今の貴様は、非力も同然なんだからな」

そんな脅しに対してゼロは、フンとバカにしたように笑う。その態度に、相手は少しイラついたようだった。

「…で、俺をどうするつもりだ」

その言葉を聞いた相手はゼロの首もとから鋭いものを離すと、フフンと自慢げに鼻で笑った。

「お前をいい子ちゃんにしてから、お家に帰してやるんだよ」

「…ん? 何? なんつった?」

言っている意味が分からず、思わず聞き返した。

「だ…だから。いい子にして家に帰すんだよ」

「分かりやすく言えよ」

「えっ」

「全く訳が分かんねーから、もっと分かりやすく言えって」

冷静にツッコまれて恥ずかしくなったのか、声がどんどん小さくなっていく。

「…あの…えっと、だから…」

「うん」

「つまりな…その…お前を洗脳して、返却するってことで…」

「どこにだよ」

威圧的な彼の態度に怖じ気ついたのか、相手は消え入りそうな声を絞り出した。

「…お前の基地に」

「なんだと!?」

ゼロの声色が変わった。それを聞いた相手は、少し傲慢さを取り戻す。

「は…はっはっは! どうだ、参ったか! 貴様は貴様自身の手で、仲間を殺すのだ!」

「最低な野郎だな、てめぇ」

心の底から、怒りが込み上げてくる。拳を握り、敵がいるであろう方向を向いた。

「簡単に洗脳できると思ってんじゃねーぞ」

「ククク…その威勢のよさ、どこまで続くかな」

相手は何かを取りだしてスイッチを押すと、ゼロに近付けていく。

「これは、私が開発した小型洗脳装置だ。さっそく貴様に試してやる…そして操ることにより、私はあのべリアルよりも格上になれるのだ…!!」

嘲るような笑い声が、その場に響いた。

 

 

 

「あーあ、つっかれた」

グレンファイヤーは基地の入り口から入ってくると、ゆっくりと地面に降り立った。

「よいしょ、っとぉ! おーい、誰かいねーのかー」

基地内に呼び掛けると、奥の方からミラーナイトが歩いてきた。肩には、ピグモンを乗せている。

「おかえりなさい、グレン」

「あれ、焼き鳥ブラザーズはいねぇのかよ」

キョロキョロと見渡すが、ゴツいあの二人はどこにも姿が見えなかった。

「はい。兄弟で惑星エスメラルダのパトロールに向かいましたよ」

「あ、そう。お前は?」

「彼と留守番です」

ピグモンは返事をするように鳴くと、手を振ってきた。

「そうかそうか、お留守番ね。そりゃご苦労さまなこって」

手を振り返すと、ふう、とため息をついてその場に座り込む。

「で、ゼロちゃんはまだ帰らないわけ?」

「ええ、まだ姿を見ていません」

「ったく…」

やれやれと肩をすくめ、両手を体の後ろへ回し、床にぺたりとくっつけた。

「すぐ帰るとかなんとか言ってたくせに、全然じゃねぇか」

「きっとまた、どこかで誰かを助けているんですよ」

「だろうな。どっかの星で囚われの身…とかになってたりしなきゃいいけど」

「フフフ、ご冗談を」

静かに笑った彼に対し、グレンファイヤーもつられて笑いだす。

「ま、そんときゃウルティメイトフォースゼロ総出で助けにいってやろうな!」

「ええ。もちろんです」

話を聞いていたピグモンも、鳴き声を上げた。

「おうおう、お前も一緒だぜ」

親指をたて、へへっと笑う。

その時だった。

 

「いい御身分だな、ウルティメイトフォースゼロ」

 

何者かの声が、基地内に響き渡る。

ミラーナイトが即座に構え、グレンファイヤーは勢いよく立ち上がって周囲を見渡す。そして基地の入り口を見ると、人影が立っていることに気がついた。

「貴様らは、もう終わりだ! 今なら私の部下にしてやってもい…」

「うっせぇなぁ」

グレンファイヤーは相手の言葉を待たず、大きな炎の弾を放った。

「ぎゃ――――――――――――――――――――――!?」

間一髪で避けたが、体に炎が付いてしまった。

「ひっ、ひぃ! あち、あちちち」

手で払うが、なかなか消えない。これではダメだと思ったのか、その場に倒れこみ転がり始めた。ケラケラと笑いながら、グレンファイヤーが必死に転がっている相手のところへ飛んでいく。

