戦艦、不知火は結く   作:pqrsman

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今回はまたもや不知火回に戻ります。


嗜好実験

どうしたのでしょうか・・・金剛は私をティーパーティーに誘ってきましたが、知識の修正をしてあげたら急に落ち込みだしました。

 

ですが、それから金剛のMVP率は恐ろしいものになりましたね。100%です。

 

是非今度、何がそこまで金剛を駆り立てたのか聞いてみたいものです。

 

私は今司令官に呼ばれています。もしかしたら夕張の件かもしれませんね。とりあえず司令室に行きましょう。

 

 

<コンコン

 

 

「来たか。入ってくれ。」

 

「はい。不知火です。失礼します。」

 

「今回の件がどういった要件かわかるな?」

 

「およそ。夕張からの改造済みの徹甲弾の試験体に選ばれたということですか?」

 

「ああ。その通りだ。その件は既に夕張に許可は出した。そこからは不知火と夕張に一任する。」

 

「了解しました。要件は以上でしょうか?司令官」

 

「ここからが本題だ。不知火に第一艦隊の指揮、つまり旗艦を任せたい。」

 

「お言葉ですが、不知火よりも適任がいるかと。」

 

「金剛にその話をしたら、『断固拒否しまース。シラヌイがいいデース。』と言われてしまったんだ。」

 

「大淀や青葉の新聞から判断すると食堂で何かしら意見を交わしていたそうじゃないか。

そして、金剛を言い負かした、その論理性、数多の深海棲艦を屠った金剛に物怖じしない精神力は旗艦を務めるに値すると私は考える。」

 

「分かりました。命令とあらば必ずやそのご期待に恥じぬ働きを致しましょう。」

 

「頼んだ。これすらも命令になってしまうのだろうからな。ふふっ。」

 

「ええっ。艦娘は命令にも感情にも従順な兵士ですからね。」

 

 

大淀は二人の会話を聞いていて恐怖と共に確かな信頼が二人にあることを理解してしまった。

 

それを羨ましいとも思ってしまった。しかし、疑問が生ずる。なぜ、着任一週間の艦娘をここまで信用できるのでしょうか、と。

 

不知火が退出し、笑みを堪えきれない提督と二人きりになったとき、大淀はむず痒い気持ちを早く解消するために彼に尋ねた。

 

 

「てーとく、なんでそこまで不知火さんを信頼しているのですか?」

 

「私は信念として部下の失態にどう対応するかで提督としての質が分かると確信している。無論、その器の大きさは相手にも伝わるだろう。

 

 三流はその個人に責任を押し付けることだ。人間としてまともな土俵に立てていない長がいるその鎮守府に未来はない。

 

 二流は皆で責任を分配するような発言をすることだ。反省しているのはいい。しかし、続けていくと必ず温いという印象を与える。そこからは踏ん張りどころが効かない部隊の出来上がりだ。

 

 目指すは一流。いかなる失態も己の命でということを明記して上層部に報告することだ。それにより、提督が代わることになろうとも、自決の命が下されたとしても、恨むべきは力不足のみという考えだ。」

 

「成程。わたしもてーとくにお会いする前に様々な考えをお持ちの方と出会いました。

 しかし、皆様、既得権益の死守に奔走されていました。そのため、轟沈者なしで戦果を出している鎮守府は片手で数え切れるほどですね。」

 

「元々、責任転嫁は選択に覚悟が不足していたために生じる後悔だ。私は自分の行動に一切の後悔はしない。なぜなら、選択に芯を持っているからだ。撤回はそれまでの己の全否定に他ならない。私はそっちの方が怖いよ。」

 

「提督、大淀感服いたしました。そこまでの考慮の深さ御見それ致します。」

 

「その言葉忘れるなよ?撤回は過去の喪失と同義だ。無論、私もだが。ふふっ」

 

「あははっ!失礼いたしました。てーとく。」

 

 

そこには精神年齢が艦の製造年数と同等になった人間と艦娘がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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鎮守府廊下にて

 

 

司令官は私に信頼を置いているのですね。とても嬉しいです。頼りにされると言われただけでここまで心が温かくなるなんて初めてです。この気持ちは何なんでしょうか?

