【東方】<八雲梗>【九尾伝】   作:甘味料

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製作の話より雑談しよう。学校の朝読書の時って何を読んでます? 自分は今、「モルフェウスの領域」という作品を読んでます。なんか、自分が読んでるのって他の人に比べて硬いんですよねw。ギリシャ神話入門とか知的複眼思考法とか……。モルフェウスの領域をもう少しで読み終わるので次は書き方を勉強するつもりでラノベを読んでみようかと。しかし、そっち方面に待った詳しくない俺は何を読めばいいのか分からないのであった^^;。



第四刻:人に非ず

「いってぇな」

「我慢しろよ~あと少しだからさ~」

 梗の頬に消毒液のついた綿を押しつけていたのは焔だった。身長の都合で梗があぐらをかいて焔が立つと梗の顔の高さは焔にとって丁度いい高さになる。夕日が後少しで完全に山の影に隠れようとするなか、残されたわずかな赤い陽がやさしくマヨヒガの縁側を照らしていた。一通りの治療が終わると梗は立ち上がり、夕食を作るために台所へ歩いていった。そのうしろをトコトコと焔がついていく。

 

梗は食材を確認すると辺りを見回し調味料の残量をチェックする。そして、少し考えるといくつかの食材を手に取り調理台の上に置いた。見慣れない組み合わせだったので焔は背伸びをしてもう一度食材を確認する。大人用の高さの調理台の上を焔が見るには背伸びをしないといけない。背伸びをし鼻から上だけをヒョコっと出して食材を確認し、やっぱり何を作るのか分からなかった焔が梗に聞く。

 

「梗~。何作るんだ? 豚肉とニラや卵……あとは白い粉って何に使うんだこれ?」

「今日は餃子を作ろうと思ってな。ちょっと焔にも手伝ってもらうことにする」

「おう! 任せろ!」

 

 やる気満々の表情を見せた焔が違う部屋にかけていったと思うと隣の部屋から自分が乗るための台を持ってきた。その上に乗ると大体胸から上までが調理台の上にくる。先日、梗に作ってもらった三角巾を頭に不器用に結ぶと料理の前の手洗いを始めた。

 焔が手を洗っているうちに梗はボウルに小麦粉と片栗粉、塩と適量の水を加えると焔の前に置いた。

 

「お前には餃子の皮を作ってもらう。その粉をひたすらこねてもらおうか」

 ボウルの中の白い粉を見た焔はまるで、粘土で工作をする子供のように目を光らせた。

「よ~~~し。おりゃぁぁぁ!」

 

 左手で危なっかしくボウルを掴むと右手で勢いよく粉を捏ね出した。それを確認した梗は野菜を細かくみじん切りにしていった。

 

 梗が野菜と肉を具の大きさに刻み終えた頃に丁度、焔の仕事も終わっていた。それぞれの粉が程良く混ざり、生地らしい色になっていたのだが……。

 

「どうやったらこうなるんだよ」

 

 焔の胸から上、調理台の上に出ている部分は真っ白になっていた。左手で抑えていたはずなのにその左手も右手に負けないくらいに真っ白だった。それでも、焔はどこか満足そうな表情だった。

 

「まあ、いいや、次の仕事があるからとりあえず手、洗え」

 

 コクリと頷き焔が手を洗う。その間に梗がボウルを手際よく洗い、今度は先ほどきざんだ具をそこに投入した。手を拭き終わった焔が今度は赤と緑の物体の入ったボウルに右手を突っ込む。今度は先ほどとは違いヌチャヌチャした感触が手に伝わる。楽しそうに焔が具を捏ねているうちに梗が焔の捏ねた記事を伸ばし、棒状に折りたたむと別のボウルに入れその上に布巾を被せ寝かせる。

 

 ふと、焔の様子を見るとやや、集中力が切れかけていたのでそこに卵を投入する。

 

「うわぁ、ひんやりしててヌルヌルする~♪」

 

 そういうと焔が具を一握り取り上げ、手を握ったり広げたりして、具の感触を楽しんでいた。梗が生地を伸ばした棒を焔の頭の上に置き注意する。

 

「食いもんで遊ぶんじゃねよ」

 

「は~い」

 