「で? 今ならなんだって? どんなキャンペーンしてんだ、教えてくれよ」

入り口にたどり着いた彼は、倒れている相手の頭を力強くつかみ、無理矢理上を向かせる。

「ダ・ダ…」

苦しそうな声をあげる彼の顔は白く、おかっぱのような黒い部分があり、体は不思議な縞模様に覆われていた。

「気持ち悪いツラしやがって。この黒いとこ、ヘルメットかっての」

「うるさい! この私を…このダダ様を、侮辱したな!!」

「はいはい、ごめんあそばせ」

パッと手を離すと、ダダは顔を地面に落下させた。

「ぐえっ」

痛みで震える相手に、グレンファイヤーが背中に片足を乗せる。

「ほら、ダダ様。どうしたんですか? さっきのセリフの続き、言ってみろよ」

ダダは悔しさで強く拳を握った。

「…するぞ…」

「あぁ? なんつった? よく聞こえねーなぁー!!」

グレンファイヤーはわざとらしく耳に手を当て、倒れているダダの方へ近づける。すると彼はバッと顔をあげ、大きく叫んだ。

「絶対に、後悔するぞ!」

そして、なにかを取り出そうとした。

それを見たグレンファイヤーは、すかさず残っていたもう片方の足でその腕を押さえる。

「ケッ! ひ弱な腕だぜ、そんなんでどうすんだよ」

「もう遅い」

「…あ?」

「フフ、フフフフフッ」

ダダは、さも愉快そうに笑いだした。よく見ると、彼の手にはなにか機械のようなものが握られている。それを見たグレンファイヤーは何か嫌な予感がしたのか、彼に乗せていた足をどけて離れようとする。が、後ろに下がった瞬間、何かが背中に触れた。

 

…いや、誰かが後ろにいる。

 

振り返ると同時に炎の拳を突き出そうとすると、目の前には脚が飛んできていた。

「な!?」

宙返りをして避け、基地の壁に張り付く。前を向くと、誰かがすでに目前へ迫っていた。

早い。なにより、強い。それこそ、本気で戦わなければ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺られる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チッ!」

グレンファイヤーはこちらへ向かってくる相手に、勢いよく突進をした。

「!」

相手は彼を避け、基地の壁に激突した。煙がもうもうと立ち込め、何も見えない。

「…ったく、なんだってんだ!」

「大丈夫ですか、グレン!」

下から見ていたミラーナイトが、流石に加勢しようと飛んできた。そんな彼に、グレンファイヤーが怒ったように怒鳴り散らす。

「大丈夫じゃねぇよ!! こいつ、妙に手応えありやがる!!」

バシッと手を叩くと、まだ煙が上がっている方へ拳を向ける。

「おいコラァ!! どうせくたばっちゃいねーんだろ、さっさと出てきやがれ!!」

大声をあげると、その言葉通り煙から誰かの人影が見えた。

「…そんな」

相手の波動を感じたミラーナイトが、信じられないといったように呟く。

「なんだ、どうした?」

頭に疑問符を浮かべたグレンファイヤーが彼の方を向くが、それ以上何も言わなかった。

「おい…おい、ミラーちゃん。聞いてんだろ、おい」

肩をつかんで揺さぶるが、何も答えない。

「フフン、気付いたか」

ダダが基地の入り口で、偉そうに腕を組んでいた。

「そいつは今や、私の操り人形さ。この輝かしい舞台で、貴様らは盛大に散るのだ!」

勝ち誇ったように言うと、煙の中にいる人物へ手に持っている機械を差し向けた。スイッチを押すと、煙の中から誰かが勢いよく出てくる。

「あっ!?」

相手の姿を確認したグレンファイヤーは、硬直した。

「さあ行け! ウルトラマンゼロ!!」

ダダの声が、再び基地の中に響く。

 

「奴らを、その手にかけてしまえ!!」

 

 

 

