【東方】<八雲梗>【九尾伝】   作:甘味料

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「モルフェウスの領域」を先日読み終わりました。前回、何を読もうかな?なんて言ってたんですがよく考えたら「カゲロウデイズⅣ」を読んでなかったのでそれを読みますww。オススメのラノベとか教えて下さるとありがたいです。



第五刻:開戦の抜刀

「魂魄……妖鬼………」

 

 妖気の口から放たれた言葉を梗が自分の口で復唱する。それにより、二人の声が梗の頭の中で何度も反響し螺旋を描いていく。目の前にいる<何か>が魂魄妖鬼という妖忌と同音異字の名を名乗っていることに梗は理由を求める。

 

「誰からその名を与えられた?」

 

 その問いに妖鬼が返答することに時間を有することは無かった。表情を変えずに口を開くと過去を思い出すように語り出した。

 

「我が生涯の師……魂魄妖忌より譲り受け、今日まで鬼を名乗ってきた……」

 

「生涯の……師……だと。てめぇ、妖忌さんから何を学んだっていうんだ!」

 

 梗の声が妖鬼を怒鳴り付けるが妖鬼は微動だにしない。ただ、自分が経験した事実を語るだけ。

 

「そこにいる半人の庭師と同様……師は我に剣の業を教えた。しかし、ある日突然、姿を消した……我は師の背を追う事にした。しかし、教わった業や技は思い出せても剣士としてのことは思い出せず。我に思い出せた事は……斬ればわかる………それだけだった……」

 

 梗の妖鬼の語りに割り込まなかった。何を考えているか分からない人型の生物でも、妖忌の事を語る姿は祖父の事を梗に話す妖夢の姿に重なって見えた。

 

「我は斬り続けた。物事の真実を知り、師が我に教えたかったものを知るため。しかし、我は今日まで師の域に辿り着けていない……真実を求めた我の後に残るのは血を吹いた肉塊のみ………」

 

「しかしそれでも真実を知りたいがために斬り続けた」

 

 そう発したのは梗だった。何かを悟ったように口を開いた梗は紅く染まった妖鬼の瞳を覗き淡々と続けた。

 

「そうして、斬り続けていくうちにお前は真実を知る方法すら見失ったんだ。師匠がお前に教えたかったのはそんな事じゃないはずだ。それでもお前はその真意に辿り着けなかった。そして、斬り続けるうちにお前は剣に溺れ………」

 

「…………」

 

「人の道を外れ、人の子にありながら、人間ならざる者となってしまった。今のお前は………斬る事でしか己を形作れない哀れなただの人外だ」

 

 

[キィィィン……]

 

 妖鬼が瓦に長剣を突きさす。それと同時に戦闘意志を示す灰色の妖気が人の子であるはずの妖鬼から放たれる。禍々しい雰囲気を持つその灰色の妖気はまさに、人にあらざるものとなった妖鬼を象徴するものだった。

 

「我ハ………人外ニ……ナッテしマッたのカ……モウ……剣士デわ無く………人でスラなイ…ト……」

 

 獣のような声が妖鬼に混ざり始める。妖気の灰色はどんどん濃く暗い色に変化していき、顔や体には青筋が立ち始める。目は限界以上に見開き目の周りにはヒビのような線が入り始める。獣のような雄たけびを上げ妖鬼が両手で頭を抱え込みうずくまる。

 

「妖夢……」

 

「は、はいっ」

 

 その光景をただ眺める事しかできなかった妖夢が梗の声掛けで我にかえる。

 

「おそらく、陽が昇る頃には白玉楼はとんでもないことになってる。出来る限り被害は抑えるつもりだが、そう上手くはいきそうにない相手だ。ここの主人の護衛はしっかりやれよ!」

 

「……はい!」

 

 妖夢の目つきが変わる。覚悟を決め幽々子のいる部屋のほうへ走り出す。去り際に、妖夢がか細い声で梗に言った。

 

「どうか……ご無事で……」

 

「自身をもって首を縦には振れねえな!」

 

 梗が上着に手をかけ一気に脱ぎ捨てる。日頃の修行により鍛え上げられた肌色の肉体が姿を現す。今までにない程の鋭い目でうずくまる妖鬼を睨みつける。既に梗はいつもの優しい梗ではなく。幻影の九尾、八雲梗になっていた。

 

「我ワ……人デわ……ナ…イノ…カ」

 