 その後、皮の生地を手押しで皮のように広げ、準備が一通り終わるといよいよ、具を皮に詰める行程に入った。初めに梗が見本を見せる。手慣れた感じに具を適量皮に置き、手際良くそれを包む。

 

「こうやってやるんだ」

 

「ほうほう」

 

「よし、やってみろ」

 

 そして、焔が挑戦するも、見てすぐできるものではないので案の定、上手くはいかない。ピンク色の具が皮からはみ出してしまった。それでも、諦めずに次の具詰めに挑戦していった。

 

「なあ、梗……」

 

ふと、焔がさりげなく尋ねる。梗は作業を続けながら軽く相槌を打つ。梗の横顔を見る事はないまま、焔がそっけなく聞く。

 

「魂魄組って、誰が仕切ってるんだ?」

 

「…………」

 

 梗が沈黙する。随分前に考えるのを放棄し、そのまま、思考の海に放り投げていた議題がその一言で海底から引き揚げられたのだ。梗はあまり、考えたくないのか沈黙を守り作業を続けるが、心なしかその手の動きは遅くなっていた。

 

「こんぱく……ようき……? っていう奴がいるのか?」

 そんなに知りたい様子は無いのだがその場のノリで焔が尋ねる。

「……ふう」

 

 全ての具を皮に包み終わり梗がひとつ息を吐く。そしてしばらく沈黙した後、焔に向かって声を発した。

 

「焼く作業は俺がやるからお前は手を洗って向こうで待ってろ」

 

 期待していた答えでは無かったので焔はキョトンしたが、結局、そこまで知りたいわけではなかったので手を洗い、自分が乗っていた台を隣の部屋に戻すと、ちゃぶ台の所に腰をおろしおとなしく梗を待っていた。

 結局、食事中も、梗は魂魄組について触れなかった。そのまま食事を終え、食器を片づけ、焔を寝かした後、梗は夏の夜空を見上げていた。雲に所々隠されていた空に浮かぶ幻想郷の月は逆三日月だった。左足を縁側の外に出し、曲げた右足の膝に肘をつき、右手に顎を置いて考えていた。

 

「鳳雁は魂魄組の副組長を名乗ってたな……となると残っているのはようきと名乗る組長だけか。そいつが出てくるのも時間の問題か……。元々、向こうから一方的に仕掛けられた喧嘩だが、俺がそれを買ったのも確かだ……」

 

 ふと、梗が右手から顔を浮かし、左手に目をやると左腕に蚊が止まっていた。蚊が辺りを確認し口の針を皮膚に突きたてようとしたとことに梗の右手が振り落とされる。右手の平についた蚊を左手の指先で取り、外に出すと徐に梗は立ち上がった。

 

「ケリを付けるか……」

 

 縁側から降りると梗はあの時と同じ方角へ向けて歩き出した。

 

 

 その姿を背の高い木の陰から目を光らせ見る者がいた。

 

「動いたか……」

 

 影はそう呟くと軽い身のこなしで宙に舞うと家屋の屋根の上を飛び跳ねていった……。

 

 

 

 ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ●

 

 

 

 梗が移動に要した時間は一刻強(二時間以上)程だろうか。そこはやはり冥界だった。終わりの見えない長い階段を見上げる梗はフワリと体を浮かし階段を上って行った。

 

「夜分遅くに失礼します」

 

「本当ですね……」

 

 今回はイキナリ斬りつけられなくて済んだようだ。妖夢が眠そうに眼をこすりながら梗を迎えた。時間的には日付が変わる境界といったところである。白玉楼の辺りはとても静かで梗の耳にも聞こえてくるのは子の葉が風に撫でられる音と半霊が漂う時の音だけだった。

 

「こんな夜分遅くに一体どういったご用件で……」

 

「ああ、実は魂魄組の核心にふれ……」

 

 

「「!!!??」」

 

 二人を同時に恐ろしいく鋭い殺気が襲った。一瞬で額を汗が伝う。梗が顔を挙げると妖夢の表情は青く、調子が悪そうだった。さっきまで寝むそうだった目をパッチリ見開いていて。震えながらも右手は楼観剣の柄を握っていた。