「だぁーっ、くそ!!」

グレンファイヤーは、イラついたように叫んだ。

拳を当てようとしても、止められる。蹴りを入れても、避けられる。

ゼロと何度か手合わせしていたためか、グレンファイヤーの手の内が読まれていた。だがそれは逆に、ゼロの手の内も読めるということ。グレンファイヤーはその経験を元に、何とかゼロに食らいついていた。ミラーナイトも共に闘っているため、そこまで苦しい戦闘ではない。

とはいえ、彼は…ウルトラマンゼロは、大事な仲間である。

 

――――傷付けたくない。できれば、助けてやりたい。

 

頭の中でその考えがグルグルと回り、どうしても本気が出せないでいた。

「ゼロー! いけー! やっちまえー!」

そんな彼とは対照的に、ダダはスポーツ観戦でもしているように手を振り上げてゼロを応援している。

(高みの見物かよ、ふざけやがって!)

キッとダダを睨み付けたとき、彼が握っている小さな機械が目についた。それを見てなにかを思い付いたグレンファイヤーは、ミラーナイトの方を向く。

「ミラーちゃん! そっち、頼んだ!」

それだけ言うと、勢いよくダダへと向かっていった。

「分かりました」

その行動にすぐさま理解をしたミラーナイトの返事が、遠くから聞こえた。そのあとは、二人が戦っている音だけが響く。

「今度は外さないぜ!!」

拳に炎を溜めながら、どんどんダダの方へと近付いていく。

「え、えっ…う、うわあぁ!!」

ようやく自分が標的であることに気付いたダダは、逃げ出すように走り出した。

「逃げてんじゃねぇ!!」

怒りのボルテージが上がったグレンファイヤーは、さらに炎をまとっていく。

ダダは必死に逃げていたが、自分の足に引っ掛かってしまったのか、変なポーズで転倒した。同時に、機械がダダの手から離れる。急いでそれを取ろうと腕を伸ばすが、もう遅い。

「てめーもろとも、その妙な機械をブッ潰してやる!!」

ダダの後ろから、彼に追い付いたグレンファイヤーが大きく腕を振り上げる。

「いや――――――――!!」

ダダは顔を覆い、情けなく叫ぶ。

「だあぁぁぁぁ―――――――――――――――――――ッ!!」

グレンファイヤーが腕を振り下ろそうとすると、誰かに後ろから掴まれて止められた。

…まさか。

振り向こうとするが、腕をひねりあげられた。肩に鋭い痛みが走る。

「いっ!!」

下手に動けば、腕をどうされるか分からない。グレンファイヤーは何もすることができず、ただ沈黙だけが流れていった。

「…あ、あれ?」

ダダが顔から手を離し、目の前で起こっていることに気が付いた。

「は…ははは、は」

震えた声で笑いながら、機械を拾い上げてゆっくりと立ち上がる。

「よ、よくやったぞウルトラマンゼロ。私を守るとは、なかなかいい働きをする」

ゼロはダダをちらりと見やると、すぐにグレンファイヤーに目線を戻した。そして、思い切り相手を投げ飛ばす。

「どわあぁっ!?」

床に片手をつき滑り込むように着地をするが、締め上げられた腕が利き腕だったためにうまく支えられず膝をついた。それでも立ち上がり、ゼロに向かって走っていこうとする。その時、彼の視界に何かが映った。

 

誰かが、倒れている。

 

「ミラーナイト!!」

グレンファイヤーが呼び掛けるが、返事はない。駆け寄ろうとすると、ゼロが正面に立ち塞がった。

「この…バカ野郎がぁぁぁーッ!!」

彼にラッシュを繰り出すが、全てあしらわれていく。

「ゼロ!! いい加減、目を覚ましやがれ!! てめー、また同じことを繰り返そうとしてるの分かんねーのか!?」

一瞬の隙をついて、熱い拳を彼の右頬にヒットさせる。思い切り殴られたゼロはゆっくりと相手の方を向くと、その腕を両手で掴んでさっきと同じように投げ飛ばした。吹っ飛ばされたグレンファイヤーは、床に転がり込む。

「させねぇ…あんなこと、もうやらせてたまるか…」

床を殴り付けて、震えながらも立ち上がる。

「ゼロ!! オレは…オレは!! もうてめーに、同じことはやらせねぇからな!! やらせるくらいなら!!」

ゼロに向かって力強く指をさすと、大声で言い放つ。

「オレがここで、ブッ倒す!!」

相手の言葉にたじろいだと思うと、ゼロが顔を伏せた。

「…おい」

その状態のまま動かなくなってしまった彼に、グレンファイヤーが心配するように声をかける。

(もしかして、洗脳が?)