「そうだ」

 

「我わ……人外ダと……キサマハ……言うノカ」

 

「ああ、お前は人の道よりはずれし人外。されど命ある生物。ここは冥界、命を持ち人外よ、お前たちの世へ引き返すのだ!」

 

 淡々と、非常な言葉をぶつけ梗が妖鬼を威嚇する。既に精神が極限まで衰弱していた妖鬼は人の物ではない雄たけびを上げるとふたつの刀を構えた。

 

「真実わ……斬レバ………わカル!」

 

 そう叫び、妖鬼が梗に襲いかかる。鬼弩のそれがスローモーションに見えるようなスピード。妖鬼が地面を蹴った音が聞こえる頃には妖鬼はその刀を梗に振りおろしていた。

 

「……ッ!?」

 

 そのスピードの驚く梗も何とか後方に体をひくも反応が遅れ、右足を長剣がかすめていった。あり余った勢いで刀が地面に突き刺さると思いきやその二本の刀は大地を豆腐の様に斬り妖鬼は体を前宙し一回転をしながらつづけざまに梗を斬り付ける。

 それを梗は後方への宙返りで距離をとりつつ回避するが。前宙した妖鬼は着地と同時に大地を蹴り飛ばし梗に飛びかかる。空中で回避の出来ない梗に妖鬼の斬りつけが襲いかかる。両腰に腕を交差させ刀を構えた妖鬼が居合切りのように一気にその刀を放つ。

 

「おぉぉぉ!」

 

 気合の雄たけびを上げた梗は上半身を全力で反らし斬りつけを回避する。それと同時に空中で妖鬼の下に回った梗が左足を妖鬼の腹部に置く。そして左足を妖鬼の腹にくっつけたまま梗が右手で地面を叩きつける。<幻武:龍起>のようだったが手と足の順番が逆だった。

 

「<幻武:瀑布>!」

 

 右手で大地を叩きつけた衝撃が梗の体を駆け抜け、足を伝わり妖鬼の腹部に到達する。その衝撃で妖鬼の体は打ち上げられ数m吹き飛び背中から地面に落ちた。

 しかし、すぐ妖鬼は立ちあがった。その表情には既に人の面影はなく。正に人外と呼ぶにふさわしい様だった。妖鬼の刀を握る両手にさらに力が入り目じりがつりあがり表情がどんどん険しくなる。

 しばらくの間の後、妖鬼が左手の短剣の切り上げと長剣の切り下げを同時に繰り出す。その斬撃波は×の字を描き梗へめがけて飛んでいった。梗は体の前で腕を交差させ防御するが。斬撃の物凄い衝撃が梗に伝わる。梗の体に当たらなかった斬撃が白玉楼の塀に当たると煙を出して崩れ落ちた。

 

「人智剣:天女返し……」

 

「その、技は……」

 

 天女返しを受けた梗の腕は痺れていた。妖夢のそれとは比べ物にならない威力の斬撃波だった。いう事を聞かない腕をなんとか戻し。再び構えを取る。

 

(こいつはまだ……能力を使ってねえ………)

 

 この様な、スペルカード戦ではない純粋は戦いで最も警戒すべきことは相手の能力だ。相手の能力を知らないで突っ込む事がいかに危険かは梗自身は先のバベット戦で体現していた。

 

「こいつの戦闘力は正直しゃれにならない。スピードとパワーその両方が今までやってきた剣士の中で群を抜いてやがる。こいつ本当に人の子か……いや、もうすでに人間じゃねえのか」

 

 梗がひとつ大きな深呼吸をすると梗の体から鮮やかな桔梗色の妖気が現れる。三日月の月光と桔梗色の妖気が黄色い梗の髪や瞳、尾を神々しく照らしていた。

 しかし、仕掛けたのは妖鬼のほうだった。右手の長剣を梗に振り下ろす。梗は左肩を後ろに引き回避するが、そこから攻撃に転ずる前えに左手の短剣が横に払われる。

 梗は右半身もひき回避するが、体の流れを崩す動きをしたがためにそこに一瞬の間が生まれた。そこに妖鬼の高速の突きが放たれる。

 

「回避できねえ……」

 

 そう察すると、梗は体の力を一点に集中させるように力を込める。

 

「<幻武:剛身弾刀(ゴウシンダントウ)>! ………何だと……」

 

