【東方】<八雲梗>【九尾伝】   作:甘味料

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第二刻、頑張ってやる気あげてこ~う!。



第二刻:魂魄の名の基に

 

大地を蹴り、風を切りながら梗はこの世とあの世の境界を越えた。このふたつの世界を隔てる境界の力が弱くなっている現在、間違ってこの境界を越えてしまう者は多少なりいるのだが、明らかにこの日の梗は自分の意志でこの境界を越えた。

 

「はっ・・・はぁ・・・はぁ・・・。」

 

息を切らしながらも駆けるのをやめない梗。何故、現在の状況に至るのかを説明するのに少々時間を頂きたい。

 

あれは、焔に絡んでいた三人の青年を追い払った直後のこと・・・。

 

 

 

 ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○

 

 

 

「魂魄組・・・。」

 

焔とマヨヒガに帰った後も梗の脳裏には、あの青年が放った捨て台詞がベットリとこびりついていた。魂魄と聞くと梗の頭に浮かぶ人物は2人しかいない・・・。

 

現白玉楼庭師の魂魄妖夢。そしてもうひとりは・・・。

 

「先代白玉楼庭師。魂魄妖忌・・・。」

 

妖夢の祖父にして、妖夢に剣術を教えた人物。いや、正確には妖夢は妖忌から剣の技術は何一つ習ってはいなかった。

 

 

 

━━━業は人から教わるものではない盗むものだ━━━

 

 

 

妖忌の指導方法はそういうものだった。厳しい祖父の指導のもと妖夢は着実に剣士としての腕をあげていた・・・。

 

 

・・・しかし、ある日突然。妖忌は庭師の仕事を妖夢に託すと忽然と姿を消した。もちろん妖夢は連日。祖父の姿を血眼になって捜した。それは梗も同じだった・・・。

 

梗にとっても妖忌は師匠であった・・・。

 

紫の式となった者達は代々、ごく一部の者を除いて「幻武」という格闘術を使ってきた。先代達が築き上げてきた歴史は無論、梗が紡ぐはずだった。

 

 

しかし、先代の式は梗がまだ幼い時に戦いの中で死んだ。代々、先代の式が次の世代を指名する形でつないできた「八雲」の名というバトンはその時一度、地に落ちた。その直後に藍が八雲の姓を受け取ったが、まだ年端のいかない弱い梗にはすぐには八雲の名は与えられなかった。

 

そのため、梗の幻武は本場の流派を継いでいるわけではない。先代がこの世を去る前に藍に名だけを教えていた幻武の数々を言葉だけで理解し体得していた。だがそれでも、歴代の式達が使ってきたそれには程遠く、梗は幻武の技は使えても業が使えないものとなっている。

 

そんな梗に戦いの業を仕込んだのが妖忌だった。勿論、妖夢同様になにかを口で伝えられたわけではない。だたひたすらに繰り返される仕合の中で梗は主を守り抜くため業を培っていった。

 

だから、梗にとっても妖忌の存在は大きく、姿を消した時は妖夢と一緒に幻想郷中を駆け巡りその影を追った・・・。

 

 

 

「まさか・・・そんな・・・。」

 

精神は信じようとしなくても無意識は常にあらゆる展開を連想する。

 

 

━あの、魂魄組は妖忌が仕切っている━

 

 

「絶対にあり得ない!。」

 

梗は自分自身に必死に言い聞かせる。気がつくと梗の呼吸は荒く、肩で呼吸をしていた。

 

じゃあだれが・・・?。

 

自問自答の歯車が回らない。その問いに答えられない。

 

梗が知っている魂魄はこのふたりだけ。一体だれが・・・。

 

それから梗はしばらく黙りこんだ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・そして、時は流れ、マヨヒガの縁側には夕日が差し込んでいた。

 

焔が梗の様子を心配して、梗の傍に寄ろうとした時だった。俯いていた顔をあげると、スッっと立ち上がり梗は遠くを見つめていた。

 

 

ー直接行って確かめるしかないー

 

「梗・・・?。」

 

不安そうな表情で焔が下から、梗の顔を覗き込む。

 

「少し、留守にする。明日の朝には多分帰ってくる。」

 