 

ですが、第一艦隊は結構な曲者が揃っていることでしょう。なにせ圧倒的な戦果を挙げていますが扱いの難しさでも他の鎮守府を凌ぐのですから。

 

ワタシがうまくやっていけるか分かりませんが信頼されている事実は不安を消し去ってくれます。

 

まあ面通しも済んでいないので認めさせるのは難しいでしょう。しかし兵士に求められるのは成果のみ。

 

やることは変わりませんね。

 

おや、扉が開いていますね。誰かいるのでしょうか?中を覗いてみましょう。

 

どうやら、那珂が練習に励んでいるようですね。あの体力は深海棲艦との夜戦込みの戦闘時には役立つでしょう。

 

夜戦と言えば川内ですが今の時間は寝ているのでしょうか・・・軍人の規律は彼女には当てはまらないようですね。

 

あとは、夜戦での信頼がおけるのは駆逐艦ですね。陽炎たちが一刻も早く着任してくれることを望みます。

そして、夕立と時雨は素晴らしい練度ですから今から実戦に送っても問題はないでしょうね。

 

島風はなかなか友達がいないようですね。私がなってあげればいいのですが流石にずっと競争をするわけにも行けません。しかも、私が話しかけると緊張してしまうようですしね。

 

世話焼きな駆逐艦と言えば吹雪ですか。彼女の愚直さには私も含めてまだまだ努力を続けなければと思わせられます。

 

訓練も終わってしまったので間宮さんのところに行って甘味を頂くことにします。デザートは別腹です。

 

 

 

食堂「間宮」にて

 

「間宮、こんにちは。」

 

「ああ、不知火ちゃん。訓練お疲れ様。甘味かな?」

 

「はい。アイスにきな粉と黒蜜をかけたものをお願いします。」

 

「大人ねえ、黒蜜を好む子はほとんどいないのよ~」

 

「仄かな苦みが美味しいのですが勿体ないですね・・・では皆さんはどういうものを食べているのですか?」

 

「羊羹だったり板チョコだったり只のアイスだったりいろいろねえ。共通点は単純なものってとこかしら。」

 

「成程。ですが本当に食というのは戦意を高揚させるものですね。それ以前に活力を与えてくれます。間宮はなぜ食糧艦になろうと思ったのですか?」

 

「う~ん、難しいんですが私は兵器として十分な戦果を挙げることが出来なかったんです・・・それでも、役に立ちたかったので得意な料理でみんなの援護をしてあげたくて食堂を始めたの。」

 

「そうだったのですか。では間宮の得意料理は何です?」

 

「全部作れはしますよ。まあ食事時は迅速さが求められますから時間の掛からないものになりますけど・・・」

 

「では、今度遠征に行く人たちのために美味しい戦闘糧食を作りませんか?」

 

「ええ、いいわよ。じゃあ、時間が出来たら話しましょう。」

 

「はい、アイス美味しかったです。有り難うございます。」

 

「夕方からも頑張ってね~」

 

 

声援を背に私は青葉を探しに出掛けました。アンケートを作るなら記者に頼むのが一番ですからね。

 

噂をすればではないですがお目当ての人物が駆けて来ました。

 

 

「不知火さーん。青葉です。少しお聞きしたいことがありまして。」

 

 

どうやら、向こうからやって来たようです。探す手間が省けました。

 

 

「どうしました、青葉?」

 

「ええ、特大ニュースを掴んだものですから・・・」

 

 

まさか、もう夕張さんとの共同開発がバレたのですかね。

 

 

「不知火もお願いしたいことがあるので構いませんよ。」

 

「珍しいですね!あっ、それでですね、率直にお聞きしますが何か夕張さんと企んでいませんか?」

 

 

したり顔で確信を得た上で聞かれてもなんか言う必要はあるのでしょうか・・・

 

 

「ええ。よく分かりましたね、青葉。どうやって知ったのですか?」

 

「ちっちっちっ。それはトップシークレットですよ。」

 

「そうですか。まさか盗聴器を司令室に仕掛けておいたなんていう記者の風上にも置けないことをしているわけではないんですよね?」

 

「当たり前じゃないですか~嫌ですね~そんなことしませんよ。」

 

「目が泳いでいますよ。取材対象から目を背けたらいけませんよ。」

 

「うう・・・これが金剛さんを追い詰めた追及ですか、心が折れそうです・・・」

 

「まあ、冗談は置いといて、ええ、そうですよ。兵器の改良を目論んでいます。あえて旧式の武器を使う必要はないですからね。」

 

「今のが冗談なんですね。それはそうと驚きです。改良ですか~試し打ちは不知火さんがやるんですか?」

 

「はい。あと、青葉には遠征と訓練に対する要望や改善して欲しい点などを新聞の欄、若しくは統計を取って頂きたいのです。」

 

「それがお願いですか何に使うんですか?」

 

「ざっくり言えば現状の打破です。食が与える戦意高揚への影響をうけて戦闘糧食の改良や訓練の効率化ですね。

 自由時間を持つことで姉妹艦やほかの艦種とも話すようになり連携が潤滑に行われるようになりますからね。」

 

 

翌日の艦隊新聞は大盛況だった。

 

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