【東方】<八雲梗>【九尾伝】   作:甘味料

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もう原作なんか知るか。




第肆章:運命を躍らせる者
第一刻:定評のあるドクター?


「んで? 結局あのなんでも斬れる馬鹿は一応、まともに生きようってなったんだな?」

 

「まあ、そんなところやね」

 

 その日、梗は緑豊かな小さな村に来ていた。人間の里から少し離れた森を切り開いてできたこの村は時間がゆっくり流れるような感覚があった。そこで梗と会話をしていたのは全身紺色の衣装を着た青年だった。

 

「にしても梗最近、全然顔をだしてくれなくなったよな~」

 

「忙しんだよ、餓鬼の面倒をみるようになってから毎日、毎日が大変で」

 

「夜が?」

 

「違ぇよ」

 

 梗と駄弁っているこの青年は「風魔佐助(かざま さすけ)」。この村に拠点を置いて生活しているがフリーの忍びを生業としている。過去にある者の依頼で八雲家を襲撃して以来、こうして梗とつるむようになっていた。仕事上、梗とは別方面の情報に詳しく。その情報網は梗も信頼を置いている。

 佐助の特徴として、忍びとは思えない程口が軽い。梗も佐助と長い付き合いだが真面目な佐助を見たのは襲撃された時が最初で最後だであった。ついでに言うと佐助は女好きである。ふたりで夜の里を歩いていると行き交う女性に次々とナンパをかける。その佐助の襟を掴んで梗がひっぱるのが里を歩く時のスタイルである。

 実際、佐助に八雲家に襲撃した時も佐助が藍と紫に一目惚れしたせいで誰一人負傷者が出なかった。その後、イキナリ二人同時に告るという荒技をやってのけたがうまい具合にはぐらかされてしまたそうな。

 

「そういや、お前が今回、俺を訪ねた理由を聞いてなかったな。まさかその妖鬼とかいう奴のその後だけを聞きに来たわけじゃあるめえ」

 

「ん、ああそうだな」

 

「言っとくけど女の子の紹介は無理だからな」

 

「うるせえな、俺はお前みたいな女たらしじゃねえんだよ。今回聞きたいのは幻想郷の裏事情だよ」

 

「え~そんな事~? つまんねえ」

 

 佐助が両手を頭の後ろで組んで後ろに体を反らす。

 

「別にいいだろ」

 

「まあ、いいか、雑っぱにでも教えといてやるか。最近、変な奴らがこっちに入ってきた」

 

「その話詳しく!」

 

 梗が体を前に乗り出して佐助に詰め寄る。

 

「そりゃ無理だわ。いろんな奴らが情報を取りに行ってるんだが誰もまだ帰ってきてねえんだよ。ま、要するにヤバい奴らってことだな。情報入ったら知らせるよ、藍さんの顔も最近見てねえしな」

 

「そっか……」

 

 ひとつ息を梗がはくと佐助が別の話題を持ってきた。

 

「しっかし、その腕はどのぐれえかかるんだ?」

 

「ん? ああ、これか一週間もあれば動くようになると思うんだが」

 

 そう言って梗が目をやった先には妖鬼に斬られたはずの左腕があった。しかし、あるだけで全く動いていなかった。

 

「精神転移すりゃ一発なんじゃねえの?」

 

「あいにく、俺の能力はそこまで優秀じゃねえんだ。左腕の無い状態で精神転移をすると左腕の神経が使えなくなるんだよ。だから体のパーツが吹っ飛んだときはこうしないといけねえんだよ」

 

「……しかし、そんなことするかね」

 

 そんなこととは今朝の話になる。

 

 

 

 ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○

 

 

 

「ただいま~」

 

 妖鬼との闘いを終えた梗はマヨヒガへと帰ってきた。朝の陽ざしが大地を温め出していたころ、梗が屋敷の中に入ると眠そうに眼をこすりながら焔が出迎えた。

 しかし、梗の姿を見て焔の目は一発で完璧に覚めた。

 

「きょ、梗! 傷だらけじゃないか……って、ひ、ひ、左腕がぁぁぁぁ! な、無い!?」

 

「ああ、ちょっと斬られた。そんで焔に手伝ってもらいたいんだが」

 

