大丈夫・・・所詮だれがに奪われるものなんてちんけな物・・・。
本当に大切な物があなたの前から消えるのは・・・。
それを「失う」時だけだから。
「ハックシュ!。」
「おいおい、大丈夫かよ。」
そんな何気ない会話がとあるマヨヒガでは繰り広げられていた。どうも焔の体調がすぐれないらしい。大したことではなく軽くくしゃみがでて鼻水も出る程度。・・・それにしてもまさかあんな原因で体調を崩すとは・・・。
「腹出して寝てるからだぜ?。」
「うぅ~~。」
どうも焔の寝相が悪い、この前もそうだが今日は華麗なる裏拳を顔面に喰らわせられた。
「まあ、寺子屋を休むほどじゃないが一応・・・。」
そういうと梗は焔の頭を掴むと親指で焔の髪をかきあげ自分と焔の額をくっつけた。
「え・・・?きゃっ・・・。」
「おい、動くなよ。」
目を開けると目の前には梗の顔・・・。息がかかるほどの距離だ。ついこの前まで強く抱きしめられても平気だった相手に額をつけられるだけでドキドキする自分を焔は理解できなかった。極度の緊張により焔の体温が急激に上昇する。
「熱ッつ。」
ジュ~っと音が出るほどの高温によって梗はあわてて額を離す。
「~~~~~~~ッ。」
焔は顔を真っ赤にして俯いていた。肉がその上で焼けるほどの温度に上昇していた額も湯気を上げながら少しずつ冷めていった。
「あちち・・・大丈夫か?焔。」
梗の問いかけも思考回路がショートした焔の耳には届かなかった。
「焔~!?。」
「・・・!。ハッ。」
「お前、本当に大丈夫か?。」
「え?ああ、だ、大丈夫だ。早く寺子屋に行くぞ~!。」
「ん、ああ、そうか、大丈夫ならいいんだが。」
そんなちぐはぐな会話をして二人に橙を加えた三人は今日も寺子屋に向かったのだった。
○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ●
「梗、今日の朝の事は誰にも言うんじゃないぞ!。」
「え?なんで。」
「なんでもだ。」
「わかった。誰にも言わねえよ、じゃ、行ってきな。」
そういって、二人を送り出し来た道を帰ろうとするとその場に不似合いな顔がいた・・・。
「おい、どういうつもりだよ。」
「あら?忘れ物を返しに来ただけよ?。」
昨日の女だった。別に何もしようとは思ってない様子だったが妖気は隠してはいない。「やるなら来いよ。」と言いたげだった。
「忘れ物?。」
梗はあくまでもしらを切る事にした。別に彼女をからかうつもりはなかったが、餌をまいた以上相手の出方を待つ事にした。今ここで闘(や)るメリットは梗にはまったくなかったからだ。
「あの子の前では本当の顔を出さないつもりなのかしら。まあ、別に構わないけど、今日は忘れ物を返しにしただけ他意は無いつもりよ。」
「つもりね。」
「もう私の前では丁寧な言葉は使わないのね。」
「ああ、あんたに使う事に必要も得もないからな。今はさっさと忘れ物を返してもらって帰ることが俺のとるべき行動だ。」
「わかったわ、はいこれ、忘れ物。」
そういって彼女は梗の財布を取り出す。それを梗は言葉一つ言わずに彼女の手から取る。
「ありがとよ、じゃあな。」
そういって梗は彼女のほうへ向かって歩き出す。ここで何かをしても梗にとってのメリットは発生しないのだから。逆にこの女に近づく事はリスクと疲労しか生まない梗は普段より気持ち程度速く歩いていた。梗が彼女を横切った時彼女が小さな声で呟いた。
「あれは宣戦布告と受け取ったわ。」
梗は歩みを止めなかった。彼女から離れた後、財布を確認するとやはり1枚の小さな紙が入っていた。その紙を広げると予想通り、文章が書かれていた。
<実は私って仏(フランス)生まれなのよ、日本語はそんなにうまくないんだけど漢字って良くできてるものなのね、特に「後悔」って文字?あの後から悔しがるって意味を的確に言ってるじゃない。後悔っていうものは過去に犯した過ちによって今を縛られ未来を失うこと・・・。あなたも精々後悔をしないように。言ってる意味わかる? by素敵な怪盗さん>
「生憎、過去に縛られるほど馬鹿じゃないんでね、あんたの言ってる事は全く分からねえ、過去は忘れる物、未来は思いをはせる物、現(い)在(ま)は創るものだよ・・・。」
そう呟くと梗は紙をくしゃくしゃにして後方へと放った。大きな弧をえがいた紙屑は丁度、里の住民がゴミを燃やすために家から出していたゴミ箱に飛び込んだ。