希望を見いだしたその瞬間、何かのスイッチを押す音がした。

「何をボーッとしている! 早くブチのめせ!」

ダダの呼び掛けにハッと顔をあげると、グレンファイヤーに飛びかかっていく。

「うわ!?」

避けられず、首にラリアットを食らう。そのまま、床に叩きつけられた。

「うえっ、げっほ!!」

そこまでの痛みはないものの、首に相手の腕があるため動くことができない。ゼロの腕を首から外そうとするが、自分の片腕が本調子ではないためなかなか外れない。

必死にもがいていると、ゼロがゆっくりと空いている方の腕を振り上げていく。

「ちくしょう…!!」

焦りながらさらに暴れていると、上から声がした。

 

「グレン」

 

グレンファイヤーはピタリ、と暴れるのを止める。

「…ゼロ…? 今、お前…」

「でりゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

ゼロは大声をあげると、思い切り拳を振り下ろした。

 

 

 

「いやったぁ!!」

遠くの方で避難していたダダが、ゼロに駆け寄ってきた。

「さすがセブンの息子、こんな奴らひとひねりだったな!」

バシバシと背中を叩いてほめるが、ゼロはなにも答えなかった。あまりの無反応に決まりが悪くなったのか、ダダは咳払いをすると偉そうに腕を組んだ。

「さて、残るはロボットどもか。まぁお前にかかれば、どうということはないだろう。さ、行くぞ」

ダダが基地から出ていこうとすると、入り口で誰かにぶつかってしまった。

「おっと、失礼」

そそくさと出ていこうとするダダ。しかし、肩を掴まれてしまう。

「待て」

ぐるりと体を回転させられ、肩を掴んだ相手の顔がよく見えるようになった。そこには、ロボットが二人立っている。

「貴様、何者だ。なぜここにいる」

「我々の基地に単身乗り込んでくるとは、よほどの自信家らしい」

ダダはその顔を見て、少し震えた。

(げっ! ジャンボット…ジャンナインまで!)