焔の顔を見ずに梗が言う。多分という言葉が引っかかり焔が梗に問う。

 

「ど・・・どこに・・・?。」

 

「冥界・・・お前にも分かるように言うと、<あの世>だ。夕飯は作っといたから、いい子にしてるんだぞ。」

 

「あの世・・・?。」

 

焔の不安は晴れないが梗は焔の顔を一度見ると、いつも通りの笑顔をみせ、ゆっくりと外に出ていった。冥界へ続く道を見据えると梗は駆けだした。焔はただ、その後ろ姿が小さくなっていくのを見つめていた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今に至る。冥界の境界はとっくに越え、数えられない程長い、階段を梗は一気に駆け上がっていた。

 

全てを登り終えると辺りの雰囲気は一変する。さっきまで夜闇のように暗く細長い亡霊が漂い、階段のわきの灯火だけで照らし出されていた世界は一変。夜にもかかわらず屋敷の中の光が辺りに広がっていた。・・・白玉楼だ。

 

「御免くださ・・・。」

 

梗がそういって屋敷の入り口に差し掛かった時だった。二つの斬撃波が梗に向かって放たれた。

 

「うおっ・・・。」

 

その斬撃を軽やかに後方に宙返り回避する。だれの攻撃かはすぐにわかった。攻撃を仕掛けた張本人が梗に警告する。

 

「ここは白玉楼・・・。命ある者よ、速やかに自分達のいるけんかい・・・って梗さん!?。」

 

鋭い目つきが一気にパッチリとし、口調もいつも通りに戻った。

 

「相手を確認せずに切り捨て御免とか勘弁だぜ。ちょっと急用ができたんで来た。」

 

「そうですか、では、すぐに準備をいたします。」

 

そう言って、くるりと方向をかえた妖夢を梗は引き留める。

 

「いや、この場で構わない。ちょっとお前に話したい事がある。」

 

梗の口調と表情、雰囲気から察した妖夢も落ちついた口調に変える。

 

「わかりました。では少し場所を変えましょう。」

 

二人は白玉楼の外塀をぐるりと回り、入口の丁度裏側に到着した。物静かな雰囲気に包まれ物音もあまり聞こえない、これから梗が話す内容に適した場所と言えよう。

 

「それで話というのは?。」

 

「魂魄という名に心当たりはないか。」

 

単刀直入な質問。同じ魂魄繋がりという点で真っ先に梗は妖夢を当たった。梗自身に心当たりが無かったため、あまり筋の通っている捜査とはいえないが一か八で妖夢を当たった。

 

「すみません。魂魄の名前は私の家系にしか与えられていないはずですので。」

 

「やはりな。」

 

「誰かが勝手に名乗っている可能性もあります。その方から当たってみては?。」

 

「ん、まあ、その方がもっともなのかもしれないな、それじゃあ邪魔したな。」

 

妖夢に背中を向け梗が歩き出す。塀の角に差し掛かったところで妖夢が声をかけた。

 

「次は手合わせの約束で訪れて下さいね~!。」

 

梗は声に出して返事はしなかったが角を曲がる際、軽く手を挙げ答えた。

 

 

帰り、ゆっくりと歩きながら梗はまだ考えていた。

 

「どうしたものか、魂魄組・・・。それが何なのかすら分からないぜ。」

 

そもそも、魂魄組は梗や焔に悪影響を与えるのだろうか?。

 

「焔がつっかかられてたのは、元々、焔の不注意だ。それが無ければどちらにも非はなかったはずだしな・・・。」

 

逆上してきた青年達も特にグレていた様子もなかったし。向こうから仕掛けられていないなら・・・。問題はないのだろうか、ほっといていいのだろうか。しれでも「魂魄」の名が梗の頭からその記憶を消させない。

 

「あ~。駄目だ。許容量オーバー。今日考えるのはここまで!。」

 

吹っ切れた様子で再び歩き出す。するとどうだろう。物語の展開とは案外そうでもないときに勝手に進むものである。

 

「……。」

 

気配……。それも殺気を帯びたものだ。精神状態も比較的安定している。殺気の矛先はまぎれもなく梗。間違いなく敵だ。

 