「ちょっと、私の期待していた答えとは違うわね・・・。」
その後も、彼女が後ろを付けているのを分かっていても決して梗から仕掛ける事はなかった。確かに彼女に関わってもなんの得も得られないのは明確だったが、昔の梗だったら自分からしかけないにしても相手に対して威嚇程度はしていただろう。それもこれも焔が傍にいることになったという変化によるものだろうか。しかし、梗は自分の変化に気付けなかった。
「梗、お前変わったな・・・。」
「何がですか?。」
本人が気付けなくても長く付き合っている者からは分かる。藍は梗の変化を的確に見抜いていた。
「優しくなったとは言わないが、何か、無駄な戦闘を避けるようになった。いや、これも違うな・・・。」
「私、最近変なんですか?。」
「いや、そういうわけではないが・・・。なにか、焔の前でそういう事を避けてる節があるな、つまりはそういうことだ。」
「ああ、言われてみれば・・・確かに。」
「まあ、悪い事ではないが、そう長くは続かん。そうなるのが嫌なら縁を切るべきだが。」
「それが今、許されないのは私が一番分かってるつもりです。」
八雲には敵が多すぎる。強き力を持つ者の周りに集まってくるのは九分九厘がその強さという光によってたかる虫ばかり、その虫を払うのが普段の梗の役目だがそうなれば当然焔を危険にさらすことになる。しかし、かと言って焔を突き放す事が出来ないのは誰よりも梗が知っている。危険な船に乗った事をいまさらながら梗は思った。
「あ、そろそろ時間ですね。では、私はこれで。」
梗は立ち上がり、部屋を出て、屋敷を出て、体を宙に浮かせると寺子屋へと向かった。
○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ●
「え!?。焔はもう帰ったって!?。」
「ああ、ついさっき、一人の女性が焔の保護者だっていって焔をつれていっ・・・っておい梗!。」
慧音が全てを言い終わる前に梗はマヨヒガへと続く道を駆けていった。非常にまずいことになった。一度俺とあいつは接触しているが、焔のことを思って本音を出さない会話に徹した。あの様子を見れば敵当な口実を立てれば焔をつれていける。一度連れていかれたら。どこに連れていかれるかわからない。
「焔!?。」
「ん?、どうした梗?。」
「・・・・・・え?。」
屋敷の扉を開けると寺子屋の課題を解くために机に向かっていた焔は「なにかあったのか」という表情で応えた。
「お前・・・あいつに連れ去られたんじゃ・・・。」
「何言ってるんだ梗?。あのひとは焔をここに送ってくれたんだぞ?。お前の知り合いなんだろ?。」
意外すぎる台詞が梗の耳に響いた。あの女は一体何がしたいんだ。あいつの考えてる事が全く分からない・・・。あいつは何者なんだ?。俺にあいつは何をしたい・・・!?。・・・梗は考えたが理解できなかった。
「梗・・・?。」
焔が悩む梗の様子に気づいて心配そうに声をかける。その声によって我に返った梗は、自分の様子が焔の感情を左右させている事に気づき表情をいつも通りに戻す。
「あの人は怪しい人じゃないと思うんだ。たしかに梗と話してる時何か、自分の中の物を隠している感じはしたけど。焔をここまで送ってくれた。変な考えはないと思うんだ。」
(逆だ、そんなことをされたらなおさら警戒をするべきだ。)と梗は思ったが、表に出さず。焔の考えに納得をした表情をした。
「わかった。焔、お前を信じる。お前のこれからを幸と福の字でいっぱいにするって約束したんだ。どんな事があってもお前を守って見せる。」
「ありがとう・・・。」
・・・これでいい。真実を全て焔が知る必要はない。真実はときに誰かが吐く嘘よりも人の心を虫食む。そんな真実だったら知らない奴のほうが幸福なんだ。焔の中であの女はいい人であって問題ない。俺は焔を守るだけだ。
そう決意し梗はこれから訪れるであろう。後悔に向かう覚悟を決めた。
そしてその後悔が現実を帯び、目の前に訪れるのはそう遠くない未来だった・・・。
なんとか間に合った・・・。
なんか今回つまらない気がする(いつもはつまらなくないとでもいいたげですね。)。
まあ、来週に修学旅行が控えてるので来週の投稿も土曜日だけですね。
もし、楽しみにしている方がいらっしゃるなら首を長くしてお待ちください。
ps.原作キャラの出演希望募集しています。