戦艦、不知火は結く   作:pqrsman

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暁、東雲(しののめ)、曙

耳朶を揺らすのは怒号。時折来る振動は体を蹴られた名残。吐き捨てられた唾は置き土産。

 

何のことはない。ただ”指導”が繰り返されているだけ。師の教えに背いた異端児を教育している。彼と彼女らは平然とそう答えるわ。

 

あまりにも多い青あざを作っても尚不揃いなモノたちは指導に過ぎないと一喝するわよ。

 

結局は指導内容すら考えられないのだ。滑稽だわ。うーん、今日も道には石が多いわね!

 

 

これが暁の捉えている風景である。最早、人ではない。道端の石に躓いた程度の認識しかない。しかし、その数と大きさが尋常ではないが。

 

こうして、暁は狂ったことにも気づかぬまままた今日()|を迎える。元気なことだ。食事も僅かにしか与えられていないのに。まともに訓練もさせて貰えないのに。

 

ただ、運動はさせて貰える。寧ろ、させられている。動かなければ死すのみなのだ。いくら何でも動く。

 

鼻先を掠める砲弾をゆっくりとした時間の流れの中で暁は眺める。

 

すると、後ろから魚雷の音がするので、緩慢に見える動作で振り向き軌跡を暁は眺める。

 

そして、いつの間にか艦載機もやってきた。落とされる爆弾により押し遣られる空気と水面を暁は眺める。

 

そして、彼らは帰っていく。深海棲艦たちは巨大な歯を軋ませながら傷一つない艦娘をその目に刻み付けて。

 

 

「びっくりだわ。深海棲艦の歯は飾り物じゃなかったのね・・・大発見だわ!」

 

 

そのように大海原で驚愕の声を上げるのは第六駆逐艦隊の暁。

 

れでぃーは目も良いのだ。逆に良すぎるのかもしれないが・・・砲弾を躱すのはやり過ぎだと思う。

 

だが、そうでもしないと生きられないのも事実。

 

とにもかくにも、ここからが本番である。肉体や動体視力は鍛えれば鍛える程よくなっていくが、精神はそうはいかない。

 

悟りを開いたといって努力を止めてしまえばつけこまれる隙が生まれる。

 

負の感情を生身で受けていれば悪い影響を受けるのは道理。気は至る所で育まれる。半永久的に・・・

 

 

「さて、帰りましょうか。もうここには用はないわ。」

 

 

暁は欠伸をしながら呟く。燃料によって紅く彩られた海を往く。最早恒例行事となった”指導”を受けに・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「早く帰ってこい!」

 

私、戦艦長門はようやく帰ってきた駆逐艦を叱りつけた。

 

低級な駆逐艦ごときが戦艦様の時間を奪うなどあってはならないのだ!

 

それにしても相当難易度が高く敵が密集した地域に送り込んだはずだが、なぜこいつは無傷なのだ?

 

まともな戦闘をしてきたとは到底思えんな。

 

戦艦長門は湧いた疑問をぶつける事はしなかった。

 

低級な駆逐艦に質問することは恥だと考えていたからだ。

 

そして、暁は今日も「つまらない」指導を受ける。

 

胸の虚空は満たされぬまま…

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