梗が知らん顔をして通り過ぎようとした時、木々の間から銀色の刃が襲いかかる。それを梗は左側に体をスライドさせ回避する。不意打ちに失敗した敵が草陰から姿を現す。黒髪で武士の着物、体つきも良く、引き締まった目つきをしている。

 

「だれの差し金だ?。」

 

梗の質問に対して敵は答える様子は始めは無かったが、梗が自分の瞳から視線をずらさないとわかると、低く重い声で答えた。

 

「魂魄組組長。魂魄ようき様の命により。」

 

「こんぱく・・・ようき・・・・・・!?。」

 

梗の表情が驚きにより崩れたところに男が斬りかかる。左から右への斬り払い。かろうじて後方に下がり回避するも刃が服を斬る。砂煙を少し上げ踏みとどまり梗が臨戦態勢に入る。

 

「ひとつだけ答えて欲しい。お前らの言う魂魄ようきとは一体どういう人物だ?。」

 

「真意を読めぬ表情をし、背丈ほどある長い刀と脇差ほどの短い刀を使いになる。それ以上は言及されても答えぬ。」

 

そう言い終わると男は体の前に刀を中段に構える。体勢はやや右側に踏み込んでいて目は梗の眉間に照準を定めていた。

 

(突き・・・!。)

 

梗が察すると同時にノーモーションで高速の突きが梗の眉間に放たれる。

 

 

[ゴッ・・・・・・。]

 

 

聞こえたのはただ、その鈍い音だけだった。

 

凶靭な刃は梗の眉間に届く前に止まった。

 

男がゆっくりと倒れ伏す。

 

「俺の方が紙一重速かったな。」

 

突きよりも速く男の顔に蹴り一撃・・・。圧倒的スピードで梗に軍配が上がった。

 

「まあ、運が良ければまた立てるだろ。」

 

そういって梗はマヨヒガへ歩き出した。

 

 

 

「梗~~~。」

 

少し震えくぐもった声が聞こえてきた。ふと梗が顔をあげ、目を細めて見ると焔が走ってきていた。

 

焔の顔には涙が伝っていて涙線のあたりが赤く腫れていた。梗がキョトンとした表情で突っ立ってると焔が梗の胸に飛び込んできた。

 

「よがっだ・・・ぎょういなぐなっちゃとおもった・・・。」

 

泣きじゃくりながらがらがら声で焔が梗の胸の中で声を発した。

 

「どうした、どうした?。なんで俺がいなくなるんだよ。」

 

梗は焔の真意を理解できないが次の焔の台詞でその涙の意味を理解した。

 

「だって、あの世にいくってさらって言うんだもん!。焔を置いて死にに行くなんて絶対に許さないんだから!。」

 

焔の涙はま止まっていなかった。しゃっくり混じりの鳴き声が梗の胸の内で反響していた。

 

そりゃあ、突然行き先を聞かれて「あの世」なんて答えられたら死にに行くといってるようなもんだろ。

 

「悪い、わるい、俺の説明不足だったな。悪いな今度からはちゃんと白玉楼って伝えるよ。」

 

「はちゅじょくろ?。」

 

「言えてねえし。」

 

噛みかみの焔の白玉楼に梗が軽く噴き出す。その混じりッ気のない笑顔を見て焔の顔にもようやく安堵の表情が現れた。

 

夜闇の中にふたりの笑い声がこだまする。そろそろマヨヒガに帰らなくてはならない。

 

「ほら、もう帰るぞ。なんなら今度は焔も一緒にあの世に行ってみるか?。」

 

「い、いい!、遠慮しとくよ・・・。」

 

焔は頭の中に鎌を持った死神を思い浮かべながら全力で拒絶した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(本当に命をかけなきゃいけないとき。俺は焔に真実を打ち明けられるだろうか・・・・・・。)

 

 

 

梗の心の中にまた一つ戸惑いが生まれた日だった。

 

 

 




読んでいただき、有り難うございました。なんか上手く表現が出来なかった回な気がする。
実は最近、ある単発小説を書いていまして、そちらの執筆に夢中でこっちに集中できませんでした。まだまだですね。また、次回から文章形式が変わるかもしれないのでその際は。ああ、思考錯誤してるんだな、と思って下さい。ではまた次話。
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