「う、うん」

 

 少し、怯えながらも焔の手にはいつのまにか救急箱が握られていた。

 初めに、体中の傷の応急処置から入った。先の闘いで全身をこれでもかという程切り刻まれたので、傷の大きさから深さまで様々だった。傷口を消毒したとに包帯を巻くという簡単な治療だったが、深い傷に消毒液を塗られたときは流石の梗も声を上げていた。

 全身が包帯でぐるぐる巻きになった後に左腕の復元の作業に入った。梗が焔に治療の行程を説明したが……。

 

「正気か!? 梗! そんなこと……」

 

「いいんだよ、生えるまで待てるかっての」

 

 その治療とは、腕と肩の接合部分を焔の炎で軽く溶かしてくっつけるというものだった。梗の話によると、溶かされた部分の細胞が急速に再生と神経の伝達を行うためくっついた左腕がしばらくすると使えるようになるらしい。

 

「梗がそれしかないって言うならやるよ」

 

 そう言って焔は斬られた右手で梗の左腕を梗の肩にくっつけると結合部分に左手を与え炎を発した。

 熱さの痛みで梗の顔がゆがむ、炎での治療は数分続いた。その後、梗が右手で抑えつづけ、とれない事を確認するとそこに包帯を巻いた。

 

「まあ、外見の再生は完了したがあとはどのくらいで神経が通って戦闘が可能になるかだな。俺の見当だとだいたい一週間前後ってところだな。その間、何も無けりゃあいいんだが」

 

「治るまでは絶対に安静だからな! 絶対な!」

 

「分かった、分かったよ」

 

 

 そんなこんなで現在に至るわけである。

 

「にしても、梗がこっちに顔出してくれたから久々に張りあいのある仕合が出来ると思ったんだがな~」

 

「正直、お前とは闘りたくねえ」

 

「え~何故に~?」

 

「いや、その……お前のな……能力がだな……面倒臭い」

 

「おうふ。テラ正直頂きました」

 

 このふたりの付き合いはかなり長い、出会ったのは梗が八雲の姓をもらったばかりの事であり、初の任務が佐助の襲撃から紫を守るというものだった。その頃は、修行のことしか頭が回らなかった梗が佐助との出会いによって今のようなボキャブラリーを身につけたと言っても過言ではないだろう。梗自身、佐助を嫌がるそぶりも見せるが、それこそ佐助を信頼してうえでのからかいであり。梗は佐助程の相手でなければこれほど話しこまないだろう。

 

「んじゃあ、俺行くわ」

 

「あ、マジ? あんまりゆっくり話せなかったな」

 

「お前と久々に話せただけで満足だよ、それじゃ」

 

 梗が立ち上がり去ろうとすると佐助が引き留めた。

 

「……なあ梗」

 

 返事はしなかったが梗は足を止めた。何故か二人の顔はシリアスな表情をしていた。

 

「お前にとって<八雲>ってなんなんだ? 何故そこまであの二人に献身的に仕える? 別に血縁があるわけでもなく、お前の意志で式になったわけでもないらしいし」

 

 佐助はそこまで言うと俯いた。自分で言っておきながら後悔しているのだろう。少し沈黙が続かと思ったが梗はすぐに口を開いた。

 

「俺の唯一の存在意義で俺の存在を証明してくれるものだよ。名前の無い生き物は死んでいるも同然だ。俺は紫さまに生かされているんだ。………俺は一度死んでいる」

 

 とても重い言葉だったが、俯いていた佐助の頬はつりあがり笑った。

 

「そうだったな、悪い、水を差すような質問だったな。近いうちにまたきな、お前が暇なときは俺は確実に暇だからよ」

 

「ああ、じゃあな」

 

 ゆっくりと梗が佐助から離れていく。その姿が見えなくなると佐助は両手を頭の後ろに回しそこに寝転んだ。白い雲が穏やかに流れていた。

 

「今年の夏は荒れるぞ。梗、お前の選択次第じゃあ八雲家は……幻想郷は今年の夏に………消える」

 

 佐助の鼻に白い蝶が止まった。

 

 

 

 

 