だが、今は手中に堕ちたゼロがいる。怖がる必要はない。そう思い、二人に挑発をし始めた。

「フッフッフ…ようこそ、ウルティメイトフォースゼロの墓場へ」

「何?」

二人は顔を見合わせる。

「ちょうどいいときに帰ってきたな…今は全く意味が分からんだろう。しかし、私の下僕に会えばすぐに分かるはずだ…」

バッと機械を掲げ、スイッチを押す。

「さぁ来い! 我が下僕よ!」

下からゆっくりと、誰かが上がってきた。

「な…!」

「そんな…!!」

兄弟は驚き、後ずさりをする。

「お前たち、洗脳をされてしまったのか!?」

「そうとも、洗脳…えっ、お前『たち』?」

ダダが振り返ると、見覚えのある三人と一匹が並んでいた。

「はぁ? 洗脳?」

ゼロがわざとらしく首をかしげて、グレンファイヤーに質問する。

「なぁ、洗脳されてる?」

「いんや、全く」

今度は、ミラーナイトの方を向く。

「ミラーナイト、お前は?」

「いいえ、全く」

「じゃあ、モロボシ君は?」

ゼロの手の上に乗っているピグモンは、首を振りながら高い声で鳴いた。

「そうだよなー、洗脳なんてされてないよなー」

「ゼロ! それに、き、貴様ら、なぜ!!」

頭を抱えるダダに、ミラーナイトが答える。

「あなたがグレンファイヤーに追いかけられている時に、私はゼロからこう言われました。『やられたフリをしてくれ』、と」

「何!?」

「だから私は、基地の床に倒れていたんです。危険だと思い、彼には私のそばで隠れてもらっていました」

あそこでね、と指をさした。ピグモンは頷き、ぱたぱたと手を振る。

「んで、オレもそいつとおんなじ」

グレンファイヤーが、頭をかきあげて炎を散らした。

「ゼロちゃんが殴ったのはオレじゃなく、ただの床。あの後小声で謝られて、『このままでいてくれ』って言われたからな。倒れてた演技、って訳だ」

「な、なな、なん…で」

ダダがわなわなと震えていると、ゼロが彼の持っている機械を指差した。

「それ、壊れてんじゃねぇのか?」

「え!?」

「言っとくけど、俺は最初っから洗脳なんてされてないからな」

「えぇっ!? そんな馬鹿な!! これは小型化しただけだぞ、装置的には全く問題ないはず…」

そこまで言うと、ハッと気が付いた。

「まさか、小型化した際に威力も小さく…!?」

「なんにせよ、俺がそんなちゃっちいのに操られるわけないだろ」

肩をすくめるゼロを見て、ミラーナイトとグレンファイヤーが笑いだす。

「とりあえず、敵ということは分かった」

ジャンナインが、ゆっくりとダダの後ろから仲間の方へ飛んでいく。

「どうするんだ、ゼロ」

怯える彼を見ながら、ジャンボットもゼロの方へ近付く。

「そりゃもちろん…」

口の上を親指で拭うと、構える。

「俺たちは、ウルティメイトフォースゼロ。…宇宙のワルは、全部ブッ倒す!!」

その声を皮切りに、全員が必殺技の構えをし始める。

「ひえぇ――――――――――――――!!」

ダダが叫び、転びそうになりながらも逃げ出した。

「いくぞ、お前ら!!」

互いに頷きあうと、同時に技を放った。

 

 

 

「ファイヤーフラッシュ!!」

 

 

「シルバークロス!!」

 

 

「ビームエメラルド!!」

 

 

「ジャンバスター!!」

 

 

「エメリウムスラッシュ!!」

 

 

 

五つの光が、ダダの元へと飛ばされる。

「…!!」

叫ぼうとするが、その声は爆発にかき消された。

轟音と共に、基地の外が白い光に包まれる。光がなくなった後は、星がきらめく宇宙空間のみが広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エピローグ

 