 ふたりを襲ったのは。体に突き刺さるような、その身を斬り裂くような、とにかく鋭い刃物様な殺気だった。今までに経験のしたことのないようなあまりにも純粋すぎる殺気、それでいてその殺気は殺意によって生まれているのだろうがどこか混沌としていて透き通ってはいなかった。

 

「こんな、殺気。一体だれが」

 

 梗の表情が鋭くなり、背後を振り向く。その視線の先には白玉楼の塀の上に規則正しくならんだ瓦とその上に仁王立ちするひとりの青年……? が映っていた。やや高めの体を覆う着物は緑をベースとしており土と黒い返り血で汚く汚れていた。グレーの色をした髪の毛も黒く汚れていてそこからは服同様に血の匂いが漂っていた。大きめの二重の瞳を見た二人は思わず唾を飲み込んだ。

 

 本来白いからそう呼ばれるはずの白目は漆黒色に染まり、眼球は鮮やかすぎる血色に染まっていた。鬼弩同様に不健康そうな青白い肌をしていて鬼弩ほどではないが瞳の下にはくっきりとくまが出来ていた。鬼弩とは違いしっかりした体つきをしていた……。

 

 いや、鬼弩同様に肌が青白く、くまが出来ていると言ったが、それ以外の全てが鬼弩のそれとは別の代物だった。何もかも見透かされ丸裸にされる錯覚にとらわれる鬼弩の瞳とは違い、その瞳からはただ純粋な……純粋すぎる獲物への殺意だけが感じられ鞘に収められている刀から感じられる剣気も鬼弩のそれとは異なり、温かい深紅の生き血をただ求める肉食獣のような凶暴さを醸し出していた。

 

 鬼弩を柔と例えらるのなら彼のそれは剛……いやそれはもはや「凶」と形容できる領域にまで達していた。

 

 二人が、頬に汗を伝わせながら腰を落とし、構えていると、青年の口が開いた。

 

「ハァァァァ……………………………………………………………」

 

 開いた口からは白い息が吐き出され、その白い息は口から下へドライアイスの煙のようにゆっくり下りていった。その溜め息にも聞こえる吐息だけで二人はまた恐怖を感じた。それは己と目と耳でだった。

 

 まるで、獣の荒い呼吸のようにもその声は聞こえた。人によって声の聞こえ方は違うだろうが二人は真っ先に獣の呼吸を連想した………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふたりは見てしまったからだ、他の歯の数倍は発達した二本の牙を……。

 

 

 

 それは、それは、あまりにも生々しい恐怖だった。目の前にいるこの生物は一体なんなのだ!? 二本足で大地を踏みしめ、漆黒と血の色に染まった瞳で獲物を見据え、牙のはえた口から白い息を漏らすこの人型の化け物は一体なんなんだ!!?

 

 そんな生命体に二人は今、明らかに狙われているのだ。

 

「魂魄組には人間しかいないと思っていたのだが」

 

 震えた声で、梗が目の前の生き物に問う。

 

「そうでもない。鬼弩は半分天狗の血をひいている。ま、俺には人の血しか流れていないがな……」

 

 その生物は恐ろしく落ちついた口調で答える。

 

「人間の犬歯はそんなに発達しねえし、目も紅くならねえよ」

 

 ふと、<それ>が背に斜めにかけていた身の丈ほどある刀を鞘から抜く。その音だけで二人はさらに深く身構える。美しく手入れされた銀色の刀身はその身に夜空に浮かぶ三日月を映し出していた。

 

 角度を変え、刀身に光を反射させるとその美しさにその場の三人全員が息をのんだ……。

 

「……名を聞こうか」

 

 その問いに動きを止めるとそれは腰にさしていた脇差程の刀も抜き、構えを取ると答えた。

 

「獣を喰らい……人を喰らい……妖を喰らい………その全ての血をすすり今日まで生きてきた………この身にこの二本の刀を宿し……我……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        「魂魄妖鬼を語る」

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、やっと名乗ってくれましたね「妖鬼」さん。え?、妖忌さんと漢字が違う?ええ、別人なので問題ありません。しかし身の丈ほどもある刀と脇差のような短剣を構え魂魄を名乗る「妖鬼」さん……。彼をとりまく謎を次回から解き明かしていきます。
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