 妖鬼の長剣は梗の体を貫いていた。右手で突いた長剣を梗の胴体から引き抜く。傷口からの返り血が妖鬼の頬につく。妖鬼は満足気な表情をみせ長い舌で頬の血を舐めると狂ったように梗の体を斬り付ける。

 梗の悲痛な叫びと妖鬼の耳障りな高笑いが響き合い不協和音を奏でる。全身を切り刻まれ大量の血を吹いた梗の目には生気がなく焦点の合わないその目は意識がもうろうとしているのを示していた。

 

「ハァァ…………………」

 

 気分のよさそうな声を漏らすと妖気は思いっきり振りかざした長剣を振り下ろし梗のからだを真っ二つに斬り裂いた……。が。

 

「一回だけなら、コンティニュー可能なんでな……」

 

 妖鬼の背後には無傷の梗が立っていた。精神転移によって分身に精神を転移させ、状況を打開した。しかし、今の梗では一度の戦闘でこの技を連発できない。実際、一度使うだけでも梗の妖力は弱くなっていた。

 

「妖力はじきに戻る……しかし……お前のその刀よく切れるな……」

 

 疲労混じりの声で梗が息のかかりそうな距離にいる妖鬼に言葉をかける。

 

「こノ刀ハ我ガヒゴロかラ手入れをシテいルカラナ…………ソレに……」

 

「それに?」

 

「我の力はアラゆル物を斬ルコトガでキルゆえソの物の強度ナド我にハドウデもヨいのダ」

 

 そう言うと妖気は刀を上に向けると小石をその上にのせた。すると刃に乗っただけの小石は真っ二つに斬られ地に落ちた。

 

「………」

 

 その光景に梗は言葉を失った。触れるだけであらゆるものを斬り裂いてしまうという恐ろしい能力。斬り付けを喰らう事は一度も許されず妖鬼の刃に触れずにその身を捉えなければならない。

 

「バベットのトリプルスキルが可愛く見えてくる能力だぜ」

 

「なら、大人しク我ニ斬らレヨ!」

 

 至近距離からの突きが繰り出される鬼弩のそれ以上の速さで繰り出される突きを梗はかろうじて回避する。そして、突きの後の隙のできたところに梗が踏み込む。短剣の斬り落としを回避しそのままみぞおちに突きを叩き込む。

 妖鬼は一瞬ふらつくがすぐに反撃にうつる。だが、一歩踏み出す前に続けざまにふたつの衝撃が妖鬼を襲う。

 

「<幻武:三掌連(サンショウレン)>。一度の突きで三度の衝撃を相手に叩き込む。撃つ側の意志で後の衝撃のタイミングは一発目の打ち方で変えられる技だ」

 

「ガファ……ハァ………ハァ……ック……ク……クックックック………」

 

 一度、吐血した妖鬼だったが、すぐに不気味な笑みを浮かべた。まるで、この状況を楽しんでいるように。

 

「面白い……師ガ言っテイタ。ゲンブを使ウ狐トワキサまノことだッタか……」

 

 口元に吐き出した血をつけたまま、妖鬼が一歩ずづ梗に近づいていく。

 

「面白いゾ同胞ガ相手トハナ!」

 

 右手の長剣を振りかざし梗に振り下ろす。それを梗は余裕を持って後方に回避し、一気に踏み込む。そしてそのまま、妖鬼に再び突きを打ち込む。

 その力で、一歩後退した妖鬼だったがすぐに踏みとどまり己の底に眠る力を呼び起こすように構え力を集中させる。妖気の量がどんどん増えていく。

 

「存分に殺ロウヤ……梗!」

 

 

 

 人間という概念は既に妖鬼には当てはまらない……いや、当てはめられなくなっていた。

  




「人外」でggってみました。
    人外とは、以下のことを表す。

1.人間の住む世界の外。
2.人の道に外れること。人でなし。
3.人ではないことや、人を超えていることを表す俗語。
4.外国人を表す隠語。「外人」を逆さ読みしたもので、芸能界などで使われる。

よく小説で使われる人外は3番ではないかと思います。今回の妖鬼さんは斬れば分かるという座右の銘のもと、斬って斬って斬りまくるうちにどんどんSAN値が減っていき最終的に人の道を外れてしまいました。
ですから、うちの妖鬼さんは2番の人外さんに該当します。

ps.梗くん達を書いて下さる方いないかな(チラッ
 
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