「…なぁ、グレン」

「あー?」

ゼロが呼び掛けたとき、グレンファイヤーは寝っ転がってピグモンと遊んでいた。

「なんだよ、今忙しいの。頼み事なら、そっちの姫さん大好き集団に言え」

「あ、いや…頼み事じゃない」

「じゃあ何だ、早く言えよ」

「ああ、その…」

しゃがみこみ、口の上を親指でこする。

「…ありがとな」

「なん…なんだよ、いきなり」

感謝の言葉を言われた相手は笑いながら起き上がり、あぐらをかいてピグモンを自分の膝の上に乗せる。

「この前…俺が洗脳だかなんだかって騒ぎの時にさ」

「おう」

「お前、スゲー本気で倒そうとしてくれただろ」

「…あったな、そんなこと」

グレンファイヤーは顔を背け、声を低くした。

「嬉しかったんだよ。もしもの時、お前だったら俺を止められると思って…」

「そういやゼロちゃん、一つ聞きたかったんだけど」

「ん?」

話を止められたゼロが相手に目を向けると、肩を勢いよく握られた。

「いっ…いって、いてぇよ!」

彼の腕を両手で掴むが、離される気配はない。

「お前、何で洗脳されたフリしたんだよ」

「え…」

「あいつらまで巻き込んで、何しでかしたか分かってんだろうな」

あごで指した方には、ミラーナイト、ジャンボット、そしてジャンナインが何かを話し合っていた。

「…それは…」

「ただのお前の私情だったら、一発ブン殴らせろ」

「う」

言葉を詰まらせるのを見て、グレンファイヤーはピグモンを床へと下ろした。

「よしチビ助、ちょーっとあっち行ってろー。今からこいつに一発ガツンとやってやっかんなー」

ピグモンは一声鳴くと、ゼロを心配そうに見ながら少しずつ離れていく。その時、ようやくゼロが口を開いた。

「証明、したかったんだよ…あの野郎に」

「あぁ? そりゃどういうこった」

グレンファイヤーが首をかしげる。

「あいつ、俺を洗脳してお前らを倒させようとしてた」

「ああ、みたいだな」

「俺一人がお前らのことを倒せるって、思ってたんだろう」

だけどな、とゼロが言葉を続ける。

「お前らは、あの時のお前らじゃない。俺も、あの時の俺じゃない。確実に、成長してる。だから、お前らのことを弱いって言われてるようで…悔しかったんだ」

拳を握り、震えた声を出す。

「…ゼロ」

「本当に悪かった。俺は…俺は、もうあんなこと起こしたくなくて、それで」

「もういい、もういいから。な」

グレンファイヤーが自分の胸に相手を抱き寄せ、背中をポンポンと叩いた。

「でもな、ゼロ。もうちょっとやり方ってのがあるだろ? 今度はもう、そんなん気にしなくていい! 俺たちはいつでもお前に頼ろう、なんてこたぁ思っちゃいねぇ」

「…あぁ」

「オレたちは出来る限り、自分の力で何とかして見せるからよ。だけど本当に手を貸してほしいときは、無理矢理にでも貸りるからな!」

「……あぁ」

涙をこらえながら、ゼロが頷く。

「っていうことで」

グレンファイヤーがゼロの肩を離すと同時に立ち上がり、腕をあげたと思うと人差し指を立てた。

「お仕置きターイム」

「は」

ゼロが呆気にとられていると、脇の下から腕を入れられ、無理矢理立たされてしまった。しかもそのまま拘束されたため、動くことができない。振り向くと、遠くで話していたはずの彼らが並んで立っていた。

「な!? ちょ、おい!!」

慌てるゼロをよそに、グレンファイヤーとミラーナイト、そしてジャンナインが目の前でこそこそと話し合いを始めた。

「まず最初、オレからでいい?」

「僕は構わないが」

ゼロは暴れるが、拘束を解くことができない。

「悪いな、ゼロ。話は全て聞かせてもらったぞ」

「ジ、ジャンボット! てめぇ、離しやがれ!」

後ろから、静かに笑う声が聞こえる。

「我々の"気持ち"と言うものを、分かってもらおうと思ってな。ゼロがあの話をしたらこうするようにと、お前を除いた全員で考えていた」

「だ…だからごめんって」

「実は耳の部品が不調なんだ。悪いがなにも聞こえない」

「ふざけんな―――っ!!」

叫びながら怒るが、ジャンボットは離れなかった。

「ああ、グレンファイヤー。私は最後でいい」

さらに彼は、自分もやるという意思表示をしている。今回は、ゼロが彼らにしてやられたのだ。

「くそ! よくも騙したな!!」

「それはこっちのセリフだっつーの!!」

グレンファイヤーがツッコんでいると、離れていたピグモンが飛びはねながら帰ってきた。

「ああ! モンちゃん!! 助けてくれ、こいつら全員で俺をブッ倒そうとしてやがる!」

助けを求めると、ピグモンは彼の足元へ歩いてきた。

「モンちゃん…」

ゼロが感動していると、ピグモンはゼロの足をペチン、と叩いた。

「あてっ」

「あー! チビ助ずるいぞ、てめー!! オレが最初だったのに!」

足元にいる彼を掬い上げるように掴むと、グレンファイヤーは大人気もなく怒り始めた。

その様子を見て、ミラーナイトがフフ、と笑った。

「彼も、あなたにはちょっとした憤りを感じていたようですね」

「うそーん…」

「仕方ありませんよ、自業自得です」

落ち込むゼロに、ミラーナイトが右手を構えながら近付いていく。

「では、私が次と言うことで」

「バッカ、オレだよ!! やめろそうやって順番取るの!!」

「最初に彼の演技に付き合ってあげたのは、私ですが」

「おまっ…オレがどんだけあいつのこと心配して、あんなに体張ったと思ってんだ!」

ゼロのことを指差しながら、必死で抗議を始めるグレンファイヤー。その話の中にジャンボットも加わっていく。

「じゃあ私からと言うのは」

「何言ってんだ焼き鳥、お前がいなくなったらゼロちゃん逃げるだろ!」

「私は焼き鳥ではない!! ジャンボットだ!!」

「うるせぇなあ知ってるよ!」

さらに、ジャンナインも参戦していった。

「兄さん、二人でならどうだろう」

「ああ、それはいい考えだ。そうしよう」

だんだんと、いつもの賑やかさが帰ってくる。

「ほんと、お前ら…」

ため息をつくと、ゼロはハハ、と力なく笑った。

 

 

 

 

 

 

「最高だよな」

 

 

 

 

 

 


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