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 今回、銀髪の青年が入ってきたのはあの空間ではなく、何も無い暗闇の中だった。ろうそくを包んだ燈籠(とうろう)のような物が部屋を照らしてはいるが部屋の全貌は見えない青年がその部屋に入ってくると既にその中には六人の男たちが腰をおろしていた。そしてその全員が恐ろしく強い妖気を発していた。全員の目は幾多もの修羅場をくぐりぬけてきたかのような鋭い目つきをしていた。

 

「主様から決行の承諾を得てきたところだ。みな今までよく辛抱したもんだ」

 

「本当だぜ~、こんな何も見えねえ部屋に数カ月も入ってたんだからよ~、早くこっから出せっつ~の」

 

 その中の青髪の青年がけだるそうに声を発したがすぐに銀髪の青年が彼にいった。

 

「お前の出番はまだだ、まだお前らの力は必要ない」

 

「え、マジ~?。今回の敵って雑魚いの~。はぁ~~つまんね~」

 

「おい、お主、立場をわきまえろ、そんな品の無い言動は関心せぬ」

 

 青髪の青年のとなりにいた白髪の男が彼に言った。

 

「んだとぉ~。テメェの考えは古臭ぇんだよ、年長者だからって調子乗ってんじゃねえぞ、ジジイ」

 

「やめろ、とにかく今はお前達四人の出番はない。いつも通りだがお前達二人に先陣を切ってもらう」

 

 そう言って彼は見た先には刀の手入れをしている男とどこか遠くを見つめている青年がいた。

 

「しかし、あのふたりが来てないのか、相変わらず召集を守らん奴らだ」

 

「仕方ねえだろ、こんな男臭い所に好き好んで来る女どもとか気がふれてるとしか思えねえ」

 

 その言葉を発してのは白髪の男の隣に座っていた赤髪の小柄な青年だった。

 

「そうか、まあ、いい、今回の先陣はパラノクス。お前だ」

 

 銀髪の青年が指名するとさっきまで遠くを見ていた青年が彼のほうを振り向いた。

 

「ギャハハハハハ! パラ先陣かよ! こいつは傑作だわ! っクククク」

 

 青髪の青年が笑うのも分かるかもしれない、パラノクスと呼ばれた青年は俺ですかと不安げな表情をしてた。おそらくこの中で一番の格下なのだろう。

 

「主様からの命令による仕事だなにか不満か?」

 

 銀髪の青年が聞くと彼はすぐに言葉を発した。

 

「そりゃあ……。仕事っていうのは元々、その人がやれる物事をどうにかして他人に押しつけたときにできる物です。他人から回ってきた物には常にリスクがこびりついている。僕は自分を脅かすものとは決して関わりたくない。常に僕は失敗を恐れ最も安全な道を選んできた」

 

「その結論が主様に仕えるというものだったはずだ」

 

「ええ、僕は常に幸福であり続ける。今までもそうだったし、これからもそうだ。しかし、仮にリスクを回避できないというなら僕はそのリスクに正面から立ち向かい完膚無きまでに叩き潰す」

 

 そう言って彼は立ち上がると、銀髪の青年が入ってきた入口から出ていった。すると、青髪の青年が立ち上がりずっと黙っていた赤髪の青年のとなりにいた黒髪の男に話しかけた。

 

「な~な~な~」

 

「んだよ、面倒臭ぇ」

 

「あいつが生きて帰ってこれるか賭けようぜ」

 

「無理だな」

「無理だな」

「無理だな」

 

 黒髪、赤髪、白髪の男の三人が全く同時に声を上げた。

 

「なんだよ、みんな俺と同じ意見かよつまんねえ、敵の力は分かんないんだぜ~? まあ、いいや、じゃあ俺だけ大穴の帰ってこれるで。俺は大穴だから賭けるのは今度の晩飯な。お前らは倍率低いんだからなんかデッカイの賭けろよ」

 

「ならこの心臓を賭けよう」

「ならこの心臓を賭けよう」

「ならこの心臓を賭けよう」

 

 そういって、三人は自分の心臓を叩いた。

 

 




いよいよ、物語の黒幕たちが動き出しました、銀髪の青年と部屋にいた六人、それに加えてまだ姿を現していない二人。左腕の使えない梗くんで勝てるのでしょうか!? ではまた次回!。
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